タブのコードバン

2018.05.10 Thursday

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    レッスン受講生でない方からも「私のタブを見てもらえませんか?」という方がいます。これは非常に好ましい傾向に思います。

     

    タブを見るだけで取りかけのみならず、肩関節の可動域・肩甲骨の位置・上腕骨の角度・ドローイングの際の橈骨と尺骨の位置関係・タブプレートの角度・体幹での引き分けができているかどうか(腕力でのドローイングになってしまってるかどうか)などなど、射手の様々な状態を知ることができます。

     

    タブの状態によっては、タブをお返しする時に「タブを清潔にしてください」と伝えることがあるのですが、決まって「どうしたらいいのですか?」と聞かれます。なぁに、簡単なことです。洗えばいいのです。

     

    まぁ、チェストガードやアームガードを洗わないばかりか、リムの水拭きやハンドルのグリップの洗浄をしない人も多いですし、大丈夫か?と思うほど汚れたストリングを使ってる人もいます。毎回靴で踏んでいるストリンガーを洗わない人もいます。フィンガースリングやボウスリングが汚れても気にならない人も多いですが、はっきり言って「不潔」です。アーチェリーはエレガントなスポーツです。清潔で美しいことを「普通」の状態にして下さい。本当にお願いです。

     

    そこで今回はコードバンタブの洗い方です。コードバンのタブは使い捨てではありません。

     

     

    先日アーチェリー用品一式を当会に寄付して下さった方がいらっしゃいました。お使いになったのだろうか?と思ってしまうほど機材の状態が良くてビックリしました。本当にありがとうございました。

     

    コードバンのタブがひとつありましたが、数ヶ月程度しか使ってないのではないかを思うほど、汚れもなくキレイなタブでした。実射しているので表皮のコードバンは使ったなりに変形してましたが、この変形は洗うことで新品同様の形状に復元することができるのです。コードバンタブの形状復元のためにも、ぜひ参考になさって下さい。

     

    キレイなタブですので汚れを落とす必要はありませんが、コードバンタブの洗い方とコードバンの形状復元のために、こちらのタブを使って洗い方を説明いたしましょう。

     

     

    それほど汚れてみえないタブでも、指先から分泌される水分・塩分・油脂が皮革に浸透しています。裏革を交換できるタブは数ヶ月に一度、裏革を新しいベロア皮革に交換するのがベストです。

     

     

    裏革を交換できない(分解できない)タブは、このようにして定期的にお湯で洗います。お湯は少し熱めのぬるま湯の中で、指先で揉むようにして洗います。こうして定期的に洗っていれば、タブはほとんど汚れることはありません。タブの皮革を固定している金属部分が腐食している(サビが生じている)人は要注意です。指先から出た汗を洗い流さないことで金属部分を腐食させているので、腐食させないためにも頻繁に洗わなければなりません。

     

    実はこの時に、コードバン皮革の革の向きがタブに対してどの角度でカットされているかを知ることができます。タブは得点を決めるパーツで、身体に触れる重要なパーツですので、クラフトマンシップが伝わるような製品であってほしいものですね。得点がそれほどでもない選手はそこまでこだわる必要はありませんが、真の上達を遂げたあかつきには、コードバンのタブは自分で作りましょう。

     

     

    タブ表皮のコードバンの形状復元のために、今回はハンドソープを使って丁寧に洗います。食器洗い用の中性洗剤や通常のせっけんでも洗うことができますが、洗剤がコードバンの皮革内部に浸透してしまいますので、完全に洗い流すのにかなりの根気が試されます。泡ハンドソープは洗浄力も高く比較的洗い流しやすい(それでも時間はかかるが)ので、コードバンの洗浄は泡ハンドソープがオススメです。

     

     

    裏革やベルトにもしも汚れがある場合は、ハンドソープを使うと洗面器の中のお湯がみるみる濁っていきます。初めて洗う時にはコードバン表皮の染料が僅かに落ちることもありますが、問題ありません。こちらのタブには汚れが見られませんので、お湯の色は透明なままでイイですね。アーチェリー選手はタブを清潔に保つべし。当会ではレッスン初期の頃に使っていただく用品類は、すべてこのようにして清潔な状態で使っていただいてます。潔癖症である必要はありませんが、不潔が平気にならないようにしてもらいたいものです。

     

     

    泡ハンドソープで洗いましたので、しつこいくらいすすぎに時間をかけます。皮革に染み込んだ界面活性剤を完全に流し出します。表皮を指で擦って微細な泡が出なくなったら、ウエスとティッシュで水気を拭き取ります。すると、このように変形していた取りかけ部分の皮革が新品の時と同じように平らな状態に開きます。

     

     

    ウエスとティッシュに水分が移らなくなったら、このような具合に皮革が平らになるように工夫して数時間放置します。

     

     

    すると、僅かなストリングの擦過痕が見られるものの、新品と同じ形状にまで復元することができます。取り掛けやフォームを修正した時などに、このようにしてタブ表皮をリフレッシュすることが大切です。まだ完全には乾いてませんので、このまま翌日まで放置して乾燥させます。

     

     

    こちらが裏革の状態です。まるでアイロンをかけたかのように見事に復元しています。乾燥した季節であれば翌日には完全に乾きます。オイルコードバンに元々浸透していた油脂がハンドソープによって完全に洗い流されてますので、乾いたタブのコードバン表皮はカサカサのゴワゴワのカッチカチです。このままでは硬すぎて、タブとして使うことはできません。

     

     

    ハンドソープでコードバンの油脂を失った分、コードバン表皮をオイルアップさせます。今回はアーユルヴェーダやマッサージオイルのベースオイルとしても使われる、太白ごま油を使います。間違っても茶色いごま油を使わないで下さい。太白ごま油は透明で、ほとんど香りがありません。マッサージオイルのベースオイルとして使う方の油です。アマニ油やホホバ油でもいいのですが高いです。こうしたオイルを調理などの用途に使わないという方は、オイルの代わりにワセリンで代用することもできます。安いからといって、キャノーラサラダ油を使うのだけはやめて下さい(笑)サラサラでべとつかない植物油を使います。エンジンオイルやチェーンオイルなどのような機械油、鉱物油などは絶対に使ってはいけません。

     

     

    油脂が完全に抜け切った状態で乾燥しているので、喉の渇きを潤すかのようにオイルが浸透していきます。裏側から浸透させたら表側全面に塗り伸ばして浸透させていきます。多く浸透させてしまっても大丈夫です。ティッシュなどでしっかり拭き取り、指先で擦っているうちに自分の指の皮膚に浸透してき、コードバンの余分がオイルは抜けていきます。自分の指先はサラサラになります。リリースで荒れた指先のメンテナンスも同時に行って下さい。

     

     

    洗って乾燥させたことでカサカサでゴワゴワでカッチカチだったコードバンでしたが、オイルアップによって、ふっくらとしてハリがあって気持ちのよいコシがある、高級で上質なコードバンの状態に復元しました。新品のタブでもここまで理想的な状態のタブは売られてません。コードバンを使っている人の多くが宝の持ち腐れ状態にあります。「半永久」とも言われるコードバンを、こうしたメンテナンスをすることで正しい性能を引き出してもらいたいものです。

     

     

    オイルアップした翌日には、このように皮革全体にオイルが浸透しています。実射の最初の1射目から、取り掛けの最適な位置にしっかりと馴染んでくれるようになります。国内で製造されたコードバンのタブは新喜皮革のコードバンが使われてることが多いので、こうして定期的にメンテナンスをすることで長きにわたって最高の状態で使い続けることができます。

     

    アーチェリーの的中は、タブが送り出したストリングが矢を的に送り届けます。最も重要なアーチェリー用品であると言っても過言ではありません。ストリングに神経を通わせ、タブ表皮とストリングの対話を指先で感じ取るためにも、タブのメンテナンスを行いましょう。

     

     

    こちらがメンテナンス終了した状態です。こうしてリフレッシュさせたコードバンは、取り掛けポイントを自由に再設定させることができます。これまでの取り掛け位置を修正したい人やフォーム修正した時、タブの洗い方を知らずに困ってた方は、こうしたメンテナンスを行い、命あるコードバン大切に使って下さい。

     

    ■これからアーチェリー用品を揃えようとお考えの皆様へ

     

    日本では高校生や大学生が自分の弓を買う時期ですが、世界中でアーチェリー用品が買われる時期でもあります。アーチェリーのメーカー各社で、ハンドルやリムのメーカー在庫が急激に減り、買いやすい価格帯の製品から順に次々と完売する傾向にあります。どうしようか迷っているうちにメーカー完売してしまうことが多いので、くれぐれもご注意下さい。