コンディショニングの重要性 正しい力の向きと重心移動の計測

2015.12.11 Friday

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    ■スポーツ医療チームによるコンディショニング

    9日のアーチェリーレッスンには、3名のスポーツ理学療法士の先生にお越しいただいて、全身のコンディションのチェックと、パフォーマンスアップのためのメンテナンスを行ないました。毎月行なっていますが、平日のレッスンに熱心に参加されてる受講生の方々のためのコンディショニングです。

    レッスンを受講されてる皆さんは、春からかなりパフォーマンスが上がってきてますね。気温が低下すると誰もが筋肉の動きが悪くなりますので、このようにして身体の状態を常にチェックしておかなければなりません。

    寒い季節になると、誰もが各部の動きに固さが見られるようになります。私たちのレッスンでスポーツ医療チームと一緒になって作り上げた優れた筋肉は、筋肉自体が素晴らしい柔軟性を保っています。しかし筋肉自体の柔軟性を維持していたとしても、気温が低下することで運動に適した筋肉の温度は低下してしまい、腱や筋肉を覆う筋膜が張るようになり、それが原因で動きの低下を招き、パフォーマンスが低下します。気温の低い屋外でアーチェリーを行なうと、筋肉の温度が下がってパフォーマンスが上がらない状態で腱や筋肉を無理に動かすことになります。気温の低い場所では、実射量を増やせば増やすほど身体の状態は悪化していくということを、しっかりと覚えておいてください。

    ですから春に向けてパフォーマンスを上げるためには、オフシーズンを設定して身体を作り上げることが大切です。冬の間は体育館などでインドアの競技がありますが、それに向けて寒い屋外でひたすら18mの実射練習を行ってしまうと、せっかく作ってきた身体は台無しです。いくら体育館の中で競技が行なわれるといっても、寒くて震え上がるような会場での競技への参加は、よほどのトップレベルの選手でもなければ見送るべきです。

    レベルの高い戦いができる選手であれば好きにすればいいと思いますが、この時季に本来行なわなければならないのは、実射よりもランニングなどの有酸素運動での心肺機能の向上と、静的ストレッチ・動的ストレッチで全身の柔軟性を高めておくことが大切です。ほとんどの場合は、筋細胞を肥大させるような、パワーアップに向けての筋トレは必要なく、インナーマッスルの筋持久力を高めるトレーニングが必要です。

    他でアーチェリーを始めた人に関しては、骨格のポジションを正しい位置に誘導するためのリハビリと、姿勢や歩行のトレーニングが大変だったりします。それぞれの身体の状態を調べて、筋力が強すぎてバランスが悪い部分は筋肉を落とし、弱すぎて強化が必要な部分は強化をします。動きが悪い部分に関しては、動きの修正から入ります。これらが揃った状態になって、はじめて射に関する基礎をレクチャーすることができるようになります。多くの場合は何もせずにいきなり弓を引かされてしまうので、良くない身体の状態から取り組むことになるので、基礎をマスターすることができなくなってしまうのです。ほとんどの人にとっては、冬の間は実射どころではないのです。

    京都の場合は暖かい競技会場が多いので、たくさん着こんで会場入りすると汗をかくこともあります。冬に競技をするにはかなり恵まれてる環境だと思いますが、他では、話を聞いただけでも寒気がするほどの、寒い会場もあるそうですね。

    何度かインドアの競技に参加したことがあればわかると思いますが、なかには冷蔵庫のように寒い会場もあるそうですね。基本的に体育館の中は暖房施設がなくても暖かい会場が多いです。できることなら寒すぎる会場での競技に参加することは避けて、なるべく暖かい会場での競技会に参加してください。もしも寒すぎる会場でしか参加できないのであれば、筋温を高めるウォームアップオイルなどを全身に塗って保温対策をしてください。多くの商品はカプサイシンが入っていて、保温効果の高いものが売られています。いちど身体に故障を抱えてしまうと、それを治すだけで相当の期間をムダにしてしまいます。自分の身体を守るために取るべき行動を、しっかり考えてスポーツに取り組んでください。

    コンディショニングを行なわずに低温下でスポーツを行なうと、筋肉が本来のパフォーマンスを発揮できないばかりではなく、痛みをともなう故障を抱えてしまいます。筋肉の動きが最も発揮される筋温は38度前後です。常に筋肉を動かし続けて身体が温まるようなマラソンなどの有酸素運動と違ってアーチェリーは、自分がほとんど動かない状態でのスポーツです。歩く距離は70mラウンドでも2.5キロも歩きません。18mのインドア競技ですと、会場内で600mも歩きません(笑) 結構歩いてるように思い込んでる人が多いですが、ものすごく運動量の少ないスポーツです。どれだけ射っても冬は身体が温まりませんし、往復の距離が短いので、矢取りに走ったくらいでは筋肉の温度は上がりません。入念にウォーミングアップを行なったとしても、その場で5分もすれば筋温は完全に低下してしまい、パフォーマンスの上がらない状態での繰り返し動作で筋肉と関節に負担をかけ続けてしまうのです。

    それに99パーセントのアーチェリー選手は、冬に実射をしたあとに、寒いからといって酷使した肩や手首をアイシングすることもないという、アスリートとして最低限の常識のなさをさらしています。誰からどう学んだらそうなってしまうのか知りませんが、パフォーマンスの上がらない冷えた筋肉と関節をギコギコ酷使しきったあとに、炎症を起こして熱を持っている身体を暖めるために、運動後にたくさん着こんで、暖かい場所に逃げ込みます。そして熱いシャワーを浴びるか湯船に肩まで浸かるのです。そして風呂上りにビールでも飲んで汗をかいているのでしょう。そんなことをしてるから身体を壊します。肩が痛いという選手の多くが、ムチャクチャな生活パターンを送っています。アスリートではなく、競技会には参加しない趣味の人でも、どんなに寒くても冷たくても、肩や手首は必ずアイシングをしてください。お風呂に入るときには、絶対に肩を温めてはいけません。冷たい水でシャワーを浴びせるか、入浴直後にアイシングを行なってください。

    冬季の練習は、春からパフォーマンスを発揮させるために、入念な計画が必要です。これまで実射を続けていてダメだったのですから、身体にとって条件の悪い冬に実射を繰り返してしまうと、ダメな身体をどんどんダメにしてしまいます。ストレッチも筋トレも。我流でテキトーに行なっていたのでは効果はまったく望めません。トレーニングはマネ事などではなく、骨格と筋肉の専門家からの指導を受けてスポーツに活かさなければ、実射を繰り返すことで、わざわざ身体を壊すために酷使しているに過ぎません。

    冬になると、肩が痛い、手首が痛い、腰が痛い、膝が痛いなど、あらゆる痛みの相談のメールが舞い込みますが、故障を招くような練習を行なってきた事に対しての反省もなく、対処法のみを聞いてくる部外者による問い合わせの多さには呆れてしまいます。故障が進行してきたから痛みが生じているのです。関節に痛みが出てくるのは、特定の部分に無理をさせてきたからに他なりません。痛みを感じてからの対処では遅すぎます。

    そのようにならないためにも、ひとりひとりが指導の専門家から正しい身体の使いかたと、コンディショニングの指導を受けなければなりません。ですから私たちのレッスンでは、本人の申告の有無は別にして、スポーツ医療のエキスパートが客観的に身体の状態をチェックして、故障を未然に防ぐ取り組みを行っています。毎月のようにスポーツ理学療法士の先生方にチェックをしてもらいますが、その上で今月はスポーツ整形のドクターによるメディカルチェックの診察を行います。このようにして、私たちのところでは安心してスポーツを楽しむ事ができてイイですね。

    ■加速度センサーを用いた身体の状態の測定

    アナログだろうが、ハイテクだろうが、関係ありません。世界で最も優れたものを取り入れて指導に活かすのが指導者の仕事です。選手の射を見た目だけでしか判断できない指導者ばかりですが、外観上での指摘なら、べつに指導者ではなくても誰でもできます。それこそ自分自身を録画でもすればいいのです。

    しかし、そんなことで何かがかわかると思ったら大間違いです。身体の中で発生させてしまっている各所からの力の向きがどのように働いているか、なぜそのような動きになってしまっているか、身体に無数にある筋肉のうち、どこが作用してそうなっているかは、画像やスーパースロー映像では判断できません。筋電計は、筋肉が作用しているかどうかしかわかりません。それらの画像や映像からでは、起きている事象を、見えている範囲で動いたものしかわかりません。

    しかし加速度センサーを使えば、1000分の1秒単位での動揺を記録することができるので、リハビリとトレーニングの指標を設定することが容易になります。今回はスポーツ医療チームと一緒になって、加速度センサーと定点カメラからの映像を組み合わせて複合的にデータを取りました。この日は加速度センサーを6セット準備して、シューターの頭・背中(首の付け根)・腕・腰・両ヒザに装着して、発射の際に自分が何を行なっているのか、1000分の1秒単位で計測します。しかもその各部の動揺によって毎回の射がどこに的中したかを撮影して、エイミングの正確性と身体の動きの正確性の両方を検証して正確な射を導きます。



    加速度センサーを使うと、身体の各部それぞれが、360度どの方向に動いているかがわかります。筋放電が止まった瞬間のサイレントピリオドや、そのサイレントピリオドの瞬間から、矢が弓から離れていくまでの間に、自分の身体の中で発生させている力の向きがどのように働いているかが丸わかりになります。というか、サイレントピリオドを発生させることができているか(笑)、サイレントピリオド発生時に「ゾーン」状態で射の動作が正確に行なえているかどうか、クリッカーの音を耳で捉えて脳がリリースの指令を出した瞬間に、その反射でどの筋肉が作用して身体を動かしてしまっているか、速筋の緩みによるリリースの最中に、遅筋で正確に骨格を支えることができているかを知ることができます。

    これらは筋電計やスーパースローモーション映像では、ほとんど知ることができません。筋電計ではインナーマッスルの遅筋の放電を調べることが難しいからです。映像や画像では見えている部分しか知ることができませんが、加速度センサーであれば、装着している部分の動きがすべて数値になるので、発射の最中の重心の移動の方向と距離や、筋肉や骨格の動きによる各部の移動がすべて把握できます。



    しかも、矢を保持している時に動いてしまっているか、リリースの最中に動いてしまっているのか、足首が動いているのか腰が動いているのか、身体のどこが弱くてそうなってしまうのか、どこが強すぎてそうなってしまうのか、どこに力が入ってしまっているのか、射の動作時に身体のどこが条件反射的に動いてしまっているのか、そうならないためにどこの部分の可動域を広げるか、どこにどんなリハビリやトレーニングをしてくかを、スポーツ理学療法士の先生や、これらに関わる専門家の先生と一緒になって計画することができるのです。

    今回はイジワルなことに、2回に分けて計測しました。1回目は的紙を貼ってない巻藁を近射します。2回目は少し離れた距離に小さな的を貼って、中心を射抜くためにしっかり狙ってもらいます。巻藁を射っても刺さる音がしないので、発射の際の手ごたえのようなものがなく、スムーズなデータが取れます。しかし的を射てば、矢が畳に刺さる音による身体の反射までも加速度センサーが拾います。サイトピンを狙って的の中心を射抜こうとすると、身体の各所に力みがはいります。このようにして自分の身体が実際に何を行なっているかを調べなければ、意味のない練習を繰り返すことになります。

    それに、こうして狙って射つときと狙わないで射に集中しているときの身体の変化を調べることで、練習ではよく当たるのに、大きな試合になったら当たらない(笑)。 近射ではできるのに的を狙うとできない。ターゲットパニックに陥る原因までも調べることができます。これらを検証することで、本番でパフォーマンスを発揮できない原因を探ることができますし、スランプに陥った選手を救うことができるのです。

    緊張しているときに身体のなかで何がおきてしまっているか、身体のどこの筋肉がどのように異常に緊張して本番で自分のポテンシャルを発揮できないのかが判断できますので、何をしたらそうなってしまわないかが分かります。その対応を初心者のうちから行なうことで、プレッシャーに強い選手に育つことができるのです。

    優れた的中は、気合いや精神力、集中力などとは、ちょっと別のところにあります。本番で真価を発揮できないのは、根性がないからではありません。スポーツメンタルトレーニングは大変重要なので、それらの話題はまた別の機会に紹介します。まずはそれ以前に大切な、正しい身体の使い方を行なうためのトレーニングを行ないます。

    ■測定開始!

    私も含めて、それぞれが加速度センサーを装着して実射時のデータを測定しました。春にも3箇所を計測しただけでも、かなりのデータを測定できましたが、今回は頭部からヒザまでの6箇所にセンサーを取り付けての実射です。リリースする右腕にも装着してますので、取り掛けている指先からストリングを離す時の軌跡がすべて計測されます。両方のヒザに装着してますので、フルドロー状態から発射されるまでのあいだに、足裏、くるぶし、ヒザをどのように動かして身体を安定させているかがわかります。

    腰に装着したセンサーでは、重心位置の推移がわかります。その推移がヒザに装着したセンサーの情報から、下半身のどこを動かして重心が移動しているのかもわかります。これらは何射しても、ほとんど同じ動きになっていることがわかります。これらの自分の身体のなかで行なわれている動きが、射に対する条件反射によるもので、自分で自分の動きがまったくわからないことから、これらを計測してウィークポイントをひとつずつ消去していくことが大切です。そうすることではじめて、射のすべてを自分の支配下におくことができるようになります。それができるようになれば、クリッカーの音を耳にしてから指先からストリングが離れて弓から矢が離れていくまでの間は、完全なる「ゾーン」状態で、スローモーションで射をこなしているような射ができるようになります。



    この腕の計測の結果に落胆する選手がほとんどで、ストリングが身体から離れたあとになって、しばらくしてからわざわざスライディングリリースの動作に入るという、身体の中で行なわれていた力の向きを完全に無視した、フォロースルーを行なうためだけのまったく意味のない発射後の2系統の無駄動作をしていることが、全部バレてしまうからです。上級者になりきれないほとんどの選手が、これをやってしまっています。フォロースルーを美しく見せるために、身体の中での力の向きを崩す予備動作を発射の瞬間に行なってしまっている選手も多いです。



    どれだけ練習しても上級者になれない理由は、単に射を繰り返しているだけで、自分の射を客観的に理解できておらず、身体のなかで発生させている力の向きのコントロールができないからです。しかし最初から正しい骨格のポジションと、骨格を誘導するための正しい筋肉の使い方を学べば、誰でも上手くなります。アーチェリーの射の正確性に関するものはすべて解析され尽くしているので、今では難しいものなど何もありません。唯一言えることは、ひたすら実射を繰り返しているだけで上手くなれる人は、1000人に1人しかいないという事実です。

    アーチェリーで競技をしている人は、みんな頑張って練習をしてると思っています。しかしその練習がムダになるかどうかは、その練習の質で決まります。質が高いものを獲得して、それをマスターしたときに量を求め、さらなる正確性を高めていくものなのです。質の低いものをどれだけ練習量を増やしても、時間の無駄づかいにしかなりませんからね。

    これまでスポーツ理学療法士の先生方と一緒になって身体を作ってきましたので、皆さん骨格のポジションと筋肉の使いかたが素晴らしいです。とても初心者とは思えないフォームですね。



    引きの弱い弓を使っているうちに、これらの身体の使い方を正しくマスターして、身体の各部を自在にコントロールできるようにレッスンを行ないます。



    センサーを装着して全員が見守るなかで計測してますし、動画と的中位置の把握のために撮影を行なってますので、緊張状態の良いデータを取ることができます。

    この日だけでかなりのことがわかりましたが、1000分の1秒単位の発射の瞬間のデータについては、スポーツ理学療法士のなかでの測定の専門家の先生と後日解析して、ひとりひとりの指導に活かします。

    加速度センサーから得られたデータの解析が今月の合宿までに間に合えば面白いですが、まぁ、冬の間のオフシーズン中の各自のトレーニング計画を策定するということで、焦らずじっくりと気長に取り組んでいきましょうね♪

    皆様お疲れ様でした! 計測データの解析を、お楽しみに!

    受講生の皆さんのデータは公開できませんが、私のデータの一部は、ここに後日紹介したいと思います。

    スポーツ医療チームと一体となったアーチェリー指導

    2015.12.07 Monday

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      アーチェリーが上手くなりたいという問い合わせが全国から寄せられます。上手くなるためには、どんなトレーニングをすればいいかという質問も多いです。

      私達の指導組織けいはんなアーチェリー以外では、アーチェリーの上達に関わる話題は2つ。ひとつは、トレーニングや練習について。もうひとつは弓具の選択についてです。

      どちらも大切な事だと言われていますが、実はアーチェリーの上達にとって最も大切なことは、それらの2つではありません。これは必ずしもアーチェリーに限った話ではありませんが、スポーツの上達にとって大切なことは、それ以前の条件を自分の身体に備えているかどうかが大きく左右します。

      �脳(神経系)と筋肉の正しい関わり
      �全身の柔軟性の高さ
      �心肺機能の高さ
      �筋持久力の高さ

      アーチェリーは単純で簡単で、おまけにアスリートレベルが限りなく低い部類に入るスポーツです。自分の弓を使って発射させる矢のスピードは速いですが、アイスホッケーのように人間の反応速度の限界を試すようなものはありませんし、サッカーのようにスーパーゴールをファインセーブされるようなこともありません。バレーボールのようにブロックされたり、巧妙なフェイントがなければ得点を入れることができないようなものもありません。

      同じ距離の同じ大きさの的に向かって、毎回同じことをするだけです。雨が降ろうが風が吹こうが、自分が動いてしまうことがあっても、的は決して動きません。10点に向かって飛んでいる矢が的に刺さる前に、ファインセーブするような邪魔もありません。各自それぞれに目指すレベルや目標があるでしょうが、初心者だろうが中級者だろうが、上級者もトップレベルの選手も、シューティングラインの上でやろうとしている事は同じで、的の中心を射抜くという同じ目標に向かって競技をしています。ただ違うのは、やろうとしてできているか、やろうとしてもできてない。それだけです。

      それでは、どうして引いて放つだけという単純な行為が毎回同じようにできないのでしょうか。それは自分の身体の中で発生させてしまっている力の向きが複雑なものになっていて、しかもユラユラ動く不安定な土台から発射させているからです。

      ■意味をなさない筋トレ

      特に経験者からの相談に多いのが、どこを重点的に鍛えたらよいかというものです。鍛えるって、特定の部位の筋力の強化のことでしょうか?(苦笑)

      単なる筋トレで身体を鍛えたいのであれば、好きなだけ筋トレをされたらいいと思います。しかし、自分が弱いと思っている、または指摘された部分を単に筋トレして筋細胞を肥大させたとしても、そんなことで高得点が出せるようになったりしません。筋力が強ければアーチェリーが上手くなるのなら、自衛隊員や消防のハイパーレスキューのように、普段から肉体を鍛えて実際に仕事で過酷に使うことができる人たちが格段に上手くなるはずです。しかし実際はそうではありません。

      自分の射のプラクティスの中にその筋肉を使ってドローイングするアプローチが備わってないので、あとからどれだけその部位の筋力を高めたとしても、まったく使えないムダな筋肉を養ってしまうことになります。筋肉は脂肪よりも重たいので、ゼイ肉として養ってしまった筋肉は自分の身体の重心バランスを崩してしまい、パフォーマンスを上げるどころか元に戻せないという状態に陥ってしまう選手も多いです。

      アーチェリーの射の動作は本来は単純なものです。しかし正しいドローイングのアプローチと骨格の正しいポジションへ誘導させるための筋肉の使い方に誤りがあると、矢を保持している最中に身体の中で不要な力を、ありとあらゆる方向から複雑に働かせてしまいます。サイトピンのその先に矢が的中しない最大の理由がそれです。人間の骨格の構造と、そこに関わる筋肉の組成を完全に理解しているのであれば、まっすぐ押すとか、まっすぐ引くなどという表現を使うことに誤りがあることもわかります。そして正確な動作を行なえるようになるために、身体のどの部分の基礎固めをしていくかという事を、順序を間違えずにレクチャーしなければならないのです。多くの人はまず射から入ります。それでは上達するための順番を大幅に飛ばしてしまっていますので、どれだけ努力を重ねても万年中級者にしかなれません。

      アーチェリーは弓の引きが強いと言っても、たかだか40ポンド前後です。ドローイングのアプローチと骨格のポジションが正しければ、大して負荷の強いスポーツではありません。指導者研修会の時に自分が引ける最大ポンドを計測してもらいましたが、私は準備運動もなしで、いきなり96ポンドを引きました。大昔に試したことがありますが、ちゃんと身体の準備をすれば100ポンドは優に引けます。私と関わったことがある多くの人が知ってますが、私は身長161cmと小柄で、体重は51kgと細身です。服を着ていれば、100ポンド近くもの数値を計測するような身体には見えないと思います。ちなみに握力は40kgしかありません。強い弓を引くということは、決して腕力などではないのです。

      ですから何年もアーチェリーをやっていて、実質40ポンドに満たないような平均的な選手の弓を使って上手くグルーピングさせることができないというのは、自分の射に大きな間違いがあるのです。ですから、弱い部分だけを鍛えたところで、それは自分の身体のバランスをさらに崩してしまうことになりかねません。

      ■そんなの指導でもなければ練習でもない

      多くのアーチェリー指導の現場では、テキトーに射ち方を教えて、弓矢の危険性と安全確保についてを教わり、弓矢の使い方を習って射たせるだけです。そして何点出たらどうとか、何mで何点出たらどうとか、肩が上がってるとか、リリースが膨らんでるとか、誰が見てもわかるような外観上の指摘をする。それだけです。もうその時点で身体の中に誤ったプラクティスが刻み込まれているので、時すでに遅しです。外観上の指摘を受けてそれを見た目だけで直そうとすると、身体の中でさらに複雑な力の向きが加わります。そうなると、どんどん悩みのドロ沼に落ちていきます。

      アーチェリーをしている現場を見ればわかりますが、各々がアーチェリーができる場所に来て、アーチェリーを使って的に矢を射つだけ射って、そして帰っていく。それだけです。指導のプロフェッショナルがいないところでアーチェリーをしているものですから、みんな単に実射をするのが練習だと思い込んでいます。アップもロクにしてませんし、射つまえにストレッチのマネ事のようなものをチャッチャとやって、何となくゴムを引いて、それだけでいきなり射つ(笑)

      そして射つだけ射って、今日は良かった悪かったとレベルの低いもの同士でキズをなめあい、クールダウンもせず、誰ひとりアイシングもせず(家に帰ってから、どこをアイシングしなさいという指示もない・・・)、家に帰って熱い湯船にどっぷり浸かって、ビールを飲んで寝ています。そんなことをしてたら、スポーツ障害を抱えるためにアーチェリーをやっているようなものです。

      そんな状態なのに、トップレベルの選手は一日で何百射しているなどと言うものだから、その部分だけがクローズアップされて、ダメな射の状態での実射数をせっせと増やします。クイーバーのベルトにカウンターをブラ下げてる中級者が多いですが、一日で何射したら自分の肩が痛くなるのかをカウントしているようにしか見えません。そもそもカウンターで計測しなければ自分が何射したかわからないような人が、技術論の何を覚える事ができて、どんな高度なトレーニングを実践できるというのか。単にスコアを記入しているだけの練習でもまったく意味がないのに、ダメな射を何百回繰り返したかを記録するためだけの練習に一日を費やすような、恐るべき時間のムダづかいになってないかを考えましょう。

      ■アタマが悪い?

      練習しているのに大して上手くならないと言って相談してくる人に、「それはアタマが悪いからだ」とは言いにくいものですが、スポーツ指導の世界では、それは必ずしも間違ったものではありません。アタマがどうとか論じると学力とか偏差値に結びつける傾向がありますが、そうではありません。身体の使い方のマズさは、実は脳と神経の使い方のマズさにあります。

      少し教えただけで格段の進歩を見せる人は、これまで文化・古典芸能・武道・スポーツなどで成功してきた人だったりします。要は、天才能という部類の人たちです。そういった人たちは身体の細部にわたって実に器用な使い方ができるようになります。

      これまで普段からそういった頭と身体の使い方をしてきた人たちは、何をさせてもすぐに進化していきます。しかしそうでない人にとっては、人間の身体の中で最も器用に扱えるはずの指先ですら、思い通りに動かせない人がほとんどです。自分の指先が自由自在に動かせないのであれば、これまで感じたことがない、というか、まともに動かしたことがない肩甲骨を自分の思い通りに動かすことなどできません。それは自分の身体の動きからくる信号が、脳まで届いてないから思い通りに動かせません。自分の身体の骨の多くを、その骨につながっている筋肉を使って動かす信号が脳との間で途切れている状態なので、これまでやったことがなかった射の動作をいきなりさせられても、脳と筋肉とが相互に関連する動作が正しくないまま、それがプラクティスとして身体を動かすようになるのです。



      動かなくなった、もしくは動かせるための信号を送受信させるためのルートが途切れている状態を回復または新たに作り出すことを、リハビリと言います。アーチェリーを学ぶ上で大切なのは、自分の骨格を自在に動かせるようになるために必要な動きを持たせる筋肉への、脳からの指令のルートを構築することです。個人個人の身体の状態に合わせてリハビリとトレーニングのメニューを作り、使える身体を作る作業から始めなければなりません。それはもちろん、弓を使って実射をする練習に入る、かなり以前から行なわなければならないのです。



      トレーニングと聞くと過酷な筋トレを想像されると思いますが、そんなものは一つもありません。それよりも多くの人が苦戦するのが、身体各部の可動域の拡大です。そう、ストレッチです。ストレッチは単に筋肉を伸ばすだけのストレッチではありません。個別の身体の状態に合わせて理想的な身体を作り上げるために、様々な手法を用います。多くのアーチェリー指導の現場で行なわれているようなトレーニングはありません。リハビリやストレッチは、スポーツ整形のドクターからのメディカルチェックの診察を受けて、スポーツ理学療法士の先生方から個別に指導を受けてレッスンを行ないます。こうして年齢や性別や各自の身体の状態を鑑みて、幼稚園児から高齢の方まで、初心者からトップレベルの選手、それにクラブチームやクラブの顧問の先生など指導者への指導を行っています。



      ですからレッスンでは、実射の練習に進めるようになるまでに時間をかけて指導を行っています。低負荷または無負荷でのレッスンに長い時間をかけることで、骨格同士を結ぶ重要な役割を果たすインナーマッスルを無理なく鍛えていくとともに、アーチェリー指導者だけの指導ではなく、スポーツ医療の専門家の厳しいチェックを受けてステップアップを果たしていきます。ですから多くのアーチェリー集団が抱えている、肩などを中心としたスポーツ障害とは無縁でいられるのです。もしも身体に不具合や異常が見られたときは、本人の申告の有無や、本人が痛みを感じる感じないを問わず、スポーツ理学療法士の先生やスポーツ整形のドクターが客観的に診断して、治療や早期のリカバリーに向けての対応策を伝えてもらいます。

      単なる競技力の向上だけを目指すのであれば、それはそんなに難しいことではありません。大量の故障者を築きながら勝利を目指すだけでいいからです。選手のその先の人生のことも考えず、しごき上げて残った人間だけが優遇されるのです。しかしそれでは日本のアーチェリーが、文化としてのスポーツに育つことができません。スポーツ指導に携わる人間にとって本当に大切なことは目の前の勝利やメダルの数などではなく、アーチェリーを始めてみたいとい思っている目の前のひとりに、世界で最も優れたスポーツ指導を行うことができる環境を作り上げるのが、先達としての使命だと思います。

      ■これからが冬本番です

      師走に入り大雪を過ぎましたが、意外に暖かい日が続いています。しかし秋に比べて気温は低く、油断していると筋肉を傷めてしまうこともあります。インドアのシーズンなので冬の間も18mの試合が続きますが、上級者でもない限りはオフシーズンだととらえ、春からは別人だと言われるように身体を入れ替えてしまいましょう。

      一年を通じて参戦している上級者は別ですが、オフシーズンがないなどと言って実射を繰り返してしまうと、あなたの今年の射は、来年になっても同じことを繰り返すに過ぎないのです。春のシーズンインから肩が痛いとか、不調だという選手は、一流を名乗る資格はありません。たとえ痛みや故障がなくても、春になって進歩していない自分を見るのは情けないものです。スポーツだけに限った話ではありません。戦いで切り続けた刀を手入れする時間を作らなければ、いずれ刀は折れてしまいます。その前に身体が壊れてしまいますが・・・。本格的なシーズンに入ったときに全力で戦える自分を磨き上げる時間をどこかで作らない事には、どんな分野においても自分の進歩などなく、本気を出そうが気合を入れようが、ダメなものはダメなのです。

      これからの季節は寒さが一段と厳しくなりますので、寒風吹きすさむ屋外での練習はやめましょう。低温時の筋運動は、故障の最大の原因となります。練習しているような気になるかもしれませんが、百害あって一理ナシです。冬の間に心肺機能を向上させるために、しっかりと有酸素運動を行なってレベルアップしていきましょう。

      寒さが増していき、放っておくと身体を痛める選手が出てきますので、今月はスポーツ医療チームのフォローを増やしていただきました。熱心に練習をされてる平日のレッスンを受講されてるメンバーのために、身体の状態を確認する日を増やしました。

      今月からは合宿もあり、合宿の翌日にスポーツ整形のドクターからのメディカルチェックの診察を行ないます。アーチェリーの練習やレッスンのみならず、仕事や日常生活で抱える痛みや不具合の相談にも対処していただけるので助かりますね。

      日本がスポーツ指導後進国だと言われているうちに、私たちの取り組みはどんどん前に進んでいきます。日本で開催されるオリンピックまでに、私たちのスポーツ指導が「これが日本では普通だ」と言われるようになってほしいものですが、スポーツ指導員の資格取得の条件が、こんなにもレベルが低いものであるうちは、全体が大きく変わる期待ができそうにありません(苦笑)

      馬を殺して尻の皮を剥ぎ取った皮革を使う価値があるだけのレベルを目指そう

      2015.11.24 Tuesday

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        タブ革の交換についての相談が多いです。カントピンチのカントや指との間隙、アンカーパッドなどの機能や機構に関する相談ではなく、タブの表皮についての相談です(笑) タブ革で検索すると、このブログがヒットするようですね。それなら貴重な馬を無駄に殺さないためにも、ぜひ読んでもらいたいものです。

        アーチェリーに関する用品についてのそれぞれを、何が最高かという質問も多いです。しかし最初から「最高」と言われるような製品を使ってはいけません。今ではもはや最悪なものなど製品としては売られてませんが、たとえ低価格な製品であっても、そこから自分が最高を引き出せない限りは道具のステップアップをしても、最高の製品を単に消費しているだけに過ぎません。自分の性能を高めない限りはどんな製品のパフォーマンスも引き出すことはできませんし、優れていると言われているスペックの高い道具を使うことに何の意味もありません。周囲を見渡してみるといいのです。最初から最高の道具を使って最悪な結果しか出せない人がほとんどなのです。なぜそうなのかを考えてみるといいでしょう。

        ■タブ革がコードバンでなければならないと吹聴する人たち

        タブ革に関する相談の多くは、最初は合皮や牛革のタブを使っていたが、次はコードバンにした方がいいのか?とか、質の良いコードバンが欲しいが、どこのコードバンがいいのか?などというようなものです。何を言ってるんでしょうか?ハーフ(50m・30mラウンド72射)で600点も出ないうちは、別にタブじゃなくてもグラブで十分です。タブであれば初心者用のタブで、合皮でも牛革でも素材なんてどうでもいいです。むしろタフな素材のコードバンではないほうがいいです。どうして射の技術が未熟な上達過程にある人間が、タブ革の素材を気にするのか理解に苦しみます。そこには合成皮革や牛革のタブを使って正確な射の手本を示す指導者がいない証拠ともいえます。本当に上手くなるまでは、弓具への細かなこだわりは、単なる自己満足にしかなりません。上質な素材を手に入れることを考えるよりも先に、上質な射ができることになることが100倍も大切です。

        コードバン。この言葉はアーチェリー業界ではカーボンとよく似た言葉の使われ方がされてますね(笑)コードバンもカーボンも単に素材のことであり、それらの素材が自分を上達させたり、それらを使うことで自分の得点が上がる魔法ではないのです。射の技術をマスターすれば、何をつかってもかなりの得点が出せるようになります。大して当たらないのは道具のせいではなく、扱う自分の射が正確でないことが原因です。上手くならなければ何をつかっても大して当たりません。それはあらゆるスポーツで共通しているように、古来から不変の事実です。

        コードバンは農耕馬の尻の皮をなめした皮革です。左右の尻の革が1対になっていて、尻尾や肛門に近い部分を取り除いたあとの、その見た目の形状から「メガネ」などと呼ばれています。しかし必要な革は尻の部分だけであり、つながっている背部の皮革は必要ありませんので、一般的にはメガネという状態ではなく、左右の尻を切り離して余分な周囲の革を取り除いた楕円形の状態で販売されています。アーチェリー用のタブとして使われるものは、その楕円形のものを仕入れてタブに型抜きして製品化されます。馬は生物なので個体差があり、コードバンの大きさは均一ではありませんが、楕円形のコードバン片側1枚につき15〜20枚程度のタブ表革になります。30〜40人のアーチェリー愛好者がコードバンのタブを1枚使うことで、両方の尻の革をはぎとるために馬1頭の命が失われます。ちなみに牛革は皮革の全面を使えるのに対して馬革は、尻の革のコードバンの部分しかタブには使うことができません。



        これが世界最高の新喜皮革のコードバンです。世界中のセレブに愛される超高級革製品に使われる素材です。芸術品の製作目的であれば納得の極上素材ですが、アーチェリーで使われるタブのように、単に磨耗させて消耗させて捨ててしまうような使い方をするために作られたものではありません。

        一部の上級者以外に、コードバンなどという高級皮革は必要ありません。ストリングへの取り掛けができて安全にリリースができて、ストリングから指先を守ることができれば、タブの表皮は人工皮革でもゴムでもビニールでも何でもいいのです。その人が使っているタブの状態を見れば一発でわかりますが、ドローイングのアプローチに誤りがあり、正しい取り掛けとアンカーリング、そして正確なリリースができてない人にとっては、どんな品質の高いコードバンを使ってもまったく意味がありません。コードバンの2枚重ねは、ひとり当たり2倍ものコードバンを消費することになるので、よく考えると残酷な話です。

        ぶ厚い革を2枚も重ねてしまうと、ほとんどの場合は取り掛けの感覚が希薄になり、リリースがぎこちなくなってしまいます。特に40ポンドにも満たない実質ポンドでは、タブ革にコシがあり硬さがある、または厚みがあると、取り掛けの感覚が希薄になるので、ドローイングやアンカーの最中にタブ革の上で指先からストリングが滑り出そうとして、それを抑えるために腕に力を込めてしまいます。だからアンカーが一定にならず、優しく丁寧なリリースができません。おまけに緩んでいくものを握り締めようとするために、いつまでたってもクリッカーが鳴りません。試合になったらリラックスして射てないので、なおさらです。ほとんどの選手がそんな状態で、懸命になって実射を繰り返し続けています。そんなことだからどれだけ練習量を増やしても、いつまでたっても上手くならないのです。高得点を叩き出すことができる上級者ならともかくとして、中級者や初心者がマネをするようなものではありません。そんな状態で上達できないでいるにも関わらず、タブの革はコードバンがいいなどと誰かから言われ、本当に自分の上達を手助けするかどうかもわからないまま、コードバンを使うことになるのです。

        ちなみにタブの素材として最もふさわしいのはコードバンではなく、高級なサッカーボールの表皮やスポーツサイクルの高級サドルなどのの表皮に使われているマイクロファイバー素材です。様々な呼び名のものがありますが、あらゆる皮革の素材を上回る耐久性と、どんなに濡れても性能が変わらない防水性の高さ、それに天然由来ではない製品の均一性を誇ります。恐らくタブの寿命まで使える人がいないのではないかと思えるくらい、繰り返しの磨耗に強く手入れが楽で、コードバンのように変形したり変質することはありません。しかし軽量な表皮が必要とされるサッカーボールと違って、アーチェリーのタブとして使うには厚みが必要になりますので、何か他の素材に貼り合わせなければ使えません。アーチェリーで消費するマーケットのサイズを考えると、アーチェリー用として生産するのは今は考えにくい素材です。タブに装着して使わせてもらったことがあるのは、世界中で私を含めて数人しかいないと思いますが、将来的にはそのような素材を使われる時代になればいいなと思います。

        ■牛革のタブ

        牛革の優れている点はコストパフォーマンスの高さにあります。コードバンは馬の革の尻の部分からしか取れません。タブ用としてのコードバンは、馬1頭あたり30数枚程度しか取れません。しかし牛革は、牛の体のほぼ全域にわたる広い範囲の革をタブ用に使うことができます。牛1頭あたり400枚程度のタブ革が取れます。みんな安易にコードバンを使いたがりますが、命を戴くことの有り難さと、自分のレベルが本当にコードバンに相応しいかを、1射リリースするたびに、胸にタブを当てて考えてみるといいのです。

        タブの革の性能に関しては、コードバンではなくて牛革でも70mで330点程度が出ているのは以前も紹介しましたし、全関西春季で雨の中、後半に315点を出したり、ローカルな試合では何度か優勝しているのはご存知だと思います。



        このピンクの牛革は、上の小さな小学生用のタブを作ったときの切れ端で作ったものです。これで高得点が出てますし、京都府アーチェリー連盟主催の公認競技会で2連覇を果たしたものです。いくつかの競技会場では、このピンクのタブ革がどこのメーカーから販売されてるのか何人から聞かれたものですが、ホームセンターの中にある手芸コーナーに置かれていた牛革のハギレで、これ1枚で60円だと言うと、一様に驚かれたものです。



        こんなものでも70mで330点が出ますからね。かつて某社の製品テストで、イヤになるほど様々な素材を試させられましたが、自分が感じるフィーリングが的面での得点に影響が少ない。というか、50m6射で60点の時と58点のときの自分の射の違いですら判別つかないので、結局はタブ表皮の素材に何を使っても出せる得点の差を見出せないという、笑い話のような思い出があります。結局は感触とか感覚とかフィーリングなどと好き勝手なことを言ってるだけで、何かを感じたときにはすでに矢は的に向かって飛んでいるわけで、感じている最中に人間は何をすることもできないというのが、身体や弓に装着した加速度センサーのデータを解析してもわかります。何をどう感じようが、道具は自分に与えられた仕事を確実に正確に行うので、よほど特別なレベルに到達しないかぎりは、何を使っても凡人が神業など発揮できないということです。

        ちなみにタブ革のコードバンの表皮について、皮に生えてた毛の向きがどうであるか調べたいという質問もあり、これにはさすがに苦笑しました。コードバンで毛の方向を知るには、一般的に入手できるコードバンの楕円形のシートの状態ではなく、左右の尻がつながったメガネの状態で入手しなければなりません。海外の質の低いコードバンは知りませんが、日本が世界に誇る最高品質のコードバンは、表面をガラスで研磨して完全に鏡面仕上げにされているので、通常の顕微鏡をつかって表皮を見ても毛穴の向きはわかりません。表皮の摩擦抵抗を計測したことはありませんが、表皮ではサービング糸が摩擦を発生させるので、リリース時の抵抗係数うんぬんを語ることに意味はありません。そもそもコードバンの表面は染色が施されているのです。染色されてない馬の尻の肌の色のままの、オイルグレージングのコードバンもありますが、毛穴までは見えません。タブ革は、ストリングを取り掛けている部分が毎回完全に同じであり、ストリングに巻きつけてあるサービングの糸が、タブ表皮に毎回必ず同じ軌跡を残すことが必須なのです。それができるようになってはじめて、コードバンを使う意味がわかるようになります。これまで使ってきたタブ表皮が良くない状態であれば、コードバン表皮の毛穴の向きにこだわっても、どうしようもありませんからね。ほとんどの選手が、自分の使っているタブを私に見せたがりません。そんな人が、顕微鏡を覗いても見えないコードバンの毛穴の向きを気にしてどうするのですか?そんな細かいこだわりがあるのなら、普段から競技でさぞかし高得点を叩き出しているはずですが・・・

        上達するまでには、ソフトな取り掛けと優しいリリースのために必要な、指先に関わる大切なことを習い、ひとつずつを修得していかなければなりません。それはコードバンを使ったらマスターできるというものではありません。どうして初心者用にグラブという柔らかい牛革で作られた製品があって、どうして初心者用のタブには牛革や薄い合成皮革が使われているのか?コードバン製のグラブはありませんよね?射に関わる技術は、非常に弱い弓を使って修得しなければならないものばかりです。ですから高ポンドに対応した上級者用の用品を上級者以外が使ってしまうと、最初に絶対に感じておかなければならないものが、一切わからなくなってしまうのです。実質40ポンドに満たないリムを使っている人や、上達過程にある人が上達するまでに必要なのは、指先から得られるストリングのインフォメーションです。それは自分が的とサイトピンを見ている目の中心から、取り掛けてアンカーで保持しているストリングに装着されたノックまでの距離が正確であるか。タブから送り出されてリムまで戻るストリングの軌跡を統一できるか、そうでないかの重要な指導になるのです。どれだけ練習量を増やしたところで大して上手くならないのは、それら大切なことが大胆にスポイルされている事もわからずに(わからなくなった状態にさせられているにも関わらず)、実射を繰り返すという状態に陥っているからです。

        それを知るにはタブ革に必要な性能は、(最初は)柔らかさと、革ごしに自分が取り掛けているストリングを感じることができるかどうかというものです。でなければ、自分がどのようなリリースをしているかが、まったく理解できないまま、ムダに射をこなすことになります。それがわからないままポンドアップしていく(させられてしまう)から、指先の皮膚が対応できなくなっていくのです。そうなったら指の皮膚が角質化されていき、どんどんストリングのインフォメーションがわからなくなります。しかも練習できる日には1日で必死になって数百射も繰り返してしまうので、繊細な感覚を永遠に失ってしまいます。ですから、ほとんどの人が何も感じなくなってしまっています。そうなってしまわないためにも、上級者以外が上級者用の用具を使うことは、何としても避けなければならないのです。練習の量をどれだけ増やしても、ある程度までは得点が出せるようになっても、そこから先に進むことができなくなるのです。

        それでは、手に入りやすい牛革の端切れをつかって、高性能なタブ革を作ってみましょう。

        ■タブ革を作ってみる



        コードバンだろうが牛革だろうが、素材そのものが最初から勝手に高性能なワケではありません。繊維が緻密なコードバンであっても、何もしないのであれば単なる馬の尻の革にすぎません。しかし牛の皮であっても古来からの人間の知恵で、耐久性の高いものをつくることができます。革靴だってベルトだってランドセルだって牛革なのです。こんな安い(実はコードバンも素材自体はそんなに高くないが・・・)牛革でも、かなりの高得点を叩き出せる、高性能なタブを作ることができるのです。

        大きなホームセンターや、レザークラフト用品を置いてある手芸屋さんでは、このようにカゴ一杯に端切れが置かれています。端切れじゃなくてもハガキサイズなどで数百円で売られていることも多いです。バッグなど様々な製品として使われた端材なので、耐久性の高い端切れが何種類も置かれていることが多いです。



        今回はタブの表皮用に、この2枚を購入しました。どちらも1枚50円です。これらは大体1デシ単位のサイズに切り分けられているものですが、大きさが不揃いのものであれば、1枚で2〜3セット分くらいを取れるものがあります。着色してあるものでも、何ら問題なく使えます。タブの表革として使うので、店頭で指で触ったときに固さがある、ゴワつく感じのものを選びます。表皮が少々荒れていても大丈夫です。値札がホッチキスで直接止まってましたが、ホッチキスの穴なんてタブの性能に関係ないので些細なことは無視します。革に油を浸透させて使いますので、革は固めのものを使います。最初から柔らかいものは油を浸透させるとヘニャヘニャになります。裏革としても使うことができますが、裏革に使うのならベロア革の大きめのシートを買ったほうが圧倒的に安いです。



        この1シート648円のベロア1枚で、17枚分のタブの裏革用ベロアシートになります。裏革には、通常はこういったベロアシートを使います。とても安いですが、アーチェリーのタブの裏革に使われているものよりも、かなり上質なものが手に入ります。常に指先で触れるものなので、汚れが目立ったり質感が変わってしまう前に、マメに交換しましょう。



        タブ革の作り方は、もはや説明する必要がないほどカンタンです。まずはタブのプレートから、元の革を取り外します。元の革からボールペンや細書きマジックでトレースして、ハサミやカッターナイフで切り取るだけです。裏表を間違えると逆射用になってしまいます(笑)ので、注意してください。見た目の仕上がりを美しく仕上げたい人は革を表側にしてトレースする事もありますが、こんな形を変えて効果を発揮する消耗パーツの美観を気にしても仕方がありませんので、裏側からトレースして切り取ります。なお、元の革が、元のカタチがわからなくなるほど変形してしまっている場合は、いちど型紙を起こしてからトレースすると便利です。



        このように、いちど厚紙などで型紙を起こしてしまえば、次にタブ革を切って交換するときにラクできます。同じクラブや仲間同士で同じタブに揃えて使っていれば、タブ革を作り置きしておけるので便利です。これまで使っていたタブの革が短くて指先のはみ出し幅が多めな人は、左右方向の全長を長く起こして切り取ります。指が細くて長い人は、自分専用の型紙を起こしておくといいでしょう。牛革だと1枚あたりの単価が50円程度と安いので、自分にピッタリ合った形状に何度も作り直すことができて便利です。何千円もするアーチェリー用品として売られているコードバンの交換用皮革を買ってしまうと、そうそう作りなおすこともできませんからね。このようにして、自分の指のサイズに合わせたオリジナルを作ってみましょう。



        皮を切り取ったあとは、プレートに装着するための穴をあけます。ボルトが通るサイズの穴を、穴あけポンチを叩いてあけます。穴あけポンチがない場合は、千枚通しや細いクギを刺して穴を広げてください。ボルトが通ればプレートにタブ革を固定することができますので、穴の位置はそれほど神経質に微調整する必要はありませんし、あいた穴の形状がキレイじゃなくても大丈夫です。自分が使っているタブのボルトが何mmなのかを知っておくと便利です。このタブには3mmの穴あけポンチを使っています。ベルトとカントピンチの穴は、100円ショップで売られている彫刻刀の丸刀を使うと、穴を開けやすいです。カッターナイフやクラフトナイフを使う場合は、手を切ってしまわないように細心の注意を払って下さい。切れ味の鈍った刃物を使うとチカラを込めすぎて、誤ってケガをする人がいますので気をつけてください。



        革は湿気を嫌います。どんな皮革であっても吸湿と乾燥を繰り返すと革本来のしなやかさを失ってしまい、タブとしては使い物にならなくなってしまいます。メンテナンスしていない乾いた革には手から分泌される汗や皮脂がタブ革に徐々に染み込んでいきますので、あまりにも不衛生です。汗の浸透と乾燥を繰り返すあまりに、アーチェリーケースの中で異臭を発するタブを使っている人もいます。白く塩を吹いているタブを使っている人もいます。タブを洗濯機で洗う人はいません。クサいだけならいいですが、指先に触れるものなので食中毒の原因にもなりかねません。特に裏革はマメに交換してください。1年で4回交換しても200円もしません。

        穴をあけて、プレートに装着できる形に革の周囲を切り取ったら、タブのプレートに装着する前に油を染み込ませます。油はレザークラフトで使われるフットオイルやブーツオイルでもいいのですが、一般家庭で使われる食用油でも代用できます。素肌で触れるものなので、グリスやエンジンオイル、ミシンオイルなどの工業用の油や、有機溶剤を含んだものを使ってはいけません。食用油を使う場合は、オリーブオイルや胡麻油などのようなものを選ばず、なるべく香りの少ないものを選んでください。でないと、アーチェリーケースの中が油クサくなります。タブとして使っていると油の酸化が意外に進むので、食用油は必ずしもお勧めできるものではありません。ラードでも食用油でも役目は果たしますが、ゴキブリやネズミなどに狙われないようにしてください。油ではない方法で耐水性を高めて乾燥を防ぐには、ワセリンが優れた効果を発揮します、ワセリンは安いですし酸化や劣化がほとんどありませんし、アロマオイルを1滴たらすだけで、タブ革専用の上質な特別なオイルになります。私はローズマリーを少し加えて使っています。オリジナルのタブは、このようにして楽しめるのがいいですね。香水などを加えると周囲の迷惑になる可能性もありますので、香りを加える場合は、ほどほどにしてください。ちなみにワセリンは、なるべく小さなサイズのものを買いましょう。大きなサイズはお得感バツグンですが、大きなものを買ってみんなで小分けしても量が多すぎて、何年も処分に困ることになりますからね(笑)



        ワセリンには雨にも強く、雑菌が繁殖せずに保湿できるので、食用の油よりも衛生面でも安心です。ワセリンを革の裏側から指先で伸ばして塗りこむと、みるみる浸透してきます。表革の表側にも薄く塗りのばして余分なワセリンを拭き取ったら、タブの両側をティッシュではさんで、さらに新聞紙などではさんだものを床に置いて足で踏んで、染込ませすぎたワセリンを革からじんわりと追い出します。それをプレートに装着して完成です。以前に牛革を使ったときにはピンク色だったので目立ちましたが、今回はグレーなので落ち着いた色合いになりましたね。ちょっと地味なので、今回は誰も気づいてくれないかも知れません(笑)



        さっそく実射してみました。ワセリンを含ませているので、ほんのりとしなやかで、ぽってりと張りがあって、上質な感じのタブの出来上がりです。手入れされていないガサガサになってるコードバンの表皮をつかってストリングを握りしめている人がほとんどなので、がさつなリリースになってしまっているのかも知れませんよ。そんなものよりも、手入れの行き届いた張りのある牛革をマメに取り替えて使ったほうが、よっぽど価値があるというものです。

        ワセリンは取り掛けている指先の保護にも効果を発揮します。実射の練習をする前に薬指にワセリンを含ませて、皮膚に浸透させた状態で射つと、リリースによるストリングからの皮膚の保護に役立ちます。その人の皮膚の状態にもよりますが、矢取り3回くらいで指先に塗り足すことで、皮膚の損傷と角質化を防ぐことができます。その際に指先を、てのひらを伸ばすように軽くストレッチをしたり、ストリングを取り掛けている側の腕をマッサージすることで腱や腱鞘に関わる炎症の防止にもなります。身体のメンテナンスもせずに無闇に実射を繰り返すことだけは、くれぐれもやめてください。身体は、繰り返しの動作で確実に痛んでいきます。疲労を蓄積させないためにも射にはインターバルをもたせ、特定の部位を酷使させないように注意しながら練習をしてください。

        ■的中は道具だけでは望めない

        本当に上達するまでは、タブ革などに30倍以上の金額をつぎ込んでもムダ金にしかなりません。弓具すべてに言えることですが、初心者や中級者の頃は、自分に関係のない性能の弓具は一切必要ありません。どうせ使いこなせないモノにお金を払うくらいなら、自分の身体に投資した方がよっぽど回収できるというものです。コードバンよりも牛革が優れていると言っているのではありません。しかし交換用のコードバンのタブ革1枚で、牛革であればその人の何十年分もの交換用の革になるのです。そんな究極ともいえる天然素材を使うのは、上達してからにしましょう。

        どこのコードバンがアーチェリーに優れているかなんて、トップレベルの選手以外には関係のない話です。上級者でもない限り、どうせ何を使っても同じです。単に動物の革を消費するだけなのであれば、1枚あたりの命の重みのあるコードバンを使うべきではありません。尻の皮を剥がれた馬とは、この世で生きて会うことは叶わないのです。そもそもコードバンなんて、本当はアーチェリーのために作ってるわけじゃないんです。しかもコードバンの本来の性能を活かした使い方がなされてないのであれば、それこそ転倒しているのです。

        何よりも、1枚50円のタブ革に屈するとしたら、道具の性能を語る資格などそもそもありませんし、勧めてきた選手や指導者として、販売してきたショップの人間として、これほど恥かしい話はないのです。道具にお金をかけるのがアーチェリーではありません。アーチェリーは自分の身体の性能を発揮させて当てて高得点を叩き出す、まぎれも無いスポーツなのです。道具は使いこなしてナンボです。道具への片思いほどバカらしいものはありません。何のためにお金を払ったのかを考えてみるといいのです。使いこなせないならゴミも同然です。アーチェリー愛好者は、馬の命をゴミ同然にしている人だらけ。

        本当に上手くなるまでは道具へのムダな出費は抑えて、楽しく賢いアーチェリーライフを満喫してもらいたいものです。

        スポーツ医療チームのアーチェリーレッスンも佳境に入ってきました。来月はいよいよ、スポーツ整形のドクターによるメディカルチェックの受診がありますね。寒くなってくると筋肉の動きがこわばって故障の原因になる事が多いです。本当に上手くなるまでは道具の性能なんてどうでもいいので、自分の身体の状態を万全にして、冬のあいだに身体の性能を高めておきましょう。

        上級者にしか当たらないカーボン矢と だれでも当たるアルミ矢

        2015.10.05 Monday

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          ■国体にて

          先週の日曜日は、和歌山国体アーチェリー競技の会場に行ってきました。決勝戦のもようはNHKのEテレ地上波で1時間にわたって放映されてましたので、テレビでご覧になられた方もいらっしゃるのではないでしょうか。



          それぞれの都道府県の代表が、それぞれの地域ブロック大会を勝ち抜かなければ本国体に出場できない狭き門です。近畿ブロックの成年は強豪ぞろいなので、各府県でトップアーチャーを3人揃えなければ出場することも叶わぬ狭き門です。特に成年男子はレッドバッジを持ってないレベルでは、近畿ブロック大会を勝ちあがって本国体への出場もできないほどなのです。

          このような世界で通用するようなトップレベルの選手たちは強靭な肉体と、正確無比な射を行うことができる高いレベルの技術があり、世界トップレベルの高性能な機材を使って参戦しています。当たり前といえば当たり前ですが、このような国体での70mの的は、ほぼ全員がほとんどの矢を黄色に当てています。赤色の得点帯を射つと、ハズレだと思っている人が多いレベルです。

          それにしても近畿勢の強さは凄まじいです。成年男子は開催県の和歌山と、近畿ブロック大会を勝ち抜いて本国体に進出した滋賀と大阪のいずれもがベスト8に入りました。決勝戦のカードは和歌山対滋賀で、滋賀が優勝、和歌山が準優勝。吹き荒れる強風のなかでゴールドを射抜く能力は、実に素晴らしいものがあります。トーナメントは運不運などと言われることもありますが、強風の中で正確に中心を射抜くことができる能力は決して運などではなく、その状況で能力を発揮することができる実力を備えているからに他なりません。

          ■猫に小判じゃ意味がない

          上級者用の弓具は、上級者が正確に的の中心を射抜くためにあります。しかしここで重要なのは、上手くなるために必要な弓具と、上手くなってから使う弓具は違います。弓具にはあらゆるグレードがありますが、弓具で背伸びをすることなく、自分が使いこなせる範囲での弓具の選択が大切です。

          しかし上達過程にある中級者や、アーチェリーを始めたばかりの初心者や高校生、驚くべきことに中学生や一部の小学生までもが、こういったトップカテゴリーで参戦している選手と同じグレードの、超高額な機材を振り回して、矢を的一面に撒き散らしているのです。

          どうしてそれを使っているかを尋ねると、ショップで勧められた、先輩が選んでネット通販で取り寄せた、などという人がほとんどです。50mで300点も出せないようなレベルでも、総額25万とか15万以上などのムダに高額な製品を買わされて、まともに当てる事もできないのに、X10やACEや、軽量なオールカーボンの矢を使っているのです。しかもスパインが合ってなかったりストリングの全長が合ってなかったりと、書き切れないほど弓も矢もムチャクチャな状態で使っている人が多くて、しかも射ち方がムチャクチャなので呆れてしまいます。

          自分で弓具のすべてを熟知してないレベルの人が、アーチェリーに関わる用品をネット通販などで買うべきではありません。通販サイトはプロショップなどではありません。ネット通販を自分にとって都合よく使えるのは、上級者だけです。単に売りっぱなしの大手の販売店は、今や高額なアーチェリー用品を揃えている量販店に過ぎません。初心者や中級者に対して上級者モデルを勧めるような良心的でないショップに、自分の上達を期待するのはやめましょう。最初に高いお金を払わされるだけで終わります。最悪な場合は、次に買いかえるときに、さらに高性能な機材を売りつけられます。というか、欲しくなるように洗脳されていきます。よく考えてみるといいのです。それらを勧められて何年もアーチェリーを続けてきて、ちゃんと上手くなれたのですか?そうでないから困っているのでしょう?

          レスポンスが高い高額なカーボンの矢を使うのは、ちゃんと当たるレベルになってからにすべきです。こんな消耗品に、大して当たりもしないうちからお金をつぎ込むものではありません。矢は異なるスパインのシャフトを数種類使ってみないと、本当に自分に合ったものに出会うことができません。1ダースの矢を作ったら、それで終わりではありません。最初の矢を自分にとっての最初の基準にして、数種の異なるスパインを試さないと、自分に合っているかどうかもわかりません。

          ですから自分のリムを買った時にいきなり1ダースのACEを買うなど、まったくのムダです。取り掛け、ホールディングの作用、リリースの際の力の向きなどは、人それぞれに違います。腕力でストリングを引いてる人とそうでない人でも、スパインの選択は同じではありません。スパインチャートは大体が合ってますが、あくまでも目安に過ぎません。ですから必ずしも万人に当てはまるものではありません。上級者になるまでに、どれだけのスパインを試したかが大切なのです。

          多くの中級者たちは、いちど高額なカーボン矢を買ったら、ずっとそれを使い続けているでしょう?シャフトだけで1ダース4万円近くもするから、スパインが合ってるかどうかわからなくても、そうそう買いかえられないでしょう?スパインが合ってないかも知れないと思っても、その矢を使い続けるでしょう?そんな事だから、上級者になるまでは精度の高すぎる高額な矢は必要ないのです。本当に上達するまでは買いやすい価格の低グレードの矢を、何種類も試すことが大切です。

          同じカーボン矢を買うのであれば、ACEのシャフトは1ダース3万2000円。インスパイアのシャフトは1ダース3800円。値段は8倍以上の開きがあるのです。でもトップアーチャー以外では、どちらも出せる得点は同じです。激安のインスパイアを使っても、70mで320点が出ています。300点も出ない中級者以下がACEを1ダース買うことが、どれだけムダなことか。インスパイアで8ダース分以上のスパインのデータが取れるのですよ。実際にはそこまで必要ありませんよね。2〜3ダースも試せば十分なハズです。インスパイアで70m300点以上が出せるようになっても、まだまだACEやX10の性能なんてわかりっこありませんよ(笑)安心してください。

          ■信じるものは救われない「カーボン神話」

          あなたは超高額なカーボン矢を使うヘタクソがいいですか?それともアピールするほどの精度もない、練習用の備品グレードの安いアルミ矢でもバカスカ当てることができるのと、どちらがいいですか?

          性能が低いものを使って当たるようになったときになって初めて、性能が高いものを使ったときに効果が出てきます。後者のように何を使っても当たるという方が格好イイと思うのですが、どうやら多くの人は積極的に前者を選んでしまっているようです。前者になってしまうべく、良心的でないショップに仕組まれていると言った方が正解ですね。残念だと思わざるを得ない状況です。これは笑うに笑えません・・・

          アルミ矢に比べてカーボン矢はシャフト本体が軽くて細いです。その細さと軽さは繊細な取り掛けと正確なリリースができる上級者にとっては有効ですが、高得点が出せない上達過程にある中級者や初心者にとっては諸刃の剣となって自分に襲いかかってきます。

          その発射の際の繊細な加減は、返りの早いリムや伸縮性のない競技用のストリング、競技用のタブを初心者の最初から使っていたのでは、指先に何も感じることなく、すべてが「アッ!」という間に終わります。しかも実射ばかりひらすら繰り返すような練習をさせられて、どんどんポンドアップさせられてしまうので、繊細なものが何もわからないうちに取り掛けている指先が角質化して皮膚が厚く固くなってしまいます。皮膚が角質化してしまってからでは、タブの中でストリングを転がり出す感触を確かめることは不可能になります。

          取り掛けている指先をそっと緩めてストリングの送り出しを確かめるためには、最初の頃のレッスンで初速を抑えるための工夫を徹底的に凝らす必要があります。ストリングを素手で扱っても平気な、竹で作ったとにかく弱いリム。太目のサービングを巻いた弾力のあるダクロンストリング、近射用の重たいアルミ矢、などです。最初はこれらを使って、時間をかけてじっくりと技術を修得していかなければならないのです。

          最初から高性能な弓具を買ってはいけない、最初から上級者と同じような弓具を使ってはならないのは、それらの高性能な弓具たちが上達の手助けになる事を、何ひとつしてくれないからです。しかし良心的でないショップは客の顔を見てお金だとしか思っていないので、一人当たりの客単価を上げるために高性能な製品や、高額なフラッグシップモデルを売ろうと必死なのです。

          ですからこれからアーチェリーを始めたいという初心者に25万の弓具を勧め、今年こそは高得点を出したいと願う中級者にレベルに見合わない上級者モデルを押し付ける傾向が顕著です。おまけに、「こっちの方が精度が高い」とか、「これはカーボンですから」と言うコトバが決め台詞になり、何も知らない子羊たちは魔法にかかったかのようにフラフラとお金を差し出します(笑)

          そんな事だから猫も杓子もカーボン!カーボン!と、リムもハンドルも矢もスタビライザーもクリッカーまでもがカーボンなのです。カーボンというのは、単なる素材のひとつに過ぎません。カーボンという素材そのものが、勝手に高得点を出してくれるワケでも何でもないのです。

          高いお金を払って買った高性能な弓具を使って当たらないのは、自分のレベルに見合ってないからに他なりません。あなたがどれだけ買った弓具を愛していたとしても、しょせんは一方的な片思いであり、お金で買った愛のようなものです。それよりも、今の自分のレベルに本当にピッタリの弓具を使うことが、自分を将来の高得点に導きます。X10・ACE・価格問わず軽量なオールカーボンシャフトなどを使うのを一旦やめて、アルミ矢や、カーボンならシャフトが重たい矢にグレードダウンさせたら当たるのになぁ〜という中級者が多すぎて残念です。カーボン神話でどれだけ麻痺しているのか、製品のスペックに対してどんな思い込みなのか知りませんが、そろそろ目を覚ましてほしいものです。

          ■備品クラスのアルミ矢

          初心者が30mを射つようになると、指導者でも何でもない周囲のアーチャーたちがやたらと、そろそろACEにしたらなどと勧めます。トップレベルの選手はX10やACEなどの高性能なカーボン矢ですし、周りの人もみんな使ってます。ショップやメーカーのホームページを見ると、それはそれは素晴らしそうなキャプションが書かれています。そう勧められてるうちに欲しくなるものなので、人間という生き物はなかなか単純にできているのだと思います。情報の風上にいる側は、エンドユーザーを踊らすのは簡単だと思ってますよ(笑)

          上達過程にあるレベルの人間に高性能なカーボン矢を使わせてはいけない理由は上記の通りです。アルミよりもカーボンの方が当たるという人もいますが、果たしてそうでしょうか?確かに高性能なカーボン矢を使えば高得点を出すことはできますが、本当にそのレベルに達した事がない中途半端な人にとっては、何mで何点の得点誤差が生じるか、何点からがアルミ矢とカーボン矢の選択の分岐点なのかを一切理解していません。

          私は現役時代にはその分岐点を徹底的に見極めてきましたが、50mで320点まではアルミもカーボンも大差ありません。しかし325点を超えるようになるとカーボン矢が優勢になります。30mではアルミ矢が太いので10点に刺さった矢に弾かれて、5射目や6射目では不幸な9点になることもありますが、いずれにせよ上級者でもない一般的なレベルでは、まったく関係のない話です。50m・30mの72射で630点も出ないのであれば、高額でムダに精度の高い矢を使う必要はまったくありません。

          この日は鳥羽根を貼ったインドア練習用のアルミ矢、ジャズを3本持ち込みました。鳥羽根なので2枚と同じものがありません。1本のシャフトに生体由来の重さも硬さもバラバラの羽根を3枚貼ってあります。ジャズのグレードは、今では競技用としてのラインナップではなく、完全に初心者練習用の位置付けになっています。

          ジャズのシャフトはリアがテーパー形状になっているために、接着タイプのプラスチノックを装着します。このジャズを使って50mを射って見せます。



          1回目、10・10・8。



          2回目、9・9・8。

          ジャズですよ、ジャズ。シャフト1ダース 4,250円です。初心者練習用の備品として置いている所もあるでしょう。アーチェリーをさせてもらえる遊興施設や農業公園などで、よく見かける安い矢です(笑) そんな安い、セールストークにもならないような大して立派な精度でもありませんが、十分当たっています。あなたが使っている超高額な高性能カーボン矢では、どうですか?

          ちなみに私がシングルラウンドでゴールドバッジを取得した時に使っていたのは、XX75のアルミ矢です。このジャズと同じグレードで90m・70m・50m・30mの144射で1218点を出しています。もう25年以上も昔の話です。今よりもずっとひ弱な高校1年生の時です。当時はユニブッシングもなかった時代です。プラスチノックの精度は現行のノックよりも低いものでしたが、70mでも50mでも普通に300点以上が出てました。当時は矢に対して、それ以上の精度が必要だと思うような事もありませんでしたし、病的なまでに神経質になることもありませんでした。



          これは別の日の画像です。XX75プラチウムでの30mで、これも18mのインドア練習用のアルミ矢です。ノックがテーパータイプの接着方式ではなく、ユニブッシングでGノックを挿入するタイプです。ジャズやブルースよりも精度が高いので、30mで330点を超えるようになってきたらプラチウムにするか、中級者用のカーボン矢にステップアップを考えてもいいでしょうね。それまではジャズやインスパイアなどの、練習用グレードの矢で十分です。

          アルミにしてもカーボンにしても、この程度は当たるようにならないと、精度の高い製品や高性能で高価な製品を使っても何もわかりません。というか、この程度当たるようになると自分に必要な機材のスペックが適正に判断できるようになるので、アーチェリーがメチャクチャ面白くなります。

          高額なハイスペック製品が性能を発揮するのは、使い手の性能が高くなったその時です。使い手の性能が低いままでは、軽量で剛性の高いカーボンに重たい金属をぶら下げたような、アーチェリーと名前のついた弓を振り回しているだけで、弓矢ごっこの域を脱することができません。カーボンだと聞いただけで、それがいかにも優れているようなイメージを彷彿させるようですが、それは本来必要でもない人に対して高額な製品を欲しくなる動機を、売り手側によって植えつけられてしまっている事に気づくべきなのです。

          ■弓具依存症という心の病気

          確かに高性能なカーボン矢は、アルミ矢ではなしえなかった驚異的な高得点を叩き出します。しかしそれは、上級者のさらに上のトップアーチャーになってから必要とされる精度なのです。安くて大して精度の出てないカーボン矢であっても、練習用のアルミ矢であっても、自分自身がちゃんと普通に射てるようになれば、周囲がビックリするほど当たります。本当はそれが普通なのです。

          トップレベルどころか上級者でもない中級者以下の上達過程にあるレベルにとっては、上級者が求める性能を追いかけることなど絶対にできません。初心者は初心者用、中級者は中級者用の、反応がマイルドでレスポンスの低い弓具の性能を正しく使い切ることが、上達にとって最も大切なことなのです。

          しかしそれも、正しい身体の使い方あっての事。弓具の事や、射のテクニックに関する質問が多いですが、それ以前に足腰が弱く、柔軟性が乏しい人が多すぎるのです。おまけに心肺機能が低いという、マイナス要素が三拍子揃った状態では、どんなアドバイスも効果がありません。ちょっと強い風が吹いたら当たらないのは矢のせいではなくて、そよ風程度の風で揺らいでしまう脆弱な足腰の弱さに、最も原因があるのです。

          弓具依存症に陥っている人が多いですね。高い弓具や、精度の高い矢を使わないと当たらないと錯覚している人たちです。弓具依存症になると、アーチェリーがスポーツである事を忘れてしまうようですね。アーチェリーがスポーツだという事を思い出して取り組むようになれば、そんな病気とは無縁でいられるのですよ。各社から新製品が発表されたり、世界で活躍するトップアーチャーが驚異的な高得点を叩き出したときに使われている弓具に関心を示す時点で、弓具依存症です。自分の実力とはまったく関係のない世界に目を向けたところで、自分に備わっているものが稚拙な状態である以上は、弓具の高性能化が自分の性能を高めることなどないのです。

          サイトピンのその先に的中しないのを道具のせいにしているうちは、永遠に上手くなりません。弓を使って矢を放つのは自分自身の行為です。当たるのも当たらないのも、すべて自分のせいなのです。当たるアーチェリーほど面白いものはありません。アーチェリーを面白いものにするか、そうでないものにしてしまうかは、すべて自分自身の中にあることを忘れてはいけません。

          他の人が何を使っているとか、上級者でもない自分が上級者と同じグレードの、レベルに見合わない弓具を使うのはやめましょう。そして製品の情報を発信する風上から吹き踊らされてしまわないことが、上達の近道になるのです。言われるがままに高額な製品を買ってヘタクソなままでいるよりも、骨格と筋肉の専門家でもある指導者から正しい事を学び、言われるがままにレッスンを受け続ける方が、自分を幸せな結果に導くのです。

          アルミをバカにしていると、カーボンで泣くのです。初心者用の弓具を使いこなす努力を長く積み上げていないから、上級者用の弓具を使って泣くのです。見よう見まねの、なんちゃってテクニックが本当に通用するものになるのであれば、誰もが世界で通用するレベルになるはずですが、そんな人などどこにもいないのです。

          上達のため必要な性能は、矢のスピードの速さでもなく、リムの速い返りでもなく、ハンドルやスタビライザーの剛性の高さでもなく、切れない伸びないストリングの性能の高さでもありません。本当に必要なものは、自分が手にとるようにわかる、弓具すべてにおける鈍感で、レスポンスの低い、挙動がマイルドな性格です。機材の精度よりも大切なのは、あなたの射の精度の高さです。

          ロビンフッドや那須与一が生きてたとしたら、あなたの射を見て何と思うでしょうか?自分が使っている弓具に自分の神経が通い、自分の血液が流れていると思えるほどコントロールができてないと当たりません。レベルの高い機材を買って使ったところで自分がそれぞれの機材のレベルに相応しくないのであれば、いつまで経っても高得点が出ないばかりか、そのうち自分の愛馬に蹴られるような目に遭うのです。

          世界最高クラスの弓具を使っても大して当たらない万年中級者になってしまうよりも、どんな低いグレードの安い弓具を使ってもガンガン当てることができるようになる方が楽しいのですよ。高額な弓具に囲まれて悦に浸るようなコレクターであれば好きにすればいいですが、本当に上手くなりたいと思っているのであれば、自分のレベルを引き上げるために必要な、正しい手順どおりで着実なステップアップを果たしていきましょう。

          機材のステップアップを行うのは、初心者用の弓具を使って当てまくり、指導者を唸らせるような射を周囲に見せつけることができるようになってからにしてください。現代の初心者用の弓具は、扱いやすくてよく当たります。最低限でもそのレベルをクリアしなければ、弓具の性能に振り回されてしまい、アーチェリーの技術修得どころではなくなってしまうのです。

          日差しを浴びるのが心地よい季節になりました。スポーツの秋真っ只中ですね。アーチェリーが楽しくなるために、自分にとって本当はどんな事が必要なのかを、この夜長の季節にじっくりと考えてみましょう。

          良い弓具とは 高い弓具のことではない

          2015.09.18 Friday

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            アーチェリーで上達しない人に共通しているのは、自分が初心者レベルの域を脱してないにも関わらず、乱暴な機材のステップアップをしている(させてしまっている)ことです。

            取り組みだしてから何ヶ月経った、もう2年続けたから、などのように、続けてきた期間と上達が比例するものではありません。大切なことは、本当に上達しているかどうかです。

            それを勘違いしている多くの人からの問い合わせフォームへのユニークな質問ばかりで、それに対する返答をするのが楽しい日々を送っています。

            そもそもが勘違いな人たちなので、本筋とは違った細かいことばかりを、せっせと質問してきます。自分のレベルに関係のない小手先のテクニックや、繊細な機材のチューニングをどうこう論じたり、インターネットなどでくだらない情報を探るヒマがあるのなら、毎日欠かさずランニングでもしたらどうですか?(笑)

            やっぱり走らないとダメですか?という、競技に出場している選手からの質問には、飲みかけてたお茶を噴き出しましたよ。ほんっと、スポーツをバカにしてる人が多すぎて、カンベンしてほしいです。そんな質問をしてくるということは、立ち方も歩き方も走り方も習ってない人なのですよね。そんな人が機材だけを先どりして競技用のアーチェリーを振り回したところで、上手くなるワケないと伝えているのですが・・・(苦笑)

            さて、初心者練習用のアルミ矢を頻繁に仕入れてますが、ポイント(矢の先端)は競技用のニブポイントではなく、練習用の安いワンピースポイントを装着しています。



            今回仕入れたものからは、そのワンピースポイントの仕上がりが格段に上がってました。旋盤を新しくしたんでしょうかね?



            これなら問題なく競技にも使えますね。1ダースで1300円の安物なのに、モノが良くなるのは本当にありがたいです。

            それにしても、精度精度って、上級者でもないレベルにどんな精密な機材が必要だというのか・・・

            この矢はXX75の1616です。これはブルースですが、ジャズも同じグレードです。中学生だった四半世紀以上も昔に、私はこのXX75の1616を使って、50m・30mのハーフラウンドで630点を出してますよ。

            グラスのリムで表示30ポンド、実質ポンドは24ポンドでした。ハンドルとリムは自分のものですが、サイトは借り物で、装着していたスタビライザーは、アルミ製のセンターロッド1本のみ。

            女子高生よりも弱い弓から放たれた、曲がりを直した練習用のアルミ矢は、誰よりも高い放物線を描いてゆっくりと飛び、私の矢だけ的に上方からナナメに突き刺さるので、どこに当たっているのかがシューティングラインからよく見えました(笑) 海岸に近い砂丘の射場で風もありましたが、ゴム羽根を貼ったこのアルミ矢は、ほぼほぼ正確に当たってくれました。

            必要なのは道具の精度ではなく、自分の精度。自分の精度よりも少し低いグレードの機材を完全に使いこなせないうちは、自分の射を見つめなおすことなど、永遠にできないのです。

            いつまで続けてても大して上手くなれないのであれば、振り出しに戻ってください。正しい身体の使い方と、正しい骨格のポジションに誘導していくための、正しい筋肉の使い方を、しっかり学びましょう。もちろん弓具も、完全なる初心者から再スタートしてください。

            何を使っても大して当たらないか、何を使っても当たるようになるかの、どちらかしかありません。上級者でもないレベルのうちから、自分に合う合わないなどと、当たりもしないのにロクでもないこだわりを持って上達の妨げになるよりも、これまでの取り組みの間違いのすべてを捨てる勇気こそが、スポーツの本当の楽しさにつながるのです。