ひとりで黙々と練習しても上手くならないワケ その2 考え方と行動について

2014.10.01 Wednesday

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    ■アーチェリーなんて 本当にカンタンなスポーツなんです

    今回は、アーチェリーのみならず、他のスポーツや、勉強や仕事などにおいても、何かを修得したり上達するために必要な考え方と行動についてです。

    まずは、多くの人が陥りやすい、上達の助けにならない事例についてから紹介します。

    ■勝手な自己研鑽=時間のムダづかい

    一般的には、録画した動画や、撮影した画像をにらめっこして、射に対する自分の動きを修正しようと試している人が多いです。しかし、よほどの上級者以外では意味がありません。スーパースロー映像もそうです。近年の映像機器の充実によって、視覚から得られるものが多いように思われてるようですが、それによって、何ができるようになったというのでしょうか。あなたが0.001秒単位で、身体の動きをコントロールできるような特殊な能力があるなら話はベツですが、それはもはや人間のレベルではありません。単に努力しているキブンになっているだけで終わります。インターネットで調べたことや、どこかで聞いてきたような、上級者やトップ選手の(見た目だけの)テクニックをマネしても、誤ったアプローチによって使われている(凝り固まった)筋肉群が、自分の身体の内部で働かせてしまっている力の方向を変えることはありません。結局、できないことをやろうとしているだけで、それが得点として結果に反映されることはありません。この30年間でアーチェリー用品も、それらに関わる周辺機器も、素晴らしい性能の進歩を見せてます。しかしこの30年間で実際に得点を伸ばしているのは、ごく一部の上級者だけであり、中級者以下の得点が昔と変わっていない点がすべてを物語っています。


    ※今年の全関西春季アーチェリー競技大会(70m)リカーブ成年男子Bでの私の的(3的-C)

    世界戦やオリンピックなど、トップレベルの選手が実射している映像を誰もが見ることができるます。しかし、9割以上の人は見るべきポイントが間違っています。「あの選手は、こんな射ち方している」「この選手は、こんな感じだ」「○○選手の射ち方が好きだ」「私もやってみよう」などと、誰かが話しているのを耳にしたことがあると思います。しかし大切なことは、実際は矢が放たれるまでに、身体の中で何が行われているかということなのです。メディアが好む角度から撮影された映像ばかりなので、これらの映像からアーチェリーの上達に必要な情報は、ほとんど得られることはできません。見た目だけをマネをするのは、矢が放たれてしまった後にわざわざ付け加えたような行為にしかならず、テクニックとは呼べない恥かしいものにしかなりません。

    ■感覚を養う=自分を見失うだけ

    人間の身体の動きは、すべて脳がつかさどっています。脳は神経系の一部です。神経系は中枢神経と末梢神経に分けられます。末梢神経は中枢神経と全身とをむすぶ神経線維で、一方は効果器に、もう一方は受容器につながっています。効果器というのは脳からの指令で機能する筋肉や内蔵で、受容器は感覚受容器とよばれることもあり、脳に情報を送り込むものです。受容器は環境や体内の状態を受け止めるものではあるのですが、受容器から送り込まれる情報の多くは、本人の意識にはのぼってきません。つまり、感覚として自分で感じることができないものの方が、圧倒的に多いのです。



    脳の機能は、信号がどこかで発信するところから始まるのですが、その多くは受容器に加わった刺激によって発信します。そしてさらに脳の中を流れる血液の性状変化や、生体独自の変動が刺激となって発信することもあります。ただしその多くが、本人に意識されることはないのです。なので、どれだけ精神を集中しようが、神経を研ぎ澄ませようが、感じられないものを感じられるようにはなりません。ですから、どれだけ「感覚を養う」ような気持ちで練習していても、一向にうまくなりません。

    アーチェリーは身体の使い方のスポーツです。正しい身体の使い方をするためには、自分の中に正しい基準を覚えこむ作業を行わなければなりません。最初は意識的に覚えた動作であったとしても、身体で覚えた動作はすべて、反射として脳が処理するようになります。しかし多くの人が最初から身体に間違ったことを覚えこませています。そしてそれは自分で気づかないうちに、徐々に変化をしています。すなわち、自分の身体の中の正しくない(徐々に狂っていく)モノサシをつかって、懸命に当てようとしています。そんな状態で一体どんな優れた感覚を養うことができるというのでしょうか。肩が浮き気味になってきたり、腰が前に逃げ気味になっても、9割以上の人は、まず気づかないのです。人間の感覚というのは、そのくらい、ものすごく曖昧なものなんです。ですからそんな状況で、自分で養える感覚なんて、ないに等しいのです。世界で戦うトップレベルの選手であっても、自分で自分の身体の使い方を的確に知る術はありません。ですからトップレベルの選手には、優秀なコーチやトレーナーが帯同しているのです。

    それでは、上達するために必要な考え方と行動についてです。

    ■試行錯誤はダメ 探求と模倣では 先が知れてる

    試行錯誤の末・・・などと聞くと、それがいかにも美談のようにも聞こえますが、多くの場合は我流に我流の上塗りであり、レベルの高い場面では通用しません。それがたとえ練習や、ローカルな試合で当たっていたとしても、大舞台では必ずといっていいほど、砕け散ってしまいます。失敗を重ねて経験を積む。これも間違っています。4年に1度しかないような大舞台で、そう何回も失敗を重ねていけないでしょう。そんな悠長なことを言っていると、選手生命があるうちに成功できるようになるかどうかもわかりません(笑) 最初から成功していけるように、正しい方法を伝えていくのが指導者の仕事です。選手が成功するように努力をさせて導くのが本来の仕事であって、結果を出せるかどうかわからない方法で選手に苦労を強いるのは指導とは呼べず、もはや虐待に近いと言わざるを得ません。苦労と努力はまったく別の意味のことばなので、教える側も教わる側も、間違ってはいけません。

    人間には生まれながらにして探究心と模倣性が備わっています。「知りたい」という欲求に駆りたてられたり、他人のマネをします。それが人間の発展性を支える上で大切な原動力となってきたわけですが、これにも十分注意が必要です。インターネット社会になって特に多くなってきたのですが、あまりも多くの選手が、情報に踊らされるようになったことです。何かを知りたいと調べると、製造元や売り手にとって都合のいい情報しか出てきません。正確な射について知りたいと思ってアーチェリーショップに行っても、結果は同じです。自分が上達するためには高額な商品を買わされるように誘導される仕組みになっています。特にアーチェリーの指導については、書籍やホームページで調べたとしても、それを自分が正しくできるようになる事は、まずありえません。

    模倣は最も問題があります。それが優秀な指導者から示された、または指導の専門家を介しての一流選手の模範演技から学ぶようなものであり、個人それぞれに合わせて的確に示した個別指導であれば大丈夫です。しかし多くの指導の現場は、射の模範を示せないような名ばかり指導者や、ちょっと上手いと言われて天狗になっているクラブの先輩、とても上級者には及ばない、選手としてもレベルが褒められたものとは言えないような上級生ばかりです。親切な人もいれば図々しく教えてくれる人、本当にいろいろですが、教わる側の立場の人に対して責任が持てない人から、何かを学ぶべきではありません。

    教えてくれようとしている人は親切な人なのかも知れませんが、あなたを教えることで、あなたの身体がどうなっても、教えた結果あなたが上手くならなくても、何の責任も負いません。親切な人に対して失礼も承知ですが、そういったものは基本的に、単なるお節介にしかなりません。ボランティアで教わる場合は特に仕方がありませんが、教わる側も教える側も、お互いの熱意が伝わらないような関係になってしまいます。そのため、指導は見よう見まねになりがちです。練習もただ射たせるだけで、見た目に気になる部分があれば、たまに声をかけるというだけの、放置状態になってしまいます。そうなると、教わる側は、自分よりも上手そうな周囲の人の動きをマネするようになります。その人たちが世界を目指すような取り組みをしていればまだ救われますが、そんな集団であれば射たせるだけという指導は行わないハズですよね・・・

    ■できることをやろうとしないのに、当てようとするのが間違い

    人間の能力というのは、その瞬間にどれだけの能力を発揮したかということの他に、それまでにその能力をどれだけ育ててきたかということの方が大切になります。たとえば練習や競技会などでトップレベルの選手が驚異的に当てているのを見たり、競技会で同じ的のグループに一緒になったりして、自分とは圧倒的な差を見せつけられたりすると、優れた能力を持つ選手が天才のように思われることがあります。しかし天才的に当てるトップレベルの選手であっても、実はあなたとそれほど変わりのない人間なんです。すべての矢が的の中心に吸い込まれるように当てることができるようになったのは、決して素質があるわけでも、人間としての能力に差があるわけでも何でもなくて、それまでの努力の仕方に大きな違いがあることの方が多いのです。


    ※20年くらい昔の国体の画像

    アーチェリーの上達に必要な事は、基本(基礎指導)が9割です。これは最初から最後まで、初心者も上級者も、実は取り組まなければならない内容に変わりはありません。レベルの高い選手ほど、基礎トレーニングに手を抜きません。もうおわかりだと思いますが、初心者の頃の基礎指導を正しく受けていれば、誰もが上級者になれるのです。しかし多くの教習施設やクラブでは、9割にものぼる大切な基本を遠慮なくすっ飛ばして、とにかくひたすら実射ばかりを繰り返させようとします。そんなことですから、たまたま様々な幸運な条件がそろった、ほんのわずかな人しか上手くなっていきません。99人の選手をダメにしても、1人が上手くなれば「オレが育てた」くらいに、自慢気に言う人もいます。本当におかしな世界なので、くれぐれも注意が必要です。

    アーチェリーは、最初に正しいことを教わりさえすれば、誰だって当たるようになります。しかし、それは決して、実射をしながら上達するようなものではありません。「こんなことが、本当に上達のための練習になっているの?」と思うような、誰でもできるカンタンなトレーニングばかりです。しかし、中途半端な経験者ほど、こういった基礎的なことを実践しないどころか、バカにする傾向が強いです。ですから、私が新規で教習の依頼を受けた場合は、最初はクラブのメンバー全員から拒絶されることが多いです。ほぼ必ずそうなるので、私は慣れてますが(笑)

    ■世界で通用しないレベルの経験は捨てて やりなおすことが大切

    しかし、これまでの取り組みを完全に捨ててもらい、私の言うとおりにするだけで、驚くほどの上達を見せるようになります。ベツに隠すようなことでもありませんが、あまりにも長くなるので詳しく書くのはやめときます。多くの選手には数週間から数ヶ月、弓を引くのをやめてもらいます。コッソリ射っていると身体の状態ですぐにバレます(笑) まずはリハビリから始めなければならない場合が多いです。そして正しい立ち方、正しい姿勢、正しい歩き方を学びます(驚くことに、ほとんどの人が、これができなくて苦労する・・・)。

    それができるようになってはじめてストレッチ指導を行い、体幹とインナーマッスルのトレーニングを軽負荷で行います。そしてようやく、引きの弱い基礎指導用の弓をつかって、正しい引きかたのアプローチを覚えるための指導を受けるようになります。まだ実射どころか、ゴム引きすらしません。ゴムチューブを使って引くようになるのは、ある数種類の用具を使って、肩甲骨を中心とした身体の正しい使い方をマスターしてからです。もちろん個人差はありますが、こうした一連の基礎指導を受けたかどうかが、その人の将来のレベルを確実に決めてしまいます。

    これは初心者にとってはカンタンで、何でもないものばかりなのですが、実は経験者にとっては非常にツライものになります。信じられないようなハナシですが、ほとんどのアーチェリー経験者が、この一連の初心者トレーニングについていけません。経験者が、初心者に笑われるような思いをしながら身体をゼロの状態から作り上げていくのです。そのときに、自分がこれまで、どれだけ間違ったことをやってきたかを知ることができるのです(笑)

    ■天才なんて存在しないが ダレでも天才的になれるのがアーチェリー

    いきなり射たせて、まともに射てるようになる人は、ほとんどいません。骨格や筋肉を正しい位置に動かすための筋肉が日常生活では養われないために、完全に衰えている(または稼動しない)状態で引かせることになるからです。ですから、(数本しか射たせない体験会のようなイベントは別にして・・・)レッスン初日から、いきなり弓を引かせてどんどん実射させてしまうと、周囲の代替の筋肉を使って(頑張って)ストリングを引っぱろうとするので、正しい身体の使い方ができるようにならないのです。いちど弓を引かせる練習をさせてしまうと、もうさいご。最初にスイッチが入ってしまった誤った筋肉を、弓を引くときにオフにできなくなってしまうのです。これは人間の脳から筋肉への神経伝達回路を作ってしまったせいなので、仕方がありません。こうなってしまうのは、すべて教えた人の責任なんですよ・・・。

    そうなると、いつも身体にムリな負担をかけた状態での、危険なアーチェリー人生がスタートしてしまいます。手首が痛くなろうが、肩が痛くなろうが、腰が痛くなろうが、教えた人は知らん顔です。しかし教わった人の身体は必ず、誤った身体の使い方を繰り返し続けていきます。ですから、最初に誰からどんな事を習ったか、という事が最も大切な事になるのです。

    ■しっかり狙っても当たらない そんなのアタリマエでしょう

    地面をつかんで、しっかり立つことができず、弓を引いたらのけぞりかえって、曲がりくねった身体を風にユラユラ揺らされてるようでは、どんなにグレードの高い道具を使っても正確に発射させることができません。アーチェリーの的中は、グルーピングという的中の確率の大きさを、どのようにして小さなものにしていくかということです。飛んでいる矢が放った人の意思で方向を変えられないかぎりは、的中は矢を放つ自分の身体が、正しくコントロール(制御)できているかどうかが重要なのです。



    基礎を築き上げてない人にかぎって、真剣に狙いこんで、必死になって当てようとしています。実ににおかしな話です。アーチェリーは「当てる」のではなく、「正確に発射する」スポーツだからです。正確に発射させることができないのですから、当たらないのです。的中は、単に自分の行為の結果にすぎません。ですから初心者に距離を射たせることや、競技への出場をせかすことが、上達の妨げになるのです。

    ■アーチェリーを通じて充実した人生を

    アーチェリーを始めたら、誰もが夢中になります。最初はそんなつもりはなくても、すぐに「もっと当たるようになりたい」とか、「上手くなりたい」と思うようになるのです。初心者のうちから当たるような人はいません。でも心配することはありません。オリンピック選手だって、誰だって、最初はみんな初心者だったのです。



    しかし、単に射つだけしか教わらないアーチェリーでは、どれだけ練習しても、いつまでたっても当たるようにならず、ストレス発散どころか、いつもモヤモヤした気分にしかなりません。

    正しい指導を受けていると、いつのまにか疲れにくい身体ができあがっているのと同時に、脳や神経系が発達して、常に健康感に満ち溢れた生活スタイルになる人が多いです。私は医者ではないので直接診断をするワケにはいきませんが、夜に眠れるようになった人や、頭痛や肩こりが消えたという人もいます。私の身体で感じたことではないので何とも言えませんが、専門家にこれらの話しをお聞きすると、重要な基礎となるこういった一連のトレーニングが自律神経系の働きを高めることや、肩甲骨の動きを自由に操ることができるようになったことで、頭痛や肩こりが改善するなどの身体によい効果を感じる人が多いようだ、との事でした。

    身体におよぼす健康効果は別にしても、それほど熱心に練習していないにも関わらず、涼しい顔して的の中心をズバズバ射抜けるようになります。それが快感だという人が多いです。当たるアーチェリーほど面白いものはありません。アーチェリーが上手くなるのはカンタンです。上達するために、つらく苦しいトレーニングなんて、何もありません。大切な基礎を、どこまで忘れずに大切に付き合っていけるか、本当にそれだけなんですよ。

    まずは我流や、指導者と呼べないような人から教わったこと、ネットで仕入れたテクニックはぜんぶ捨てて、いちど本当の基礎から学びなおしてみましょう。そうすることが、あなたの人生を痛快なものにするのは間違いありません♪

    ひとりで黙々と練習しても上手くならないワケ その1 取り掛けとタブ

    2014.09.26 Friday

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      ■アーチェリーなんて、そんなに練習しなくても上手くなれます

      熱心に練習しているにも関わらず、アーチェリーが上手くならないという相談をよく受けます。きっと9割以上の選手が、そんな状況だと思います。誤解を恐れずに少し乱暴な言い方をすると、上手くならない理由のほとんどは、あなたにアーチェリーを最初に教えてくれた人のせいです(笑)

      アーチェリーは、正しい身体の使い方を学びさえすれば老若男女とわず、誰だってカンタンに上手くなれるスポーツです。しかし日本には、アーチェリー指導の専門家は、実は数えるほどしか存在しないのです。ジュニア育成や初心者指導についての本当の知識と、卵から育てる本当の育成に携わった経験が豊富な人は、日本に数人しかいません。

      ■教える人の問題点

      誤解が多いですが、公認スポーツ指導員や、ジュニアスポーツ指導員というのは、決して指導の専門家なんかではありません。私たちや私たちの仲間達が四半世紀も前から提唱していたことが、ようやく最近になって「最先端の取り組み」などと言われるようになり(笑)、今ごろになってほんの少し学ぶようになっただけです。本当に遅れています。彼らはスポーツ指導についてのごく一部の情報を、単に座って話を聞いたことがあるというだけで、正しく実践できている人はほとんどいません。まことに残念な話です。

      骨格や筋肉が関わる身体の構造どころか、運動生理学はおろか身体のケア、スポーツ指導に関わる重要な教育(スポーツ指導員のように、受講すれば誰もが取得できるようなレベルの低いものではない)について学んでない人ばかりです。単に知識として知っているだけで実践できないと意味がありません。最低でも自分が適切なスポーツ指導を受けた経験がある人でないと、お話になりません。過去に輝かしい競技成績を収めた人もいますが勉強してない人が多いので、その中でも指導者としてふさわしい人は、ほんの一握りしかいません。あなたが最初にアーチェリーを教わったのは、どんな人だったかを考えてみるといいでしょう。

      日本のスポーツ界での取り組みや問題点をここで論ずるつもりはありません。少なくとも私たちを通じてアーチェリーに取り組みたいという方だけでもいいので、最初から正しい事をお伝えすることで、生涯を通じて楽しいスポーツライフを送っていただきたいと思います。

      それでは、ひとりで練習しても上手くならないワケについてです。以前に紹介した タブが すべてを物語る の反響が大きかったので、今日はタブに関連するお話について、少しだけお伝えします。

      ■程度の差こそあれ、みな同じ状況

      まずは、この画像をご覧ください。これは、ある選手が使っているタブです。

      最初に断っておきます点が2点あります。一つは、タブの革がこのような形状に変形しているのは、その選手本人が悪いのではなく、正しい指導ができない人から教わってしまった点。もう一つは、革の状態の差こそあれ、ほとんどの選手が同じ状況であり、自分のタブ革の程度がこれよりも幾分マシであるからといって、それが何の意味もないことです。



      タブの革を見ると、ストリングを握力で握りしめて、それを腕力で引っぱるドローイングであることがわかります。ストリングを握っているために「こぶし」でタブのプレートを握りしてめてしまい、アルミプレートから先の部分で革が折れ曲がってしまっているのがわかります。



      タブの裏を見ると、裏革には指の第一関節だけではなく、第二関節の痕跡までがクッキリと残っています。



      ストリング自体は指の第一関節を当てているのですが、握りしめているためにストリングが革に当たる部分が、かなり手前になってしまっています。この選手は40ポンドを超える強さの弓を引いているにも関わらず、タブ革のストリング位置が、タブ革の表面に明確な痕跡が残っていません。タブ革からリリースされているポイントがあいまいで、取り掛けている部分から革の先端までの、かなりの距離をストリングのサービングを引きずりながらストリングが放たれている状態です。

      これが何を示しているかというと、ストリングを握るとリリースがもたつくために、引いている弓のパワーを、矢に効率よく伝えられてないという事なのです。取り掛け位置もリリースポイントも明確でないので、毎回安定したリリースができていません。これではどんなに頑張って練習しても、的面での矢の上下のばらつきを抑えることはできません。



      タブの裏革の先端付近にまでも、ストリングのサービングによる擦過跡が見られます。握りこんだ状態からストリングが放たれているので、指が大きく曲がった状態のまま飛び出そうとするストリングが、指先を激しく弾きます。そうすると矢は必要以上に大きな、しかも安定しないパラドックスを描きながら蛇行して飛翔することになるので、矢は左右にもバラツキが出ます。そう、こうなってしまうと、どれだけ必死に的を狙ったところで、自分が思った通りに当たりません。どれだけ練習しても当たらない理由のひとつが、これです。

      それではもう一度、正しい取り掛けができているタブを見てみましょう。



      指の第一関節部分をストリングに取り掛けた部分から、限りなく少ないスペースで効率よくストリングが飛び出しているのがわかります。毎回確実に同じ動作でストリングが放たれているので、タブ革は必ず同じ場所が磨耗していきます。ストリングやタブを握ってないので、取り掛けで触れた指の第一関節部分以外の、タブ革の変形はありません。

      ストリングに指の第一関節をふんわりと取り掛けて、両ヒジから後ろと背部を中心とした体幹を使ってドローイングを行います。リリースの際は指先の力をほんのわずかに緩めてやれば、ストリングは矢を確実に同じ方向に送り出します。実射は単にそれだけの行為なのですが、ストリングを握っている人はドローイングのアプローチがまったく異なるものになってしまうため、こんなカンタンなことができなくなってしまっています。

      私はこの選手とほとんど同じ強さの弓を引いているのですが、体格差があり私は5インチ近くも短い矢を使っています。しかし私の方がスパインの固いシャフトを使っているのです。このことだけを見ても、正しい身体の使い方をマスターすることが、自分が引いた弓のエネルギーをいかに効率よく伝えるか、という事がわかります。

      最初に正しい事を教わることができなかったこの選手には、正しいアーチェリーの基礎を最初から学んでもらい、「射てば勝手に当たる」楽しい世界を知ってもらおうと思います。

      それでは、これからアーチェリーを始めようとする人が、このような困った状態に陥らないためのアドバイスです。

      ■アーチェリーが上手くなりたい人のための注意事項

      々格(正しいフォーム)を支える力が弱い初心者の頃に、引きの強さを感じる弓を引かせてしまうと(引きのテンションを感じる時点で不可。最初はゴム引きもダメ)、体幹をつかったドローイングが会得できなくなります。初心者に自分の弓を買わせてそれを使って自主練させるのは論外です。恐らく放置状態に近い状態に置かれるでしょうから、気づいたときには腕力で弓を引くようになっています。そうなったらもはや手遅れで、改善するのは多大な苦労と時間を必要とします。

      ∩甬泙淵櫂鵐疋▲奪廚鬚気擦襪函男女を問わずに腕力で引いてしまいます。よく耳にする言葉ですが、「70mを射つには、このくらいの強さが必要」とか、「すぐに買いなおすことになるので、頑張ってこのくらい引けるようになった方がいい」という、先輩やショップからの余計なアドバイスを聞き入れてはいけません。

      これまたよく聞く言葉ですが、「トップ選手は、一日に何百射の練習をしている」という言葉に惑わされてはいけません。そんな過大な練習量は、本当に正しい身体の使い方ができるようになり、時間をかけて徐々にレベルアップしていった後の話です。正しくない事をどれだけの回数をこなしても、それは自分がヘタクソになるために懸命になっているだけであり、ダメな射ち方が毎回正確な射を繰り返すことはできない事を忘れないでください。

      50mや70mなど、距離を伸ばして実射したり(させたり)、初心者に試合に出させて点数を意識させてしまうと、まず間違いなく自分の射を見失うようになります。自分と同じ時期に始めた人をライバル視する(させる)のもいけません。特に競技への参加を急いでは(急がせて)はいけません。戦えるレベルにない兵士を戦場に送り出すような悲惨なものになります。必死になって狙いをこめるようになります。そうなるとまず間違いなく背中がのけぞり胸を張ってしまい、腕や肩に力を入れるクセがついてしまいます。

      ヂ隆瓦妊疋蹇璽ぅ鵐案虻遒できないレベルの人にクリッカーを装着させると、ストリングを引っぱってクリッカーを切ろうとします。そうなると、引き分けも伸び合いもへったくれもなく、大切な調節部分がすべてが狂います。肩甲骨とその周辺の筋肉のコントロールが的確にできない(教わってない)人は、そもそもクリッカーを正しく使えません。ターゲットパニック(早気)を直すためにクリッカーを装着させたがる指導者がいますが、根本的な指導の間違いであり逆効果です。その証拠に競技に参加している99パーセントの選手が、クリッカーに射たされているという悲惨な現状です。クリッカーとは、音が鳴ってから射つのではなく、自分が必要だと思ったときに、自分が狙ったタイミングで好きなように鳴らして射つものなのです。

      これらはすべて、最初に正しい事を教わりさえすれば、誰でもカンタンにできるようになります。上級者だけのテクニックではなく、特別な奥義でも何でもありません。これらを正しく教えることができない人がアーチェリーを教えている事が、すべての問題なのです。

      それでは番外編です。

      ■タブ裏革の交換

      アーチェリーは機材を操作するスポーツです。弓矢という原始的なスポーツですが、操作に直接関わるパーツで、常に身体に触れているものは、それほど多くありません。

      タブはストリングを取り掛けるために必要なパーツで、2枚の皮革で構成されています。1枚の表側の革はストリングに当たり、発射の役割を果たします。もう1枚の裏の革は、指先を保護するために常に触れる、いわば手袋の代わりの役目を果たしています。

      ストリングに触れる表の革は比較的磨耗に耐える素材を使います。発射の役割を果たすためにストリングに触れているだけで、身体で直接触れることはほとんどありません。しかし裏革は常に手のひら側の指が全体的に触れています。人間の手のひらや指先は汗をかくので、裏革には常に自分の汗を吸い込み、それを乾燥するという事を繰り返します。汗には水分のほかに、自分から発せられた塩分や油分が多く含まれます。水分は蒸発しますが、それ以外の物質は革の内部に残るので、タブは表革よりも裏革の痛み(というよりもヨゴレ)が進んでいきます。

      ヨゴレを落とすために洗濯するツワモノもいるようですが、人工皮革の製品でないものはオススメできません。基本的には皮革製品は濡れと乾燥を繰り返すと硬化したりボロボロになることが多いので、定期的に交換が必要になります。毎週のように練習する人であれば、季節の変わり目に交換するのがよいでしょう。

      どうせ当てようと必死になるあまりに、冷汗、アブラ汗みたな、よくない汗がタップリしみこんでいるに決まっているのですよ。あまり長く交換しないのも不衛生なので、そんなに汗をかかない快適なこのタイミングで交換してみましょう♪



      タブの裏革は、ホームセンターや手芸店、画材屋さんなどで手に入ります。自分で使うものであれば、ベロアの端切れで十分です。1枚100〜200円程度のサイズの革があれば、タブの裏革の何枚分かになります。これは近くのショッピングセンターの中にある手芸店で買ったものです。

      タブの表革に先の尖った棒で、けがきをして、それをハサミで切るだけです。ものすごくカンタンな作業です。このように穴あけポンチがあれば作業がラクですが、革にネジが通るだけの穴があけばいいだけなので、千枚通しを突き刺すだけでも十分です。



      表の革はほとんど痛まないので、このまま繰り返し使い続けます。ただし、多量に汗を吸い込んで衛生的にチョット・・・という感じになっている場合は、表革の磨耗の程度に関わらず交換してください。ファブリーズなどを噴霧して、乾燥させてそのまま放置という状態にするのはやめましょう。



      今回はスペアを含めて2枚分をカットしました。下の3枚はすべて裏側から見た様子です。右から、これまで使っていた古い裏革、新しい裏革、スペア用として切ってストックしてあるコードバンの表革です。実射で使っている時にはそれほど気にならないのですが、こうして見比べてみると、古いというかキタナく見えますね。

      裏革は表革よりも1cm程度長めに切っておきます。正しい取り掛けができるようになり、毎回的確な動作が行えるようになった場合は、同じ長さに揃えてもそれほど問題はありません。

      新しい裏革はソフトな感触です。革のしなやかさを感じられなくなったらストリングが転がり出る感触が希薄になってしまうので、こうしてなるべく早めに交換した方がいいですね。

      ■痛みを抱える人が陥る重大な過ち

      リリースの時に指先が痛む人や、腱鞘炎だからという理由で、タブの裏革を2枚重ねにしたり3枚にしたり、厚みを増しているのを見かけます。しかしタブの革の厚みを増やしても改善することはありません。それどころか、さらに痛みが出たり、ますます当たらなくなる人がほとんどです。生兵法ケガのもとと言いますが、医者の診断を受けて対処したわけでもなく、他人からの情報を見よう見まねで自分に取り入れるのは、症状を悪化させるだけで危険です。多くの場合はストリングが指先に触れていることが原因で腱鞘炎になっているのではなく、ストリングを握って引っぱるという誤ったドローイングのアプローチによる、深指屈筋を中心とした筋肉の発達による腱または腱鞘の損傷だからです。

      最初は軽い痛みでも、それをそのままにして練習を続けていくと、手首やヒジ周辺の損傷など、深刻な事態へと進みます。指先の痛みよりも、先に手首の痛みを訴える選手も多いです。どちらにせよ、痛みを感じた場合はすでに相当なダメージを抱えている場合が多く、治療に長い期間を要します。取り掛けの指や手首に痛みを感じる場合は、ただちに練習を中止して、スポーツ整形医の診断を受けてください。一般的な病院の普通の整形外科では、スポーツ選手にとって期待できそうな治療を受けることはできませんので、腕や肩などの上腕部の治療を得意とするスポーツ整形医が在籍している病院を訪ねてください。

      正しい身体の使い方をすれば、身体に最も負担の少ない方法でアーチェリーを楽しむことができます。ですから正しい動作をすることが、故障を未然に防ぐことにつながります。正しいドローイングのアプローチができるようになれば、正しい取り掛けができるようになり、痛みは出なくなり、革の枚数を減らしても平気になります。そうすればリリースが原因による矢の上下左右のバラつきはなくなり、自然と当たるようになります。とにもかくにも、優れた指導者から本当に正しいことを教わることが、健康で楽しくスポーツを楽しめる秘訣なのです。

      さて、また近いうちに、質問やリクエストの多い内容について紹介したいと思います。次は肩かな?腰かな?足かな?それではご期待ください♪

      アーチェリー初心者が最初に必要とする弓具は

      2014.09.22 Monday

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        まずはこちらの動画をご覧ください。



        これはローランの練習用ハンドルに、竹製のリムを装着したものを私が実射しています。この竹製のリムはアーチェリー用品として用意されている専用品ではなく、自生している竹を加工したものにストリングを張って、アーチェリーとして使用しています。

        この竹製のリムは、なるべく弱い力で引けるように、しなりをもたせる工夫をしたものです。アーチェリー初心者用のリムよりも柔らかいです。ここで詳しい説明はしませんが、こういった弱いリムを使ったトレーニングは、初心者だけではなく上級者にとっても、正しい身体の使い方を確認するための、大切な練習になります。正しい取り掛けと、体幹で弓を引ける動作に確実性を持たせるために、この弱い弓を使った練習に期間を長く使います。取り掛けの繊細な感覚を養うために、タブを使わず素手で取り掛け、リリースします。(そのくらい弱い弓を使います) 正しい身体の使い方を覚えるために、エイミングをさせないようサイトすら取り外して身体に意識を置くことが大切です。こうしていくうちにこの動画のように、狙わなくても同じ場所に当たるようになり、気づいたときには上級者になっているのです。

        ですから、最初から自分の道具を買って、それで練習を始めようとする9割以上の人が上手くなりません。特に初心者の間は、本当はアンカーリング動作をまねたゴムチューブ引きすら、行ってはいけないのです。よほどの上級者でないかぎり、ゴム引きで正確なアンカー位置にセットできないことと、最初にゴムを引かせると弓を腕力で引き、ストリングを握るクセが一生抜けなくなってしまうからです。ゴムチューブには本来の正しい使い方があるのですが、直接指導を受けることなく話だけ聞いてもまったく意味がないので、ここでの紹介は控えたいと思います。

        本当にアーチェリーがうまくなりたいのであれば、使う弓に強さは必要ありません。アーチェリー場などに置いてあるレンタルの弓具ですら初心者にはキツイので、最初は使わないほうがいいのです。ジュニア育成や初心者指導を専門にしているアーチェリー施設では、的のタタミどころか、ダンボールにすら矢が刺さらないほど弱い弓を準備していますので、最初はそれを使って指導を受けるのが最も大切なことになります。



        ですから、最初から自分の道具を買ってはいけないのです。竹で作ったリムでも、大人が引けないくらい強いリムを作ることもできます。指導に必要ないので、作りませんが(笑) 正しい指導を受けていると、最初から自分の道具を買ってしまうことが、いかにお金のムダづかいにしかならないかが理解できるようになります。この画像に写っている道具すべてを合わせても、1万5000円くらいです。これらはこちらに用意してあるので、最初はそれすら買わなくていいのです。最初に道具にお金をかけてはいけません。

        上達のためには、こうして弱いものから始めて、じっくりと時間をかけて少しずつステップアップしていくことが大切です。サイトを取り外して狙いを定めない状態でのビンゴ射ちは、アーチェリー場で的を射つよりも面白かったりします。別に景品は必要ありません。自分の身体のどこを使って、どんな事をすると、どんなふうに矢が飛んで行くかが、まさに手に取るようにわかるようになることが、自分にとって最大の収穫になるのです。

        アーチェリーは、本当に正しい事を学びさえすれば、誰もが当たるようになります。機材スポーツですが、決して道具ありきではありません。道具に必要以上にお金をかけることは、本来スポーツとして正しいことではありません。正しく取り組めば、他のスポーツに比べてお金がかかるようなこともありません。それにスポーツとしてのアスリートレベルは限りなく低い部類に入るので、老若男女をとわず誰もがカンタンに取り組むことができるのです♪

        ただし、あくまで本当に正しい事を学んでいるということが大前提となりますので、これからアーチェリーを始めたい人は、指導実績のある確かな指導者から指導を受けるように、くれぐれも注意してください。

        新聞に掲載されました

        2014.09.15 Monday

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          先日の上田杯全京都アーチェリー選手権大会で、朝日新聞の地域情報誌 週間あさすぽ南京都さんの取材を受けました。その模様が8月31日に発行された新聞に掲載されてましたので紹介します。



          記事では、「年齢やハンディキャップの有無などにかかわらず、誰でも同じ条件でプレーできる生涯スポーツとしても注目が高まっている。」と紹介されています。

          アーチェリーは力(ちから)まかせのスポーツではなく、正しい身体の使い方をおぼえて、それを的に向かって正確に行うだけ、という単純なスポーツです。実際の試合ではこの画像のように、性別に関係なく一斉に同じ距離の的めがけて矢を放ちます。身長や体重などの体格・体力差や、性別や年齢での差を気にすることなく楽しむことができます。見た目にも上品でスマートな印象を持たれることが多いので、特に女性に人気のスポーツです。

          優勝した試合ではありませんが、なんと私が画像の中心にフォーカスされています。南京都版の地方紙なので、京都府南部の選手を中心に紹介していただいてるそうです。私がこの画像で狙いを定めている青い弓が、以前に紹介した7800円の初心者用ハンドルです(笑) 詳しくは、過去の記事をご覧ください♪

          タブが すべてを物語る

          2014.09.08 Monday

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            ご存知のとおり、アーチェリーは機材スポーツです。機材の高性能化がトップ選手の高得点化に貢献しているのは、まちがいありません。しかし、それぞれのパーツがどれだけ素晴らしい性能を有していても、それらを正しく使いこなす事ができないのであれば、機材の高性能化の恩恵をこうむるどころか、高性能な道具を使うことが自分のレベルアップの妨げにしかなりません。

            アーチェリーは、最初に誰から、どんな事を教わったかで、その人の将来のレベルを決定的に運命づけてしまいます。本当に正しい事を学んで、それをその通りに実践するだけで、誰もが天才的に当たるようになるのが、アーチェリーの素晴らしいところです。しかし残念な事に、多くの教習施設では指導者が本当に大切な事を教えずに、ただひたすら生徒に実射をさせているだけという悲しい現実です。そのため市民アーチェリークラブのようなボランティア団体での指導では、単に資格を有しているに過ぎないスポーツ指導員が在籍しているだけで、本当に上達するために必要な事を教えてもらえません。

            あなたがどこかのクラブ、またはアーチェリー教室で指導を受けてきた経験があるのなら、あなたが今使ってるタブを見るだけで、習ってきたことのすべて。そこで身体の正しい使い方を学んだかどうか、どんなレベルの指導者からどんなレクチャーを受けてきたか。現代の弓具を使って、将来どの程度の得点を出すことができるか、それらのすべてがわかります。

            それではタブを見てみましょう♪



            これがタブです。タブはストリング(弦)を取りかけるための皮革製品です。皮革の素材は合成皮革も含めて様々なものがあります。タブに使われる素材について、いかにもすごそうなウンチクを語る人も多いですが、実際の的中に関しては素材が影響するものではありません。これはコードバンですが、素材に関する話題はまた別の機会に紹介します。今回は、正しい取り掛けができているかどうか、正しい身体の使い方でドローイングができているかどうか、それらがタブを見ただけでわかる、という事をお伝えします。



            これは私が使っているタブです。革を交換して半年程度使っているものです。私だけではなく、最初に私たちから習った人や、正しい初心者指導ができる本物の指導者から正しい取り掛けと正しいドローイング方法を学んだ人は、小学生から高齢の方まで、タブは私のものと同じような形状に変化していきます。まずは、あなたが使っているタブと革の形状の変化を見比べてみてください。



            これはタブを上から見た画像です。99%の人が、ストリングをつかんで引っぱってアンカーに引き込むドローイングをしてしまい、タブの革が握りこまれて丸まってしまってます。それは身体の使い方の根本的な誤りです。最初に正しい事を習えばそんな事にはなりませんが、弓は決して腕で引いてはいけません。正しくは身体の背部を使って、あたかも弦を引いてるかのように見える動作で、骨格で弓の力を支えながら伸び合っていく動作です。指の第一関節をストリングにやさしく当てた状態で、ヒジより後ろ側と背部の筋肉を使ってドローイングの動作に入ります。「取り掛け」とはストリングをつかむことではなく、ストリングにやさしく指を添える動作です。取り掛けが正しくできているとストリングを握らないため、タブの革はストリングに触れている部分以外に力が加わらないので変形することなく、このような形状になります。



            これは下から見た画像です。正しい取り掛けを習った人は、タブの革がこのような状態になっていきます。「取り掛け」ができずにストリングをつかんでしまうと、確実に上腕で弓を引っぱってしまいます。そうなると背部の筋力を正しく働かすことができないために、弓の力を骨格で支えるために必要な、正しい身体の使い方ができるようにはなりません。そうなると、どれだけ見た目のフォームを修正していっても、根本的に誤った身体の使い方しかできてない、いわるゆ「ハリボテ」状態になってしまいます。見た目には美しいフォームで射てているように見えても、万年中級者ばかりという状態にあるのは、これが最大の理由です。タブを握りこんで革が全体的に丸くなってしまったり、金属プレート付近の革の部分から折れ目がついてしまっているのであれば、最初に教えた人が、指導者としてどの程度のレベルにあったかも、わかります。そのため高校や大学のクラブ、市民クラブのようなところで習ってきた人のほぼ全員が、どれだけ練習を重ねても上達しないという、悲惨な現実があります。



            これはストリングへの取り掛け部分です。リリースポイントとも言い換えることができます。取り掛けとは、ストリングに第一関節を、やさしく当てることです。リリースとは、その指先を、そっと緩めてやることです。正しい取り掛けができている人は、骨格と身体の背部を中心とした体幹で弓の力を支えているために、発射は指先の力をそっと緩めるだけで済みます。この画像をご覧の通りですが、ストリングが当たっている取り掛け部分から、発射されるまでの間にタブの革にストリングがこすれている部分の面積が極端に少ないのが見てとれます。車のレースに例えるなら、スタート時にホイールスピンが長いか短いかという差に似ています。

            タブ革の変形に関しては、ストリングへの取り掛け部分が鋭角になるのみで、それ以外の変形や、こすれ、傷みは一切出てきません。これは上手い人のタブ、というものではなく、正しい取りかけと、正しい身体の使い方を学んだことによるものです。これは苦しい練習をひたすら重ねたことで、いつかできるようになるようなものでもありません。やってみようと思ったらできるような、そんな小手先のテクニックでもありません。最初に取り掛けとドローイングに関わる正しい身体の使い方を学んでいるか、そうでないかの決定的な違いです。

            しかし腕力で弓を引いている人は、ストリングをガッツリ握りこんで、それをガバッと離します。しかも腕力で引いているために、リリースが腕力の弛緩による発射の動作になってしまいます。そもそも骨格や体幹で支えてないので、腕力の弛緩で発射の際に身体の動きが大きくなり、まいかい正確な射ができません。ストリングをガッシリ握りこんでいるために、指先からストリングが離れるまでに、かなりの時間がかかってしまいます。その間にも身体は動き続けています。ちょっと大きな試合になるだけで、多くの人が緊張状態に置かれます。そうなったら、腕力で引いている人はムダな力を抜くどころか、かえってムダにちからをこめてしまいます。だから試合になると当たらないのです(笑) 試合で当たらないのは、やれ集中力だの、精神力だの、メンタルだの言われることが多いですが、負ける原因の大部分は、その人が最初に誰から何を習ってきたか、という部分が占めるは、ここだけのナイショです♪



            これは、私の指先です。そう、まいかいリリースしている、引き手の指です。キレイなもんです。ご覧のとおりですが、一般的なアーチェリー選手特有の「タコ」がありません。私は表示44ポンドのリムを、実質42.7ポンドで使っています。今では指導が中心なので昔のように多くの射をこなしませんが、オリンピックを目指していた頃の20数年前は、平日は350射程度を毎日こなし、土日や休日は500〜600射していました。週に2500射以上です。しかし指先にタコができたり、部分的に固くなったり、腱鞘炎になったりすることはありませんでした。ケアも大切ですが、最も大事なことは、身体を傷めない方法で、長く楽しむことです。

            ナイショ、ナイショと書いてますが、べつにナイショの話は何もありません。アーチェリー上達のために、特別なものは何ひとつありません。特殊な才能も、特別な能力もいりません。体格差も体力差も、成績にほとんど影響しないスポーツです。かつては「奥義」と言われたようなテクニックも、もはや解析されつくして、正しく教われば誰もがカンタンにできる時代です。私のように教える側からしても、「コレを教えるのは難しい」というようなものは、何ひとつありません。最初に正しい事を学びさえすれば、それをその通りに行うだけでいいのです。ただし、本当に正しいことを教えてくれる指導者が、何人もいない事が問題だったりしますが(苦笑)

            さて、ここからは余談です。



            タブの革は、コードバンという農耕馬の尻の革が使われていることが多いです。なぜコードバンが使われるかというと、専門書を一冊書けるほどになるので大幅に割愛しますが、本来はコードバンは、ごく一部の上級者のために使われるものです。コードバンが使われる最大の理由は、革の耐久性や、水を漏らさないような革の密度の高さではありません。タブが製品としてコードバンが使われている事が多いので、多くの人が何も疑問を持たずに使い続けていると思いますが、選手の99.9%にとっては、オーバークオリティーであり、コードバンを使うことで得点やグルーピングに影響するものではありません。

            コードバンという繊細な皮革を使うのは、わずか1回のリリースで、コードバンの革ごしにどのようなリリースがされていたか、表皮の上をサービングの糸がどのように転がりながらリリースしていったかを、実際に目視で確認することができるからなのです。しかし多くの人は新しい革に交換した際に、1射ずつ皮革の表面を確認しながら取り掛けとリリースの調整をしたり、取り掛けのバランスを調整することはありません。ストリングをホールドしたときの「しっかり感が」とか、「リリースの感触が」などと、わかってない人ほど、いかにも上級者っぽいことを言うのですが、人間の感覚ほどアテにならないものはありません。その選手が70mで330点ほど射てる人なら別ですが、的中は感覚のような曖昧なものではなく、的中とは確実なデータです。ですから多くの選手はコードバンを使うことでのメリットを完全に無視した使い方しかできてないために、自分が上達するために必要な道具になり得ないのです。

            そもそも正しい取り掛けができてないのですから、タブ革の素材にこだわることがまったく無意味な行為になります。取り掛けができてないのですから、身体の使い方が根本的に誤っているのです。アーチェリーで必要な機材の上位機種は、多くの人には単なるムダな出費にしかなっていないのです。正しい事ができている人は非力な女性や小中学生でも、低いグレードの安い道具を使って、涼しい顔して驚くべき高得点を叩き出すのです。正しい事ができない人は、どれだけ見た目だけマネしても、どれだけ道具にお金をかけても、非力な小学生にすら勝てないのです。



            このピンクのタブ革は、小学生のタブを作ったときの牛革の残った部分で作ったものです。手芸店で購入した牛革のはぎれです。これ1枚分で60円くらいです。ものすごく安いです(笑)



            これにワセリンを染ませて切っただけのものですが、じゃぁ、そんなチープなもので当たらないのかといえば、そんなことはありません。70mの練習で330点を出しました。試合でも70mで315点を出しています。京都府アーチェリー連盟主催の春季京都杯(70mオリンピックラウンド)では、これを使って昨年に引き続き2連覇を達成しています。多くの人がネットや書籍でウンチクを仕入れてますが、そのムダなウンチクが、この60円分の牛革に勝る、どんな素晴らしい結果を出せるというのでしょうか。あのメーカーのタブがいいとか、どこそこの革の質がいいとか、はっきり言って、どうでもいい事です(笑) 製品の性能差は、多くの場合はネダンほどの差はなく、得点や結果に結びつくものがない事を、知っておいた方がいいでしょう。

            アーチェリーは、道具の素材やグレードで当たるものではありません。まして腕力でもないのです。最初に本当に大切な事を教わってさえいれば、何を使っても当たるようになるのです。

            タブはその人を、本当に多く物語ってくれます。矢取りのときにサイトにタブを引っ掛けている人や、クイーバーに引っ掛けている人が多いので、じっくり見てみると面白いですよ。まさに丸ハダカも同然に、タブがその人の情報を教えてくれるのです。タブの状態が悪い人があまりにも多すぎますが、そういった人を見かけたら、どうしてタブがそんな形状に変化しているのか、どうしてタブの革がここで紹介したような形状にならないのかを聞いてあげてください。きっと苦しいイイワケが聞けると思いますよ(笑)

            自分に最初にアーチェリーを教えてくれた人に会うことがあれば、このタブの話をしてあげて、自分が使っているタブの状態がどのような形状に変化しているか見せてあげてください。どうせ残念なハナシにしかならないと思いますが、その指導者がこの話を軽視するようであれば、その人にこれ以上の期待をするのをやめて、確かな指導実績のある指導者に相談するのをオススメします♪