本当に競技に不向きなのかを検証しました

2014.07.29 Tuesday

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    今回は大切な事をお伝えいたします。質問が多く、アーチェリー用品について誤解している人が最も多い内容です。ショップもクラブの先輩たちも正しい事を教えてくれない、「当たる」アーチェリーに必要な道具の価格と、競技での的中に必要な精度を持つ道具についてです。

    結論から言いますと、上達過程にある中級者以下の人は、最初から高額な弓具を買ってはいけません。総額5万円程度で、全日本アーチェリー連盟公認の競技会で入賞したり、全国大会に出場できるレベルの的中性能がある弓具を揃えることができます。初心者や中級者の頃は、自分がコントロールできる幅がひろく、優しい性格の機材をつかって大切な感覚を養うことが大切なので、総額3万円程度の弓具からスタートする事が上達の近道になります。

    高額な機材の性能は特別に優れたものがあるのですが、それらは特別な能力を有する選手のために開発された特別な性能であることを知っておいてください。初心者や中級者の頃に大切な感覚を養っていないにも関わらず、最初から高額な機材を購入してしまうと、その性能を永遠に発揮できないことは、機材を扱うスポーツでの共通事項なのです。なぜ初心者用や中級者用の機材がラインナップされているかを、真剣に考えていただきたいと思います。

    ■選手のレベルについて

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    初心者とは、アーチェリーを始めて1〜2年程度で、基礎を学んでいる段階の人です。高性能な道具よりも、扱いやすく上達のステップを駆け上がりやすい、扱いに対する反応がマイルドで、レスポンスが高くない道具が必要になります。レクリエーションや、レジャー、健康維持のためのスポーツ愛好者も含まれます。

    中級者
    中級者とは、競技に参加する選手で、70mラウンドで600点未満の人です。道具にはある程度の性能は必要ですが、フラッグシップモデルのようなスパルタンな性能は、かえってコントロール性が悪くなり得点が伸び悩むことが多いです。今の自分に足りないものをしっかり学んで、自分のレベルをさらにステップアップしていくために、個々に応じた補器類を無理ない範囲で装着して、ひとつずつ着実にテクニックを磨いていく必要があります。

    上級者
    上級者とは、650点のレッドバッジを見据えてトレーニングに励むような人です。誰もが参考にしたがるような射型で、次から次へとゴールドに的中させることができる人で、在籍している各都道府県の連盟や協会から、一目置かれる存在になっていると思います。

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    トップアーチャーは、上級者の中の更なる上級者です。650点のレッドバッジを持ち、ナショナルチーム入りを目指すような、国際大会へ出場できるレベルにある人です。このレベルになると、複数のメーカーや代理店などからサポートを受けるようになります。

    上級者は上級者にふさわしい道具を選んで使っている事が多いのですが、問題なのは初心者と中級者です。困ったことに、日本のアーチェリーショップの多くでは、初心者に初心者が扱いやすく、上達に導きやすい道具を勧めてくれません。「初心者用や、中級者用の道具は、競技用の機材としてふさわしくない」とか、「どうせだったら、最初からいいものを」・・・などというように、いきなり高価で高性能な道具を勧めたがる傾向が強いです。

    ショップに行けば目にする光景ですが、いかにも低価格のグレードでは当たらないと言いたげに、高額な機材のスペックを並べ立てます。初心者にとって買いやすく、本当に扱いやすい製品を勧めてくれません。というか、低価格帯の製品の本当の性能について、誰も本当のことを知りません。そんなに競技向きではないと言うのなら、初心者用・中級者用の弓具が、どれだけ競技用としてふさわしくないかを、私が実際に使って検証したいと思います。

    ■1万円台前半のハンドル

    まずは中級者用、SF AXIOM+ ライトハンドル(赤)です。ハンドル単体での実勢販売価格は、¥13,500〜¥15,000程度です。一般的に競技用として売られているハンドルの半分以下の金額です。ある通販サイトでは、「WIN&WIN/SFの低価格軽量アルミハンドル。上位競技用モデルと共通した設計を用いており、長く使用できるとともに、将来的に競技用モデルへの移行もスムーズにできます。」と紹介されています。いかにも競技用ではないというようなニュアンスを含んだ表現をしていますが、SF本社のホームページには、そのような表現は見当たりません。不思議です。40ポンドを超えないようにという注意書きはありますが、40ポンドを超えるような強い弓を引く選手は、そうそういませんので何の心配もする必要はありません。



    この赤いハンドル(¥13,500で購入)に、初心者用のグラスファイバー製のリム68-30ポンド(PSE Summit ¥7,900で購入)を装着。¥2,650のサイト(照準器)に、¥4,800で購入した柔らかめの初心者用センターロッド(スタビライザー)を装着。レストとプランジャーはハンドルに付属しているものを使います。ストリング(弦)は私が教えている生徒に渡しているものと同じ、初心者用のダクロン弦(原糸の状態で1巻き1300円、弦を製作して1本あたり200円程度)。これで弓は完成です。弓本体にかかる費用は3万円にもなりません。ボウスタンド(弓置き)は、¥1,700です。

    さぁ、この3万円にも満たない弓が、本当に競技に出れる性能を持ち合わせてないか実射です。今回は私の矢を使って簡単に調整とチェックを済ませた後に、50mの公開実射です。



    50mは、6射して51点です。みんなビックリしています。私の弓ではないので本格的に細かな調整はしてませんが、これを当たってないと言える人なんていないはずです(笑)30ポンド台の弓であれば、8万円のリムも、7000円のリムも、的中性能に差はありません。このとき私が使っていた矢は、VAPのV6グレードという、初心者用・備品用の安いカーボン矢です。どちらも競技に向かないどころか、確実に好成績を収めることができる性能があります。これらの弓具のどこに、的中に関わる問題があるというのでしょうか。扱いやすく、実に気持ちよく当たります。最初に購入する機材として、これを勧めたがらない人に問題があると思います。

    ■1万円にも満たないハンドル

    さて、お次は、驚きの低価格、7800円(笑)の初心者用・備品用ハンドル(PSE Summit)です。これを扱っている代理店のホームページには、初心者用・備品用とは書かれてはいるものの、競技には不向きというようなニュアンスは見受けられません。ハンドルを製造しているメーカーのホームページには、この製品には40ポンドまでのリムを装着したセットモデルの設定がありました。40ポンドを超えた弓を初心者や中級者に扱わせることはまずありませんので、扱いが不慣れな間の、さいしょの1本として、まさにピッタリの製品だと思います。



    これは7月4日に、最初のテストをしてきました。場所は奈良市青少年野外活動センターで、そこでの最長距離の30mを実射です。リムは私がこれまで競技で使っていた、PSE X-Pression 66-44ポンド(¥39,000)です。リムボルトを弱めて、引きの強さを実質39.7ポンドまで下げて実射です。

    装着しているサイトは、初心者練習用のカーテル スタンダードサイトです。購入金額は850円です。スタビライザーは先ほどと同じ4800円の初心者用。レストは550円のマグネチックレスト、矢とプランジャーは私のものを(どちらも初心者・中級者用)使っています。



    30mは58点ですね。子供たちが見ている前で、矢が壊れそうなくらい当たりますよ。的の中心の黄色が、どんどんズタズタになっていきます。正確な的中がわかりにくくなってきたので、となりのキレイ目な的を射ってみると・・・



    60点満点(60金)ですか? いや、おしい! 59点でした。挙動に神経質な部分がなくて、扱いやすくて実によく当たります。これのどこが初心者用なのか、よくわかりませんが・・・

    ここでは30mよりも遠い距離を試すことができませんので、日を改めて50mと70mをテストすることになりました。



    50mは50点。少し左寄りですが、誤差の範囲です。グルーピングは悪くありません。



    70mは53点! やはり少し左寄りですが、これまた誤差の範囲です。10点が3本もあります。50mとグルーピングの大きさが同じくらいですね。50mがもっと当たったはずなのか、70mが特別良かったのかわかりませんが、これだけ当たってくれると、ショップがこれを勧めない理由に説得力がありません。7800円の初心者用ハンドルに、競技会で上位を狙える性能があるのは、もはや間違いありませんね。



    性能に不満があるどころか、戦闘力は十分です。ショップが最初の1本に勧めない理由は、的中の性能ではない事が明らかです。本当に困ったものです。初心者に初心者用の弓具を勧めない人たちは、このハンドルは練習では当たるけど、試合では当たらないポンコツ機材だとでも言いたいのでしょうか?それならそれで、こっちにも考えがあります・・・

    ■公認競技会(70mラウンド)で実際に使ってみる

    というわけで、この7800円のハンドルを、7月27日に行われた上田杯(全京都アーチェリー選手権大会)で実戦投入してみました。会場は京都府宇治市にある山城総合運動公園(太陽が丘運動公園)です。私がかつて全国高校選抜で準優勝した、思い出ぶかい会場です。

    私が持ち込んだ今回の弓具は当然ながら、参加者の中で最も安い弓具でした。2番目に安い選手と私の間では、使用機材の総額で10万円以上の開きがありましたよ。私がこれを使って、実際の試合でどれだけ低い点数しか出せないのか楽しみです(笑)



    競技は大荒れの天気のなか行われました。豪雨によって何度も競技が中断されました。前日は38度の酷暑に見舞われたというのに、この日は雨に濡れて全員が寒さに震える天気でした。

    豪雨で試合開始が遅れ、フリープラクティスが始まったと思ったら猛烈な雨。多くの選手が的から外したり、射てなくなってシューティングラインを離脱したと思ったら、残り時間40秒でフリープラクティスが中断し、矢取りにも行けずにそのまま30分程度待機という前代未聞の悪天候。

    テントの下にいてもズブ濡れになるほどの激しい雨で、私の傘が壊れてしまいました。おまけに足元はグチャグチャ。ひとまず矢取りをしたあと1時間程度待機したあと、これまた前代未聞のフリープラクティスの仕切りなおし。そして前半の70mを終えたところで午前が終了。午後の後半スタートも激しい雨で遅れに遅れ、小降りになって競技再開したと思ったら晴れて蒸し暑くなるという、寒さと暑さを同時に味わった最低のコンディションに全員が翻弄されました。



    本来予定されてた決勝トーナメントは中止になりました。持って行った道具類は、直接雨に当たってないものも、すべてドロドロです。参加者全員が、私と同じ目に遭いました。とても楽しめるような感じではなく、私も本当に疲れました・・・



    試合の結果は、前半285、後半301の、トータル586点で、6位に入賞することができました。7800円の初心者用ハンドルで、悪天候にも関わらず、70mを(試合で!)300点アップすることができました。装着していたスタビライザーは、初心者用の4600円のセンターロッド1本のみです。全日本アーチェリー連盟公認の競技会なので、これが公式記録になります。

    誰がそんな事を言い始めたのか知りませんが、高額な機材でないと競技には向かないというのが、詭弁であることは明らかです。私が今回の試合で使った矢は、VAPのV6グレード(初心者用・備品用)の、シャフト1ダースで1万円の廉価版です。競技会の参加者の大半は1ダース3万円から4万円のシャフトを使ってます。

    ■精度やスペックと得点の影響

    公認試合で結果を証明している通りですが、多くの選手が的中に必要な精度を勘違いしています。セールストークや比較スペックに踊らされすぎているのは間違いありません。私が試合で使っている矢はVAPのV6グレード(初心者・備品用)ですが、多くの選手が使っている矢に比べると、曲がり精度のスペックは5〜6倍も劣るものを使っています。ショップで「精度が6倍も違う」なんて言われてしまうと、誰もが高い方を買って使うことになるのですが、調子が良いときに使い比べて実際に得点を比べてみても、まったくと言っていいほど得点に差が出ないことがわかります。

    正確には、差はある事にはあるのですが、70mで330点を出せる時に、1〜2点あるかないか程度の差しかありませんでした。スペックの差というよりも、発射する人間が生み出す誤差の方が、はるかに大きく、時には点差が逆転することもありました。320点や310点程度しか出せないときには、得点での差はまったくありませんでした。300点すら出せない選手にとっては、そのスペックの差に何の意味もありませんし、得点に一切の影響はありません。機材の精度を求めるよりも、ミスショットをしないように正確な射を磨く事の方が100倍も大切です。

    それでも疑うのなら、試合会場や練習場に私の矢を見に来て、矢を回してみてください。手のひらでゴトゴト震えてくれますよ。そんな矢でも、私は春の全関西では後半に315点を出しています。接着している羽根は、初心者用のゴム羽根です。「そんなバカな」と言われますが、当たるものは当たるので、仕方がありません。私はこのシャフトを1ダースしか買ってませんので、試合で使う矢を選別するようなことはしていません。

    ■アーチェリーを始める人が直面する問題

    この事を考えても、これまでの日本のアーチェリー界が取り巻く、悪しき風習を取り除かなければならないと痛感します。

    アーチェリーを始めてみたいと思ってる方が、勇気をふりしぼってアーチェリーショップを訪ねるとします。すると必ず、アーチェリーを行うために購入する弓具などの機材一式の価格を説明されます。そこでは、「いいものを買おうと思ったら大体25万円くらいかかります」「最低でも15万円からでないと、ちゃんとした道具はそろいません」というような事を言われます。

    ショップに行かずに市民クラブのようなところを訪ねても、そこでの先輩たちに、ほぼ似たような事を言われます。それどころか、大して上手くもない「自称」上級者たちや、大きな顔をする先輩たちが自分の弓具を見せびらかし、「私は25万円」「俺は30万円」「私の矢は5万円」などと、「良い道具」と言われている機材の自慢大会が始まります。

    アーチェリー選手の育成を専門としている私たちからすると、それが何の事を言ってるのか、非常に理解に苦しみます。残念ながら、運転免許を取ったばかりの初心者が、走らせることもできないF1マシーンのコックピットに座ってニヤニヤしているような滑稽な状態にしか見えません。ショップや先輩たちが語る、最低でも15万円という「最低」ラインというのは、一体どこを指しているのでしょうか?

    私は全国大会での入賞経験もあり、これまで数多くの競技会に参加してきました。過去にはテスターを務めたり、サポートを受けた事もあります。若い頃には試合の50mで、338点を出したこともあります。国体選手やインターハイを目指す選手達を指導してきたので、選手としては17年ものブランクを空けてましたが、今年も公認記録会で70mラウンド(70m×2)を600点アップしていますし、全日本社会人ターゲットにも一般男子(壮年ではない)で出場しました。今年の70mの試合記録は315点です。今でも練習で、調子がよければ330点アップする事もあります。なので、ターゲットアーチェリーにおける機材のグレードによる本当の的中度合いを、正確に判断することができます。

    今でも何人もの選手の弓具を試してますが、予算15万円あれば全国大会で入賞できるレベルのものが手に入ります。25万円あれば、オリンピックでメダルを獲得したり、世界記録が狙えるレベルになります。しかし、最初からそのような高性能な道具を買ってはいけません。決して高いから当たるというものではありません。

    これだけは断言できるのですが、本物の上級者でないと、高額な上級モデルを扱いこなすことはできません。機材の精度や性能が高くても、扱う人間の精度がとても低いからです。そのため多くのアーチェリーメーカーでは、それぞれのレベルに見合った扱いやすい製品をラインナップしています。競技会で70mを余裕で600点出せるようになった人であれば身体能力が少しは高くなってきているので、その身体能力の高さに見合った精度の高い機材が活きるようになりますが、そうでない人であれば、機材の高性能に振り回されて上達の妨げにしかなりません。

    ショップが初心者に、「最初にこれを買っておけば大丈夫」とか、「あんな道具、よくない」というような事を話しているのは、あなたの顔が、お金にしか見えてない証拠です。高い道具を買ってもらうために懸命になってセールスしてくれるのですが、あなたの上達のことを考えた機材の選択をしてくれてません。

    矢のスピード・高い反発力・高い剛性・正確な復元力、これらを高次元でバランスさせた現代の高性能な機材は本当に素晴らしいと思います。しかしそれらは70mを、雨だろうが風だろうが関係なく、涼しい顔して330点近くを出せる人たちに必要な性能であって、300点にも満たない選手にとっては意味のない性能だということを知っておくといいでしょう。

    99パーセントの選手が、自分にとって扱いにくいにくい弓具を振り回して、それを使い続ければいつか高得点が出ると信じて練習しています。しかしどれだけ高性能な弓具を使って必死になって練習しても、思うように当たるようにはなりません。でも、それは仕方がありません。ショップのスタッフは単なる販売員や、ショップのオーナーである事が多く、プロの指導者ではないからです。「良いものを」と求めにいくと、高性能なものを勧められるのは当然ともいえます。多くの人がショップを信じて、かなりのお金をつぎ込んでるでしょうに、本当に残念な話です。

    今回の結果は、全日本アーチェリー連盟の公認競技会で行った事実です。これから初めてアーチェリー用品を買おうと思っている人が、訪れたショップで「最低でも15万以上でないと、いいものがない」と言われたら、この記事をプリントして見せてあげるといいでしょう。もしもイヤな顔をされるようであれば、そのショップに期待するのはやめて、優れた指導実績がある指導者に相談されることをお勧めします。そこでも同じような事を言われるのであれば、私たちに相談してください。

    ■さいごに

    1万円程度のアルミハンドル・1万円程度のグラスリム。これで70mのゴールドに十分当たります。というか、これで当たらないのであれば、フラッグシップモデルを買ったところで当たりませんし、高性能な機材の良さがまったくわからないまま使うことになります。

    将来、何を使っても当たるようになるのか、何を使っても当たらないのか、どちらかしかありません。将来、何を使っても当たるようになるには、まずは身体でできる事を全部やりとげてから、自分のレベルに見合った機材に少しずつステップアップしていくことが重要なのです。

    高性能な最新の弓具を使っても当たらない人は誰からも見向きもされませんが、「そんな弓具で、よくもそんなに当たるなぁ!」と、周囲を沸かせる存在になることが、超一流への最短コースになるのです。

    個別に組んだプログラムを地道にコツコツ実行していけば、誰でもそういったことができるようになります。アーチェリーなんて、本当に簡単なスポーツなんです。スポーツなので、道具ありきではありません。まずは正しい事をしっかり学んで、自分が扱いきれる性能の弓具を使って、是非とも周囲を黙らせる得点を叩き出せる存在を目指してください。そこにはきっと、痛快なアーチェリー人生が待っていますよ。