ムダに高すぎるアーチェリーケースを買わされないために

2015.12.18 Friday

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    ■道具の入れものに数万円払わされる非常識なアーチェリー業界

    アーチェリーを始めるために弓具を購入する際にアーチェリーショップで見積もりをもらうと、そこにはアーチェリーケースが記載されている事が多いです。

    アーチェリーケースは、アーチェリー用品を収納したり運搬するためのものです。専用のケースはハードケースとソフトケースがあります。飛行機で遠征を頻繁に繰り返すようなレベルの選手であれば、万が一の破損を考えてハードケースを選ぶこともあります。しかし通常は電車や車などでアーチェリー場へ行く人や、各都道府県内での競技会に参加するレベルであれば、堅牢なハードケースは必要ありません。

    アーチェリー専用のハードケースと言っても、ケース本体は樹脂製です。アルミパネルを使った本格的なものでない限り、落下や衝突などの衝撃から弓具を守ることができるほどではありません。同じ樹脂製であってもポリカーボネートのような強い素材であれば丈夫ですが、実際は柔らかいABS樹脂などですので、ケースの角を地面にぶつけただけで、カンタンに壊れてしまいます。それに樹脂製のものは使いだして数年したら、加水分解で破損することがあります。ケース本体は割れなくても、持ち手の部分が壊れてしまうこともあります。なのに3万円近くもします。ですから最近ではハードケースよりも、丈夫なナイロン製のソフトケースを選択する人が増えました。

    ■アーチェリーケースのどこが便利なものか

    弓具は安全に収納できればいいだけなので決して専用品である必要はなく、バッグでもリュックでも何でもかまいません。テニスやバドミントンのラケットを収納できるバッグなどを、アーチェリー用として流用されてる方も多いです。探せば意外に安くて流用できるものがいろいろあります。アーチェリーケースはアーチェリー専用品として作られているものが多いのですが、ハードケースに関しては、どのメーカーもサイズの異なる製品を作りません。体が小さな人も大きな人も、体格や性別関係なく、31インチの長い矢が収納できる大柄な体格の人が使うケースしか選択の余地がないのです。

    様々な交通機関を使って競技会に参加したことがある人ならすぐに思い知ることになりますが、アーチェリー用のハードケースは、とにかく取り回しが悪くて不便です。ハードケースの容量が大きすぎるのです。ケースが左右に長くて、最近のケースは幅が広いです。弓具を2セット収納するトップレベルの選手のことを考えているのかも知れませんが、一般的な選手は競技会には弓具を1セットしか持ち込むことはありません。

    容量が大きいのでハードケース本体がズッシリ重いです。アーチェリー用品1セットの重量は大したことないのに、重たいケースに収納してしまうのと、キャスターを装着するための部材が装着されているのでそれこそ重く、転がしている時はいいのですが、駅の階段などでは大変な目に遭います。転がしているときは、必ず片手がふさがります。それに人の多い駅の構内で、異常なまでに長すぎるキャーリーケースを、大人数で転がしているのは周囲にも迷惑です。

    他府県などの競技会に、チョッピリ観光を兼ねて出かけたときなどは、本当に困ります。アーチェリーケースが入るコインロッカーを探すだけでも大変です。4人でタクシーに乗ろうと思ったら、人数分のアーチェリーケースがトランクに入らないので、後部座席に座った3人は、まるで拷問でも受けているかのようにヒザの上にケースを重ねて、目的地まで早く着かないかとガマン比べをするハメになります。こんなに不便を強いられるのに、持ち運びに必要だからと言われて見積もりに書かれて、仕方なく買うことになるのです。しかしそこにはビックリするようなネダンが書かれています。アーチェリー用品のネダンの付け方は異常ですが、定価が3万円を超えるものが、少し値引きされて書かれています。総額3万円の弓矢でも50m・30mラウンドで660点を越える性能のものが手に入るというのに、ケースだけで3万円ですよ。アーチェリー業界のネダンの付け方の異常ぶりは今に始まったものではありませんが、これではサイフの中に入れるお金もないのに、ヴィトンのサイフを買わされるようなものなのです。ちなみに、高額なアーチェリー用のハードケースがこんなに売れてるのは、日本くらいなものです。売れているのではなく、売りつけられているのです。まったくもって、意味不明な日本のアーチェリー界の現状です。アーチェリーケースなんて、単なる道具箱です。ムダに高いアーチェリーケースを売りつけようとするから、日本のアーチェリー人口が増えない要因を作ってしまっているのです。それでは、外の世界に目を向けて見ましょう♪

    ■価値のある高校生のアイデア

    高校生たちにはなるべく負担にならないように、価格と性能が見合ったアーチェリー用品を提案しています。安くてそれなりというモノではなく、安くても最高に性能を発揮できる、的中性能に優れた弓具です。購入当時の金額は、ハンドル1万3500円(プランジャー・レスト付属)、リム10500円、サイト3300円、センターロッド3000円、スタンド2400円、クイーバー3700円(ベルト付属)、タブ2000円、チェストガード1400円、アームガード500円。ストリンガー600円、ストリングは私が作って全員に数本ずつタダであげました。そんなところで、ちゃんと競技会に参戦している彼らのアーチェリー用品の総額は、40,900円です。

    「そんなに安いの!?」とアチコチから問い合わせがありますが、これがアーチェリーというスポーツの本来の在り方です。私はこれでも高いと思っています。アーチェリーなんて、しょせんは弓矢です。どんなに弓や矢の性能を高めたところで、数万円のライフル銃から発射される、一発数十円の弾丸にすら的中能力では敵わないのです。7500円のハンドル、1万円のリムで、各都道府県の競技会で賞状もらって帰ってくるというレベルまでは余裕でクリアできるのです。アーチェリーを始めて1年や2年のそこらで、世界トップレベルの選手が使うような高額すぎる弓具は一切不要です。

    総額4万円のアーチェリー用品一式を、3万円もするアーチェリーケースにブチこむのは、それこそバカげています。アーチェリー用とされているものは、そのクオリティーに関わらず異常に高額なものばかりです。それはソフトケースとて、同じです。中に硬質ウレタンマットが敷き詰められているワケでもないのに、優に1万円を超えます。これがおかしな世界だと思えない人は、冷静になって他の業界に目を向けたほうがいいでしょう。



    高校生たちは、このようなバッグを探してきて、アーチェリー用品を収納してました。最初はアーチェリーケースかと思いましたが、これはライフルケースです。狩猟や狙撃に使われる実銃を運搬する時にも使われますが、サバイバルゲーム愛好家が、エアソフトガンを収納・運搬するときに便利なケースです。販売しているサイトにもよりますが、実勢販売価格は、6000円台とか7000円以内であります。



    ロングタイプは全長が115cmもあります。ライフル銃を2本収納できるタイプです。アーチェリーよりも重たいライフル銃を2セット収納する設計なので、とても丈夫に作られています。ハンドルやリムを2セット収納して、同じスペースにクイーバーまで収納しても、まだまだ余裕があります。このように仲間とケースを共有している生徒もいました。ハンドルとリムを2セット収納しているにも関わらず、外側に設けられた大型の収納スペースに、矢を収納して持ち運んでいました。すごいです。

    中には硬質な4cm厚の波型ウレタンシートが敷き詰められているので、中身を収納しなくてもケース本体がしっかりしていて、形がくずれません。アーチェリー用として販売されているソフトケースよりも質感が高くて丈夫です。実銃のライフルを2セット収納すると、銃の重量だけで5キロにもなるそうです。アーチェリーとは比べ物にならないくらいハードな用途として使われることが前提の製品なので、アーチェリー用品の収納と運搬を考えた場合は、オーバークオリティーかも知れません。でもアーチェリーケースよりもはるかに安いので、使わない手はありません。



    小さなサイズのものでも、85センチです。こちらはアサルトライフルを収納するためのケースです。同じく波型スポンジが入っていて、ハンドルとリムを1人分しか収納しないのであれば、同じスペースにアローケースを収納することができるそうです。

    外側にはこんなに大きな収納スペースがあります。彼は大型のクイーバーとサイトを収納してました。収納が大きいので着替えやタオルなど、何でも入るそうです。これひとつで競技に出場するための荷物、食事や飲み物のすべてを収納して参加できるそうです。どちらもリュックとして背負うことができるので、両手がふさがらずにフットワークが軽くて便利なのだとか。これは参考になりますね。

    ■買って使ってみる。

    私も早速購入してみました。生徒たちが使っている状況をよく見て、実際の使用感を詳しく教えてもらいました。1人で1セットのアーチェリーセット、あったとしても予備のリムを1セット同時に収納することを考えても、115センチのサイズは持て余しそうです。85センチのサイズを2つ購入しました。購入先はこちらです



    こんな大きな段ボールが2つも届きました。発注した商品のサイズを間違えたのかと思ってビックリしました。箱の容積の7割は、梱包した場所の空気です(笑)注文する場合は、自宅に大きな荷物が届くことを家族に伝えておいてください。でないと自分が留守をしている時に誰かが受け取るような場合に、ビックリさせてしまいます。箱の大きさの割りに軽いので、そのギャップにもビックリします。

    ■アーチェリー用品の収納



    弓具を収納したら、こんな感じです。立てかけたときに右側が底になるので、重量物を右側に集めます。アローケースに1ダースの矢を収納して、アローケースとセンターロッドをケースの奥に寄せます。上からセンターロッド、アローケース、リム、ハンドル、サイドロッド、ボウスタンド、リムの左側にポーチに収めたVバーとエクステンションロッドを置く、という具合です。波型ウレタンはオリジナルの向きではなく、逆向きに取り付けることでケースの底にアローケースを収納するスペースが生まれます。

    収納しているリムは68サイズです。サイドロッドの配置を変えれば、予備リムとしてもう1セット同じスペースに収納することができます。ハードケースではないので必ずしもケースの形にキッチリ合わなくても、ファスナーを締めることができます。ハードケースと同じようなサイズですが、ハードケース以上に荷物が入ります。不必要な部分があれば、ウレタンを切ったりカッターで削ったりすれば、もっといろいろ詰め込むことができます。ケース本体が軽いので、パンパンに詰め込んでもそんなに重たくなりません。



    外側の大型の収納スペースには、生徒と同じようにクイーバーを収納します。サイトのバーをここに収納してもいいですね。サイトの扱いに慎重になるのであれば、ウレタンシートがある底に収納すればいいでしょう。車に踏まれるようなことにでもならない限り、どこに収納しても大丈夫だと思います。

    横の2つのポケットには、一方にはタブやプランジャーなどの小物を収納します。もう一方には工具類、ストリングワックス、接着剤、メジャー、一部の工具類を収納します。

    ■立たないハズが立った!



    自立はしないと聞いてましたが、重量物が下になるように工夫して、底面があるアローケースを入れると安定するために、自立させることもできます。



    ただし、屋外で風が吹いたら倒れてしまいます。風が吹いたら倒れるのはハードケースも同じですが、ハードケースのように「ガシャンッ!」と大きな音をたてて倒れません。アーチェリー用品一式が入っているにも関わらず、クッション性の高い4cm厚の波型ウレタンが衝撃を見事に吸収するために、ちゃんと中身を保護して大きな音はたてません。倒れても、「ボスン」といった感じです。精密なライフル銃や、取り付けられたスコープの状態を保護する性能があるので、ガンケースはナイロン製のアーチェリー用のソフトケースよりも圧倒的に優れてますね。



    背面にはファスナーが取り付けられており、手提げバッグとして使い背負わない時には、背負う部分を収納することができます。ここには広いスペースが設けられているので、入賞して大きな賞状をもらった時には、ここに収納すればキレイに持ち帰ることができます。クリアファイルに入れた書類などを隠すようにして持ち運ぶこともできます。



    背負う部分を出した状態です。アサルトライフル2セットと弾薬類を持ち運ぶことが想定されており、実際にそのような使い方をすると総重量は10キロ近くにもなると思います。そんな用途に耐えうるように大型のショルダーパッドが装着されてるので、アーチェリーを1セット収納して背負っても、学校から帰ってきた子供のランドセルを背負うよりも軽く感じるくらいです。身体への負担が少なくなるように各所に工夫が凝らしてあるので、とても使いやすいものになっています。



    こうして並べてみると、アーチェリーケースがいかに大きなものかがわかります。最近のケースはもっと厚みがあって全体的に大きいので、実際の取り回しが大変です。ガンケースは収納・持ち運びともに楽で便利です。ハードケースは使っているうちに割れてしまいますが、このガンケースなら割れる心配はありません。汚れても洗濯機でジャブジャブ洗えます。洗って防水スプレーでも噴霧しておけば、試合が雨でも平気です。傘をさして背負って歩けばリュックサックと同じ感覚で荷物は濡れません。アーチェリーケースを転がしながら傘をさせば、両手は完全にふさがってしまいます。大きなトロフィーをもらったらリュックには入りませんよ。口にくわえて持って帰るのですか?(笑)

    ■番外編 矢の収納と最大運搬能力



    矢の最大運搬能力は3ダースです。ここに見えているアローケースは2つですが、もう1つはハンドルやリムと一緒に内部に収納しています。36本もの矢を運ぶことなどありませんが、もしも誰かのアローケースを預かったような場合などは、このようにしてケースに付属しているバンドで装着することができます。傘などの長物を装着する時も便利ですね。これを書いてて気づきましたが、バンドがもうひとつ設けてあるので、背面にもう1セットのアローケースを取り付けることができますね。そうなると4ダース48本もの矢を運搬できます。いやいや、そんなに大量の矢は必要ありません(笑) とにかく運搬能力が優れたバッグには間違いありませんね。



    もちろん、何ら問題なく背負うことができます。自立しないはずでしたが、ここまでやると安定感が出てきました(笑)

    これらのアローケースは、ダイソーで購入した1本300円のものです。以前は1本200円で売られてましたが、今では値上がりして1本300円です。それでも安いです。中に穴をあけたスポンジを入れたら、アローケースになります。こうして自分で用意すれば、1本400円もしません。

    今回アーチェリーケースとして仕入れたガンケースは、「訳あり商品」というのを探して購入しました。キズものや、微妙な色ムラなどがあって通常価格で販売できないもののようです。これらはどちらも4,980円でした。これは送料込みの価格です。2セット購入して1万円でお釣りがきました。クレジットカード払いなので、手数料も振込料金もかかりません。

    通常はアローケースは1本あれば十分ですので、ガンケースとアローケースをそれぞれ2セット用意しても、合計金額は10,660円です。1セットあたりの金額は5,330円です。安いです。というか、本当はこれが普通なのだと思います。アーチェリーの世界に長くいると、モノのネダンの感覚が狂ってしまいそうです。アーチェリーの常識、世界の非常識(笑)



    上部にはカードケースが付属しています。しかしIC乗車券や定期券、クレジットカードや運転免許証などのような大事なカードは入れないでください。今回は撮影のために全日本アーチェリー連盟の会員証を入れてますが、会員証を紛失したら困るので、ここには前年度の会員証を入れておくのがいいかも知れませんね。アーチェリー用のハードケースに、自分の名前を記している人はほとんどいません。ケースのメーカーは主だったところは2社で、みんな似たようなカラーを選んでいるので、中を開けてみないと誰のケースかわからなくなることもあるほどです。しかしこのようなカードケースがあれば、自分の名刺なりネームプレートなりを入れることで、荷物が迷子になる心配もありません。

    ケースの目的は、アーチェリー用品の保護と収納です。基本的には地面に置くものなので、美観を気にする必要はまったくありません。なので訳あり商品のB品を購入しましたが、別に破れているワケでもなく、使用において問題となるようなものは感じません。気にする人はB品ではなく、ちゃんとした製品を購入すればいいと思いますが、アーチェリー用品なんて使えば使うだけキズが増えていく性質の機材なので、あんまり神経質になりすぎないでくださいね♪

    明日からは、けいはんなアーチェリーの合宿です。2日目はスポーツ整形のドクターによる、メディカルチェックの診察があります。お金をかけなければならないのは、道具じゃなくて、自分の身体です。このようにして、誰もが高度なスポーツ医療チームと一体となったスポーツ指導を受けることができるのが普通という状態を作り上げていきたいと考えています。
     

    本当の事をダレも知らない 激安グラスリムの的中性能

    2015.12.15 Tuesday

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      ■リムのお話

      今回は、問い合わせフォームで質問の多い、リムについてです。質問の多いのは2点です。ウッドコアがいいか、それともフォームコアがいいかという点。それにリムを買い替えようと思うが、どんなカーボンリムがいいのかという点の2つに集約されます。

      そんな質問自体が不思議です。カーボンという素材がアーチェリーで使われるようになるまで、選手は何点を出していたかを知らないのでしょうね。そもそもリムがカーボンでなければならない人って、どんな人なのでしょうか。そういうときは決まって逆に質問を投げかけます。「これまでお使いになられてたリムに、どういった不満があって買換えを検討されてるのですか?これまでお使いのリムで、何mで何点がでましたか?それが実質ポンドの弱さではなく、リムの性能が不足していると思われてることで、どんな状況でどんな不具合が発生していて、そのせいで的中にどんな偏差が見られるのか、そのポイントを具体的に教えてください」と。

      そうすると、ほぼ間違いなく、その質問に対するまともな回答が返ってきません。とらえどころの無い、抽象的なものばかりです。どう考えてもリムの性能が大幅に不足しているのが原因で高得点が出せないのではなく、次に新しいリムを買い替えることをまず決めていて、自分にとって何を購入したら良いかが判断できないために、不思議な質問を投げかけてきます。

      ■初心者へのセールストークは詐欺も同じと思うべし

      リムは1万円にも満たない初心者用のものから、買い求めやすい中級者用、それに10万円を越える上級者用のものまで、様々な価格の製品があります。アローシャフトと同じで、自分で何を選んだらよいかわかりません。本当の上級者以外は自分で使って、その性能が自分に出せる得点においてどのような影響を及ぼすのかを、確かめる術もありません。

      ですからアーチェリーショップに聞きに行くのですが、「何がいいですか?」と聞くと、ショップのいいカモです。先日もあるショップの見積もりを元に相談を受けましたが、初心者が最初に購入するグレードとして有り得ない製品が記されてました。そんな相談ばかりです。

      ショップでは、そのリムに使われている難しそうな名前の素材を次から次へと並びたてられて、宇宙航空技術からのフィードバックで、なんちゃらカーボンを使って、ネジレ剛性の高さ、高反発力など、いかにも凄そうな高性能さをとことんアピールされます。しかも、さもそれを使わないと上手くなれないようなイメージを刷り込まれてしまうので、何も知らない子羊たちは、まるで催眠術にでもかかったかのようにフラフラと大金を差し出すことになります。そう、ショップに行くと、高い製品を買わなければならない仕組みになっているところが多いです。

      それに味をしめたショップは、他に販路としての競争相手が少ないことをイイことに、初心者や中級者に対して平気で上級者モデルを売りつけようとするところが多いです。平均客単価を25万円と設定して、15万円の下限値を設定します。上限はありません。欲しがれば高校生だろうが大学生だろうが、35万にも40万にも跳ね上がります。裕福そうだと思われたら「どうせだったら」と言われてビックリするような高額なモデルを勧められます。それが上級者と呼ばれる存在になった時の買い物であれば真価を発揮することができますが、そこに到底及ばないレベルの選手が使っても、的の方に向かって矢を飛ばすという行為にしか使うことができず、決して高得点を叩き出すことはできません。機材にお金を払って得点を得ることができるのであれば、使用機材にふんだんにお金をつぎ込んだ者が勝者となるハズですが、そんな事がないのは誰もが知っているでしょう。

      どんな世界でも、底辺モデルや普及モデルという廉価で平均的な性能を有する製品があるものです。しかしショップの多くでは、その肝心な普及モデルを展示・在庫すらしません。中には欲しいと言っても仕入れてもらえず、高価なグレードを押し切られたという人もいます。高額で高性能な製品のことはやたら詳しいですが、中間グレード以下になると、仕入れたこともない、使ったこともない、製品情報について知らない、どこを調べてもわからないという、とてもプロショップとは呼べないお粗末加減です。ショップやショップのスタッフを職業とする前に、プロとかプロフェッショナルという言葉の意味を、ぜひ調べておいてもらいたいものです。

      「将来的に70mを射つために」などと言われて最初から高額なリムや、ACEやX10などの高額なカーボン矢を勧められますが、それこそバカげています。アーチェリーを始めて1年以内に70mを射たせるようなことは、よほど特殊な事情でもない限り、まずあり得ません。早く距離を射たせてしまうと、かなり高い確率で身体を壊します。浮き上がった肩のままで、できるだけ上方に弓を掲げて射つ動作を繰り返すことになるからです。ですから本当は、1年かけて30mで正確に当てることができるようになればいいのです。小学校中学年の子供であれば、引きの弱いリムからじっくりとステップアップを果たしていき、実質20ポンドにも満たない弱いグラスリムを使って、30mでかなり正確に当てるようになりますよ。アーチェリーを始めたばかりの初心者に、最初に買うリムに何ポンドの高性能リムを売りつけようとするのか。まったくもって意味不明です。

      購入するユーザーもユーザーです。初心者や中級者のあなたは、競技団体の誰もが認めるような、上級者ではないのです。本当に最初から上級者グレードを使うべきというスポーツであれば、どのメーカーも中級グレードや、初心者グレードを製造することなく、ワンメイクで済むはずなのです。よくよく考えてみるといいのです。これから居合を始めたいという初心者に、名刀ムラマサを売りつけるようなものなのです。刀に触ったこともないような人に国宝級の刀をブンブン振らせようとするのです。竹刀の持ち方もままならい初心者に、何が本身の刀なものですか。アーチェリーと何が違いますか?30mの距離から赤を射ってしまうレベルの人に、卓越した繊細な扱いを必要とする異常なまでに高価な上級者モデルの性能は必要ありません。そんな事よりも先に、やらなければならない事がたくさんあるのです。

      どんな機材にも共通している事項ですが、低いグレードの機材のそれぞれのポテンシャルを引き出すことができなければ、中級グレードの性能の高さは扱い切れません。ましてや上級グレードの性能なんて、扱えないどころか、感じることすらできません。それを使って製品の設計上設定している得点を出せるどころか、大して当てることもできません。アーチェリーは購入した弓具の総額が得点ポイントにはなりません。発射した矢の的中の合計得点を競うスポーツです。何を使っても正確に当たっていればいいのですが、聞いてたセールストークが自分で発揮できず得点が沈んでしまっているのであれば、所有していることに対しての自己満足すら与えてもらえず、費用対効果が最低で残酷な結果しかもたらされることはないのです。

      ■使ったこともないのに評価を下す人が多すぎる

      先にも書きましたが、ほとんどのショップは廉価グレードの製品評価を行なったことがありません。使ったことがないとか仕入れたことがないという事実を、正直に言ってくれるショップは、まだマシなほうです。

      中には仕入れて使ったことがあるショップもあるでしょう。その場合、取り扱いラインナップに含まない理由はいろいろありますが、それについてを論じるとキリがないので、普及グレードのリムがどんなものなのか、作りが良くないのか、とても使えるシロモノではないのか、カーボンリムじゃなくてグラスリムだったらどうなのかを、安いリムを仕入れて実際に使ってみます。



      今回仕入れたリムは、SF社のプレミアムです。これはアクシオムプラスの上位機種として、1万1500円で販売されています。ショップによってはこのプレミアムよりも、アクシオムプラスに高い値づけがされてて逆転しているところもあるようです。まぁ、どちらにせよ、安い事には変わりません。アクシオムプラスの上位機種にあたるウッドコアのグラスリムです。アーチェリーをしている人が言葉の魔法にかかりやすい、カーボン素材は使われていません(笑) これを選んだ理由は3つです。これまで私を含めて、私たちのレッスンで多くの人が使ってきて評価の高いSF製品であること。SF社のリムはW&W社が製造していること。メーカーでは昨年からラインナップに乗せていたにも関わらず、日本では代理店もショップも仕入れて販売する姿勢が感じられず、日本以外での評価が高いにも関わらず国内での販売ルートが閉ざされてるも同然の扱いだったことです。

      みなさん、現代のグラスリムを、本気で使いこんだことがありますか? というか最近は、そんなに安いものをショップが売りたがらない傾向が顕著ですから、射つどころか、目にする機会も少ないかも知れませんね。私達の指導組織、けいはんなアーチェリーでは、リムの弾発にグラスファイバーを用いたリムを、これまで3種類使ってきました。ローランのプラスチックハンドルに使用するグラスリム、PSEのサミット、SFのアクシオムプラスです。PSEとSFのリムはW&WのOEM製品です。後者2つは機材としての性能が安定していて、よほど誤った使い方をしないかぎり壊れません。

      アクシオムプラスは単一構造のウッドコアですが、それを感じさせないほどマイルドです。弱いリムから強いリムまで製品のクオリティーが均一で、発射を繰り返すことでの通常使用でネジレたり割れたりすることはありませんでした。不特定多数の受講生にステップアップ期間中のレンタルとして長期間貸し出してますが、トラブルを抱えて戻ってきたことがありませんでした。70mで300点が普通に出せる性能があります。これらを使って受講生の皆さんの前でデモンストレーションを行なうこともありますが、扱いやすくてよく当たります。初心者が最初に購入するリムとしてはピッタリです。PSEのサミットは68サイズのみの設定で販売価格は9500円、66の人はSFのアクシオムプラスで10500円。今回仕入れたプレミアムは11500円どちらもネダンの差は誤差みたいなもんです。



      SFとPSEはどちらも同じ構造ですので、今回はSF同士で比較してみます。右側がアクシオムプラス、左側が今回仕入れたプレミアムです。どちらもウッドコアのグラスリムですが、アクシオムのウッドコアが単一構造(1枚の板)に対して、プレミアムは上位機種と同じように、バック側とフェイス側からなる2重構造のウッドコアで構成されています。どちらの方が的中率が高いかとか、初心者や中級者の頃には関係がありませんので、本当に上手くなるまではそんな細かいことを気にしなくても大丈夫です。



      上がアクシオムプラス、下がプレミアムです。プレミアムは確かに上位機種のリムと構造はそっくりです。フェイス側とバック側からウッドコアが別々に分かれているのが見えます。名前通りにプレミアムなのかも知れませんが、プレミアムという割には値段の差がちょっとしかないので、見た目だけでは何も判断できませんね。



      こちらも上がアクシオムプラス、下がプレミアムです。2枚のウッドコアは母材から先のチップにかけては重ねて接着している構造です。カーボンを使わずにグラスファイバーを使っているというだけの違いにしか見えません。まだ新しいのでリムをバラバラに分解して中を見るのはもったいないので、しばらくは大切に使うことにします。



      今回仕入れたリムは2セットです。68-38(66-40)と66-28(64-30)です。23インチハンドルに装着すると66になりますので、66での表示が40ポンドのリムを使います。私の矢を装着して強さを計測してみると、実質35ポンドでした。現役選手の頃に比べたら、実質11ポンドのダウンです。私にしては物足りないくらい弱く感じますが、別に90mで高得点を出そうとしているワケでもありませんので、70m以内の距離であれば問題なく競技で戦うことができる強さです。

      ■実際に射ってみる

      この日は高校生のアーチェリー指導でした。

      プレミアムを実射するために持ち込んだアーチェリーは、防具類やクイーバーなど、すべての用品類の総額が45,200円の激安セットです(笑) この学校のクラブの備品として置いてあるのと同じ7500円のハンドル、5点(センター・サイド2本・エクステンション・Vバー)で1万円もしない初心者用のスタビライザー、1000円の安物プランジャー、3000円の競技用サイト、ほとんどが初心者用や練習用として分類されているような安い機材ばかりです。

      矢は、これまた学校の備品として生徒達が練習に使っているのと同じ、6本で3000円もしない激安カーボン矢のインスパイアです。インスパイアには精度の表記すらされてません。ちなみにタブは、1枚50円のハギレでつくった牛革です。これらを使って18mのデモンストレーションです。



      自分がミスって赤を射つこともありますが、それは自分の射の大きな誤差なのであって、自分の射の誤差を機材の精度の高さが得点をカバーすることなどありません。安いグラスのリムを使いましたが、機材のスペックのせいで黄色を外してしまうことなど、一度たりとてありません。ショップが扱いたがらないような1万1500円の安いリム、今となっては日本では1社しか扱ってない7500円のアルミハンドル、6本で3千円もしない激安カーボン矢、これらでインドア18m競技でゴールドバッジを取得できる得点が、普通に出ます。これだけの的中精度を有する弓具に、いったいどんな不満があるというのか? 製品のポテンシャルを発揮できないから当たらないだけでしょう。扱い切れない高額すぎる高性能な製品を欲しくなる気持ちはわからなくもないが、レベルに見合ったものを使わない人がレベルアップするワケないのです。普通列車がまともに運転できない運転手が、新幹線を正確に運転できるワケないのです。セスナの操縦もままならないのに、何が最高速度マッハ3超えの戦闘機ですか。初心者や中級者には、70mで700点を目指すような高性能な弓具を使うことが、おかしいと思えないことがおかしい。それを売りつける人や、積極的に勧める人に関しては、完全に狂ってますよ。

      自分が上達するために必要な「いい弓具」とは、反応がマイルドで、繊細なタッチは必要ない、扱いやすい弓具です。製品単体の性能の高さが必要になるのは、射手の性能が弓具を上回った瞬間からです。こんな1万円ちょっとの安いグラスのリムでも、ターゲットアーチェリー用としてのラインナップの製品であれば、18mであればピンポン玉、30mであればミカンのサイズに、すべての矢がグルーピングするという、驚異の的中性能を有しているのがわかります。それが自分で正しく実感することができないまま上位機種を使うことが、どれほど意味のない事かを知っておいて下さい。

      グラスリムじゃなくてカーボンリムを使ったら、この10・10・9が、10・10・10になりましたかね?そんなワケないでしょう。自分が正確に発射させることができるなら、弓なんて何を使ってもソコソコ当たります♪ 何を使っても面白いように当たる人になるか、何を使っても大して当たらない人になってしまうかの、どちらかしかないのです。

      最初は弓具にお金をかけるのではなくて、正確に発射させることができるように、自分の身体に投資してください。それさえ正しくできていれば、こんなに安い初心者用の弓具を使っていても、見ている周囲の全員が黙り込んでしまうほど、的を正確に射抜くことができるようになるのです。

      ほとんどの人が上手くなろうとして、できないことをやろうとしている人が多いです。しかしその実は、できることをやろうとしてない人ばかりです。アーチェリーは弓具が勝手に当ててくれるのではありません。それを扱うのは自分自身の身体なのです。身体を正しく使えてないから弓具が使えないのです。扱い切れない弓具を振り回しているから、自分の思い通りに自分の身体を使えるようにならないのです。アーチェリーは、自分が競技で出すことができる得点という数字がすべてです。本人がどれだけ頑張ったとか、運が良かった悪かったとか、思い通りにできたとかできなかったとか、関係ないのです。趣味やコレクターの人は別ですが、選手であるならば自分が叩き出した得点で順位が決まり、その結果でしか評価されません。ならば、どんな状況下に置かれても安定して得点を出せる射を身につけるしかないのです。自分の体力と技術が未熟なことを直視することに耐えかねて逃げ出して、自分が及ばないレベルの機材を使って当たるようなものではないのです。

      弓具には様々なグレードの製品があります。性能の差はあるにはありますが、もはや人間が追求できる性能の高さをはるかに超えたレベルの高いものになっています。しかも製品ごとの性能の差異は、多くの人が思い込んでいるような使い比べたときに得点で大きく異なる結果にはなりません。ですから多くの人にとっては、世界で戦うトップレベルの選手が使っているグレードを使うことなど無謀であり、お金のムダづかいであり、何の意味もありません。そもそも現代の弓具はウッドコアのグラスリムであってもかなり進化を遂げていて、こうして実際に使っていても問題なく競技に使える的中性能があることがわかります。エリートとかプレミアムという名称が付けられている意味もわかります。

      ですから、ここは消費者として賢くなるべきなのです。総額5万円にも満たない弓具で、全国大会を目指せるような高得点を出すことができるのです。安くても性能に何ら問題はなく、これで十分すぎるほど当たります。これで当てることができないのであれば、これ以上の弓具を使っても当たりません。ちゃんと当たる弓具は、ビックリするくらい安くて揃います。これらの製品価格差を、自分が出すことができる得点と照らし合わせて、自分の射の質を高めるための練習に使うことができる製品を選んで、ちゃんと当てることができる楽しいアーチェリーライフを過ごしてください。アーチェリーはスポーツなのです。まずは自分の身体に投資しない事には、どんなに弓具にお金をつぎ込んでもムダ金にしかならない事が理解できなければ、おかしな金持ち集団の悪趣味な道楽に成り下がってしまうのです。 あなたの周囲の人々に、アーチェリーというスポーツがどう思われてしまうかは、あなたのアーチェリーへの取り組みかたがどのようなものであるかで決定的になります。あなたがアーチェリーをやっていて、自分の周囲の人々をアーチェリーの世界に引き込むことができないのは、その取り組みが一般スポーツからかけ離れたものであり、魅力のある取り組みだと思われないものになってるからなのかも知れません。

      コンディショニングの重要性 正しい力の向きと重心移動の計測

      2015.12.11 Friday

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        ■スポーツ医療チームによるコンディショニング

        9日のアーチェリーレッスンには、3名のスポーツ理学療法士の先生にお越しいただいて、全身のコンディションのチェックと、パフォーマンスアップのためのメンテナンスを行ないました。毎月行なっていますが、平日のレッスンに熱心に参加されてる受講生の方々のためのコンディショニングです。

        レッスンを受講されてる皆さんは、春からかなりパフォーマンスが上がってきてますね。気温が低下すると誰もが筋肉の動きが悪くなりますので、このようにして身体の状態を常にチェックしておかなければなりません。

        寒い季節になると、誰もが各部の動きに固さが見られるようになります。私たちのレッスンでスポーツ医療チームと一緒になって作り上げた優れた筋肉は、筋肉自体が素晴らしい柔軟性を保っています。しかし筋肉自体の柔軟性を維持していたとしても、気温が低下することで運動に適した筋肉の温度は低下してしまい、腱や筋肉を覆う筋膜が張るようになり、それが原因で動きの低下を招き、パフォーマンスが低下します。気温の低い屋外でアーチェリーを行なうと、筋肉の温度が下がってパフォーマンスが上がらない状態で腱や筋肉を無理に動かすことになります。気温の低い場所では、実射量を増やせば増やすほど身体の状態は悪化していくということを、しっかりと覚えておいてください。

        ですから春に向けてパフォーマンスを上げるためには、オフシーズンを設定して身体を作り上げることが大切です。冬の間は体育館などでインドアの競技がありますが、それに向けて寒い屋外でひたすら18mの実射練習を行ってしまうと、せっかく作ってきた身体は台無しです。いくら体育館の中で競技が行なわれるといっても、寒くて震え上がるような会場での競技への参加は、よほどのトップレベルの選手でもなければ見送るべきです。

        レベルの高い戦いができる選手であれば好きにすればいいと思いますが、この時季に本来行なわなければならないのは、実射よりもランニングなどの有酸素運動での心肺機能の向上と、静的ストレッチ・動的ストレッチで全身の柔軟性を高めておくことが大切です。ほとんどの場合は、筋細胞を肥大させるような、パワーアップに向けての筋トレは必要なく、インナーマッスルの筋持久力を高めるトレーニングが必要です。

        他でアーチェリーを始めた人に関しては、骨格のポジションを正しい位置に誘導するためのリハビリと、姿勢や歩行のトレーニングが大変だったりします。それぞれの身体の状態を調べて、筋力が強すぎてバランスが悪い部分は筋肉を落とし、弱すぎて強化が必要な部分は強化をします。動きが悪い部分に関しては、動きの修正から入ります。これらが揃った状態になって、はじめて射に関する基礎をレクチャーすることができるようになります。多くの場合は何もせずにいきなり弓を引かされてしまうので、良くない身体の状態から取り組むことになるので、基礎をマスターすることができなくなってしまうのです。ほとんどの人にとっては、冬の間は実射どころではないのです。

        京都の場合は暖かい競技会場が多いので、たくさん着こんで会場入りすると汗をかくこともあります。冬に競技をするにはかなり恵まれてる環境だと思いますが、他では、話を聞いただけでも寒気がするほどの、寒い会場もあるそうですね。

        何度かインドアの競技に参加したことがあればわかると思いますが、なかには冷蔵庫のように寒い会場もあるそうですね。基本的に体育館の中は暖房施設がなくても暖かい会場が多いです。できることなら寒すぎる会場での競技に参加することは避けて、なるべく暖かい会場での競技会に参加してください。もしも寒すぎる会場でしか参加できないのであれば、筋温を高めるウォームアップオイルなどを全身に塗って保温対策をしてください。多くの商品はカプサイシンが入っていて、保温効果の高いものが売られています。いちど身体に故障を抱えてしまうと、それを治すだけで相当の期間をムダにしてしまいます。自分の身体を守るために取るべき行動を、しっかり考えてスポーツに取り組んでください。

        コンディショニングを行なわずに低温下でスポーツを行なうと、筋肉が本来のパフォーマンスを発揮できないばかりではなく、痛みをともなう故障を抱えてしまいます。筋肉の動きが最も発揮される筋温は38度前後です。常に筋肉を動かし続けて身体が温まるようなマラソンなどの有酸素運動と違ってアーチェリーは、自分がほとんど動かない状態でのスポーツです。歩く距離は70mラウンドでも2.5キロも歩きません。18mのインドア競技ですと、会場内で600mも歩きません(笑) 結構歩いてるように思い込んでる人が多いですが、ものすごく運動量の少ないスポーツです。どれだけ射っても冬は身体が温まりませんし、往復の距離が短いので、矢取りに走ったくらいでは筋肉の温度は上がりません。入念にウォーミングアップを行なったとしても、その場で5分もすれば筋温は完全に低下してしまい、パフォーマンスの上がらない状態での繰り返し動作で筋肉と関節に負担をかけ続けてしまうのです。

        それに99パーセントのアーチェリー選手は、冬に実射をしたあとに、寒いからといって酷使した肩や手首をアイシングすることもないという、アスリートとして最低限の常識のなさをさらしています。誰からどう学んだらそうなってしまうのか知りませんが、パフォーマンスの上がらない冷えた筋肉と関節をギコギコ酷使しきったあとに、炎症を起こして熱を持っている身体を暖めるために、運動後にたくさん着こんで、暖かい場所に逃げ込みます。そして熱いシャワーを浴びるか湯船に肩まで浸かるのです。そして風呂上りにビールでも飲んで汗をかいているのでしょう。そんなことをしてるから身体を壊します。肩が痛いという選手の多くが、ムチャクチャな生活パターンを送っています。アスリートではなく、競技会には参加しない趣味の人でも、どんなに寒くても冷たくても、肩や手首は必ずアイシングをしてください。お風呂に入るときには、絶対に肩を温めてはいけません。冷たい水でシャワーを浴びせるか、入浴直後にアイシングを行なってください。

        冬季の練習は、春からパフォーマンスを発揮させるために、入念な計画が必要です。これまで実射を続けていてダメだったのですから、身体にとって条件の悪い冬に実射を繰り返してしまうと、ダメな身体をどんどんダメにしてしまいます。ストレッチも筋トレも。我流でテキトーに行なっていたのでは効果はまったく望めません。トレーニングはマネ事などではなく、骨格と筋肉の専門家からの指導を受けてスポーツに活かさなければ、実射を繰り返すことで、わざわざ身体を壊すために酷使しているに過ぎません。

        冬になると、肩が痛い、手首が痛い、腰が痛い、膝が痛いなど、あらゆる痛みの相談のメールが舞い込みますが、故障を招くような練習を行なってきた事に対しての反省もなく、対処法のみを聞いてくる部外者による問い合わせの多さには呆れてしまいます。故障が進行してきたから痛みが生じているのです。関節に痛みが出てくるのは、特定の部分に無理をさせてきたからに他なりません。痛みを感じてからの対処では遅すぎます。

        そのようにならないためにも、ひとりひとりが指導の専門家から正しい身体の使いかたと、コンディショニングの指導を受けなければなりません。ですから私たちのレッスンでは、本人の申告の有無は別にして、スポーツ医療のエキスパートが客観的に身体の状態をチェックして、故障を未然に防ぐ取り組みを行っています。毎月のようにスポーツ理学療法士の先生方にチェックをしてもらいますが、その上で今月はスポーツ整形のドクターによるメディカルチェックの診察を行います。このようにして、私たちのところでは安心してスポーツを楽しむ事ができてイイですね。

        ■加速度センサーを用いた身体の状態の測定

        アナログだろうが、ハイテクだろうが、関係ありません。世界で最も優れたものを取り入れて指導に活かすのが指導者の仕事です。選手の射を見た目だけでしか判断できない指導者ばかりですが、外観上での指摘なら、べつに指導者ではなくても誰でもできます。それこそ自分自身を録画でもすればいいのです。

        しかし、そんなことで何かがかわかると思ったら大間違いです。身体の中で発生させてしまっている各所からの力の向きがどのように働いているか、なぜそのような動きになってしまっているか、身体に無数にある筋肉のうち、どこが作用してそうなっているかは、画像やスーパースロー映像では判断できません。筋電計は、筋肉が作用しているかどうかしかわかりません。それらの画像や映像からでは、起きている事象を、見えている範囲で動いたものしかわかりません。

        しかし加速度センサーを使えば、1000分の1秒単位での動揺を記録することができるので、リハビリとトレーニングの指標を設定することが容易になります。今回はスポーツ医療チームと一緒になって、加速度センサーと定点カメラからの映像を組み合わせて複合的にデータを取りました。この日は加速度センサーを6セット準備して、シューターの頭・背中(首の付け根)・腕・腰・両ヒザに装着して、発射の際に自分が何を行なっているのか、1000分の1秒単位で計測します。しかもその各部の動揺によって毎回の射がどこに的中したかを撮影して、エイミングの正確性と身体の動きの正確性の両方を検証して正確な射を導きます。



        加速度センサーを使うと、身体の各部それぞれが、360度どの方向に動いているかがわかります。筋放電が止まった瞬間のサイレントピリオドや、そのサイレントピリオドの瞬間から、矢が弓から離れていくまでの間に、自分の身体の中で発生させている力の向きがどのように働いているかが丸わかりになります。というか、サイレントピリオドを発生させることができているか(笑)、サイレントピリオド発生時に「ゾーン」状態で射の動作が正確に行なえているかどうか、クリッカーの音を耳で捉えて脳がリリースの指令を出した瞬間に、その反射でどの筋肉が作用して身体を動かしてしまっているか、速筋の緩みによるリリースの最中に、遅筋で正確に骨格を支えることができているかを知ることができます。

        これらは筋電計やスーパースローモーション映像では、ほとんど知ることができません。筋電計ではインナーマッスルの遅筋の放電を調べることが難しいからです。映像や画像では見えている部分しか知ることができませんが、加速度センサーであれば、装着している部分の動きがすべて数値になるので、発射の最中の重心の移動の方向と距離や、筋肉や骨格の動きによる各部の移動がすべて把握できます。



        しかも、矢を保持している時に動いてしまっているか、リリースの最中に動いてしまっているのか、足首が動いているのか腰が動いているのか、身体のどこが弱くてそうなってしまうのか、どこが強すぎてそうなってしまうのか、どこに力が入ってしまっているのか、射の動作時に身体のどこが条件反射的に動いてしまっているのか、そうならないためにどこの部分の可動域を広げるか、どこにどんなリハビリやトレーニングをしてくかを、スポーツ理学療法士の先生や、これらに関わる専門家の先生と一緒になって計画することができるのです。

        今回はイジワルなことに、2回に分けて計測しました。1回目は的紙を貼ってない巻藁を近射します。2回目は少し離れた距離に小さな的を貼って、中心を射抜くためにしっかり狙ってもらいます。巻藁を射っても刺さる音がしないので、発射の際の手ごたえのようなものがなく、スムーズなデータが取れます。しかし的を射てば、矢が畳に刺さる音による身体の反射までも加速度センサーが拾います。サイトピンを狙って的の中心を射抜こうとすると、身体の各所に力みがはいります。このようにして自分の身体が実際に何を行なっているかを調べなければ、意味のない練習を繰り返すことになります。

        それに、こうして狙って射つときと狙わないで射に集中しているときの身体の変化を調べることで、練習ではよく当たるのに、大きな試合になったら当たらない(笑)。 近射ではできるのに的を狙うとできない。ターゲットパニックに陥る原因までも調べることができます。これらを検証することで、本番でパフォーマンスを発揮できない原因を探ることができますし、スランプに陥った選手を救うことができるのです。

        緊張しているときに身体のなかで何がおきてしまっているか、身体のどこの筋肉がどのように異常に緊張して本番で自分のポテンシャルを発揮できないのかが判断できますので、何をしたらそうなってしまわないかが分かります。その対応を初心者のうちから行なうことで、プレッシャーに強い選手に育つことができるのです。

        優れた的中は、気合いや精神力、集中力などとは、ちょっと別のところにあります。本番で真価を発揮できないのは、根性がないからではありません。スポーツメンタルトレーニングは大変重要なので、それらの話題はまた別の機会に紹介します。まずはそれ以前に大切な、正しい身体の使い方を行なうためのトレーニングを行ないます。

        ■測定開始!

        私も含めて、それぞれが加速度センサーを装着して実射時のデータを測定しました。春にも3箇所を計測しただけでも、かなりのデータを測定できましたが、今回は頭部からヒザまでの6箇所にセンサーを取り付けての実射です。リリースする右腕にも装着してますので、取り掛けている指先からストリングを離す時の軌跡がすべて計測されます。両方のヒザに装着してますので、フルドロー状態から発射されるまでのあいだに、足裏、くるぶし、ヒザをどのように動かして身体を安定させているかがわかります。

        腰に装着したセンサーでは、重心位置の推移がわかります。その推移がヒザに装着したセンサーの情報から、下半身のどこを動かして重心が移動しているのかもわかります。これらは何射しても、ほとんど同じ動きになっていることがわかります。これらの自分の身体のなかで行なわれている動きが、射に対する条件反射によるもので、自分で自分の動きがまったくわからないことから、これらを計測してウィークポイントをひとつずつ消去していくことが大切です。そうすることではじめて、射のすべてを自分の支配下におくことができるようになります。それができるようになれば、クリッカーの音を耳にしてから指先からストリングが離れて弓から矢が離れていくまでの間は、完全なる「ゾーン」状態で、スローモーションで射をこなしているような射ができるようになります。



        この腕の計測の結果に落胆する選手がほとんどで、ストリングが身体から離れたあとになって、しばらくしてからわざわざスライディングリリースの動作に入るという、身体の中で行なわれていた力の向きを完全に無視した、フォロースルーを行なうためだけのまったく意味のない発射後の2系統の無駄動作をしていることが、全部バレてしまうからです。上級者になりきれないほとんどの選手が、これをやってしまっています。フォロースルーを美しく見せるために、身体の中での力の向きを崩す予備動作を発射の瞬間に行なってしまっている選手も多いです。



        どれだけ練習しても上級者になれない理由は、単に射を繰り返しているだけで、自分の射を客観的に理解できておらず、身体のなかで発生させている力の向きのコントロールができないからです。しかし最初から正しい骨格のポジションと、骨格を誘導するための正しい筋肉の使い方を学べば、誰でも上手くなります。アーチェリーの射の正確性に関するものはすべて解析され尽くしているので、今では難しいものなど何もありません。唯一言えることは、ひたすら実射を繰り返しているだけで上手くなれる人は、1000人に1人しかいないという事実です。

        アーチェリーで競技をしている人は、みんな頑張って練習をしてると思っています。しかしその練習がムダになるかどうかは、その練習の質で決まります。質が高いものを獲得して、それをマスターしたときに量を求め、さらなる正確性を高めていくものなのです。質の低いものをどれだけ練習量を増やしても、時間の無駄づかいにしかなりませんからね。

        これまでスポーツ理学療法士の先生方と一緒になって身体を作ってきましたので、皆さん骨格のポジションと筋肉の使いかたが素晴らしいです。とても初心者とは思えないフォームですね。



        引きの弱い弓を使っているうちに、これらの身体の使い方を正しくマスターして、身体の各部を自在にコントロールできるようにレッスンを行ないます。



        センサーを装着して全員が見守るなかで計測してますし、動画と的中位置の把握のために撮影を行なってますので、緊張状態の良いデータを取ることができます。

        この日だけでかなりのことがわかりましたが、1000分の1秒単位の発射の瞬間のデータについては、スポーツ理学療法士のなかでの測定の専門家の先生と後日解析して、ひとりひとりの指導に活かします。

        加速度センサーから得られたデータの解析が今月の合宿までに間に合えば面白いですが、まぁ、冬の間のオフシーズン中の各自のトレーニング計画を策定するということで、焦らずじっくりと気長に取り組んでいきましょうね♪

        皆様お疲れ様でした! 計測データの解析を、お楽しみに!

        受講生の皆さんのデータは公開できませんが、私のデータの一部は、ここに後日紹介したいと思います。

        スポーツ医療チームと一体となったアーチェリー指導

        2015.12.07 Monday

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          アーチェリーが上手くなりたいという問い合わせが全国から寄せられます。上手くなるためには、どんなトレーニングをすればいいかという質問も多いです。

          私達の指導組織けいはんなアーチェリー以外では、アーチェリーの上達に関わる話題は2つ。ひとつは、トレーニングや練習について。もうひとつは弓具の選択についてです。

          どちらも大切な事だと言われていますが、実はアーチェリーの上達にとって最も大切なことは、それらの2つではありません。これは必ずしもアーチェリーに限った話ではありませんが、スポーツの上達にとって大切なことは、それ以前の条件を自分の身体に備えているかどうかが大きく左右します。

          �脳(神経系)と筋肉の正しい関わり
          �全身の柔軟性の高さ
          �心肺機能の高さ
          �筋持久力の高さ

          アーチェリーは単純で簡単で、おまけにアスリートレベルが限りなく低い部類に入るスポーツです。自分の弓を使って発射させる矢のスピードは速いですが、アイスホッケーのように人間の反応速度の限界を試すようなものはありませんし、サッカーのようにスーパーゴールをファインセーブされるようなこともありません。バレーボールのようにブロックされたり、巧妙なフェイントがなければ得点を入れることができないようなものもありません。

          同じ距離の同じ大きさの的に向かって、毎回同じことをするだけです。雨が降ろうが風が吹こうが、自分が動いてしまうことがあっても、的は決して動きません。10点に向かって飛んでいる矢が的に刺さる前に、ファインセーブするような邪魔もありません。各自それぞれに目指すレベルや目標があるでしょうが、初心者だろうが中級者だろうが、上級者もトップレベルの選手も、シューティングラインの上でやろうとしている事は同じで、的の中心を射抜くという同じ目標に向かって競技をしています。ただ違うのは、やろうとしてできているか、やろうとしてもできてない。それだけです。

          それでは、どうして引いて放つだけという単純な行為が毎回同じようにできないのでしょうか。それは自分の身体の中で発生させてしまっている力の向きが複雑なものになっていて、しかもユラユラ動く不安定な土台から発射させているからです。

          ■意味をなさない筋トレ

          特に経験者からの相談に多いのが、どこを重点的に鍛えたらよいかというものです。鍛えるって、特定の部位の筋力の強化のことでしょうか?(苦笑)

          単なる筋トレで身体を鍛えたいのであれば、好きなだけ筋トレをされたらいいと思います。しかし、自分が弱いと思っている、または指摘された部分を単に筋トレして筋細胞を肥大させたとしても、そんなことで高得点が出せるようになったりしません。筋力が強ければアーチェリーが上手くなるのなら、自衛隊員や消防のハイパーレスキューのように、普段から肉体を鍛えて実際に仕事で過酷に使うことができる人たちが格段に上手くなるはずです。しかし実際はそうではありません。

          自分の射のプラクティスの中にその筋肉を使ってドローイングするアプローチが備わってないので、あとからどれだけその部位の筋力を高めたとしても、まったく使えないムダな筋肉を養ってしまうことになります。筋肉は脂肪よりも重たいので、ゼイ肉として養ってしまった筋肉は自分の身体の重心バランスを崩してしまい、パフォーマンスを上げるどころか元に戻せないという状態に陥ってしまう選手も多いです。

          アーチェリーの射の動作は本来は単純なものです。しかし正しいドローイングのアプローチと骨格の正しいポジションへ誘導させるための筋肉の使い方に誤りがあると、矢を保持している最中に身体の中で不要な力を、ありとあらゆる方向から複雑に働かせてしまいます。サイトピンのその先に矢が的中しない最大の理由がそれです。人間の骨格の構造と、そこに関わる筋肉の組成を完全に理解しているのであれば、まっすぐ押すとか、まっすぐ引くなどという表現を使うことに誤りがあることもわかります。そして正確な動作を行なえるようになるために、身体のどの部分の基礎固めをしていくかという事を、順序を間違えずにレクチャーしなければならないのです。多くの人はまず射から入ります。それでは上達するための順番を大幅に飛ばしてしまっていますので、どれだけ努力を重ねても万年中級者にしかなれません。

          アーチェリーは弓の引きが強いと言っても、たかだか40ポンド前後です。ドローイングのアプローチと骨格のポジションが正しければ、大して負荷の強いスポーツではありません。指導者研修会の時に自分が引ける最大ポンドを計測してもらいましたが、私は準備運動もなしで、いきなり96ポンドを引きました。大昔に試したことがありますが、ちゃんと身体の準備をすれば100ポンドは優に引けます。私と関わったことがある多くの人が知ってますが、私は身長161cmと小柄で、体重は51kgと細身です。服を着ていれば、100ポンド近くもの数値を計測するような身体には見えないと思います。ちなみに握力は40kgしかありません。強い弓を引くということは、決して腕力などではないのです。

          ですから何年もアーチェリーをやっていて、実質40ポンドに満たないような平均的な選手の弓を使って上手くグルーピングさせることができないというのは、自分の射に大きな間違いがあるのです。ですから、弱い部分だけを鍛えたところで、それは自分の身体のバランスをさらに崩してしまうことになりかねません。

          ■そんなの指導でもなければ練習でもない

          多くのアーチェリー指導の現場では、テキトーに射ち方を教えて、弓矢の危険性と安全確保についてを教わり、弓矢の使い方を習って射たせるだけです。そして何点出たらどうとか、何mで何点出たらどうとか、肩が上がってるとか、リリースが膨らんでるとか、誰が見てもわかるような外観上の指摘をする。それだけです。もうその時点で身体の中に誤ったプラクティスが刻み込まれているので、時すでに遅しです。外観上の指摘を受けてそれを見た目だけで直そうとすると、身体の中でさらに複雑な力の向きが加わります。そうなると、どんどん悩みのドロ沼に落ちていきます。

          アーチェリーをしている現場を見ればわかりますが、各々がアーチェリーができる場所に来て、アーチェリーを使って的に矢を射つだけ射って、そして帰っていく。それだけです。指導のプロフェッショナルがいないところでアーチェリーをしているものですから、みんな単に実射をするのが練習だと思い込んでいます。アップもロクにしてませんし、射つまえにストレッチのマネ事のようなものをチャッチャとやって、何となくゴムを引いて、それだけでいきなり射つ(笑)

          そして射つだけ射って、今日は良かった悪かったとレベルの低いもの同士でキズをなめあい、クールダウンもせず、誰ひとりアイシングもせず(家に帰ってから、どこをアイシングしなさいという指示もない・・・)、家に帰って熱い湯船にどっぷり浸かって、ビールを飲んで寝ています。そんなことをしてたら、スポーツ障害を抱えるためにアーチェリーをやっているようなものです。

          そんな状態なのに、トップレベルの選手は一日で何百射しているなどと言うものだから、その部分だけがクローズアップされて、ダメな射の状態での実射数をせっせと増やします。クイーバーのベルトにカウンターをブラ下げてる中級者が多いですが、一日で何射したら自分の肩が痛くなるのかをカウントしているようにしか見えません。そもそもカウンターで計測しなければ自分が何射したかわからないような人が、技術論の何を覚える事ができて、どんな高度なトレーニングを実践できるというのか。単にスコアを記入しているだけの練習でもまったく意味がないのに、ダメな射を何百回繰り返したかを記録するためだけの練習に一日を費やすような、恐るべき時間のムダづかいになってないかを考えましょう。

          ■アタマが悪い?

          練習しているのに大して上手くならないと言って相談してくる人に、「それはアタマが悪いからだ」とは言いにくいものですが、スポーツ指導の世界では、それは必ずしも間違ったものではありません。アタマがどうとか論じると学力とか偏差値に結びつける傾向がありますが、そうではありません。身体の使い方のマズさは、実は脳と神経の使い方のマズさにあります。

          少し教えただけで格段の進歩を見せる人は、これまで文化・古典芸能・武道・スポーツなどで成功してきた人だったりします。要は、天才能という部類の人たちです。そういった人たちは身体の細部にわたって実に器用な使い方ができるようになります。

          これまで普段からそういった頭と身体の使い方をしてきた人たちは、何をさせてもすぐに進化していきます。しかしそうでない人にとっては、人間の身体の中で最も器用に扱えるはずの指先ですら、思い通りに動かせない人がほとんどです。自分の指先が自由自在に動かせないのであれば、これまで感じたことがない、というか、まともに動かしたことがない肩甲骨を自分の思い通りに動かすことなどできません。それは自分の身体の動きからくる信号が、脳まで届いてないから思い通りに動かせません。自分の身体の骨の多くを、その骨につながっている筋肉を使って動かす信号が脳との間で途切れている状態なので、これまでやったことがなかった射の動作をいきなりさせられても、脳と筋肉とが相互に関連する動作が正しくないまま、それがプラクティスとして身体を動かすようになるのです。



          動かなくなった、もしくは動かせるための信号を送受信させるためのルートが途切れている状態を回復または新たに作り出すことを、リハビリと言います。アーチェリーを学ぶ上で大切なのは、自分の骨格を自在に動かせるようになるために必要な動きを持たせる筋肉への、脳からの指令のルートを構築することです。個人個人の身体の状態に合わせてリハビリとトレーニングのメニューを作り、使える身体を作る作業から始めなければなりません。それはもちろん、弓を使って実射をする練習に入る、かなり以前から行なわなければならないのです。



          トレーニングと聞くと過酷な筋トレを想像されると思いますが、そんなものは一つもありません。それよりも多くの人が苦戦するのが、身体各部の可動域の拡大です。そう、ストレッチです。ストレッチは単に筋肉を伸ばすだけのストレッチではありません。個別の身体の状態に合わせて理想的な身体を作り上げるために、様々な手法を用います。多くのアーチェリー指導の現場で行なわれているようなトレーニングはありません。リハビリやストレッチは、スポーツ整形のドクターからのメディカルチェックの診察を受けて、スポーツ理学療法士の先生方から個別に指導を受けてレッスンを行ないます。こうして年齢や性別や各自の身体の状態を鑑みて、幼稚園児から高齢の方まで、初心者からトップレベルの選手、それにクラブチームやクラブの顧問の先生など指導者への指導を行っています。



          ですからレッスンでは、実射の練習に進めるようになるまでに時間をかけて指導を行っています。低負荷または無負荷でのレッスンに長い時間をかけることで、骨格同士を結ぶ重要な役割を果たすインナーマッスルを無理なく鍛えていくとともに、アーチェリー指導者だけの指導ではなく、スポーツ医療の専門家の厳しいチェックを受けてステップアップを果たしていきます。ですから多くのアーチェリー集団が抱えている、肩などを中心としたスポーツ障害とは無縁でいられるのです。もしも身体に不具合や異常が見られたときは、本人の申告の有無や、本人が痛みを感じる感じないを問わず、スポーツ理学療法士の先生やスポーツ整形のドクターが客観的に診断して、治療や早期のリカバリーに向けての対応策を伝えてもらいます。

          単なる競技力の向上だけを目指すのであれば、それはそんなに難しいことではありません。大量の故障者を築きながら勝利を目指すだけでいいからです。選手のその先の人生のことも考えず、しごき上げて残った人間だけが優遇されるのです。しかしそれでは日本のアーチェリーが、文化としてのスポーツに育つことができません。スポーツ指導に携わる人間にとって本当に大切なことは目の前の勝利やメダルの数などではなく、アーチェリーを始めてみたいとい思っている目の前のひとりに、世界で最も優れたスポーツ指導を行うことができる環境を作り上げるのが、先達としての使命だと思います。

          ■これからが冬本番です

          師走に入り大雪を過ぎましたが、意外に暖かい日が続いています。しかし秋に比べて気温は低く、油断していると筋肉を傷めてしまうこともあります。インドアのシーズンなので冬の間も18mの試合が続きますが、上級者でもない限りはオフシーズンだととらえ、春からは別人だと言われるように身体を入れ替えてしまいましょう。

          一年を通じて参戦している上級者は別ですが、オフシーズンがないなどと言って実射を繰り返してしまうと、あなたの今年の射は、来年になっても同じことを繰り返すに過ぎないのです。春のシーズンインから肩が痛いとか、不調だという選手は、一流を名乗る資格はありません。たとえ痛みや故障がなくても、春になって進歩していない自分を見るのは情けないものです。スポーツだけに限った話ではありません。戦いで切り続けた刀を手入れする時間を作らなければ、いずれ刀は折れてしまいます。その前に身体が壊れてしまいますが・・・。本格的なシーズンに入ったときに全力で戦える自分を磨き上げる時間をどこかで作らない事には、どんな分野においても自分の進歩などなく、本気を出そうが気合を入れようが、ダメなものはダメなのです。

          これからの季節は寒さが一段と厳しくなりますので、寒風吹きすさむ屋外での練習はやめましょう。低温時の筋運動は、故障の最大の原因となります。練習しているような気になるかもしれませんが、百害あって一理ナシです。冬の間に心肺機能を向上させるために、しっかりと有酸素運動を行なってレベルアップしていきましょう。

          寒さが増していき、放っておくと身体を痛める選手が出てきますので、今月はスポーツ医療チームのフォローを増やしていただきました。熱心に練習をされてる平日のレッスンを受講されてるメンバーのために、身体の状態を確認する日を増やしました。

          今月からは合宿もあり、合宿の翌日にスポーツ整形のドクターからのメディカルチェックの診察を行ないます。アーチェリーの練習やレッスンのみならず、仕事や日常生活で抱える痛みや不具合の相談にも対処していただけるので助かりますね。

          日本がスポーツ指導後進国だと言われているうちに、私たちの取り組みはどんどん前に進んでいきます。日本で開催されるオリンピックまでに、私たちのスポーツ指導が「これが日本では普通だ」と言われるようになってほしいものですが、スポーツ指導員の資格取得の条件が、こんなにもレベルが低いものであるうちは、全体が大きく変わる期待ができそうにありません(苦笑)

          馬を殺して尻の皮を剥ぎ取った皮革を使う価値があるだけのレベルを目指そう

          2015.11.24 Tuesday

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            タブ革の交換についての相談が多いです。カントピンチのカントや指との間隙、アンカーパッドなどの機能や機構に関する相談ではなく、タブの表皮についての相談です(笑) タブ革で検索すると、このブログがヒットするようですね。それなら貴重な馬を無駄に殺さないためにも、ぜひ読んでもらいたいものです。

            アーチェリーに関する用品についてのそれぞれを、何が最高かという質問も多いです。しかし最初から「最高」と言われるような製品を使ってはいけません。今ではもはや最悪なものなど製品としては売られてませんが、たとえ低価格な製品であっても、そこから自分が最高を引き出せない限りは道具のステップアップをしても、最高の製品を単に消費しているだけに過ぎません。自分の性能を高めない限りはどんな製品のパフォーマンスも引き出すことはできませんし、優れていると言われているスペックの高い道具を使うことに何の意味もありません。周囲を見渡してみるといいのです。最初から最高の道具を使って最悪な結果しか出せない人がほとんどなのです。なぜそうなのかを考えてみるといいでしょう。

            ■タブ革がコードバンでなければならないと吹聴する人たち

            タブ革に関する相談の多くは、最初は合皮や牛革のタブを使っていたが、次はコードバンにした方がいいのか?とか、質の良いコードバンが欲しいが、どこのコードバンがいいのか?などというようなものです。何を言ってるんでしょうか?ハーフ(50m・30mラウンド72射)で600点も出ないうちは、別にタブじゃなくてもグラブで十分です。タブであれば初心者用のタブで、合皮でも牛革でも素材なんてどうでもいいです。むしろタフな素材のコードバンではないほうがいいです。どうして射の技術が未熟な上達過程にある人間が、タブ革の素材を気にするのか理解に苦しみます。そこには合成皮革や牛革のタブを使って正確な射の手本を示す指導者がいない証拠ともいえます。本当に上手くなるまでは、弓具への細かなこだわりは、単なる自己満足にしかなりません。上質な素材を手に入れることを考えるよりも先に、上質な射ができることになることが100倍も大切です。

            コードバン。この言葉はアーチェリー業界ではカーボンとよく似た言葉の使われ方がされてますね(笑)コードバンもカーボンも単に素材のことであり、それらの素材が自分を上達させたり、それらを使うことで自分の得点が上がる魔法ではないのです。射の技術をマスターすれば、何をつかってもかなりの得点が出せるようになります。大して当たらないのは道具のせいではなく、扱う自分の射が正確でないことが原因です。上手くならなければ何をつかっても大して当たりません。それはあらゆるスポーツで共通しているように、古来から不変の事実です。

            コードバンは農耕馬の尻の皮をなめした皮革です。左右の尻の革が1対になっていて、尻尾や肛門に近い部分を取り除いたあとの、その見た目の形状から「メガネ」などと呼ばれています。しかし必要な革は尻の部分だけであり、つながっている背部の皮革は必要ありませんので、一般的にはメガネという状態ではなく、左右の尻を切り離して余分な周囲の革を取り除いた楕円形の状態で販売されています。アーチェリー用のタブとして使われるものは、その楕円形のものを仕入れてタブに型抜きして製品化されます。馬は生物なので個体差があり、コードバンの大きさは均一ではありませんが、楕円形のコードバン片側1枚につき15〜20枚程度のタブ表革になります。30〜40人のアーチェリー愛好者がコードバンのタブを1枚使うことで、両方の尻の革をはぎとるために馬1頭の命が失われます。ちなみに牛革は皮革の全面を使えるのに対して馬革は、尻の革のコードバンの部分しかタブには使うことができません。



            これが世界最高の新喜皮革のコードバンです。世界中のセレブに愛される超高級革製品に使われる素材です。芸術品の製作目的であれば納得の極上素材ですが、アーチェリーで使われるタブのように、単に磨耗させて消耗させて捨ててしまうような使い方をするために作られたものではありません。

            一部の上級者以外に、コードバンなどという高級皮革は必要ありません。ストリングへの取り掛けができて安全にリリースができて、ストリングから指先を守ることができれば、タブの表皮は人工皮革でもゴムでもビニールでも何でもいいのです。その人が使っているタブの状態を見れば一発でわかりますが、ドローイングのアプローチに誤りがあり、正しい取り掛けとアンカーリング、そして正確なリリースができてない人にとっては、どんな品質の高いコードバンを使ってもまったく意味がありません。コードバンの2枚重ねは、ひとり当たり2倍ものコードバンを消費することになるので、よく考えると残酷な話です。

            ぶ厚い革を2枚も重ねてしまうと、ほとんどの場合は取り掛けの感覚が希薄になり、リリースがぎこちなくなってしまいます。特に40ポンドにも満たない実質ポンドでは、タブ革にコシがあり硬さがある、または厚みがあると、取り掛けの感覚が希薄になるので、ドローイングやアンカーの最中にタブ革の上で指先からストリングが滑り出そうとして、それを抑えるために腕に力を込めてしまいます。だからアンカーが一定にならず、優しく丁寧なリリースができません。おまけに緩んでいくものを握り締めようとするために、いつまでたってもクリッカーが鳴りません。試合になったらリラックスして射てないので、なおさらです。ほとんどの選手がそんな状態で、懸命になって実射を繰り返し続けています。そんなことだからどれだけ練習量を増やしても、いつまでたっても上手くならないのです。高得点を叩き出すことができる上級者ならともかくとして、中級者や初心者がマネをするようなものではありません。そんな状態で上達できないでいるにも関わらず、タブの革はコードバンがいいなどと誰かから言われ、本当に自分の上達を手助けするかどうかもわからないまま、コードバンを使うことになるのです。

            ちなみにタブの素材として最もふさわしいのはコードバンではなく、高級なサッカーボールの表皮やスポーツサイクルの高級サドルなどのの表皮に使われているマイクロファイバー素材です。様々な呼び名のものがありますが、あらゆる皮革の素材を上回る耐久性と、どんなに濡れても性能が変わらない防水性の高さ、それに天然由来ではない製品の均一性を誇ります。恐らくタブの寿命まで使える人がいないのではないかと思えるくらい、繰り返しの磨耗に強く手入れが楽で、コードバンのように変形したり変質することはありません。しかし軽量な表皮が必要とされるサッカーボールと違って、アーチェリーのタブとして使うには厚みが必要になりますので、何か他の素材に貼り合わせなければ使えません。アーチェリーで消費するマーケットのサイズを考えると、アーチェリー用として生産するのは今は考えにくい素材です。タブに装着して使わせてもらったことがあるのは、世界中で私を含めて数人しかいないと思いますが、将来的にはそのような素材を使われる時代になればいいなと思います。

            ■牛革のタブ

            牛革の優れている点はコストパフォーマンスの高さにあります。コードバンは馬の革の尻の部分からしか取れません。タブ用としてのコードバンは、馬1頭あたり30数枚程度しか取れません。しかし牛革は、牛の体のほぼ全域にわたる広い範囲の革をタブ用に使うことができます。牛1頭あたり400枚程度のタブ革が取れます。みんな安易にコードバンを使いたがりますが、命を戴くことの有り難さと、自分のレベルが本当にコードバンに相応しいかを、1射リリースするたびに、胸にタブを当てて考えてみるといいのです。

            タブの革の性能に関しては、コードバンではなくて牛革でも70mで330点程度が出ているのは以前も紹介しましたし、全関西春季で雨の中、後半に315点を出したり、ローカルな試合では何度か優勝しているのはご存知だと思います。



            このピンクの牛革は、上の小さな小学生用のタブを作ったときの切れ端で作ったものです。これで高得点が出てますし、京都府アーチェリー連盟主催の公認競技会で2連覇を果たしたものです。いくつかの競技会場では、このピンクのタブ革がどこのメーカーから販売されてるのか何人から聞かれたものですが、ホームセンターの中にある手芸コーナーに置かれていた牛革のハギレで、これ1枚で60円だと言うと、一様に驚かれたものです。



            こんなものでも70mで330点が出ますからね。かつて某社の製品テストで、イヤになるほど様々な素材を試させられましたが、自分が感じるフィーリングが的面での得点に影響が少ない。というか、50m6射で60点の時と58点のときの自分の射の違いですら判別つかないので、結局はタブ表皮の素材に何を使っても出せる得点の差を見出せないという、笑い話のような思い出があります。結局は感触とか感覚とかフィーリングなどと好き勝手なことを言ってるだけで、何かを感じたときにはすでに矢は的に向かって飛んでいるわけで、感じている最中に人間は何をすることもできないというのが、身体や弓に装着した加速度センサーのデータを解析してもわかります。何をどう感じようが、道具は自分に与えられた仕事を確実に正確に行うので、よほど特別なレベルに到達しないかぎりは、何を使っても凡人が神業など発揮できないということです。

            ちなみにタブ革のコードバンの表皮について、皮に生えてた毛の向きがどうであるか調べたいという質問もあり、これにはさすがに苦笑しました。コードバンで毛の方向を知るには、一般的に入手できるコードバンの楕円形のシートの状態ではなく、左右の尻がつながったメガネの状態で入手しなければなりません。海外の質の低いコードバンは知りませんが、日本が世界に誇る最高品質のコードバンは、表面をガラスで研磨して完全に鏡面仕上げにされているので、通常の顕微鏡をつかって表皮を見ても毛穴の向きはわかりません。表皮の摩擦抵抗を計測したことはありませんが、表皮ではサービング糸が摩擦を発生させるので、リリース時の抵抗係数うんぬんを語ることに意味はありません。そもそもコードバンの表面は染色が施されているのです。染色されてない馬の尻の肌の色のままの、オイルグレージングのコードバンもありますが、毛穴までは見えません。タブ革は、ストリングを取り掛けている部分が毎回完全に同じであり、ストリングに巻きつけてあるサービングの糸が、タブ表皮に毎回必ず同じ軌跡を残すことが必須なのです。それができるようになってはじめて、コードバンを使う意味がわかるようになります。これまで使ってきたタブ表皮が良くない状態であれば、コードバン表皮の毛穴の向きにこだわっても、どうしようもありませんからね。ほとんどの選手が、自分の使っているタブを私に見せたがりません。そんな人が、顕微鏡を覗いても見えないコードバンの毛穴の向きを気にしてどうするのですか?そんな細かいこだわりがあるのなら、普段から競技でさぞかし高得点を叩き出しているはずですが・・・

            上達するまでには、ソフトな取り掛けと優しいリリースのために必要な、指先に関わる大切なことを習い、ひとつずつを修得していかなければなりません。それはコードバンを使ったらマスターできるというものではありません。どうして初心者用にグラブという柔らかい牛革で作られた製品があって、どうして初心者用のタブには牛革や薄い合成皮革が使われているのか?コードバン製のグラブはありませんよね?射に関わる技術は、非常に弱い弓を使って修得しなければならないものばかりです。ですから高ポンドに対応した上級者用の用品を上級者以外が使ってしまうと、最初に絶対に感じておかなければならないものが、一切わからなくなってしまうのです。実質40ポンドに満たないリムを使っている人や、上達過程にある人が上達するまでに必要なのは、指先から得られるストリングのインフォメーションです。それは自分が的とサイトピンを見ている目の中心から、取り掛けてアンカーで保持しているストリングに装着されたノックまでの距離が正確であるか。タブから送り出されてリムまで戻るストリングの軌跡を統一できるか、そうでないかの重要な指導になるのです。どれだけ練習量を増やしたところで大して上手くならないのは、それら大切なことが大胆にスポイルされている事もわからずに(わからなくなった状態にさせられているにも関わらず)、実射を繰り返すという状態に陥っているからです。

            それを知るにはタブ革に必要な性能は、(最初は)柔らかさと、革ごしに自分が取り掛けているストリングを感じることができるかどうかというものです。でなければ、自分がどのようなリリースをしているかが、まったく理解できないまま、ムダに射をこなすことになります。それがわからないままポンドアップしていく(させられてしまう)から、指先の皮膚が対応できなくなっていくのです。そうなったら指の皮膚が角質化されていき、どんどんストリングのインフォメーションがわからなくなります。しかも練習できる日には1日で必死になって数百射も繰り返してしまうので、繊細な感覚を永遠に失ってしまいます。ですから、ほとんどの人が何も感じなくなってしまっています。そうなってしまわないためにも、上級者以外が上級者用の用具を使うことは、何としても避けなければならないのです。練習の量をどれだけ増やしても、ある程度までは得点が出せるようになっても、そこから先に進むことができなくなるのです。

            それでは、手に入りやすい牛革の端切れをつかって、高性能なタブ革を作ってみましょう。

            ■タブ革を作ってみる



            コードバンだろうが牛革だろうが、素材そのものが最初から勝手に高性能なワケではありません。繊維が緻密なコードバンであっても、何もしないのであれば単なる馬の尻の革にすぎません。しかし牛の皮であっても古来からの人間の知恵で、耐久性の高いものをつくることができます。革靴だってベルトだってランドセルだって牛革なのです。こんな安い(実はコードバンも素材自体はそんなに高くないが・・・)牛革でも、かなりの高得点を叩き出せる、高性能なタブを作ることができるのです。

            大きなホームセンターや、レザークラフト用品を置いてある手芸屋さんでは、このようにカゴ一杯に端切れが置かれています。端切れじゃなくてもハガキサイズなどで数百円で売られていることも多いです。バッグなど様々な製品として使われた端材なので、耐久性の高い端切れが何種類も置かれていることが多いです。



            今回はタブの表皮用に、この2枚を購入しました。どちらも1枚50円です。これらは大体1デシ単位のサイズに切り分けられているものですが、大きさが不揃いのものであれば、1枚で2〜3セット分くらいを取れるものがあります。着色してあるものでも、何ら問題なく使えます。タブの表革として使うので、店頭で指で触ったときに固さがある、ゴワつく感じのものを選びます。表皮が少々荒れていても大丈夫です。値札がホッチキスで直接止まってましたが、ホッチキスの穴なんてタブの性能に関係ないので些細なことは無視します。革に油を浸透させて使いますので、革は固めのものを使います。最初から柔らかいものは油を浸透させるとヘニャヘニャになります。裏革としても使うことができますが、裏革に使うのならベロア革の大きめのシートを買ったほうが圧倒的に安いです。



            この1シート648円のベロア1枚で、17枚分のタブの裏革用ベロアシートになります。裏革には、通常はこういったベロアシートを使います。とても安いですが、アーチェリーのタブの裏革に使われているものよりも、かなり上質なものが手に入ります。常に指先で触れるものなので、汚れが目立ったり質感が変わってしまう前に、マメに交換しましょう。



            タブ革の作り方は、もはや説明する必要がないほどカンタンです。まずはタブのプレートから、元の革を取り外します。元の革からボールペンや細書きマジックでトレースして、ハサミやカッターナイフで切り取るだけです。裏表を間違えると逆射用になってしまいます(笑)ので、注意してください。見た目の仕上がりを美しく仕上げたい人は革を表側にしてトレースする事もありますが、こんな形を変えて効果を発揮する消耗パーツの美観を気にしても仕方がありませんので、裏側からトレースして切り取ります。なお、元の革が、元のカタチがわからなくなるほど変形してしまっている場合は、いちど型紙を起こしてからトレースすると便利です。



            このように、いちど厚紙などで型紙を起こしてしまえば、次にタブ革を切って交換するときにラクできます。同じクラブや仲間同士で同じタブに揃えて使っていれば、タブ革を作り置きしておけるので便利です。これまで使っていたタブの革が短くて指先のはみ出し幅が多めな人は、左右方向の全長を長く起こして切り取ります。指が細くて長い人は、自分専用の型紙を起こしておくといいでしょう。牛革だと1枚あたりの単価が50円程度と安いので、自分にピッタリ合った形状に何度も作り直すことができて便利です。何千円もするアーチェリー用品として売られているコードバンの交換用皮革を買ってしまうと、そうそう作りなおすこともできませんからね。このようにして、自分の指のサイズに合わせたオリジナルを作ってみましょう。



            皮を切り取ったあとは、プレートに装着するための穴をあけます。ボルトが通るサイズの穴を、穴あけポンチを叩いてあけます。穴あけポンチがない場合は、千枚通しや細いクギを刺して穴を広げてください。ボルトが通ればプレートにタブ革を固定することができますので、穴の位置はそれほど神経質に微調整する必要はありませんし、あいた穴の形状がキレイじゃなくても大丈夫です。自分が使っているタブのボルトが何mmなのかを知っておくと便利です。このタブには3mmの穴あけポンチを使っています。ベルトとカントピンチの穴は、100円ショップで売られている彫刻刀の丸刀を使うと、穴を開けやすいです。カッターナイフやクラフトナイフを使う場合は、手を切ってしまわないように細心の注意を払って下さい。切れ味の鈍った刃物を使うとチカラを込めすぎて、誤ってケガをする人がいますので気をつけてください。



            革は湿気を嫌います。どんな皮革であっても吸湿と乾燥を繰り返すと革本来のしなやかさを失ってしまい、タブとしては使い物にならなくなってしまいます。メンテナンスしていない乾いた革には手から分泌される汗や皮脂がタブ革に徐々に染み込んでいきますので、あまりにも不衛生です。汗の浸透と乾燥を繰り返すあまりに、アーチェリーケースの中で異臭を発するタブを使っている人もいます。白く塩を吹いているタブを使っている人もいます。タブを洗濯機で洗う人はいません。クサいだけならいいですが、指先に触れるものなので食中毒の原因にもなりかねません。特に裏革はマメに交換してください。1年で4回交換しても200円もしません。

            穴をあけて、プレートに装着できる形に革の周囲を切り取ったら、タブのプレートに装着する前に油を染み込ませます。油はレザークラフトで使われるフットオイルやブーツオイルでもいいのですが、一般家庭で使われる食用油でも代用できます。素肌で触れるものなので、グリスやエンジンオイル、ミシンオイルなどの工業用の油や、有機溶剤を含んだものを使ってはいけません。食用油を使う場合は、オリーブオイルや胡麻油などのようなものを選ばず、なるべく香りの少ないものを選んでください。でないと、アーチェリーケースの中が油クサくなります。タブとして使っていると油の酸化が意外に進むので、食用油は必ずしもお勧めできるものではありません。ラードでも食用油でも役目は果たしますが、ゴキブリやネズミなどに狙われないようにしてください。油ではない方法で耐水性を高めて乾燥を防ぐには、ワセリンが優れた効果を発揮します、ワセリンは安いですし酸化や劣化がほとんどありませんし、アロマオイルを1滴たらすだけで、タブ革専用の上質な特別なオイルになります。私はローズマリーを少し加えて使っています。オリジナルのタブは、このようにして楽しめるのがいいですね。香水などを加えると周囲の迷惑になる可能性もありますので、香りを加える場合は、ほどほどにしてください。ちなみにワセリンは、なるべく小さなサイズのものを買いましょう。大きなサイズはお得感バツグンですが、大きなものを買ってみんなで小分けしても量が多すぎて、何年も処分に困ることになりますからね(笑)



            ワセリンには雨にも強く、雑菌が繁殖せずに保湿できるので、食用の油よりも衛生面でも安心です。ワセリンを革の裏側から指先で伸ばして塗りこむと、みるみる浸透してきます。表革の表側にも薄く塗りのばして余分なワセリンを拭き取ったら、タブの両側をティッシュではさんで、さらに新聞紙などではさんだものを床に置いて足で踏んで、染込ませすぎたワセリンを革からじんわりと追い出します。それをプレートに装着して完成です。以前に牛革を使ったときにはピンク色だったので目立ちましたが、今回はグレーなので落ち着いた色合いになりましたね。ちょっと地味なので、今回は誰も気づいてくれないかも知れません(笑)



            さっそく実射してみました。ワセリンを含ませているので、ほんのりとしなやかで、ぽってりと張りがあって、上質な感じのタブの出来上がりです。手入れされていないガサガサになってるコードバンの表皮をつかってストリングを握りしめている人がほとんどなので、がさつなリリースになってしまっているのかも知れませんよ。そんなものよりも、手入れの行き届いた張りのある牛革をマメに取り替えて使ったほうが、よっぽど価値があるというものです。

            ワセリンは取り掛けている指先の保護にも効果を発揮します。実射の練習をする前に薬指にワセリンを含ませて、皮膚に浸透させた状態で射つと、リリースによるストリングからの皮膚の保護に役立ちます。その人の皮膚の状態にもよりますが、矢取り3回くらいで指先に塗り足すことで、皮膚の損傷と角質化を防ぐことができます。その際に指先を、てのひらを伸ばすように軽くストレッチをしたり、ストリングを取り掛けている側の腕をマッサージすることで腱や腱鞘に関わる炎症の防止にもなります。身体のメンテナンスもせずに無闇に実射を繰り返すことだけは、くれぐれもやめてください。身体は、繰り返しの動作で確実に痛んでいきます。疲労を蓄積させないためにも射にはインターバルをもたせ、特定の部位を酷使させないように注意しながら練習をしてください。

            ■的中は道具だけでは望めない

            本当に上達するまでは、タブ革などに30倍以上の金額をつぎ込んでもムダ金にしかなりません。弓具すべてに言えることですが、初心者や中級者の頃は、自分に関係のない性能の弓具は一切必要ありません。どうせ使いこなせないモノにお金を払うくらいなら、自分の身体に投資した方がよっぽど回収できるというものです。コードバンよりも牛革が優れていると言っているのではありません。しかし交換用のコードバンのタブ革1枚で、牛革であればその人の何十年分もの交換用の革になるのです。そんな究極ともいえる天然素材を使うのは、上達してからにしましょう。

            どこのコードバンがアーチェリーに優れているかなんて、トップレベルの選手以外には関係のない話です。上級者でもない限り、どうせ何を使っても同じです。単に動物の革を消費するだけなのであれば、1枚あたりの命の重みのあるコードバンを使うべきではありません。尻の皮を剥がれた馬とは、この世で生きて会うことは叶わないのです。そもそもコードバンなんて、本当はアーチェリーのために作ってるわけじゃないんです。しかもコードバンの本来の性能を活かした使い方がなされてないのであれば、それこそ転倒しているのです。

            何よりも、1枚50円のタブ革に屈するとしたら、道具の性能を語る資格などそもそもありませんし、勧めてきた選手や指導者として、販売してきたショップの人間として、これほど恥かしい話はないのです。道具にお金をかけるのがアーチェリーではありません。アーチェリーは自分の身体の性能を発揮させて当てて高得点を叩き出す、まぎれも無いスポーツなのです。道具は使いこなしてナンボです。道具への片思いほどバカらしいものはありません。何のためにお金を払ったのかを考えてみるといいのです。使いこなせないならゴミも同然です。アーチェリー愛好者は、馬の命をゴミ同然にしている人だらけ。

            本当に上手くなるまでは道具へのムダな出費は抑えて、楽しく賢いアーチェリーライフを満喫してもらいたいものです。

            スポーツ医療チームのアーチェリーレッスンも佳境に入ってきました。来月はいよいよ、スポーツ整形のドクターによるメディカルチェックの受診がありますね。寒くなってくると筋肉の動きがこわばって故障の原因になる事が多いです。本当に上手くなるまでは道具の性能なんてどうでもいいので、自分の身体の状態を万全にして、冬のあいだに身体の性能を高めておきましょう。