見てないフリして 真実と向き合ってこなかった指導者たち

2016.01.02 Saturday

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    ■2015年の指導者としての通知表

    新たな年を迎えましたが、指導者には年末年始も休日もありません。問い合わせフォームへの質問があまりにも多く、レッスン受講を希望される方や、深刻な相談以外への返信ができるほどの余裕はありませんのでご了承ください。なお、レッスン受講生以外への技術的なことや弓具に関する相談は受け付けておりません。それにお答えしてしまうと、入会金・年会費・レッスン代を払っている入会メンバーに失礼にあたります。

    通って来られるレッスン受講生の皆さんが上達するために、世界で最も優れていることを勉強し、それを指導で実践するのが指導者の仕事です。世界で最も進んでいるあらゆる分野は常に進化を続けているので、その学習に終わりはなく、内容は多岐にわたります。ですから私は世界でトップレベルの指導者を続けられるように、世界最高クラスのスポーツ医療チームと一体となってレッスンを行なっています。ボランティアで中途半端なことをやっているのではないのです。

    一年の最後となる大晦日に、スポーツ医療チームからレターパックの速達便が届きました。



    先月に行なわれたスポーツ整形のドクター四本先生による、メディカルチェックの診断結果の全員の資料です。今年は人数が増えましたので、スゴイ量があります。指導者という立場には休日はないのです。

    レッスン受講生の皆さんの身体の状態を、スポーツ整形のドクターが客観的に診断した書類なので、この一人一人の身体の状態の診断結果が、指導者としての私への通知表にもなります。ざっと見たところ、レッスン受講生一人一人の身体に、スポーツを行う上での故障を抱えそうな部分はありません。四本先生は肩専門で、関節・スポーツ整形外科部長をされてます。アーチェリー選手の肩や上腕部に精通されているので安心です。

    ただ、私がいつもレッスンでストレッチ指導を行って伝えてる通り、身体が固いという指摘を受けているメンバーが多いです。SLRやHIRの可動域が悪いと重心を安定させる上で大切な骨盤の傾斜量をコントロールできなくなるので、その身体の状態のままで実射を続けさせたり、筋トレをさせてしまうと確実に破綻をきたし、射つ練習をすることによって身体はいずれ蝕まれてしまうからです。どれだけ実射量を増やした練習を重ねても、ほとんど上達しない最大の理由です。

    ■上手くなれない方法を懸命になって努力させる指導者たち

    「まっすぐ立つ」「自然な感じに立つ」など、アーチェリーをする上でよく耳にする言葉です。どれだけ抽象的な表現でしょうか(笑)骨格や筋肉の専門家でない中途半端な指導者ほどその言葉を多用し、見た目だけの射を気にします。しかしそんな指導者の多くは、そのまっすぐの基準をまったく理解してません。骨盤の傾斜角がどうなると何がおきてしまうか、筋肉のどこの動きが悪くてその姿勢になるのか、どこの筋肉がつきすぎててバランスが悪くなっているのか、そんな事もわかってません。それに大腿骨骨頭と骨盤の形状や、それらを形成する靭帯の作用も一切無知のまま、シューティング時のスタンスをテキトーに決めてしまうという、とっても乱暴なことをしています。

    そのスタンス幅で自分の骨格を維持させるためには、どのようなトレーニングをしなければならないかという最低限のことすら教えることができないでいます。なぜ身体の柔軟性が必要かの説明も正しくできません。多くの人が、そんな人からアーチェリーを教わっています。どれだけ時代遅れかと思いますが、レベルの低い指導者たちは真剣に体のことを学習していかないので仕方がありません。指導者としての指導を受けにくる指導者は安心ですが、そうでない指導者たちは、私が言ってることの半分も理解できません。多くのレッスン施設で、前時代的なことを繰り返してヘタクソを量産し続けています。そういった指導者から学んでいる人たちが本当に可哀想に思います。

    上級者のスタンス幅が狭いからといってマネしても、骨盤の中の筋肉を正しく作用させることができないのでは、単なるハリボテで中身がなく、実効性のない射にしかならないのです。本当に上手いかどうかは、その人が射った矢を目で追いかけて的を見る必要などありません。50mも離れた場所からでも、アーチェリーをしている人を見たらわかります。腰にぶら下げているクイーバーに入れてる矢が、リリースのたびに揺れるのが見えるからです。

    クイーバーに入れてる矢が射のたびに動くのは完全に異常です。正しくアーチェリーを学んできた人であれば、発射の際にクイーバーはほとんど動きません。しかし多くの人は、射つたびにクイーバーを大きく揺らします。中には矢が音を立てる人もいます。自分はマシだなんて思わないで下さい。五十歩百歩です。

    そんな不安定な状態でスタンスの幅を上級者みたいに狭めてしまえば、弓を引いたら多くの人は後傾しているかヒザや腰で身体が捻転しているので、両足でしっかりと身体を支えられなくなります。その上、指先からストリングが離れたあとに、後方にむけて勢いをつけてスライディングリリースをしようとして、さらにわざわざ姿勢を崩してしまっているので、もう目も当てられません。そんな射を必死になって回数をこなしてしまい、ロクに身体のケアもしないので、どれだけ練習量を増やしても上手くならないどころか、身体を傷めて故障を抱えてしまいます。

    なのに、トップレベルの選手は一日で何百射しているなどと言うのです。指導者にそう言われたら、言われた人は射を多くこなしたら上手くなると思い込むのが普通です。上手くならない方法を繰り返させるのは虐待ですよ。そんなのスポーツ指導ではありません。

    アーチェリーの先生だと思っている人の多くは、人間の骨格のことを正確に理解していません。TFCCがどのような構造で形成されているかも知らないので、ボウスリングやフィンガースリングの適切な長さの指導を行うこともできません。「この長さにしたら飛び出しが」などと、ウソ八百を並べます。おまけに手首のストレッチ指導やアイシングをさせないために、多くのアーチェリー選手がセンターロッドにウエイトを装着したら、すぐに手首を傷めます。傷めていることに気づいてない人は、私たちがTFCCに触れたとたんに痛みを感じます。本当にイイ加減にして欲しいのです。人の身体を壊すのが指導者の役割ではないのです。

    ですからアーチェリーの指導者に依存するのは危険なのです。その先生が過去にどれだけ競技実績があったとしても、指導者としてのレベルが高いかどうかは、引退後の猛烈な学習が占めるウエイトが高いかどうかで決まるからです。指導のレベルと競技実績はほとんど関係がないと言っても過言ではありません。過去にどれだけ競技レベルが高かったとしても、スポーツバカか、アーチェリーおたくばかりで、指導者としての教育を受けてきてない人が指導者をしている事が多いです。ほとんどの場合がその人の独自の理論であって、骨格と筋肉の専門家からは、首をかしげるような事を言ってたり書いてたりします。そのようなものは、その人以外の他の人には役に立たないものが多いのです。

    ■一流選手であることと一流指導者であることは別

    スポーツと医療は密接に関連があるにも関わらず、医療と連携しているスポーツ指導者はほとんどいません。それはその指導者が選手として、スポーツ科学トレーニングを受けていない証拠です。受ける境遇になかったと言う人も多いです。スポーツ科学的なトレーニングを行なってこなかった選手には、あらゆる面でムダが多く、自分の貴重な時間をムダにして、体力をムダに使い果たしてしまいます。練習量が少なくてもレベルの高い選手になれる方法も知りません。自分の選手としてのレベルが落ちてきたことを理由に引退して、指導者をしている人ばかりです。「多少の痛みには耐えて」とか「歯を食いしばって」などという言葉も出てきます。きっと気合や根性に関しては、さぞかし自信があるのだと思います(笑)

    しかしスポーツ科学トレーニングでアスリート育成プログラムを受けてきた選手であれば、スポーツ指導がどれだけ医療と密接に関わらなければならないかを痛感し、アーチェリーの先生では全く刃が立たないことがわかります。わかりやすく言うと、故障を抱えてしまうか、それを未然に防ぐことができるかということなのです。ですから実射の練習量を必要以上にこなすくらいなら、スポーツ整形のドクターの診察を受けて、セラピストからリハビリとトレーニングを受けてボディーケアをしていた方が100倍マシだということがわかります。その重要性を理解してないまま、ひたすら実射を繰り返させ、まったく意味をもたない筋トレを課し、ストレッチのマネ事のようなことをさせ、実射後にアイシングもせず、今日は何百射したとカウンターをカチカチして、明日は何百射とカチカチさせて、使えない身体をどんどん使えなくさせてしまうのです。

    そんな状態なのに集中力がどうとか、精神力がどうとか、練習量とか、どうも根性論的な方向に思考が流れがちです。試合になったら当たらないのは、射が悪いからです。メンタルトレーニングの専門家による指導の成果が上がらないのは、射が悪いからなのです。気持ちがどうとかいう問題ではありません。練習でしか当たらない射を完璧にマスターしてしまっているからに他なりません。それは教えた指導者の責任です。あなたが悪いのではありません。あるとすれば、指導者を厳選しなかったことかも知れません。しかし普通は自分の先生を選ぶのは大変です。多くの人は、恐らく自分が住んでいる地域では探し当たらないと思います。ですからこのけいはんな地域まで、関東から何名もの方がレッスンを受講されにお越しになるのです。

    選手としては一流を目指すのに、指導者として一流を目指す人が少ないのは、実に困りものです。恐らく、今から指導者としての勉強を始めたのでは、とてつもない膨大な量の知識を勉強しなければなりません。きっと実践する頃には忘れます。いま最新と言われているものの多くは、すでに25〜30年も前に確立されてるものばかりで、現代ではそこからさらに飛躍を遂げ、基準や常識がすべて変わってきているからです。最新とは私たちが作り上げていくものなのです。それらを追いかけているようでは、取り残されてしまうのです。多くが四半世紀前のことを最新として取り上げています。恐らく私たちの会話が通じるようになるまで、もう四半世紀はかかるのではないでしょうか。選手を引退したら指導者の道に進むなんて、そんな甘いものではないのです。三流指導者を目指すなら別ですが(笑)

    選手や指導者の中には、私と話をすると物怖じする人もいます。しかしそんなことでは困ります。私をさんざん利用してやろうという魂胆アリアリで接近してくるようでなければ、日本のアーチェリーはいつまでたっても良くなりません。指導者は一流を目指し、世界一の指導者になるべく、指導能力を高めてもらいたいものです。ですからけいはんなアーチェリーでは、指導者への指導の門戸を常に開いています。私と同じレベルの指導者が各都道府県にひとりいるだけで、日本のアーチェリー愛好家は幸せなスポーツライフを過ごせるようになるのです。

    大切なことは、強い選手を作り上げることではありません。そういった人は健全なスポーツ指導の中から自然に出てきます。それよりもすべてのアーチェリー選手が正しいスポーツ指導を受けることができる環境を、私たちの力で築いていかなければならないのです。だから選手は、決してスポーツバカにならず、勉強する事を好きになってください。そして人を愛してください。学校を卒業したら、人の役にたつための勉強をしてください。人間死ぬまで勉強です。そして毎日が試験です。評価は周囲が下します。自分が選手を引退した後に、自分が活躍の場を与えてもらっていたスポーツに感謝して、新たな世界を作り出して貢献して、役に立つ存在になってください。自分が上手くなることだけしか考えられない選手ほど、いらない存在はないのです。

    選手をしているうちは、自分がアーチェリーをすることで、周囲に情熱と感動を与える存在になっておいて下さい。そして自分がアーチェリー選手であることで、自分に関わる周囲の人々をアーチェリーの世界へ引きずり込んでください。それができないのであれば、アーチェリーを愛しているとは言えません。魅力を引き出す事ができない、ただ好きなだけです。それができればスポーツじゃなくても、何をやっても上手くいくようになります。アーチェリーを自分にとって優れたツールとして使うかどうかで、これから先の人生をどう良くするかが変わります。しかしそれも優れた指導者と当たるかどうかで決まってしまいます。そんな状況を打破するためにも、ある程度早めに選手としての見切りをつけて、できるだけ若いうちに優秀な指導者として勉強をしてもらいたいものです。

    ■スポーツ科学トレーニングの一部

    今回の診察結果を見ると、スポーツ医療チームと一体となったレッスンを受講してきたメンバーの多くが柔軟性・筋力ともに改善しつつあるのは、前回の診察結果のデータとの比較で明らかです。年齢が高めな受講生の方であっても、肉体年齢を大幅に取り戻しているのも分かります。

    診断結果と加速度センサーによるデータとの照合です。頭・首(背中)・腰・手首・両ヒザに装着した6つの加速度センサーが、実射の前・リリースの最中・リリース直後の身体の動きを表示させます。360度方向のデータを取り出すことができるので、動きの方向は無限に調べることができます。

    その動きの方向から、身体のどこの筋肉が反応して骨格をその方向に動かしているのかを調査します。そして触診で実際の筋肉の動きの状態を確かめて、ドローイングのアプローチから正しく筋肉を作用させることができているかをチェックします。姿勢変化の多くの場合は下肢の筋肉の状態の悪さからくる反応であり、下半身を含めた全身の柔軟性の高さが必要だということがわかります。

    特に股関節の動きが硬い場合は股関節内旋角度が浅く、HIRの数値が低く表示されます。股関節や骨盤周辺の筋が固いために骨盤を安定させることができず、重心のズレによる変化に対応することができません。股関節周辺の筋持久力が低いために、射てば射つだけ疲労が蓄積され、試合後半になって崩れることもわかります。

    股関節の挙上角度が浅いとSLRの数値が低く表示されます。これはハムストリングが硬くて股関節からヒザまでの柔軟性が乏しい状態です。この場合はハムストリングの硬さが骨盤の姿勢を変化させてしまい、安定した姿勢を維持することができないまま実射を行うことになってしまいます。

    ヒザに取り付けた加速度センサーが、骨盤から下の脚部の筋肉の動きを明らかにします。自然な感じに立つなどというような抽象的な言葉ではなく、アンクリングをスムースにするために足首のストレッチが必要で、同時に前脛骨筋のトレーンングをしなければならない、などを具体的にします。腰のセンサーは、ドローイングに従って骨盤がどのような動きをしているかがわかります。その動きの大部分が実は脚部の動きであり、弓を引く動作に負けて下半身が揺れていることも、HIRとSLRの数値と照合すると分かります。ですから下半身の柔軟性を高めることが最低条件で、そこからさらに筋持久力を高めるためにランジをしたり、ランニングでしっかりと走りこまないといけないのです。

    実射を繰り返すだけで上手くなれる人が1000人に1人しかいない理由が、おわかりいただけたのではないでしょうか。その1000人に1人は、偶然にも様々な条件が揃った幸運な人であり、自分がそんな星の巡り会わせだとは思わないほうがイイということです。私も1000人に1人のラッキーボーイなどではなく、当時のスポーツ科学に基づいて合理的に育成を受けると同時に、指導者としての指導の方法を学んできました。しかし当時のアーチェリーの世界からは、相当変わった目で見られていたと思います。高校時代はジュニア強化指定選手を解いてほしいと申し出ると、理由を尋ねられました。ただ射つだけの強化練習に意味が無いし、射つだけならわざわざ遠くまで合宿に行く必要が無いと答えると、ナマイキだと言われました。取り組みのレベルが圧倒的に違うので、私の指導者先生と顧問の先生と相談して決めたことですが、大きな競技会場などの弓具検査で出会ったときなど、いちいち嫌がらせを言われました。まぁ、そんな事が気になるようなマインドを養ってませんので、誰から何を言われても平気でした。当時メンタルトレーニングの第一人者だった千葉先生からも、時代遅れの人たちを相手にしなくていいと言われてましたが(笑)

    当時はスポ根むきだしの世界で、選手のほとんどが故障を抱えていたように思います。そのような風潮だったので、スポーツ科学に基づいた指導に当時のアーチェリー界は皆が懐疑的でした。つま恋での合宿でも、一日で400射以上をこなした時期があったほどです。半分程度の選手が、そのせいで身体にトラブルを抱えてました。当時の選考会は2日間に分けてダブルラウンドでした。当時のトップレベルは、私以外は完全に根性論でした。今ではそんなことをしたら、選手が壊れます。いや、当時はみんな壊れてましたか・・・

    私も自分の努力だけで高得点を叩きだせるようになったのではありません。アーチェリーの素質があったわけでもありません。身長は161cmしかありません。ドローレングスは24.5インチしかありません。体型だけで見たら、とても全国レベルで上位に食い込めそうには見えません。しかし私を教えた指導者が、私の上達の運命を決めました。努力というよりはむしろ、それぞれを言われた通りにしていただけです。今では射の上達においてどのような条件を備えるべきなのかが解明されているので、それを備えることで誰もが楽しく上手くなることができる時代なのです。上級者になるだけであれば、血のにじむような努力など、一切ありません(笑)

    上手くなる以前に、アーチェリーを行なうためには、身体の基礎機能を備えなければ、スポーツ指導どころではありません。HIR90°、SLR90°が必要な柔軟性です。硬い身体のまま実射をしてしまうと、動きが悪いまま筋肉がついてしまうので、自分の筋肉が自分を締め付けるだけで、他の大切な筋肉の動きすら悪くさせてしまうのです。ですから筋トレは自分勝手に行なってはいけません。インターネットや本を見て、テキトーにやってはいけません。むしろ不必要な筋肉を落とさなければならない人が多いです。一人一人の身体の状態は全員が違うので、やらなければならない事は、全員がすべて違うのです。ですからスポーツ整形のドクターからの身体所見が、スポーツ指導になくてはならないのです。



    これは加速度センサーのデータの一部です。これは私の腰に取り付けて実射した春のデータです。5射のデータで、右下は弓を持たない状態での直立静止時の参考データです。左上から1射目で合計5射してますが、どれもほとんど同じ波形で、重心の移動量は限りなく少ないものになっています。これはリリース前の1秒と、リリースからの0.5秒のデータです。クリッカーの音を聞いてリリースする直前に、サイレントピリオドの状態を毎回必ず発生させています。0.05〜0.07秒間の短い時間に発生する、速筋繊維からの筋放電が止まって弛緩する瞬間です。この短い瞬間の直後にストリングが指先から離れていき、ストリングがリムを叩いて矢が発射された衝撃が、グラフに大きく表れています。

    大事なのは発射されるまでの波形が一定であるかどうかと、サイレントピリオドが正確に発生しているかどうか、サイレントピリオド状態のときに速筋が弛緩している最中に、矢を送り出すまでの間に遅筋で正しく骨格を保持しているかどうかで決まります。速筋が作用している状態で「エイヤ!」とリリースをブチこんでいるような射ではいけません。身体の力の向きを容易に動かしてしまう身体の大きな速筋が、ストリングが矢を送り出している最中に身体を動かしてしまうからです。フォームが美しく見えても大菱形筋で肩甲骨を引き寄せることができておらず、僧帽筋中部繊維などの速筋だけを作用させて肩甲骨を外側から背骨に向かって押さえ込んでいる人は、このサイレントピリオドを迎えようとした瞬間に破綻します。速筋だけでフォームを固めているからです。腕力で弓を引いてる人は、もっと悲惨です。リリースの瞬間に腰にぶら下げているクイーバーが動くようでは、この加速度センサーのデータのどこを見たらそれが発射の瞬間なのか、探すのが大変なほどです。

    人間の身体は生体として活動しているために、人形のように固定することができません。たとえ静止しているように見えても、1000分の1ミリ単位で常に身体は前後左右に動いています。たとえスーパースローモーション映像を見ても、それらは一切わかりません。しかし人間の身体の中では全身の感覚受容器がその変化を察知して、目に見えないような小さな動きですらも重心の移動の修正を常に行なって直立できているのです。でもそれは、自分の中での感覚として捉えることはできないのです。そうです。自分の身体が行なっていることであるにも関わらず、それを自分で気付くこともできないのです。ですから射の最中に重心にズレが生じていたとしても、それが適正な位置に修復できなかったとしても、気付くことはできないまま矢を発射してしまいます。ですから実射を行うよりも先に、運動に関わる脳と神経を発達させることが先決であり、俗に言う脳トレを行なって脳内の運動野を活性化させておかなければならないのです。これまで通りの実射を続けながら後付けのテクニックが自分の点数に良い影響をもたらすことがないのは、そのせいです。

    サイレントピリオドを自在に発生させることができるようになると、その最中の射の自分の動作がすべてスローモーションのように感じるようになります。ですからリリースをしようとしたときにサイトピンにズレが生じていた場合に、そのズレを修正しようとする力を発生させることもできるようになるのです。このデータを見ると、4射目にはクリッカーの音を聞いたあとのサイレントピリオドが2回発生していることがわかります。この時はクリッカーの音が聞こえた1回目のサイレントピリオド時に心拍が重なってしまったために、サイレントピリオドの2回目を発生させてリリースの動作に持ち込んでいるものです。

    そのため通常のリリースタイミングよりも発射されるまでの間に、0.05秒ほどのタイムラグがあるのが見てとれます。これは神経系を徹底的に鍛え上げた人間の神経の伝達速度の最大限の反応ですが、自分の意識の中にのぼることはありません。神経の反射の中で行なわれるメカニズムです。研ぎすまされた敏感な人であれば、何となくわかる程度ですが、もしも気付いたとしても、それは矢が発射されたあとの話です。脳まで伝わるスピードは、そのくらい遅いのです。考えながら射っているようでは、あなたの身体は弓に弄ばれます。

    そのため、その射を見ている人は誰も気付きません。そのタイムラグすら絶対に感じることはありません。もしも他人の射を見てそれに気付くことができるとしたら、自分の身体の各部を1000分の1秒単位で自由自在に操ることができているハズです。どんな距離からでも、きっとXにしか当たらない腕前になっているハズです。

    しかしそれは不可能なのです。なぜなら、スーパースローモーション映像と筋電計の組み合わせでも、これらの判別がつかないのです。人間の反射神経は、どれだけ鍛えても0.05秒よりも短くすることができません。脳に情報が到達するまでの間に、身体で行なうすべての処理が終わっているのです。ですから神経細胞につながった感覚受容器が受け取ったシグナルは、いちいち脳まで情報を伝えることはありません。実際には伝えるには伝えているのですが、あまりの情報量の多さに、事後処理報告を詳細に伝えないといったところでしょうか。そのため自分の感覚として知らせることをしません。射というのは、そのくらい速いスピードで行なわれているものなのです。ですからレスポンスが高い高性能な弓具を使わず、反応がマイルドな鈍重な弱い弓具を長く使わなければならないのです。最初から高性能な弓具を使っていたら、あなたの脳ミソが弓具のレスポンスの高さに目を回してしまうのです(笑)

    こうしてゾーン状態で射に持ち込むことができるようになると、このようにして身体が勝手に心拍の間に合わせて射つようになります。それができるようになるプラクティスを刻みつけるために、一見アーチェリーとは関わりのないような複数のトレーニングを、スポーツ理学療法士の先生からレクチャーを受けているのです。それらのトレーニングで、脳が開いている状態を作り出すのです。それが効果を最大に発揮させるためには、アーチェリー選手は平常時心拍数の少ない大きな心臓と、全身の血液量の多い身体を養わなければなりません。そして心拍が上がらず呼吸数の少ないアーチェリー競技においては、少ない酸素供給量であっても筋肉が最大のパフォーマンスを上げるための、アスリートとして基礎的な身体能力の高さを養わなければなりません。ですから実射が大切なのではなく、普段からランニングやロードバイクなどの有酸素運動を徹底的に行い、アーチェリーよりもむしろ持久力運動が好きにになっておかなければならないのです。ですから、アタマもカラダも良好な状態を作り上げておかなければなりません。

    このトップアーチャーの射は、まだアーチェリーをやったことがない完全なる初心者であれば、誰でもマスターすることができます。最初からこのプラクティスを組み込むためのリハビリとトレーニングを実射の前に取り込むことができるからです。この身体の使い方をマスターしてしまえばそのプラクティスは死ぬまで自分の身体に刻み込まれているので、アーチェリーを10年やめても20年やめても、復帰しようと思えば復帰することができます。私が17年間も自分で弓を引くことがなかったにも関わらず、17年ぶりにケースを開けて弓を取り出して、アーチェリー場にも行かずにトレーニングだけを行い、サビたバッジを探し出して競技会に出場していきなり優勝復活デビューして京都府連の登録選手を驚かすことができたのは魔法でも何でもなくて、現代のスポーツ科学プログラムにあります。

    スポーツの上達に秘儀も奥義も魔法もありません。正しいドローイングのアプローチと、正しい骨格のポジションに誘導させるための筋肉の使い方によるものです。これらのプラクティスは一度刻み込んだら死ぬまで永遠に消えることがないのです。選手を引退してから失っているものは、射に必要な筋力だけです。それらは決して弓を引かなくても再び養うことができます。アーチェリー場に行かなくても何の心配もありません。再び取り組む年齢も関係ありません。正しい身体の使い方を最初に学べば、練習を続けなくても上級者でいられるという事なのです。最初に間違ったものをプラクティスとして身体に覚えさせてしまうことが、とても困ったことになるのです。

    これは、単に実射を続けているだけでは会得することはできません。後から筋トレしてもまったく意味がないのは、後から養った筋肉が、これまでのプラクティスの中で作用することがないからです。ですから、先に実射をさせてしまうと、後からどれだけ筋トレしても、そこで鍛えた筋肉を実射のなかで使うことができません。ドローイングのアプローチに誤りがある場合は、それを構築しなおさないかぎり不可能なのです。中級者の場合は、数ヶ月もの間弓を引かない期間を設けて、マイナスの状態からプラクティスを再構築しなければなりません。自分が上級者だと思い込んでいる人であっても、このデータを見ると愕然とします。どうして自分が思ったようにレベルを上げられないかが、具体的にわかります。その状態でどんなトレーニングをやってもムダなのです。聞き分けのない人には言ってもムダなので、このようにして数値が示してくれます。身体の状態を指し示す数字は残酷なのです。

    他でアーチェリーを取り組んできた多くの人は、正しい骨格のポジションに誘導させるための筋肉の使い方が異なるために、大切なインナーマッスルが使われておらず、クリッカーの音を聞いた瞬間に速筋が総崩れしているのです。クリッカーの音が聞こえるまでのフォームに誤りがある場合は論外です。そこにどんなテクニックの上塗りをしても、何も変わりません。弓の力を骨格で正しく支えておらず、筋肉を総動員した状態を維持してきて、それをクリッカーの音が聞こえた瞬間に、矢が飛び出してしまうまでに様々な角度から身体の力の向きを変えてしまい、矢が飛び出している最中に動いてしまうからです。

    多くの人が、たくさん練習したら上手くなると思い込んでいます。しかしそれが本当なら実射しているだけで上手くなるはずです。しかしそんな人はどこにもいません。しかしスポーツ科学の力を自分のものにすることで、誰もが自分の身体のポテンシャルを発揮させることができるようになるのです。

    かつて、スポーツなんてやったことがないという、男子4名・女子4名が入部してきた母校のアーチェリー部を指導して、8人全員をインターハイ出場選手として育成してインターハイに送り出したことがあります。大勢いる部員の中からメンバーを選んだのではありません。男子4名女子4名しかいない部員をひとり残さず全国レベルに育成できなければ、無理な芸当です。男女ともにその中から1人ずつが全国選抜に出場を果たしています。ただひたすら実射をさせるだけで、そんな事は起こり得ません。それができたのは、一人一人の身体の基礎的な能力を高めた上で、当時のスポーツ科学トレーニングを応用して実践してきたからです。

    その当時行なってきた事が、今になってやっと、最新の取り組みと言われるようになりました(笑) しかし現代ではもっと様々なことを解明できているので、正しい事を学びさえすれば、誰もが上手くなることがとても簡単になりました。アーチェリーをやったことのない完全なる初心者や、スポーツもやったことのないアスリートレベルの低い人、それに身体に問題を抱えている人などが、数年で全国大会に出場できる上級者になるのです。それは指導者の長年の経験や勘のようなものではありません。大きく射つとか、まっすぐ押すとか、そんな抽象的なものではないのです(笑)

    生徒を並べて射ち方を教えるのがスポーツ指導ではありません。そんなアーチェリーごっこのようなものから何かを学べると思ったら大間違いです。指導者は骨格や筋肉に関わる事項に精通してなければなりませんし、理想のお手本を示すことができなければならないのです。それは身体の外側も、身体の中身においても理想のお手本を示すことができなければなりません。言うだけだったらダレでもできるのです。自分にはできないことを人に教えることなど不可能なのです。アスリートとして理想的な肉体と頭脳を備えて、究極の理想を自ら示して誰もがわかりやすく説明することができなければ指導者とは呼べないのです。習字がヘタクソな習字の先生はいないのです。芸術的なセンスがない人が華道の先生はできないのです。あなたを教えてくれたアーチェリーの先生は、どんな人でしょうか?口先だけで理想を語るような指導者であれば、インターネットの方がマシというものです。

    この冬の間のオフシーズンは、とてもとても貴重なオフ期間です。射てば射つほど、自分の時間を失います。それよりも、世界最高クラスのスポーツ医療の専門家と一体となって、アーチェリーの指導を受けてください。あなたの身体所見に基づいて徹底的にリハビリを行ない、あなたの身体の状態に合わせた個別のトレーニングをプログラムします。そしてアスリートとして理想的な身体を手に入れて、スポーツをする喜びを自分のものにしてしまいましょう♪

    激安アーチェリーケースと ふわもこリムカバー

    2015.12.29 Tuesday

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      ■高級リムに付属する 使えないリムカバー

      ちょっと高いリムを買ったら、リムカバーが付属してきます。しかしこの専用品として付属するリムカバー、アーチェリー専用品にも関わらず、リムカバーとしての使いにくさは世界最高レベルです(笑)



      特にこのタイプが最も使いにくいです。リムを入れるは大変で、出すのはもっと大変です。カバーの素材が固すぎるので、出し入れしているうちにリムの塗装を傷めてしまうこともあります。それにこのリムカバーは、裏返して中に溜まったゴミを取り除くこともできませんし、洗濯機で洗うと完全に乾くのに時間がかかります。ですからアーチェリーの組み立てと収納を頻繁に繰り返すようになると、メーカー純正のリムカバーを使うのが、すぐにイヤになります。



      これは私の母が25年以上も昔にキルト生地で作ってくれた、アーチェリー用品それぞれの収納袋です。この中には私の妻が高校時代にアーチェリーをやっていた時に使っていたものや、アーチェリーショップの奥さんが心を込めて作って下さったものもあり、今でも大切に使っています。これらは使ってみればわかりますが、メーカー純正のリムカバーよりも、キルト生地のリムカバーのほうが、はるかに使いやすいです。使ったリムを拭き取りながら収納することができるので、リムをいつまでも美しい状態に保つことができます。リムカバーは洗濯機でジャブジャブ洗うことができます。前の日に洗えば翌日には乾いています。とっても便利です。

      リムカバーなんて的中に関わるパーツではないので、使いづらい純正をムリして使い続けることもありません。必要にして十分な保護ができる収納ができればいいだけです。リムという形の変わった長いものを、出し入れしやすい収納袋があればいいのです。タオルで巻いてケースに収納している人もいます。ケースに入れてゴトゴト、ガタガタしなければいいのです。

      ■リムカバーについての質問

      以前に紹介したなかで、このハンドルとリムを保護している長い袋が何であるかの質問が寄せられました。この下の画像に使われている、ハンドルとリムを収納しているカバーです。今回はハンドルは25サイズ、リムは68サイズです。標準的な男性のサイズの組み合わせ例です。



      これは何を流用したものだと思いますか?私の周囲のアーチェリー選手のなかでリムカバーに流用しているものが多いのは、洋式トイレで使う便座カバーです。リムカバーとして使えれば何でもいいのですが、便器に使うものは、アーチェリーに対するイメージとは僅かに合わない気が、しないでもありませんね。これはダイソーで売ってるロングソックスです。便座カバーがいいのか、靴下がいいのか、何がマシかはわかりませんが、無機質で堅苦しいイメージのアーチェリーの世界なので、ほんのチョッピリ可愛らしいものを選んでみましょう♪



      余談ですが、アーチェリーケースとして使っているガンケースですが、ケースに付属している固定用ベルトにサイトのTバーを差し込むことで、さらにスマートに収納できます。アーチェリーケースにはない、細やかな製品づくりには脱帽です。このガンケースに慣れたら、単なる道具箱でしかないアーチェリー専用のハードケースにお金をかけるのがバカらしくなります。

      ■ふわもこ あったか素材

      このリムカバーとして使っている冬用ロングソックスは、70サイズのリムまでも収納することができます。伸びる素材なので、ハンドルのような複雑な形状にも対応します。出し入れするときに、純正のリムカバーのような面倒クサイこともありません。



      何せダイソーで1組200円(税抜)です。ステップアップ用にポンドの異なる安いリムを何セットも買うような場合には、これらが重宝します。キルト生地を買ってきてミシンで縫っても簡単にリムカバーをつくる事ができますが、初めて作るときは慣れないものだから、どうせミシンと格闘して睡眠不足になってしまうものです。そこに時間と手間をかけるのがもったいないと思うなら、このソックスを使うといいでしょうね。



      あったか素材で、ふわもこです。カラーは黒もあります。ソックスというのをアピールするために目立つカラーを購入しましたが、ハンドルやリムを収納するカバーに存在感を持たせなくても大丈夫です。



      冬用ソックスなので、もちろんこのようにして履くこともできます。真冬のアーチェリーは身体に良くないので、寒い場所での実射は、暖かい服装で行って下さい。ただし、脱いだソックスをそのままリムカバーに使うのはやめて下さい。いちど履いたソックスは洗って使いましょう(笑) リムカバーとして使うときも、一度洗濯機で洗ってください。最初からいきなり使うと、ふわふわの毛クズがポロポロ落ちてきます。

      ■アーチェリーケースとして人気沸騰



      これらのガンケースは私たちの指導組織けいはんなアーチェリーで、急激な人気の高まりを見せつつあります。少し在庫しておくつもりが、すぐに在庫がなくなる人気ぶりです。指導のときに弓を数セット持ち運ぶために、ケース本体が軽くて本当に助かります。

      というよりも、全部で5セット買っても 24,900円なのです。5セット買っても、アーチェリーケースを1つ買えるか買えないかといったところです。これらはすべてB品として売られている、訳あり品の新品です。ケースなんて使っているうちにキズだらけになるものなので、実際の使用に問題がなく、中身を保護するための機能を果たすことができれば十分です。カード入れのプラスチックに折れ目があったり、1回射場に持ち込んだらつきそうな、こすれがあればB品です。日本の検品の精度は高すぎます。本当にどうかと思いますね(笑) B品はイヤという人は、通常に売られているものを買うといいでしょう。それでも 6,500円程度です。アーチェリーケースとしては破格です。



      このようにして5セットのアーチェリーを収納して重ねてみると、何とかこの状態を保つことができます。しかし触れると転がり落ちてしまうので、重ねて置くなら通常は3セットまでにしておいた方がいいでしょうね。駅のホームなどでは、絶対に重ね置きしないでください。重ねて置くのは、自分の弓具を自分の部屋に収納するときだけです。



      今回は、ひとつはロングタイプの115cmを買ってみました。弓具を2セット収納できると聞いてましたが、このように実際に余裕で収納することができます。27インチのハンドルだろうが、70サイズのリムだろうが余裕です。いやはや、見事です。もうアーチェリーケースには戻れません。



      カードケースは名刺サイズなので、自分の名刺を入れておけば他の人が間違えて開けてしまうこともありません。自分の道具には自分の名前を記しておきましょう。

      このアーチェリーケースとして使っているガンケースは、国内での在庫が急激になくなりつつありますね。アローケースとして使っている、ダイソーで売られている大型の書類ケースも、近所のダイソーでは頻繁に売り切れるようになりました。私の周囲では、このようにしてアーチェリー愛好家が増えています。

      ■アーチェリーというスポーツの値段が高いワケではない

      アーチェリーが高いという人がいますが、それは高い弓具や高い用品類を買わされているから高いのです。初心者に普及モデルを勧めずにハイエンドモデルを勧めるようなショップは、あなたの顔をお金にしか見ていないのです。そんなショップとは距離を置くべきなのです。

      このケースを実勢販売価格で売るために仕入れるアーチェリーショップが出てきたら、それはそれは良心的なショップだと思います。しかし多くのショップでは、ありとあらゆるイイワケをしてアーチェリー専用品で固めようとするでしょうね。

      アーチェリーが一般スポーツとして普及しない最大の理由は、アーチェリーの道具にお金がかかるということでした。しかしそれはもう遠い過去の話です。今では最初からソコソコ良い弓具を買い揃えても、総額4万5000円くらいしかかからないのです。それを使ってブルーバッジ(70mラウンド600点)くらい余裕で達成できる性能があるのです。

      1本10万円の高級包丁であっても、研いだあとは手ぬぐいを巻きつけるだけですよ。アーチェリー用品を収納できればいいだけの道具箱に、何万円もかける世界が正常だとは思わないほうがイイのです♪

      レベルの低い選手ほど高額なフラッグシップモデルを使いたがりますが、自分自身が大幅にステップアップしない以上は、絶対に使いこなせないので、豚に真珠も同じです。総額4万5000円の弓具で当たらないのであれば、それ以上の高性能の世界は永遠に知り得ることができないので、完全にお金のムダづかいなのです。言いかえれば、アーチェリーほど物欲の沸かない機材スポーツはないのです。そこに気づかないから上手くなれないのです。あなたは、お金と得点の両方を失っていることに気づいていないのです。

      みんな順序が違うのです。弓具につぎ込むお金と同じ金額を、まずは自分の身体に投資してみるといいのです。弓具を買うのは最後です。それをしていないから上手くならないのです。その場に立ったまま両目をつむって1分間瞑想して、両足で自然に立っているハズの自分の体のバランスコントロール能力がどれだけのものなのか、確かめてみるといいのです。基本性能が低いその身体に、どれだけ高性能な弓矢が必要だというのか?チビッコだってそのくらい理解してますよ。大人だったらそんなコト、考えなくてもわかるでしょうに(笑)

      頭は使うためにあります。しっかりと頭をつかって、賢くスポーツを楽しみましょう。絶対に使いこなせない初心者に、6ケタもの金額を使わせようとする、良心的でないショップの言いなりになっていては、上達も普及もしないのですよ。何を買って使うのも勝手だと言うのは、製品の設計通りの得点を出してからにしないと恥かしいのですよ♪

      ムダに高すぎるアーチェリーケースを買わされないために

      2015.12.18 Friday

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        ■道具の入れものに数万円払わされる非常識なアーチェリー業界

        アーチェリーを始めるために弓具を購入する際にアーチェリーショップで見積もりをもらうと、そこにはアーチェリーケースが記載されている事が多いです。

        アーチェリーケースは、アーチェリー用品を収納したり運搬するためのものです。専用のケースはハードケースとソフトケースがあります。飛行機で遠征を頻繁に繰り返すようなレベルの選手であれば、万が一の破損を考えてハードケースを選ぶこともあります。しかし通常は電車や車などでアーチェリー場へ行く人や、各都道府県内での競技会に参加するレベルであれば、堅牢なハードケースは必要ありません。

        アーチェリー専用のハードケースと言っても、ケース本体は樹脂製です。アルミパネルを使った本格的なものでない限り、落下や衝突などの衝撃から弓具を守ることができるほどではありません。同じ樹脂製であってもポリカーボネートのような強い素材であれば丈夫ですが、実際は柔らかいABS樹脂などですので、ケースの角を地面にぶつけただけで、カンタンに壊れてしまいます。それに樹脂製のものは使いだして数年したら、加水分解で破損することがあります。ケース本体は割れなくても、持ち手の部分が壊れてしまうこともあります。なのに3万円近くもします。ですから最近ではハードケースよりも、丈夫なナイロン製のソフトケースを選択する人が増えました。

        ■アーチェリーケースのどこが便利なものか

        弓具は安全に収納できればいいだけなので決して専用品である必要はなく、バッグでもリュックでも何でもかまいません。テニスやバドミントンのラケットを収納できるバッグなどを、アーチェリー用として流用されてる方も多いです。探せば意外に安くて流用できるものがいろいろあります。アーチェリーケースはアーチェリー専用品として作られているものが多いのですが、ハードケースに関しては、どのメーカーもサイズの異なる製品を作りません。体が小さな人も大きな人も、体格や性別関係なく、31インチの長い矢が収納できる大柄な体格の人が使うケースしか選択の余地がないのです。

        様々な交通機関を使って競技会に参加したことがある人ならすぐに思い知ることになりますが、アーチェリー用のハードケースは、とにかく取り回しが悪くて不便です。ハードケースの容量が大きすぎるのです。ケースが左右に長くて、最近のケースは幅が広いです。弓具を2セット収納するトップレベルの選手のことを考えているのかも知れませんが、一般的な選手は競技会には弓具を1セットしか持ち込むことはありません。

        容量が大きいのでハードケース本体がズッシリ重いです。アーチェリー用品1セットの重量は大したことないのに、重たいケースに収納してしまうのと、キャスターを装着するための部材が装着されているのでそれこそ重く、転がしている時はいいのですが、駅の階段などでは大変な目に遭います。転がしているときは、必ず片手がふさがります。それに人の多い駅の構内で、異常なまでに長すぎるキャーリーケースを、大人数で転がしているのは周囲にも迷惑です。

        他府県などの競技会に、チョッピリ観光を兼ねて出かけたときなどは、本当に困ります。アーチェリーケースが入るコインロッカーを探すだけでも大変です。4人でタクシーに乗ろうと思ったら、人数分のアーチェリーケースがトランクに入らないので、後部座席に座った3人は、まるで拷問でも受けているかのようにヒザの上にケースを重ねて、目的地まで早く着かないかとガマン比べをするハメになります。こんなに不便を強いられるのに、持ち運びに必要だからと言われて見積もりに書かれて、仕方なく買うことになるのです。しかしそこにはビックリするようなネダンが書かれています。アーチェリー用品のネダンの付け方は異常ですが、定価が3万円を超えるものが、少し値引きされて書かれています。総額3万円の弓矢でも50m・30mラウンドで660点を越える性能のものが手に入るというのに、ケースだけで3万円ですよ。アーチェリー業界のネダンの付け方の異常ぶりは今に始まったものではありませんが、これではサイフの中に入れるお金もないのに、ヴィトンのサイフを買わされるようなものなのです。ちなみに、高額なアーチェリー用のハードケースがこんなに売れてるのは、日本くらいなものです。売れているのではなく、売りつけられているのです。まったくもって、意味不明な日本のアーチェリー界の現状です。アーチェリーケースなんて、単なる道具箱です。ムダに高いアーチェリーケースを売りつけようとするから、日本のアーチェリー人口が増えない要因を作ってしまっているのです。それでは、外の世界に目を向けて見ましょう♪

        ■価値のある高校生のアイデア

        高校生たちにはなるべく負担にならないように、価格と性能が見合ったアーチェリー用品を提案しています。安くてそれなりというモノではなく、安くても最高に性能を発揮できる、的中性能に優れた弓具です。購入当時の金額は、ハンドル1万3500円(プランジャー・レスト付属)、リム10500円、サイト3300円、センターロッド3000円、スタンド2400円、クイーバー3700円(ベルト付属)、タブ2000円、チェストガード1400円、アームガード500円。ストリンガー600円、ストリングは私が作って全員に数本ずつタダであげました。そんなところで、ちゃんと競技会に参戦している彼らのアーチェリー用品の総額は、40,900円です。

        「そんなに安いの!?」とアチコチから問い合わせがありますが、これがアーチェリーというスポーツの本来の在り方です。私はこれでも高いと思っています。アーチェリーなんて、しょせんは弓矢です。どんなに弓や矢の性能を高めたところで、数万円のライフル銃から発射される、一発数十円の弾丸にすら的中能力では敵わないのです。7500円のハンドル、1万円のリムで、各都道府県の競技会で賞状もらって帰ってくるというレベルまでは余裕でクリアできるのです。アーチェリーを始めて1年や2年のそこらで、世界トップレベルの選手が使うような高額すぎる弓具は一切不要です。

        総額4万円のアーチェリー用品一式を、3万円もするアーチェリーケースにブチこむのは、それこそバカげています。アーチェリー用とされているものは、そのクオリティーに関わらず異常に高額なものばかりです。それはソフトケースとて、同じです。中に硬質ウレタンマットが敷き詰められているワケでもないのに、優に1万円を超えます。これがおかしな世界だと思えない人は、冷静になって他の業界に目を向けたほうがいいでしょう。



        高校生たちは、このようなバッグを探してきて、アーチェリー用品を収納してました。最初はアーチェリーケースかと思いましたが、これはライフルケースです。狩猟や狙撃に使われる実銃を運搬する時にも使われますが、サバイバルゲーム愛好家が、エアソフトガンを収納・運搬するときに便利なケースです。販売しているサイトにもよりますが、実勢販売価格は、6000円台とか7000円以内であります。



        ロングタイプは全長が115cmもあります。ライフル銃を2本収納できるタイプです。アーチェリーよりも重たいライフル銃を2セット収納する設計なので、とても丈夫に作られています。ハンドルやリムを2セット収納して、同じスペースにクイーバーまで収納しても、まだまだ余裕があります。このように仲間とケースを共有している生徒もいました。ハンドルとリムを2セット収納しているにも関わらず、外側に設けられた大型の収納スペースに、矢を収納して持ち運んでいました。すごいです。

        中には硬質な4cm厚の波型ウレタンシートが敷き詰められているので、中身を収納しなくてもケース本体がしっかりしていて、形がくずれません。アーチェリー用として販売されているソフトケースよりも質感が高くて丈夫です。実銃のライフルを2セット収納すると、銃の重量だけで5キロにもなるそうです。アーチェリーとは比べ物にならないくらいハードな用途として使われることが前提の製品なので、アーチェリー用品の収納と運搬を考えた場合は、オーバークオリティーかも知れません。でもアーチェリーケースよりもはるかに安いので、使わない手はありません。



        小さなサイズのものでも、85センチです。こちらはアサルトライフルを収納するためのケースです。同じく波型スポンジが入っていて、ハンドルとリムを1人分しか収納しないのであれば、同じスペースにアローケースを収納することができるそうです。

        外側にはこんなに大きな収納スペースがあります。彼は大型のクイーバーとサイトを収納してました。収納が大きいので着替えやタオルなど、何でも入るそうです。これひとつで競技に出場するための荷物、食事や飲み物のすべてを収納して参加できるそうです。どちらもリュックとして背負うことができるので、両手がふさがらずにフットワークが軽くて便利なのだとか。これは参考になりますね。

        ■買って使ってみる。

        私も早速購入してみました。生徒たちが使っている状況をよく見て、実際の使用感を詳しく教えてもらいました。1人で1セットのアーチェリーセット、あったとしても予備のリムを1セット同時に収納することを考えても、115センチのサイズは持て余しそうです。85センチのサイズを2つ購入しました。購入先はこちらです



        こんな大きな段ボールが2つも届きました。発注した商品のサイズを間違えたのかと思ってビックリしました。箱の容積の7割は、梱包した場所の空気です(笑)注文する場合は、自宅に大きな荷物が届くことを家族に伝えておいてください。でないと自分が留守をしている時に誰かが受け取るような場合に、ビックリさせてしまいます。箱の大きさの割りに軽いので、そのギャップにもビックリします。

        ■アーチェリー用品の収納



        弓具を収納したら、こんな感じです。立てかけたときに右側が底になるので、重量物を右側に集めます。アローケースに1ダースの矢を収納して、アローケースとセンターロッドをケースの奥に寄せます。上からセンターロッド、アローケース、リム、ハンドル、サイドロッド、ボウスタンド、リムの左側にポーチに収めたVバーとエクステンションロッドを置く、という具合です。波型ウレタンはオリジナルの向きではなく、逆向きに取り付けることでケースの底にアローケースを収納するスペースが生まれます。

        収納しているリムは68サイズです。サイドロッドの配置を変えれば、予備リムとしてもう1セット同じスペースに収納することができます。ハードケースではないので必ずしもケースの形にキッチリ合わなくても、ファスナーを締めることができます。ハードケースと同じようなサイズですが、ハードケース以上に荷物が入ります。不必要な部分があれば、ウレタンを切ったりカッターで削ったりすれば、もっといろいろ詰め込むことができます。ケース本体が軽いので、パンパンに詰め込んでもそんなに重たくなりません。



        外側の大型の収納スペースには、生徒と同じようにクイーバーを収納します。サイトのバーをここに収納してもいいですね。サイトの扱いに慎重になるのであれば、ウレタンシートがある底に収納すればいいでしょう。車に踏まれるようなことにでもならない限り、どこに収納しても大丈夫だと思います。

        横の2つのポケットには、一方にはタブやプランジャーなどの小物を収納します。もう一方には工具類、ストリングワックス、接着剤、メジャー、一部の工具類を収納します。

        ■立たないハズが立った!



        自立はしないと聞いてましたが、重量物が下になるように工夫して、底面があるアローケースを入れると安定するために、自立させることもできます。



        ただし、屋外で風が吹いたら倒れてしまいます。風が吹いたら倒れるのはハードケースも同じですが、ハードケースのように「ガシャンッ!」と大きな音をたてて倒れません。アーチェリー用品一式が入っているにも関わらず、クッション性の高い4cm厚の波型ウレタンが衝撃を見事に吸収するために、ちゃんと中身を保護して大きな音はたてません。倒れても、「ボスン」といった感じです。精密なライフル銃や、取り付けられたスコープの状態を保護する性能があるので、ガンケースはナイロン製のアーチェリー用のソフトケースよりも圧倒的に優れてますね。



        背面にはファスナーが取り付けられており、手提げバッグとして使い背負わない時には、背負う部分を収納することができます。ここには広いスペースが設けられているので、入賞して大きな賞状をもらった時には、ここに収納すればキレイに持ち帰ることができます。クリアファイルに入れた書類などを隠すようにして持ち運ぶこともできます。



        背負う部分を出した状態です。アサルトライフル2セットと弾薬類を持ち運ぶことが想定されており、実際にそのような使い方をすると総重量は10キロ近くにもなると思います。そんな用途に耐えうるように大型のショルダーパッドが装着されてるので、アーチェリーを1セット収納して背負っても、学校から帰ってきた子供のランドセルを背負うよりも軽く感じるくらいです。身体への負担が少なくなるように各所に工夫が凝らしてあるので、とても使いやすいものになっています。



        こうして並べてみると、アーチェリーケースがいかに大きなものかがわかります。最近のケースはもっと厚みがあって全体的に大きいので、実際の取り回しが大変です。ガンケースは収納・持ち運びともに楽で便利です。ハードケースは使っているうちに割れてしまいますが、このガンケースなら割れる心配はありません。汚れても洗濯機でジャブジャブ洗えます。洗って防水スプレーでも噴霧しておけば、試合が雨でも平気です。傘をさして背負って歩けばリュックサックと同じ感覚で荷物は濡れません。アーチェリーケースを転がしながら傘をさせば、両手は完全にふさがってしまいます。大きなトロフィーをもらったらリュックには入りませんよ。口にくわえて持って帰るのですか?(笑)

        ■番外編 矢の収納と最大運搬能力



        矢の最大運搬能力は3ダースです。ここに見えているアローケースは2つですが、もう1つはハンドルやリムと一緒に内部に収納しています。36本もの矢を運ぶことなどありませんが、もしも誰かのアローケースを預かったような場合などは、このようにしてケースに付属しているバンドで装着することができます。傘などの長物を装着する時も便利ですね。これを書いてて気づきましたが、バンドがもうひとつ設けてあるので、背面にもう1セットのアローケースを取り付けることができますね。そうなると4ダース48本もの矢を運搬できます。いやいや、そんなに大量の矢は必要ありません(笑) とにかく運搬能力が優れたバッグには間違いありませんね。



        もちろん、何ら問題なく背負うことができます。自立しないはずでしたが、ここまでやると安定感が出てきました(笑)

        これらのアローケースは、ダイソーで購入した1本300円のものです。以前は1本200円で売られてましたが、今では値上がりして1本300円です。それでも安いです。中に穴をあけたスポンジを入れたら、アローケースになります。こうして自分で用意すれば、1本400円もしません。

        今回アーチェリーケースとして仕入れたガンケースは、「訳あり商品」というのを探して購入しました。キズものや、微妙な色ムラなどがあって通常価格で販売できないもののようです。これらはどちらも4,980円でした。これは送料込みの価格です。2セット購入して1万円でお釣りがきました。クレジットカード払いなので、手数料も振込料金もかかりません。

        通常はアローケースは1本あれば十分ですので、ガンケースとアローケースをそれぞれ2セット用意しても、合計金額は10,660円です。1セットあたりの金額は5,330円です。安いです。というか、本当はこれが普通なのだと思います。アーチェリーの世界に長くいると、モノのネダンの感覚が狂ってしまいそうです。アーチェリーの常識、世界の非常識(笑)



        上部にはカードケースが付属しています。しかしIC乗車券や定期券、クレジットカードや運転免許証などのような大事なカードは入れないでください。今回は撮影のために全日本アーチェリー連盟の会員証を入れてますが、会員証を紛失したら困るので、ここには前年度の会員証を入れておくのがいいかも知れませんね。アーチェリー用のハードケースに、自分の名前を記している人はほとんどいません。ケースのメーカーは主だったところは2社で、みんな似たようなカラーを選んでいるので、中を開けてみないと誰のケースかわからなくなることもあるほどです。しかしこのようなカードケースがあれば、自分の名刺なりネームプレートなりを入れることで、荷物が迷子になる心配もありません。

        ケースの目的は、アーチェリー用品の保護と収納です。基本的には地面に置くものなので、美観を気にする必要はまったくありません。なので訳あり商品のB品を購入しましたが、別に破れているワケでもなく、使用において問題となるようなものは感じません。気にする人はB品ではなく、ちゃんとした製品を購入すればいいと思いますが、アーチェリー用品なんて使えば使うだけキズが増えていく性質の機材なので、あんまり神経質になりすぎないでくださいね♪

        明日からは、けいはんなアーチェリーの合宿です。2日目はスポーツ整形のドクターによる、メディカルチェックの診察があります。お金をかけなければならないのは、道具じゃなくて、自分の身体です。このようにして、誰もが高度なスポーツ医療チームと一体となったスポーツ指導を受けることができるのが普通という状態を作り上げていきたいと考えています。
         

        本当の事をダレも知らない 激安グラスリムの的中性能

        2015.12.15 Tuesday

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          ■リムのお話

          今回は、問い合わせフォームで質問の多い、リムについてです。質問の多いのは2点です。ウッドコアがいいか、それともフォームコアがいいかという点。それにリムを買い替えようと思うが、どんなカーボンリムがいいのかという点の2つに集約されます。

          そんな質問自体が不思議です。カーボンという素材がアーチェリーで使われるようになるまで、選手は何点を出していたかを知らないのでしょうね。そもそもリムがカーボンでなければならない人って、どんな人なのでしょうか。そういうときは決まって逆に質問を投げかけます。「これまでお使いになられてたリムに、どういった不満があって買換えを検討されてるのですか?これまでお使いのリムで、何mで何点がでましたか?それが実質ポンドの弱さではなく、リムの性能が不足していると思われてることで、どんな状況でどんな不具合が発生していて、そのせいで的中にどんな偏差が見られるのか、そのポイントを具体的に教えてください」と。

          そうすると、ほぼ間違いなく、その質問に対するまともな回答が返ってきません。とらえどころの無い、抽象的なものばかりです。どう考えてもリムの性能が大幅に不足しているのが原因で高得点が出せないのではなく、次に新しいリムを買い替えることをまず決めていて、自分にとって何を購入したら良いかが判断できないために、不思議な質問を投げかけてきます。

          ■初心者へのセールストークは詐欺も同じと思うべし

          リムは1万円にも満たない初心者用のものから、買い求めやすい中級者用、それに10万円を越える上級者用のものまで、様々な価格の製品があります。アローシャフトと同じで、自分で何を選んだらよいかわかりません。本当の上級者以外は自分で使って、その性能が自分に出せる得点においてどのような影響を及ぼすのかを、確かめる術もありません。

          ですからアーチェリーショップに聞きに行くのですが、「何がいいですか?」と聞くと、ショップのいいカモです。先日もあるショップの見積もりを元に相談を受けましたが、初心者が最初に購入するグレードとして有り得ない製品が記されてました。そんな相談ばかりです。

          ショップでは、そのリムに使われている難しそうな名前の素材を次から次へと並びたてられて、宇宙航空技術からのフィードバックで、なんちゃらカーボンを使って、ネジレ剛性の高さ、高反発力など、いかにも凄そうな高性能さをとことんアピールされます。しかも、さもそれを使わないと上手くなれないようなイメージを刷り込まれてしまうので、何も知らない子羊たちは、まるで催眠術にでもかかったかのようにフラフラと大金を差し出すことになります。そう、ショップに行くと、高い製品を買わなければならない仕組みになっているところが多いです。

          それに味をしめたショップは、他に販路としての競争相手が少ないことをイイことに、初心者や中級者に対して平気で上級者モデルを売りつけようとするところが多いです。平均客単価を25万円と設定して、15万円の下限値を設定します。上限はありません。欲しがれば高校生だろうが大学生だろうが、35万にも40万にも跳ね上がります。裕福そうだと思われたら「どうせだったら」と言われてビックリするような高額なモデルを勧められます。それが上級者と呼ばれる存在になった時の買い物であれば真価を発揮することができますが、そこに到底及ばないレベルの選手が使っても、的の方に向かって矢を飛ばすという行為にしか使うことができず、決して高得点を叩き出すことはできません。機材にお金を払って得点を得ることができるのであれば、使用機材にふんだんにお金をつぎ込んだ者が勝者となるハズですが、そんな事がないのは誰もが知っているでしょう。

          どんな世界でも、底辺モデルや普及モデルという廉価で平均的な性能を有する製品があるものです。しかしショップの多くでは、その肝心な普及モデルを展示・在庫すらしません。中には欲しいと言っても仕入れてもらえず、高価なグレードを押し切られたという人もいます。高額で高性能な製品のことはやたら詳しいですが、中間グレード以下になると、仕入れたこともない、使ったこともない、製品情報について知らない、どこを調べてもわからないという、とてもプロショップとは呼べないお粗末加減です。ショップやショップのスタッフを職業とする前に、プロとかプロフェッショナルという言葉の意味を、ぜひ調べておいてもらいたいものです。

          「将来的に70mを射つために」などと言われて最初から高額なリムや、ACEやX10などの高額なカーボン矢を勧められますが、それこそバカげています。アーチェリーを始めて1年以内に70mを射たせるようなことは、よほど特殊な事情でもない限り、まずあり得ません。早く距離を射たせてしまうと、かなり高い確率で身体を壊します。浮き上がった肩のままで、できるだけ上方に弓を掲げて射つ動作を繰り返すことになるからです。ですから本当は、1年かけて30mで正確に当てることができるようになればいいのです。小学校中学年の子供であれば、引きの弱いリムからじっくりとステップアップを果たしていき、実質20ポンドにも満たない弱いグラスリムを使って、30mでかなり正確に当てるようになりますよ。アーチェリーを始めたばかりの初心者に、最初に買うリムに何ポンドの高性能リムを売りつけようとするのか。まったくもって意味不明です。

          購入するユーザーもユーザーです。初心者や中級者のあなたは、競技団体の誰もが認めるような、上級者ではないのです。本当に最初から上級者グレードを使うべきというスポーツであれば、どのメーカーも中級グレードや、初心者グレードを製造することなく、ワンメイクで済むはずなのです。よくよく考えてみるといいのです。これから居合を始めたいという初心者に、名刀ムラマサを売りつけるようなものなのです。刀に触ったこともないような人に国宝級の刀をブンブン振らせようとするのです。竹刀の持ち方もままならい初心者に、何が本身の刀なものですか。アーチェリーと何が違いますか?30mの距離から赤を射ってしまうレベルの人に、卓越した繊細な扱いを必要とする異常なまでに高価な上級者モデルの性能は必要ありません。そんな事よりも先に、やらなければならない事がたくさんあるのです。

          どんな機材にも共通している事項ですが、低いグレードの機材のそれぞれのポテンシャルを引き出すことができなければ、中級グレードの性能の高さは扱い切れません。ましてや上級グレードの性能なんて、扱えないどころか、感じることすらできません。それを使って製品の設計上設定している得点を出せるどころか、大して当てることもできません。アーチェリーは購入した弓具の総額が得点ポイントにはなりません。発射した矢の的中の合計得点を競うスポーツです。何を使っても正確に当たっていればいいのですが、聞いてたセールストークが自分で発揮できず得点が沈んでしまっているのであれば、所有していることに対しての自己満足すら与えてもらえず、費用対効果が最低で残酷な結果しかもたらされることはないのです。

          ■使ったこともないのに評価を下す人が多すぎる

          先にも書きましたが、ほとんどのショップは廉価グレードの製品評価を行なったことがありません。使ったことがないとか仕入れたことがないという事実を、正直に言ってくれるショップは、まだマシなほうです。

          中には仕入れて使ったことがあるショップもあるでしょう。その場合、取り扱いラインナップに含まない理由はいろいろありますが、それについてを論じるとキリがないので、普及グレードのリムがどんなものなのか、作りが良くないのか、とても使えるシロモノではないのか、カーボンリムじゃなくてグラスリムだったらどうなのかを、安いリムを仕入れて実際に使ってみます。



          今回仕入れたリムは、SF社のプレミアムです。これはアクシオムプラスの上位機種として、1万1500円で販売されています。ショップによってはこのプレミアムよりも、アクシオムプラスに高い値づけがされてて逆転しているところもあるようです。まぁ、どちらにせよ、安い事には変わりません。アクシオムプラスの上位機種にあたるウッドコアのグラスリムです。アーチェリーをしている人が言葉の魔法にかかりやすい、カーボン素材は使われていません(笑) これを選んだ理由は3つです。これまで私を含めて、私たちのレッスンで多くの人が使ってきて評価の高いSF製品であること。SF社のリムはW&W社が製造していること。メーカーでは昨年からラインナップに乗せていたにも関わらず、日本では代理店もショップも仕入れて販売する姿勢が感じられず、日本以外での評価が高いにも関わらず国内での販売ルートが閉ざされてるも同然の扱いだったことです。

          みなさん、現代のグラスリムを、本気で使いこんだことがありますか? というか最近は、そんなに安いものをショップが売りたがらない傾向が顕著ですから、射つどころか、目にする機会も少ないかも知れませんね。私達の指導組織、けいはんなアーチェリーでは、リムの弾発にグラスファイバーを用いたリムを、これまで3種類使ってきました。ローランのプラスチックハンドルに使用するグラスリム、PSEのサミット、SFのアクシオムプラスです。PSEとSFのリムはW&WのOEM製品です。後者2つは機材としての性能が安定していて、よほど誤った使い方をしないかぎり壊れません。

          アクシオムプラスは単一構造のウッドコアですが、それを感じさせないほどマイルドです。弱いリムから強いリムまで製品のクオリティーが均一で、発射を繰り返すことでの通常使用でネジレたり割れたりすることはありませんでした。不特定多数の受講生にステップアップ期間中のレンタルとして長期間貸し出してますが、トラブルを抱えて戻ってきたことがありませんでした。70mで300点が普通に出せる性能があります。これらを使って受講生の皆さんの前でデモンストレーションを行なうこともありますが、扱いやすくてよく当たります。初心者が最初に購入するリムとしてはピッタリです。PSEのサミットは68サイズのみの設定で販売価格は9500円、66の人はSFのアクシオムプラスで10500円。今回仕入れたプレミアムは11500円どちらもネダンの差は誤差みたいなもんです。



          SFとPSEはどちらも同じ構造ですので、今回はSF同士で比較してみます。右側がアクシオムプラス、左側が今回仕入れたプレミアムです。どちらもウッドコアのグラスリムですが、アクシオムのウッドコアが単一構造(1枚の板)に対して、プレミアムは上位機種と同じように、バック側とフェイス側からなる2重構造のウッドコアで構成されています。どちらの方が的中率が高いかとか、初心者や中級者の頃には関係がありませんので、本当に上手くなるまではそんな細かいことを気にしなくても大丈夫です。



          上がアクシオムプラス、下がプレミアムです。プレミアムは確かに上位機種のリムと構造はそっくりです。フェイス側とバック側からウッドコアが別々に分かれているのが見えます。名前通りにプレミアムなのかも知れませんが、プレミアムという割には値段の差がちょっとしかないので、見た目だけでは何も判断できませんね。



          こちらも上がアクシオムプラス、下がプレミアムです。2枚のウッドコアは母材から先のチップにかけては重ねて接着している構造です。カーボンを使わずにグラスファイバーを使っているというだけの違いにしか見えません。まだ新しいのでリムをバラバラに分解して中を見るのはもったいないので、しばらくは大切に使うことにします。



          今回仕入れたリムは2セットです。68-38(66-40)と66-28(64-30)です。23インチハンドルに装着すると66になりますので、66での表示が40ポンドのリムを使います。私の矢を装着して強さを計測してみると、実質35ポンドでした。現役選手の頃に比べたら、実質11ポンドのダウンです。私にしては物足りないくらい弱く感じますが、別に90mで高得点を出そうとしているワケでもありませんので、70m以内の距離であれば問題なく競技で戦うことができる強さです。

          ■実際に射ってみる

          この日は高校生のアーチェリー指導でした。

          プレミアムを実射するために持ち込んだアーチェリーは、防具類やクイーバーなど、すべての用品類の総額が45,200円の激安セットです(笑) この学校のクラブの備品として置いてあるのと同じ7500円のハンドル、5点(センター・サイド2本・エクステンション・Vバー)で1万円もしない初心者用のスタビライザー、1000円の安物プランジャー、3000円の競技用サイト、ほとんどが初心者用や練習用として分類されているような安い機材ばかりです。

          矢は、これまた学校の備品として生徒達が練習に使っているのと同じ、6本で3000円もしない激安カーボン矢のインスパイアです。インスパイアには精度の表記すらされてません。ちなみにタブは、1枚50円のハギレでつくった牛革です。これらを使って18mのデモンストレーションです。



          自分がミスって赤を射つこともありますが、それは自分の射の大きな誤差なのであって、自分の射の誤差を機材の精度の高さが得点をカバーすることなどありません。安いグラスのリムを使いましたが、機材のスペックのせいで黄色を外してしまうことなど、一度たりとてありません。ショップが扱いたがらないような1万1500円の安いリム、今となっては日本では1社しか扱ってない7500円のアルミハンドル、6本で3千円もしない激安カーボン矢、これらでインドア18m競技でゴールドバッジを取得できる得点が、普通に出ます。これだけの的中精度を有する弓具に、いったいどんな不満があるというのか? 製品のポテンシャルを発揮できないから当たらないだけでしょう。扱い切れない高額すぎる高性能な製品を欲しくなる気持ちはわからなくもないが、レベルに見合ったものを使わない人がレベルアップするワケないのです。普通列車がまともに運転できない運転手が、新幹線を正確に運転できるワケないのです。セスナの操縦もままならないのに、何が最高速度マッハ3超えの戦闘機ですか。初心者や中級者には、70mで700点を目指すような高性能な弓具を使うことが、おかしいと思えないことがおかしい。それを売りつける人や、積極的に勧める人に関しては、完全に狂ってますよ。

          自分が上達するために必要な「いい弓具」とは、反応がマイルドで、繊細なタッチは必要ない、扱いやすい弓具です。製品単体の性能の高さが必要になるのは、射手の性能が弓具を上回った瞬間からです。こんな1万円ちょっとの安いグラスのリムでも、ターゲットアーチェリー用としてのラインナップの製品であれば、18mであればピンポン玉、30mであればミカンのサイズに、すべての矢がグルーピングするという、驚異の的中性能を有しているのがわかります。それが自分で正しく実感することができないまま上位機種を使うことが、どれほど意味のない事かを知っておいて下さい。

          グラスリムじゃなくてカーボンリムを使ったら、この10・10・9が、10・10・10になりましたかね?そんなワケないでしょう。自分が正確に発射させることができるなら、弓なんて何を使ってもソコソコ当たります♪ 何を使っても面白いように当たる人になるか、何を使っても大して当たらない人になってしまうかの、どちらかしかないのです。

          最初は弓具にお金をかけるのではなくて、正確に発射させることができるように、自分の身体に投資してください。それさえ正しくできていれば、こんなに安い初心者用の弓具を使っていても、見ている周囲の全員が黙り込んでしまうほど、的を正確に射抜くことができるようになるのです。

          ほとんどの人が上手くなろうとして、できないことをやろうとしている人が多いです。しかしその実は、できることをやろうとしてない人ばかりです。アーチェリーは弓具が勝手に当ててくれるのではありません。それを扱うのは自分自身の身体なのです。身体を正しく使えてないから弓具が使えないのです。扱い切れない弓具を振り回しているから、自分の思い通りに自分の身体を使えるようにならないのです。アーチェリーは、自分が競技で出すことができる得点という数字がすべてです。本人がどれだけ頑張ったとか、運が良かった悪かったとか、思い通りにできたとかできなかったとか、関係ないのです。趣味やコレクターの人は別ですが、選手であるならば自分が叩き出した得点で順位が決まり、その結果でしか評価されません。ならば、どんな状況下に置かれても安定して得点を出せる射を身につけるしかないのです。自分の体力と技術が未熟なことを直視することに耐えかねて逃げ出して、自分が及ばないレベルの機材を使って当たるようなものではないのです。

          弓具には様々なグレードの製品があります。性能の差はあるにはありますが、もはや人間が追求できる性能の高さをはるかに超えたレベルの高いものになっています。しかも製品ごとの性能の差異は、多くの人が思い込んでいるような使い比べたときに得点で大きく異なる結果にはなりません。ですから多くの人にとっては、世界で戦うトップレベルの選手が使っているグレードを使うことなど無謀であり、お金のムダづかいであり、何の意味もありません。そもそも現代の弓具はウッドコアのグラスリムであってもかなり進化を遂げていて、こうして実際に使っていても問題なく競技に使える的中性能があることがわかります。エリートとかプレミアムという名称が付けられている意味もわかります。

          ですから、ここは消費者として賢くなるべきなのです。総額5万円にも満たない弓具で、全国大会を目指せるような高得点を出すことができるのです。安くても性能に何ら問題はなく、これで十分すぎるほど当たります。これで当てることができないのであれば、これ以上の弓具を使っても当たりません。ちゃんと当たる弓具は、ビックリするくらい安くて揃います。これらの製品価格差を、自分が出すことができる得点と照らし合わせて、自分の射の質を高めるための練習に使うことができる製品を選んで、ちゃんと当てることができる楽しいアーチェリーライフを過ごしてください。アーチェリーはスポーツなのです。まずは自分の身体に投資しない事には、どんなに弓具にお金をつぎ込んでもムダ金にしかならない事が理解できなければ、おかしな金持ち集団の悪趣味な道楽に成り下がってしまうのです。 あなたの周囲の人々に、アーチェリーというスポーツがどう思われてしまうかは、あなたのアーチェリーへの取り組みかたがどのようなものであるかで決定的になります。あなたがアーチェリーをやっていて、自分の周囲の人々をアーチェリーの世界に引き込むことができないのは、その取り組みが一般スポーツからかけ離れたものであり、魅力のある取り組みだと思われないものになってるからなのかも知れません。

          コンディショニングの重要性 正しい力の向きと重心移動の計測

          2015.12.11 Friday

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            ■スポーツ医療チームによるコンディショニング

            9日のアーチェリーレッスンには、3名のスポーツ理学療法士の先生にお越しいただいて、全身のコンディションのチェックと、パフォーマンスアップのためのメンテナンスを行ないました。毎月行なっていますが、平日のレッスンに熱心に参加されてる受講生の方々のためのコンディショニングです。

            レッスンを受講されてる皆さんは、春からかなりパフォーマンスが上がってきてますね。気温が低下すると誰もが筋肉の動きが悪くなりますので、このようにして身体の状態を常にチェックしておかなければなりません。

            寒い季節になると、誰もが各部の動きに固さが見られるようになります。私たちのレッスンでスポーツ医療チームと一緒になって作り上げた優れた筋肉は、筋肉自体が素晴らしい柔軟性を保っています。しかし筋肉自体の柔軟性を維持していたとしても、気温が低下することで運動に適した筋肉の温度は低下してしまい、腱や筋肉を覆う筋膜が張るようになり、それが原因で動きの低下を招き、パフォーマンスが低下します。気温の低い屋外でアーチェリーを行なうと、筋肉の温度が下がってパフォーマンスが上がらない状態で腱や筋肉を無理に動かすことになります。気温の低い場所では、実射量を増やせば増やすほど身体の状態は悪化していくということを、しっかりと覚えておいてください。

            ですから春に向けてパフォーマンスを上げるためには、オフシーズンを設定して身体を作り上げることが大切です。冬の間は体育館などでインドアの競技がありますが、それに向けて寒い屋外でひたすら18mの実射練習を行ってしまうと、せっかく作ってきた身体は台無しです。いくら体育館の中で競技が行なわれるといっても、寒くて震え上がるような会場での競技への参加は、よほどのトップレベルの選手でもなければ見送るべきです。

            レベルの高い戦いができる選手であれば好きにすればいいと思いますが、この時季に本来行なわなければならないのは、実射よりもランニングなどの有酸素運動での心肺機能の向上と、静的ストレッチ・動的ストレッチで全身の柔軟性を高めておくことが大切です。ほとんどの場合は、筋細胞を肥大させるような、パワーアップに向けての筋トレは必要なく、インナーマッスルの筋持久力を高めるトレーニングが必要です。

            他でアーチェリーを始めた人に関しては、骨格のポジションを正しい位置に誘導するためのリハビリと、姿勢や歩行のトレーニングが大変だったりします。それぞれの身体の状態を調べて、筋力が強すぎてバランスが悪い部分は筋肉を落とし、弱すぎて強化が必要な部分は強化をします。動きが悪い部分に関しては、動きの修正から入ります。これらが揃った状態になって、はじめて射に関する基礎をレクチャーすることができるようになります。多くの場合は何もせずにいきなり弓を引かされてしまうので、良くない身体の状態から取り組むことになるので、基礎をマスターすることができなくなってしまうのです。ほとんどの人にとっては、冬の間は実射どころではないのです。

            京都の場合は暖かい競技会場が多いので、たくさん着こんで会場入りすると汗をかくこともあります。冬に競技をするにはかなり恵まれてる環境だと思いますが、他では、話を聞いただけでも寒気がするほどの、寒い会場もあるそうですね。

            何度かインドアの競技に参加したことがあればわかると思いますが、なかには冷蔵庫のように寒い会場もあるそうですね。基本的に体育館の中は暖房施設がなくても暖かい会場が多いです。できることなら寒すぎる会場での競技に参加することは避けて、なるべく暖かい会場での競技会に参加してください。もしも寒すぎる会場でしか参加できないのであれば、筋温を高めるウォームアップオイルなどを全身に塗って保温対策をしてください。多くの商品はカプサイシンが入っていて、保温効果の高いものが売られています。いちど身体に故障を抱えてしまうと、それを治すだけで相当の期間をムダにしてしまいます。自分の身体を守るために取るべき行動を、しっかり考えてスポーツに取り組んでください。

            コンディショニングを行なわずに低温下でスポーツを行なうと、筋肉が本来のパフォーマンスを発揮できないばかりではなく、痛みをともなう故障を抱えてしまいます。筋肉の動きが最も発揮される筋温は38度前後です。常に筋肉を動かし続けて身体が温まるようなマラソンなどの有酸素運動と違ってアーチェリーは、自分がほとんど動かない状態でのスポーツです。歩く距離は70mラウンドでも2.5キロも歩きません。18mのインドア競技ですと、会場内で600mも歩きません(笑) 結構歩いてるように思い込んでる人が多いですが、ものすごく運動量の少ないスポーツです。どれだけ射っても冬は身体が温まりませんし、往復の距離が短いので、矢取りに走ったくらいでは筋肉の温度は上がりません。入念にウォーミングアップを行なったとしても、その場で5分もすれば筋温は完全に低下してしまい、パフォーマンスの上がらない状態での繰り返し動作で筋肉と関節に負担をかけ続けてしまうのです。

            それに99パーセントのアーチェリー選手は、冬に実射をしたあとに、寒いからといって酷使した肩や手首をアイシングすることもないという、アスリートとして最低限の常識のなさをさらしています。誰からどう学んだらそうなってしまうのか知りませんが、パフォーマンスの上がらない冷えた筋肉と関節をギコギコ酷使しきったあとに、炎症を起こして熱を持っている身体を暖めるために、運動後にたくさん着こんで、暖かい場所に逃げ込みます。そして熱いシャワーを浴びるか湯船に肩まで浸かるのです。そして風呂上りにビールでも飲んで汗をかいているのでしょう。そんなことをしてるから身体を壊します。肩が痛いという選手の多くが、ムチャクチャな生活パターンを送っています。アスリートではなく、競技会には参加しない趣味の人でも、どんなに寒くても冷たくても、肩や手首は必ずアイシングをしてください。お風呂に入るときには、絶対に肩を温めてはいけません。冷たい水でシャワーを浴びせるか、入浴直後にアイシングを行なってください。

            冬季の練習は、春からパフォーマンスを発揮させるために、入念な計画が必要です。これまで実射を続けていてダメだったのですから、身体にとって条件の悪い冬に実射を繰り返してしまうと、ダメな身体をどんどんダメにしてしまいます。ストレッチも筋トレも。我流でテキトーに行なっていたのでは効果はまったく望めません。トレーニングはマネ事などではなく、骨格と筋肉の専門家からの指導を受けてスポーツに活かさなければ、実射を繰り返すことで、わざわざ身体を壊すために酷使しているに過ぎません。

            冬になると、肩が痛い、手首が痛い、腰が痛い、膝が痛いなど、あらゆる痛みの相談のメールが舞い込みますが、故障を招くような練習を行なってきた事に対しての反省もなく、対処法のみを聞いてくる部外者による問い合わせの多さには呆れてしまいます。故障が進行してきたから痛みが生じているのです。関節に痛みが出てくるのは、特定の部分に無理をさせてきたからに他なりません。痛みを感じてからの対処では遅すぎます。

            そのようにならないためにも、ひとりひとりが指導の専門家から正しい身体の使いかたと、コンディショニングの指導を受けなければなりません。ですから私たちのレッスンでは、本人の申告の有無は別にして、スポーツ医療のエキスパートが客観的に身体の状態をチェックして、故障を未然に防ぐ取り組みを行っています。毎月のようにスポーツ理学療法士の先生方にチェックをしてもらいますが、その上で今月はスポーツ整形のドクターによるメディカルチェックの診察を行います。このようにして、私たちのところでは安心してスポーツを楽しむ事ができてイイですね。

            ■加速度センサーを用いた身体の状態の測定

            アナログだろうが、ハイテクだろうが、関係ありません。世界で最も優れたものを取り入れて指導に活かすのが指導者の仕事です。選手の射を見た目だけでしか判断できない指導者ばかりですが、外観上での指摘なら、べつに指導者ではなくても誰でもできます。それこそ自分自身を録画でもすればいいのです。

            しかし、そんなことで何かがかわかると思ったら大間違いです。身体の中で発生させてしまっている各所からの力の向きがどのように働いているか、なぜそのような動きになってしまっているか、身体に無数にある筋肉のうち、どこが作用してそうなっているかは、画像やスーパースロー映像では判断できません。筋電計は、筋肉が作用しているかどうかしかわかりません。それらの画像や映像からでは、起きている事象を、見えている範囲で動いたものしかわかりません。

            しかし加速度センサーを使えば、1000分の1秒単位での動揺を記録することができるので、リハビリとトレーニングの指標を設定することが容易になります。今回はスポーツ医療チームと一緒になって、加速度センサーと定点カメラからの映像を組み合わせて複合的にデータを取りました。この日は加速度センサーを6セット準備して、シューターの頭・背中(首の付け根)・腕・腰・両ヒザに装着して、発射の際に自分が何を行なっているのか、1000分の1秒単位で計測します。しかもその各部の動揺によって毎回の射がどこに的中したかを撮影して、エイミングの正確性と身体の動きの正確性の両方を検証して正確な射を導きます。



            加速度センサーを使うと、身体の各部それぞれが、360度どの方向に動いているかがわかります。筋放電が止まった瞬間のサイレントピリオドや、そのサイレントピリオドの瞬間から、矢が弓から離れていくまでの間に、自分の身体の中で発生させている力の向きがどのように働いているかが丸わかりになります。というか、サイレントピリオドを発生させることができているか(笑)、サイレントピリオド発生時に「ゾーン」状態で射の動作が正確に行なえているかどうか、クリッカーの音を耳で捉えて脳がリリースの指令を出した瞬間に、その反射でどの筋肉が作用して身体を動かしてしまっているか、速筋の緩みによるリリースの最中に、遅筋で正確に骨格を支えることができているかを知ることができます。

            これらは筋電計やスーパースローモーション映像では、ほとんど知ることができません。筋電計ではインナーマッスルの遅筋の放電を調べることが難しいからです。映像や画像では見えている部分しか知ることができませんが、加速度センサーであれば、装着している部分の動きがすべて数値になるので、発射の最中の重心の移動の方向と距離や、筋肉や骨格の動きによる各部の移動がすべて把握できます。



            しかも、矢を保持している時に動いてしまっているか、リリースの最中に動いてしまっているのか、足首が動いているのか腰が動いているのか、身体のどこが弱くてそうなってしまうのか、どこが強すぎてそうなってしまうのか、どこに力が入ってしまっているのか、射の動作時に身体のどこが条件反射的に動いてしまっているのか、そうならないためにどこの部分の可動域を広げるか、どこにどんなリハビリやトレーニングをしてくかを、スポーツ理学療法士の先生や、これらに関わる専門家の先生と一緒になって計画することができるのです。

            今回はイジワルなことに、2回に分けて計測しました。1回目は的紙を貼ってない巻藁を近射します。2回目は少し離れた距離に小さな的を貼って、中心を射抜くためにしっかり狙ってもらいます。巻藁を射っても刺さる音がしないので、発射の際の手ごたえのようなものがなく、スムーズなデータが取れます。しかし的を射てば、矢が畳に刺さる音による身体の反射までも加速度センサーが拾います。サイトピンを狙って的の中心を射抜こうとすると、身体の各所に力みがはいります。このようにして自分の身体が実際に何を行なっているかを調べなければ、意味のない練習を繰り返すことになります。

            それに、こうして狙って射つときと狙わないで射に集中しているときの身体の変化を調べることで、練習ではよく当たるのに、大きな試合になったら当たらない(笑)。 近射ではできるのに的を狙うとできない。ターゲットパニックに陥る原因までも調べることができます。これらを検証することで、本番でパフォーマンスを発揮できない原因を探ることができますし、スランプに陥った選手を救うことができるのです。

            緊張しているときに身体のなかで何がおきてしまっているか、身体のどこの筋肉がどのように異常に緊張して本番で自分のポテンシャルを発揮できないのかが判断できますので、何をしたらそうなってしまわないかが分かります。その対応を初心者のうちから行なうことで、プレッシャーに強い選手に育つことができるのです。

            優れた的中は、気合いや精神力、集中力などとは、ちょっと別のところにあります。本番で真価を発揮できないのは、根性がないからではありません。スポーツメンタルトレーニングは大変重要なので、それらの話題はまた別の機会に紹介します。まずはそれ以前に大切な、正しい身体の使い方を行なうためのトレーニングを行ないます。

            ■測定開始!

            私も含めて、それぞれが加速度センサーを装着して実射時のデータを測定しました。春にも3箇所を計測しただけでも、かなりのデータを測定できましたが、今回は頭部からヒザまでの6箇所にセンサーを取り付けての実射です。リリースする右腕にも装着してますので、取り掛けている指先からストリングを離す時の軌跡がすべて計測されます。両方のヒザに装着してますので、フルドロー状態から発射されるまでのあいだに、足裏、くるぶし、ヒザをどのように動かして身体を安定させているかがわかります。

            腰に装着したセンサーでは、重心位置の推移がわかります。その推移がヒザに装着したセンサーの情報から、下半身のどこを動かして重心が移動しているのかもわかります。これらは何射しても、ほとんど同じ動きになっていることがわかります。これらの自分の身体のなかで行なわれている動きが、射に対する条件反射によるもので、自分で自分の動きがまったくわからないことから、これらを計測してウィークポイントをひとつずつ消去していくことが大切です。そうすることではじめて、射のすべてを自分の支配下におくことができるようになります。それができるようになれば、クリッカーの音を耳にしてから指先からストリングが離れて弓から矢が離れていくまでの間は、完全なる「ゾーン」状態で、スローモーションで射をこなしているような射ができるようになります。



            この腕の計測の結果に落胆する選手がほとんどで、ストリングが身体から離れたあとになって、しばらくしてからわざわざスライディングリリースの動作に入るという、身体の中で行なわれていた力の向きを完全に無視した、フォロースルーを行なうためだけのまったく意味のない発射後の2系統の無駄動作をしていることが、全部バレてしまうからです。上級者になりきれないほとんどの選手が、これをやってしまっています。フォロースルーを美しく見せるために、身体の中での力の向きを崩す予備動作を発射の瞬間に行なってしまっている選手も多いです。



            どれだけ練習しても上級者になれない理由は、単に射を繰り返しているだけで、自分の射を客観的に理解できておらず、身体のなかで発生させている力の向きのコントロールができないからです。しかし最初から正しい骨格のポジションと、骨格を誘導するための正しい筋肉の使い方を学べば、誰でも上手くなります。アーチェリーの射の正確性に関するものはすべて解析され尽くしているので、今では難しいものなど何もありません。唯一言えることは、ひたすら実射を繰り返しているだけで上手くなれる人は、1000人に1人しかいないという事実です。

            アーチェリーで競技をしている人は、みんな頑張って練習をしてると思っています。しかしその練習がムダになるかどうかは、その練習の質で決まります。質が高いものを獲得して、それをマスターしたときに量を求め、さらなる正確性を高めていくものなのです。質の低いものをどれだけ練習量を増やしても、時間の無駄づかいにしかなりませんからね。

            これまでスポーツ理学療法士の先生方と一緒になって身体を作ってきましたので、皆さん骨格のポジションと筋肉の使いかたが素晴らしいです。とても初心者とは思えないフォームですね。



            引きの弱い弓を使っているうちに、これらの身体の使い方を正しくマスターして、身体の各部を自在にコントロールできるようにレッスンを行ないます。



            センサーを装着して全員が見守るなかで計測してますし、動画と的中位置の把握のために撮影を行なってますので、緊張状態の良いデータを取ることができます。

            この日だけでかなりのことがわかりましたが、1000分の1秒単位の発射の瞬間のデータについては、スポーツ理学療法士のなかでの測定の専門家の先生と後日解析して、ひとりひとりの指導に活かします。

            加速度センサーから得られたデータの解析が今月の合宿までに間に合えば面白いですが、まぁ、冬の間のオフシーズン中の各自のトレーニング計画を策定するということで、焦らずじっくりと気長に取り組んでいきましょうね♪

            皆様お疲れ様でした! 計測データの解析を、お楽しみに!

            受講生の皆さんのデータは公開できませんが、私のデータの一部は、ここに後日紹介したいと思います。