次は23インチ(ショート)鍛造ハンドル新製品 

2018.02.02 Friday

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    キネティックの生涯保証の鍛造ハンドル「スタイライズド」は大反響で、初回入荷分は完売してしまいました。メーカー在庫はありますので、順次入荷して参ります。それほど長くお待たせすることはないと思いますので、ご安心下さい。

     

    スタイライズドが出た直後に発表されたのが同じくキネティックの鍛造ハンドルで、こちらは23インチです。

     

     

    こちらの23インチハンドルは「エンバー」で、スタイライズドのショートバージョンという位置づけです。2万円程度と買いやすい価格帯ながらもスタイライズド同様のスペックを有する非常に高性能な競技用ハンドルです。

     

    トップレベルを目指すジュニアや女性、それにリーチが短くて25インチハンドルではリムのスペックを引き出せない方にとっては最高の逸品ですね。ジュニア達は大きくなるまで、これを使って世界を目指そう!

     

    先日入荷したキネティックの新製品ハンドル「スタイライズド」を使うために、セットアップと試射を行いました。

     

     

    スタイライズドはキネティックの2018年モデルで、6061アルミ合金を鍛造プレスマシンで機械的に製作した高剛性の超高性能ハンドルです。これまでアーチェリー製品にはなかったライフタイムワランティ(生涯保証)がつく高級ハンドルです。現在世界で、スタイライズドよりも優れた金属ハンドルはありません。

     

    高級と言っても、たかだか2万円台後半の買いやすい価格帯の製品です。ハンドルの様々な調整システムは従来からある機構を踏襲したものばかりで調整や操作に特殊なものはありませんが、進化している部分を随所に見ることができます。

     

     

    とにかく、この仕上げの美しさには脱帽です。値段が4-5倍の製品に比べて遜色はありません。これまで10万円超のハンドルを使い続けてきた人でも、モンクのつけようがないと思います。高級価格帯の製品こそ、おいおい、と思うようなことがいろいろあったりします。

     

    リムボルトはステンレス製で、精度の高いものです。ここ数年ものあいだ数種類のハンドルを使い分けてきましたが、どれも1本1万円程度の安いハンドルばかりでしたので、リムボルトがステンレスというだけで一気に高級感がアップしたのを感じます。リムボルトの素材の違いで、出せる得点にはまったく関係ありませんが(笑)

     

    一般的なリムボルトはボルトが十字に切られており、その中に固定用の小さなボルトを留めてリムボルトを内部からの圧力でハンドルに圧着させるタイプが多いです。そうした従来のタイプではリムボルトを調整するたびにハンドルの雌ネジが削れてアルミの削りカスが発生してしまいます。この切削屑が動きを悪くさせてしまい、発射の振動の繰り返しでも僅かに発生するので、ハンドル本体の寿命を短くしてしまいます。そのため頻繁にグリスアップなどのメンテナンスが必要になるのですが、それでもハンドル本体が削れていくことを完全に防ぐことはできません。

     

    スタイライズドのリムボルトはリムボルトに十字の刻みはなく、リムボルトの中にボルトを留めるタイプではありません。ポンド調節に合わせて任意の位置にボルトを決めたら、そのボルトの裏から平底のホーローセット(イモネジ)を押し当てて完全に固定する方式です。これならリムボルトを破損させてしまう可能性もほとんどありませんし、共回り(ともまわり※リムボルトと固定用のボルトが一緒に回ってしまうこと)を確実に防ぐことができるのがいいですね。これならオーバーホールのメンテナンスの時に、真っ黒に汚れてしまったグリスの始末に追われることもありません。作業性が高いことは素晴らしいことです。

     


    グリップはラミネートのウッドグリップが標準装備です。手根骨の形状と配列を考えた最新のグリップ形状になっています。橈骨から伝わる力を月状骨と舟状骨がグリップの面にダイレクトに伝わるように仕上がってるので、手の力を抜くことができて正しいグリップを会得している人にとっては最高です。これはアーチェリー指導における技術獲得にも大きな助けとなるので、見逃すことができません。

     

    グリップを取り外すと、シリアルナンバーがレーザー刻印されています。W&W製のハンドルは例外なくステッカーでしたので、最新の機械を導入したか、最新の機械を持っている他の金属加工メーカーが製作しているのかも知れませんね。いずれにせよ、精度も仕上がりの良さも、従来から販売されてた多くの有名ブランドのアーチェリー機材からは、ひとつ飛び出たような印象を受けます。

     

    グリップの固定用ボルト取り付け穴は、左右が非対称の場所に設置されています。それにグリップを固定するボルトは、左右で長さの異なるボルトを採用しています。グリップを装着する際に長い方のボルトがハンドル本体のナット部分を貫通して、反対側のグリップ内側に当たって固定するようになっています。そのおかげでグリップの上下・左右のガタツキを完全に抑えることができています。グリップの固定に何も工夫をしなくても良いのは素晴らしいですね。

     

     

    これは的中には直接関係ないことですが、上下のバランスは比較的整っているように思います。別に下が重くても上が重くても一般的には関係のない話ですが、上部はサイドウィンドウ部分を空間として広く確保しなければなりませんので、下が重い製品が多いです。私がこれまで使ってきた数種の安いハンドルは、もれなく下半分が重たいです(笑)スタイライズドもほんの僅かに下が重いのですが、クリッカープレートとクリッカーを装着してレストを貼らない状態で、上半分が下半分の重さに近づいた感じです。実際はスタビライザーを装着するので、これは重要度の高い話ではありません。

     

    ハンドル本体に付属品としてクリッカープレートとアーレンキー(六角レンチ)が付属します。作業用のアーレンキーを各種持っているので付属品のアーレンキーを使うことなどほとんどないのですが、どこが何mmかを知っておくために当ててみると、ミリのレンチは合うボルトと合わないボルトがありました。スタイライズドで使うアーレンキーは、クリッカープレートだけは2.0mmのミリレンチで、多くのボルトにインチレンチを使います。リムボルトは5/32インチ、リムアライメントは1/8インチ、グリップは3/32インチです。あれ、ひょっとして、ひょっとすると、スタイライズドを製造しているメーカーは・・・?

     

     

    まぁ、そんなことはどうでもイイので、セッティングを進めます。W&W製造の従来のハンドルとは僅かにジオメトリーが異なるようでしたので、新たにストリングを製作して合わせました。リムは WNS エリートフォームカーボンα 66-44 を装着してストリングハイト 8 1/2 インチに合わせるために、FF+原糸18本でストリングを製作する場合は158.85cmに製作します。リムボルトは最も締め込んだ状態で数日実射したら近いハイトの位置になりました。

     

    リムラインゲージを当ててみると、メーカー出荷状態からドンピシャでセンターが出ています。メーカーによるとハンドルの個体差はないと断言してもいいほど製品の差がないそうなので、これはイジリがいがなくて面白くありません(笑)アルミの素材の塊からCNC切削で製造するアルミハンドルよりも、こうした冷間鍛造成型では突出した剛性の高さのみならず、形状の自由度とクオリティの高さ、製品の均一性が、アルミ生成加工の中で最も優れているのだそうです。

     

    調整がニガテなユーザーにとっては製品の個体差を気にしなくてもいいので、これは有り難いですね。私は五感を研ぎ澄まして驚異の調律に仕上げるかように機材を手なずけてオイシイところを引き出すのが好きなのですが、そんな事も時代遅れだと言われるほど、機材の性能の進化が凄まじいです。

     

     

    ハンドルがハンドルの方で勝手に仕上がってる感じで、箱から出してパーツ装着しただけで射てるという状態に近いですね。機材に合わせてストリングを作りましたが、自分でストリングを作れる人にとっては大した作業ではありません。ノッキングポイントを装着して近射してみると、かなりの好感触です。アルミ鍛造ハンドルはヤマハ・W&W・SF・キネティックのヒートなど実射してきましたが、スタイライズドはさらに静かで落ち着いている感触です。従来の他のフォージドたちが荒削りに感じてしまうほどです。

     

    剛性の高いカーボンハンドルのような持て余す塊感のようではなく、とても扱いやすいです。スタビライザーのセッティングやウエイトの量を増やすなどの変更をしていないのに、まるでウエイトを増やしたかのような重厚感と安定性があります。1,180gと、ハンドル自体が重たいわけでもありません。

     

    キネティックの快進撃、本当に凄いですね。23インチハンドルを作ってくるほどの本気のブランド、最近はなかなかありませんからね。こうした買いやすい価格帯の高性能製品をみんなで使って、日本のアーチェリー界を道具自慢大会ではなく、スポーツとして健全な文化に育てていきたいものです。

     

    アーチェリーで競い合うのは機材の金額ではなく、的面で叩き出す高得点なのです。そこを忘れることなく、正しく上達していきましょう。