馬を殺して尻の皮を剥ぎ取った皮革を使う価値があるだけのレベルを目指そう

2015.11.24 Tuesday

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    タブ革の交換についての相談が多いです。カントピンチのカントや指との間隙、アンカーパッドなどの機能や機構に関する相談ではなく、タブの表皮についての相談です(笑) タブ革で検索すると、このブログがヒットするようですね。それなら貴重な馬を無駄に殺さないためにも、ぜひ読んでもらいたいものです。

    アーチェリーに関する用品についてのそれぞれを、何が最高かという質問も多いです。しかし最初から「最高」と言われるような製品を使ってはいけません。今ではもはや最悪なものなど製品としては売られてませんが、たとえ低価格な製品であっても、そこから自分が最高を引き出せない限りは道具のステップアップをしても、最高の製品を単に消費しているだけに過ぎません。自分の性能を高めない限りはどんな製品のパフォーマンスも引き出すことはできませんし、優れていると言われているスペックの高い道具を使うことに何の意味もありません。周囲を見渡してみるといいのです。最初から最高の道具を使って最悪な結果しか出せない人がほとんどなのです。なぜそうなのかを考えてみるといいでしょう。

    ■タブ革がコードバンでなければならないと吹聴する人たち

    タブ革に関する相談の多くは、最初は合皮や牛革のタブを使っていたが、次はコードバンにした方がいいのか?とか、質の良いコードバンが欲しいが、どこのコードバンがいいのか?などというようなものです。何を言ってるんでしょうか?ハーフ(50m・30mラウンド72射)で600点も出ないうちは、別にタブじゃなくてもグラブで十分です。タブであれば初心者用のタブで、合皮でも牛革でも素材なんてどうでもいいです。むしろタフな素材のコードバンではないほうがいいです。どうして射の技術が未熟な上達過程にある人間が、タブ革の素材を気にするのか理解に苦しみます。そこには合成皮革や牛革のタブを使って正確な射の手本を示す指導者がいない証拠ともいえます。本当に上手くなるまでは、弓具への細かなこだわりは、単なる自己満足にしかなりません。上質な素材を手に入れることを考えるよりも先に、上質な射ができることになることが100倍も大切です。

    コードバン。この言葉はアーチェリー業界ではカーボンとよく似た言葉の使われ方がされてますね(笑)コードバンもカーボンも単に素材のことであり、それらの素材が自分を上達させたり、それらを使うことで自分の得点が上がる魔法ではないのです。射の技術をマスターすれば、何をつかってもかなりの得点が出せるようになります。大して当たらないのは道具のせいではなく、扱う自分の射が正確でないことが原因です。上手くならなければ何をつかっても大して当たりません。それはあらゆるスポーツで共通しているように、古来から不変の事実です。

    コードバンは農耕馬の尻の皮をなめした皮革です。左右の尻の革が1対になっていて、尻尾や肛門に近い部分を取り除いたあとの、その見た目の形状から「メガネ」などと呼ばれています。しかし必要な革は尻の部分だけであり、つながっている背部の皮革は必要ありませんので、一般的にはメガネという状態ではなく、左右の尻を切り離して余分な周囲の革を取り除いた楕円形の状態で販売されています。アーチェリー用のタブとして使われるものは、その楕円形のものを仕入れてタブに型抜きして製品化されます。馬は生物なので個体差があり、コードバンの大きさは均一ではありませんが、楕円形のコードバン片側1枚につき15〜20枚程度のタブ表革になります。30〜40人のアーチェリー愛好者がコードバンのタブを1枚使うことで、両方の尻の革をはぎとるために馬1頭の命が失われます。ちなみに牛革は皮革の全面を使えるのに対して馬革は、尻の革のコードバンの部分しかタブには使うことができません。



    これが世界最高の新喜皮革のコードバンです。世界中のセレブに愛される超高級革製品に使われる素材です。芸術品の製作目的であれば納得の極上素材ですが、アーチェリーで使われるタブのように、単に磨耗させて消耗させて捨ててしまうような使い方をするために作られたものではありません。

    一部の上級者以外に、コードバンなどという高級皮革は必要ありません。ストリングへの取り掛けができて安全にリリースができて、ストリングから指先を守ることができれば、タブの表皮は人工皮革でもゴムでもビニールでも何でもいいのです。その人が使っているタブの状態を見れば一発でわかりますが、ドローイングのアプローチに誤りがあり、正しい取り掛けとアンカーリング、そして正確なリリースができてない人にとっては、どんな品質の高いコードバンを使ってもまったく意味がありません。コードバンの2枚重ねは、ひとり当たり2倍ものコードバンを消費することになるので、よく考えると残酷な話です。

    ぶ厚い革を2枚も重ねてしまうと、ほとんどの場合は取り掛けの感覚が希薄になり、リリースがぎこちなくなってしまいます。特に40ポンドにも満たない実質ポンドでは、タブ革にコシがあり硬さがある、または厚みがあると、取り掛けの感覚が希薄になるので、ドローイングやアンカーの最中にタブ革の上で指先からストリングが滑り出そうとして、それを抑えるために腕に力を込めてしまいます。だからアンカーが一定にならず、優しく丁寧なリリースができません。おまけに緩んでいくものを握り締めようとするために、いつまでたってもクリッカーが鳴りません。試合になったらリラックスして射てないので、なおさらです。ほとんどの選手がそんな状態で、懸命になって実射を繰り返し続けています。そんなことだからどれだけ練習量を増やしても、いつまでたっても上手くならないのです。高得点を叩き出すことができる上級者ならともかくとして、中級者や初心者がマネをするようなものではありません。そんな状態で上達できないでいるにも関わらず、タブの革はコードバンがいいなどと誰かから言われ、本当に自分の上達を手助けするかどうかもわからないまま、コードバンを使うことになるのです。

    ちなみにタブの素材として最もふさわしいのはコードバンではなく、高級なサッカーボールの表皮やスポーツサイクルの高級サドルなどのの表皮に使われているマイクロファイバー素材です。様々な呼び名のものがありますが、あらゆる皮革の素材を上回る耐久性と、どんなに濡れても性能が変わらない防水性の高さ、それに天然由来ではない製品の均一性を誇ります。恐らくタブの寿命まで使える人がいないのではないかと思えるくらい、繰り返しの磨耗に強く手入れが楽で、コードバンのように変形したり変質することはありません。しかし軽量な表皮が必要とされるサッカーボールと違って、アーチェリーのタブとして使うには厚みが必要になりますので、何か他の素材に貼り合わせなければ使えません。アーチェリーで消費するマーケットのサイズを考えると、アーチェリー用として生産するのは今は考えにくい素材です。タブに装着して使わせてもらったことがあるのは、世界中で私を含めて数人しかいないと思いますが、将来的にはそのような素材を使われる時代になればいいなと思います。

    ■牛革のタブ

    牛革の優れている点はコストパフォーマンスの高さにあります。コードバンは馬の革の尻の部分からしか取れません。タブ用としてのコードバンは、馬1頭あたり30数枚程度しか取れません。しかし牛革は、牛の体のほぼ全域にわたる広い範囲の革をタブ用に使うことができます。牛1頭あたり400枚程度のタブ革が取れます。みんな安易にコードバンを使いたがりますが、命を戴くことの有り難さと、自分のレベルが本当にコードバンに相応しいかを、1射リリースするたびに、胸にタブを当てて考えてみるといいのです。

    タブの革の性能に関しては、コードバンではなくて牛革でも70mで330点程度が出ているのは以前も紹介しましたし、全関西春季で雨の中、後半に315点を出したり、ローカルな試合では何度か優勝しているのはご存知だと思います。



    このピンクの牛革は、上の小さな小学生用のタブを作ったときの切れ端で作ったものです。これで高得点が出てますし、京都府アーチェリー連盟主催の公認競技会で2連覇を果たしたものです。いくつかの競技会場では、このピンクのタブ革がどこのメーカーから販売されてるのか何人から聞かれたものですが、ホームセンターの中にある手芸コーナーに置かれていた牛革のハギレで、これ1枚で60円だと言うと、一様に驚かれたものです。



    こんなものでも70mで330点が出ますからね。かつて某社の製品テストで、イヤになるほど様々な素材を試させられましたが、自分が感じるフィーリングが的面での得点に影響が少ない。というか、50m6射で60点の時と58点のときの自分の射の違いですら判別つかないので、結局はタブ表皮の素材に何を使っても出せる得点の差を見出せないという、笑い話のような思い出があります。結局は感触とか感覚とかフィーリングなどと好き勝手なことを言ってるだけで、何かを感じたときにはすでに矢は的に向かって飛んでいるわけで、感じている最中に人間は何をすることもできないというのが、身体や弓に装着した加速度センサーのデータを解析してもわかります。何をどう感じようが、道具は自分に与えられた仕事を確実に正確に行うので、よほど特別なレベルに到達しないかぎりは、何を使っても凡人が神業など発揮できないということです。

    ちなみにタブ革のコードバンの表皮について、皮に生えてた毛の向きがどうであるか調べたいという質問もあり、これにはさすがに苦笑しました。コードバンで毛の方向を知るには、一般的に入手できるコードバンの楕円形のシートの状態ではなく、左右の尻がつながったメガネの状態で入手しなければなりません。海外の質の低いコードバンは知りませんが、日本が世界に誇る最高品質のコードバンは、表面をガラスで研磨して完全に鏡面仕上げにされているので、通常の顕微鏡をつかって表皮を見ても毛穴の向きはわかりません。表皮の摩擦抵抗を計測したことはありませんが、表皮ではサービング糸が摩擦を発生させるので、リリース時の抵抗係数うんぬんを語ることに意味はありません。そもそもコードバンの表面は染色が施されているのです。染色されてない馬の尻の肌の色のままの、オイルグレージングのコードバンもありますが、毛穴までは見えません。タブ革は、ストリングを取り掛けている部分が毎回完全に同じであり、ストリングに巻きつけてあるサービングの糸が、タブ表皮に毎回必ず同じ軌跡を残すことが必須なのです。それができるようになってはじめて、コードバンを使う意味がわかるようになります。これまで使ってきたタブ表皮が良くない状態であれば、コードバン表皮の毛穴の向きにこだわっても、どうしようもありませんからね。ほとんどの選手が、自分の使っているタブを私に見せたがりません。そんな人が、顕微鏡を覗いても見えないコードバンの毛穴の向きを気にしてどうするのですか?そんな細かいこだわりがあるのなら、普段から競技でさぞかし高得点を叩き出しているはずですが・・・

    上達するまでには、ソフトな取り掛けと優しいリリースのために必要な、指先に関わる大切なことを習い、ひとつずつを修得していかなければなりません。それはコードバンを使ったらマスターできるというものではありません。どうして初心者用にグラブという柔らかい牛革で作られた製品があって、どうして初心者用のタブには牛革や薄い合成皮革が使われているのか?コードバン製のグラブはありませんよね?射に関わる技術は、非常に弱い弓を使って修得しなければならないものばかりです。ですから高ポンドに対応した上級者用の用品を上級者以外が使ってしまうと、最初に絶対に感じておかなければならないものが、一切わからなくなってしまうのです。実質40ポンドに満たないリムを使っている人や、上達過程にある人が上達するまでに必要なのは、指先から得られるストリングのインフォメーションです。それは自分が的とサイトピンを見ている目の中心から、取り掛けてアンカーで保持しているストリングに装着されたノックまでの距離が正確であるか。タブから送り出されてリムまで戻るストリングの軌跡を統一できるか、そうでないかの重要な指導になるのです。どれだけ練習量を増やしたところで大して上手くならないのは、それら大切なことが大胆にスポイルされている事もわからずに(わからなくなった状態にさせられているにも関わらず)、実射を繰り返すという状態に陥っているからです。

    それを知るにはタブ革に必要な性能は、(最初は)柔らかさと、革ごしに自分が取り掛けているストリングを感じることができるかどうかというものです。でなければ、自分がどのようなリリースをしているかが、まったく理解できないまま、ムダに射をこなすことになります。それがわからないままポンドアップしていく(させられてしまう)から、指先の皮膚が対応できなくなっていくのです。そうなったら指の皮膚が角質化されていき、どんどんストリングのインフォメーションがわからなくなります。しかも練習できる日には1日で必死になって数百射も繰り返してしまうので、繊細な感覚を永遠に失ってしまいます。ですから、ほとんどの人が何も感じなくなってしまっています。そうなってしまわないためにも、上級者以外が上級者用の用具を使うことは、何としても避けなければならないのです。練習の量をどれだけ増やしても、ある程度までは得点が出せるようになっても、そこから先に進むことができなくなるのです。

    それでは、手に入りやすい牛革の端切れをつかって、高性能なタブ革を作ってみましょう。

    ■タブ革を作ってみる



    コードバンだろうが牛革だろうが、素材そのものが最初から勝手に高性能なワケではありません。繊維が緻密なコードバンであっても、何もしないのであれば単なる馬の尻の革にすぎません。しかし牛の皮であっても古来からの人間の知恵で、耐久性の高いものをつくることができます。革靴だってベルトだってランドセルだって牛革なのです。こんな安い(実はコードバンも素材自体はそんなに高くないが・・・)牛革でも、かなりの高得点を叩き出せる、高性能なタブを作ることができるのです。

    大きなホームセンターや、レザークラフト用品を置いてある手芸屋さんでは、このようにカゴ一杯に端切れが置かれています。端切れじゃなくてもハガキサイズなどで数百円で売られていることも多いです。バッグなど様々な製品として使われた端材なので、耐久性の高い端切れが何種類も置かれていることが多いです。



    今回はタブの表皮用に、この2枚を購入しました。どちらも1枚50円です。これらは大体1デシ単位のサイズに切り分けられているものですが、大きさが不揃いのものであれば、1枚で2〜3セット分くらいを取れるものがあります。着色してあるものでも、何ら問題なく使えます。タブの表革として使うので、店頭で指で触ったときに固さがある、ゴワつく感じのものを選びます。表皮が少々荒れていても大丈夫です。値札がホッチキスで直接止まってましたが、ホッチキスの穴なんてタブの性能に関係ないので些細なことは無視します。革に油を浸透させて使いますので、革は固めのものを使います。最初から柔らかいものは油を浸透させるとヘニャヘニャになります。裏革としても使うことができますが、裏革に使うのならベロア革の大きめのシートを買ったほうが圧倒的に安いです。



    この1シート648円のベロア1枚で、17枚分のタブの裏革用ベロアシートになります。裏革には、通常はこういったベロアシートを使います。とても安いですが、アーチェリーのタブの裏革に使われているものよりも、かなり上質なものが手に入ります。常に指先で触れるものなので、汚れが目立ったり質感が変わってしまう前に、マメに交換しましょう。



    タブ革の作り方は、もはや説明する必要がないほどカンタンです。まずはタブのプレートから、元の革を取り外します。元の革からボールペンや細書きマジックでトレースして、ハサミやカッターナイフで切り取るだけです。裏表を間違えると逆射用になってしまいます(笑)ので、注意してください。見た目の仕上がりを美しく仕上げたい人は革を表側にしてトレースする事もありますが、こんな形を変えて効果を発揮する消耗パーツの美観を気にしても仕方がありませんので、裏側からトレースして切り取ります。なお、元の革が、元のカタチがわからなくなるほど変形してしまっている場合は、いちど型紙を起こしてからトレースすると便利です。



    このように、いちど厚紙などで型紙を起こしてしまえば、次にタブ革を切って交換するときにラクできます。同じクラブや仲間同士で同じタブに揃えて使っていれば、タブ革を作り置きしておけるので便利です。これまで使っていたタブの革が短くて指先のはみ出し幅が多めな人は、左右方向の全長を長く起こして切り取ります。指が細くて長い人は、自分専用の型紙を起こしておくといいでしょう。牛革だと1枚あたりの単価が50円程度と安いので、自分にピッタリ合った形状に何度も作り直すことができて便利です。何千円もするアーチェリー用品として売られているコードバンの交換用皮革を買ってしまうと、そうそう作りなおすこともできませんからね。このようにして、自分の指のサイズに合わせたオリジナルを作ってみましょう。



    皮を切り取ったあとは、プレートに装着するための穴をあけます。ボルトが通るサイズの穴を、穴あけポンチを叩いてあけます。穴あけポンチがない場合は、千枚通しや細いクギを刺して穴を広げてください。ボルトが通ればプレートにタブ革を固定することができますので、穴の位置はそれほど神経質に微調整する必要はありませんし、あいた穴の形状がキレイじゃなくても大丈夫です。自分が使っているタブのボルトが何mmなのかを知っておくと便利です。このタブには3mmの穴あけポンチを使っています。ベルトとカントピンチの穴は、100円ショップで売られている彫刻刀の丸刀を使うと、穴を開けやすいです。カッターナイフやクラフトナイフを使う場合は、手を切ってしまわないように細心の注意を払って下さい。切れ味の鈍った刃物を使うとチカラを込めすぎて、誤ってケガをする人がいますので気をつけてください。



    革は湿気を嫌います。どんな皮革であっても吸湿と乾燥を繰り返すと革本来のしなやかさを失ってしまい、タブとしては使い物にならなくなってしまいます。メンテナンスしていない乾いた革には手から分泌される汗や皮脂がタブ革に徐々に染み込んでいきますので、あまりにも不衛生です。汗の浸透と乾燥を繰り返すあまりに、アーチェリーケースの中で異臭を発するタブを使っている人もいます。白く塩を吹いているタブを使っている人もいます。タブを洗濯機で洗う人はいません。クサいだけならいいですが、指先に触れるものなので食中毒の原因にもなりかねません。特に裏革はマメに交換してください。1年で4回交換しても200円もしません。

    穴をあけて、プレートに装着できる形に革の周囲を切り取ったら、タブのプレートに装着する前に油を染み込ませます。油はレザークラフトで使われるフットオイルやブーツオイルでもいいのですが、一般家庭で使われる食用油でも代用できます。素肌で触れるものなので、グリスやエンジンオイル、ミシンオイルなどの工業用の油や、有機溶剤を含んだものを使ってはいけません。食用油を使う場合は、オリーブオイルや胡麻油などのようなものを選ばず、なるべく香りの少ないものを選んでください。でないと、アーチェリーケースの中が油クサくなります。タブとして使っていると油の酸化が意外に進むので、食用油は必ずしもお勧めできるものではありません。ラードでも食用油でも役目は果たしますが、ゴキブリやネズミなどに狙われないようにしてください。油ではない方法で耐水性を高めて乾燥を防ぐには、ワセリンが優れた効果を発揮します、ワセリンは安いですし酸化や劣化がほとんどありませんし、アロマオイルを1滴たらすだけで、タブ革専用の上質な特別なオイルになります。私はローズマリーを少し加えて使っています。オリジナルのタブは、このようにして楽しめるのがいいですね。香水などを加えると周囲の迷惑になる可能性もありますので、香りを加える場合は、ほどほどにしてください。ちなみにワセリンは、なるべく小さなサイズのものを買いましょう。大きなサイズはお得感バツグンですが、大きなものを買ってみんなで小分けしても量が多すぎて、何年も処分に困ることになりますからね(笑)



    ワセリンには雨にも強く、雑菌が繁殖せずに保湿できるので、食用の油よりも衛生面でも安心です。ワセリンを革の裏側から指先で伸ばして塗りこむと、みるみる浸透してきます。表革の表側にも薄く塗りのばして余分なワセリンを拭き取ったら、タブの両側をティッシュではさんで、さらに新聞紙などではさんだものを床に置いて足で踏んで、染込ませすぎたワセリンを革からじんわりと追い出します。それをプレートに装着して完成です。以前に牛革を使ったときにはピンク色だったので目立ちましたが、今回はグレーなので落ち着いた色合いになりましたね。ちょっと地味なので、今回は誰も気づいてくれないかも知れません(笑)



    さっそく実射してみました。ワセリンを含ませているので、ほんのりとしなやかで、ぽってりと張りがあって、上質な感じのタブの出来上がりです。手入れされていないガサガサになってるコードバンの表皮をつかってストリングを握りしめている人がほとんどなので、がさつなリリースになってしまっているのかも知れませんよ。そんなものよりも、手入れの行き届いた張りのある牛革をマメに取り替えて使ったほうが、よっぽど価値があるというものです。

    ワセリンは取り掛けている指先の保護にも効果を発揮します。実射の練習をする前に薬指にワセリンを含ませて、皮膚に浸透させた状態で射つと、リリースによるストリングからの皮膚の保護に役立ちます。その人の皮膚の状態にもよりますが、矢取り3回くらいで指先に塗り足すことで、皮膚の損傷と角質化を防ぐことができます。その際に指先を、てのひらを伸ばすように軽くストレッチをしたり、ストリングを取り掛けている側の腕をマッサージすることで腱や腱鞘に関わる炎症の防止にもなります。身体のメンテナンスもせずに無闇に実射を繰り返すことだけは、くれぐれもやめてください。身体は、繰り返しの動作で確実に痛んでいきます。疲労を蓄積させないためにも射にはインターバルをもたせ、特定の部位を酷使させないように注意しながら練習をしてください。

    ■的中は道具だけでは望めない

    本当に上達するまでは、タブ革などに30倍以上の金額をつぎ込んでもムダ金にしかなりません。弓具すべてに言えることですが、初心者や中級者の頃は、自分に関係のない性能の弓具は一切必要ありません。どうせ使いこなせないモノにお金を払うくらいなら、自分の身体に投資した方がよっぽど回収できるというものです。コードバンよりも牛革が優れていると言っているのではありません。しかし交換用のコードバンのタブ革1枚で、牛革であればその人の何十年分もの交換用の革になるのです。そんな究極ともいえる天然素材を使うのは、上達してからにしましょう。

    どこのコードバンがアーチェリーに優れているかなんて、トップレベルの選手以外には関係のない話です。上級者でもない限り、どうせ何を使っても同じです。単に動物の革を消費するだけなのであれば、1枚あたりの命の重みのあるコードバンを使うべきではありません。尻の皮を剥がれた馬とは、この世で生きて会うことは叶わないのです。そもそもコードバンなんて、本当はアーチェリーのために作ってるわけじゃないんです。しかもコードバンの本来の性能を活かした使い方がなされてないのであれば、それこそ転倒しているのです。

    何よりも、1枚50円のタブ革に屈するとしたら、道具の性能を語る資格などそもそもありませんし、勧めてきた選手や指導者として、販売してきたショップの人間として、これほど恥かしい話はないのです。道具にお金をかけるのがアーチェリーではありません。アーチェリーは自分の身体の性能を発揮させて当てて高得点を叩き出す、まぎれも無いスポーツなのです。道具は使いこなしてナンボです。道具への片思いほどバカらしいものはありません。何のためにお金を払ったのかを考えてみるといいのです。使いこなせないならゴミも同然です。アーチェリー愛好者は、馬の命をゴミ同然にしている人だらけ。

    本当に上手くなるまでは道具へのムダな出費は抑えて、楽しく賢いアーチェリーライフを満喫してもらいたいものです。

    スポーツ医療チームのアーチェリーレッスンも佳境に入ってきました。来月はいよいよ、スポーツ整形のドクターによるメディカルチェックの受診がありますね。寒くなってくると筋肉の動きがこわばって故障の原因になる事が多いです。本当に上手くなるまでは道具の性能なんてどうでもいいので、自分の身体の状態を万全にして、冬のあいだに身体の性能を高めておきましょう。

    上級者にしか当たらないカーボン矢と だれでも当たるアルミ矢

    2015.10.05 Monday

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      ■国体にて

      先週の日曜日は、和歌山国体アーチェリー競技の会場に行ってきました。決勝戦のもようはNHKのEテレ地上波で1時間にわたって放映されてましたので、テレビでご覧になられた方もいらっしゃるのではないでしょうか。



      それぞれの都道府県の代表が、それぞれの地域ブロック大会を勝ち抜かなければ本国体に出場できない狭き門です。近畿ブロックの成年は強豪ぞろいなので、各府県でトップアーチャーを3人揃えなければ出場することも叶わぬ狭き門です。特に成年男子はレッドバッジを持ってないレベルでは、近畿ブロック大会を勝ちあがって本国体への出場もできないほどなのです。

      このような世界で通用するようなトップレベルの選手たちは強靭な肉体と、正確無比な射を行うことができる高いレベルの技術があり、世界トップレベルの高性能な機材を使って参戦しています。当たり前といえば当たり前ですが、このような国体での70mの的は、ほぼ全員がほとんどの矢を黄色に当てています。赤色の得点帯を射つと、ハズレだと思っている人が多いレベルです。

      それにしても近畿勢の強さは凄まじいです。成年男子は開催県の和歌山と、近畿ブロック大会を勝ち抜いて本国体に進出した滋賀と大阪のいずれもがベスト8に入りました。決勝戦のカードは和歌山対滋賀で、滋賀が優勝、和歌山が準優勝。吹き荒れる強風のなかでゴールドを射抜く能力は、実に素晴らしいものがあります。トーナメントは運不運などと言われることもありますが、強風の中で正確に中心を射抜くことができる能力は決して運などではなく、その状況で能力を発揮することができる実力を備えているからに他なりません。

      ■猫に小判じゃ意味がない

      上級者用の弓具は、上級者が正確に的の中心を射抜くためにあります。しかしここで重要なのは、上手くなるために必要な弓具と、上手くなってから使う弓具は違います。弓具にはあらゆるグレードがありますが、弓具で背伸びをすることなく、自分が使いこなせる範囲での弓具の選択が大切です。

      しかし上達過程にある中級者や、アーチェリーを始めたばかりの初心者や高校生、驚くべきことに中学生や一部の小学生までもが、こういったトップカテゴリーで参戦している選手と同じグレードの、超高額な機材を振り回して、矢を的一面に撒き散らしているのです。

      どうしてそれを使っているかを尋ねると、ショップで勧められた、先輩が選んでネット通販で取り寄せた、などという人がほとんどです。50mで300点も出せないようなレベルでも、総額25万とか15万以上などのムダに高額な製品を買わされて、まともに当てる事もできないのに、X10やACEや、軽量なオールカーボンの矢を使っているのです。しかもスパインが合ってなかったりストリングの全長が合ってなかったりと、書き切れないほど弓も矢もムチャクチャな状態で使っている人が多くて、しかも射ち方がムチャクチャなので呆れてしまいます。

      自分で弓具のすべてを熟知してないレベルの人が、アーチェリーに関わる用品をネット通販などで買うべきではありません。通販サイトはプロショップなどではありません。ネット通販を自分にとって都合よく使えるのは、上級者だけです。単に売りっぱなしの大手の販売店は、今や高額なアーチェリー用品を揃えている量販店に過ぎません。初心者や中級者に対して上級者モデルを勧めるような良心的でないショップに、自分の上達を期待するのはやめましょう。最初に高いお金を払わされるだけで終わります。最悪な場合は、次に買いかえるときに、さらに高性能な機材を売りつけられます。というか、欲しくなるように洗脳されていきます。よく考えてみるといいのです。それらを勧められて何年もアーチェリーを続けてきて、ちゃんと上手くなれたのですか?そうでないから困っているのでしょう?

      レスポンスが高い高額なカーボンの矢を使うのは、ちゃんと当たるレベルになってからにすべきです。こんな消耗品に、大して当たりもしないうちからお金をつぎ込むものではありません。矢は異なるスパインのシャフトを数種類使ってみないと、本当に自分に合ったものに出会うことができません。1ダースの矢を作ったら、それで終わりではありません。最初の矢を自分にとっての最初の基準にして、数種の異なるスパインを試さないと、自分に合っているかどうかもわかりません。

      ですから自分のリムを買った時にいきなり1ダースのACEを買うなど、まったくのムダです。取り掛け、ホールディングの作用、リリースの際の力の向きなどは、人それぞれに違います。腕力でストリングを引いてる人とそうでない人でも、スパインの選択は同じではありません。スパインチャートは大体が合ってますが、あくまでも目安に過ぎません。ですから必ずしも万人に当てはまるものではありません。上級者になるまでに、どれだけのスパインを試したかが大切なのです。

      多くの中級者たちは、いちど高額なカーボン矢を買ったら、ずっとそれを使い続けているでしょう?シャフトだけで1ダース4万円近くもするから、スパインが合ってるかどうかわからなくても、そうそう買いかえられないでしょう?スパインが合ってないかも知れないと思っても、その矢を使い続けるでしょう?そんな事だから、上級者になるまでは精度の高すぎる高額な矢は必要ないのです。本当に上達するまでは買いやすい価格の低グレードの矢を、何種類も試すことが大切です。

      同じカーボン矢を買うのであれば、ACEのシャフトは1ダース3万2000円。インスパイアのシャフトは1ダース3800円。値段は8倍以上の開きがあるのです。でもトップアーチャー以外では、どちらも出せる得点は同じです。激安のインスパイアを使っても、70mで320点が出ています。300点も出ない中級者以下がACEを1ダース買うことが、どれだけムダなことか。インスパイアで8ダース分以上のスパインのデータが取れるのですよ。実際にはそこまで必要ありませんよね。2〜3ダースも試せば十分なハズです。インスパイアで70m300点以上が出せるようになっても、まだまだACEやX10の性能なんてわかりっこありませんよ(笑)安心してください。

      ■信じるものは救われない「カーボン神話」

      あなたは超高額なカーボン矢を使うヘタクソがいいですか?それともアピールするほどの精度もない、練習用の備品グレードの安いアルミ矢でもバカスカ当てることができるのと、どちらがいいですか?

      性能が低いものを使って当たるようになったときになって初めて、性能が高いものを使ったときに効果が出てきます。後者のように何を使っても当たるという方が格好イイと思うのですが、どうやら多くの人は積極的に前者を選んでしまっているようです。前者になってしまうべく、良心的でないショップに仕組まれていると言った方が正解ですね。残念だと思わざるを得ない状況です。これは笑うに笑えません・・・

      アルミ矢に比べてカーボン矢はシャフト本体が軽くて細いです。その細さと軽さは繊細な取り掛けと正確なリリースができる上級者にとっては有効ですが、高得点が出せない上達過程にある中級者や初心者にとっては諸刃の剣となって自分に襲いかかってきます。

      その発射の際の繊細な加減は、返りの早いリムや伸縮性のない競技用のストリング、競技用のタブを初心者の最初から使っていたのでは、指先に何も感じることなく、すべてが「アッ!」という間に終わります。しかも実射ばかりひらすら繰り返すような練習をさせられて、どんどんポンドアップさせられてしまうので、繊細なものが何もわからないうちに取り掛けている指先が角質化して皮膚が厚く固くなってしまいます。皮膚が角質化してしまってからでは、タブの中でストリングを転がり出す感触を確かめることは不可能になります。

      取り掛けている指先をそっと緩めてストリングの送り出しを確かめるためには、最初の頃のレッスンで初速を抑えるための工夫を徹底的に凝らす必要があります。ストリングを素手で扱っても平気な、竹で作ったとにかく弱いリム。太目のサービングを巻いた弾力のあるダクロンストリング、近射用の重たいアルミ矢、などです。最初はこれらを使って、時間をかけてじっくりと技術を修得していかなければならないのです。

      最初から高性能な弓具を買ってはいけない、最初から上級者と同じような弓具を使ってはならないのは、それらの高性能な弓具たちが上達の手助けになる事を、何ひとつしてくれないからです。しかし良心的でないショップは客の顔を見てお金だとしか思っていないので、一人当たりの客単価を上げるために高性能な製品や、高額なフラッグシップモデルを売ろうと必死なのです。

      ですからこれからアーチェリーを始めたいという初心者に25万の弓具を勧め、今年こそは高得点を出したいと願う中級者にレベルに見合わない上級者モデルを押し付ける傾向が顕著です。おまけに、「こっちの方が精度が高い」とか、「これはカーボンですから」と言うコトバが決め台詞になり、何も知らない子羊たちは魔法にかかったかのようにフラフラとお金を差し出します(笑)

      そんな事だから猫も杓子もカーボン!カーボン!と、リムもハンドルも矢もスタビライザーもクリッカーまでもがカーボンなのです。カーボンというのは、単なる素材のひとつに過ぎません。カーボンという素材そのものが、勝手に高得点を出してくれるワケでも何でもないのです。

      高いお金を払って買った高性能な弓具を使って当たらないのは、自分のレベルに見合ってないからに他なりません。あなたがどれだけ買った弓具を愛していたとしても、しょせんは一方的な片思いであり、お金で買った愛のようなものです。それよりも、今の自分のレベルに本当にピッタリの弓具を使うことが、自分を将来の高得点に導きます。X10・ACE・価格問わず軽量なオールカーボンシャフトなどを使うのを一旦やめて、アルミ矢や、カーボンならシャフトが重たい矢にグレードダウンさせたら当たるのになぁ〜という中級者が多すぎて残念です。カーボン神話でどれだけ麻痺しているのか、製品のスペックに対してどんな思い込みなのか知りませんが、そろそろ目を覚ましてほしいものです。

      ■備品クラスのアルミ矢

      初心者が30mを射つようになると、指導者でも何でもない周囲のアーチャーたちがやたらと、そろそろACEにしたらなどと勧めます。トップレベルの選手はX10やACEなどの高性能なカーボン矢ですし、周りの人もみんな使ってます。ショップやメーカーのホームページを見ると、それはそれは素晴らしそうなキャプションが書かれています。そう勧められてるうちに欲しくなるものなので、人間という生き物はなかなか単純にできているのだと思います。情報の風上にいる側は、エンドユーザーを踊らすのは簡単だと思ってますよ(笑)

      上達過程にあるレベルの人間に高性能なカーボン矢を使わせてはいけない理由は上記の通りです。アルミよりもカーボンの方が当たるという人もいますが、果たしてそうでしょうか?確かに高性能なカーボン矢を使えば高得点を出すことはできますが、本当にそのレベルに達した事がない中途半端な人にとっては、何mで何点の得点誤差が生じるか、何点からがアルミ矢とカーボン矢の選択の分岐点なのかを一切理解していません。

      私は現役時代にはその分岐点を徹底的に見極めてきましたが、50mで320点まではアルミもカーボンも大差ありません。しかし325点を超えるようになるとカーボン矢が優勢になります。30mではアルミ矢が太いので10点に刺さった矢に弾かれて、5射目や6射目では不幸な9点になることもありますが、いずれにせよ上級者でもない一般的なレベルでは、まったく関係のない話です。50m・30mの72射で630点も出ないのであれば、高額でムダに精度の高い矢を使う必要はまったくありません。

      この日は鳥羽根を貼ったインドア練習用のアルミ矢、ジャズを3本持ち込みました。鳥羽根なので2枚と同じものがありません。1本のシャフトに生体由来の重さも硬さもバラバラの羽根を3枚貼ってあります。ジャズのグレードは、今では競技用としてのラインナップではなく、完全に初心者練習用の位置付けになっています。

      ジャズのシャフトはリアがテーパー形状になっているために、接着タイプのプラスチノックを装着します。このジャズを使って50mを射って見せます。



      1回目、10・10・8。



      2回目、9・9・8。

      ジャズですよ、ジャズ。シャフト1ダース 4,250円です。初心者練習用の備品として置いている所もあるでしょう。アーチェリーをさせてもらえる遊興施設や農業公園などで、よく見かける安い矢です(笑) そんな安い、セールストークにもならないような大して立派な精度でもありませんが、十分当たっています。あなたが使っている超高額な高性能カーボン矢では、どうですか?

      ちなみに私がシングルラウンドでゴールドバッジを取得した時に使っていたのは、XX75のアルミ矢です。このジャズと同じグレードで90m・70m・50m・30mの144射で1218点を出しています。もう25年以上も昔の話です。今よりもずっとひ弱な高校1年生の時です。当時はユニブッシングもなかった時代です。プラスチノックの精度は現行のノックよりも低いものでしたが、70mでも50mでも普通に300点以上が出てました。当時は矢に対して、それ以上の精度が必要だと思うような事もありませんでしたし、病的なまでに神経質になることもありませんでした。



      これは別の日の画像です。XX75プラチウムでの30mで、これも18mのインドア練習用のアルミ矢です。ノックがテーパータイプの接着方式ではなく、ユニブッシングでGノックを挿入するタイプです。ジャズやブルースよりも精度が高いので、30mで330点を超えるようになってきたらプラチウムにするか、中級者用のカーボン矢にステップアップを考えてもいいでしょうね。それまではジャズやインスパイアなどの、練習用グレードの矢で十分です。

      アルミにしてもカーボンにしても、この程度は当たるようにならないと、精度の高い製品や高性能で高価な製品を使っても何もわかりません。というか、この程度当たるようになると自分に必要な機材のスペックが適正に判断できるようになるので、アーチェリーがメチャクチャ面白くなります。

      高額なハイスペック製品が性能を発揮するのは、使い手の性能が高くなったその時です。使い手の性能が低いままでは、軽量で剛性の高いカーボンに重たい金属をぶら下げたような、アーチェリーと名前のついた弓を振り回しているだけで、弓矢ごっこの域を脱することができません。カーボンだと聞いただけで、それがいかにも優れているようなイメージを彷彿させるようですが、それは本来必要でもない人に対して高額な製品を欲しくなる動機を、売り手側によって植えつけられてしまっている事に気づくべきなのです。

      ■弓具依存症という心の病気

      確かに高性能なカーボン矢は、アルミ矢ではなしえなかった驚異的な高得点を叩き出します。しかしそれは、上級者のさらに上のトップアーチャーになってから必要とされる精度なのです。安くて大して精度の出てないカーボン矢であっても、練習用のアルミ矢であっても、自分自身がちゃんと普通に射てるようになれば、周囲がビックリするほど当たります。本当はそれが普通なのです。

      トップレベルどころか上級者でもない中級者以下の上達過程にあるレベルにとっては、上級者が求める性能を追いかけることなど絶対にできません。初心者は初心者用、中級者は中級者用の、反応がマイルドでレスポンスの低い弓具の性能を正しく使い切ることが、上達にとって最も大切なことなのです。

      しかしそれも、正しい身体の使い方あっての事。弓具の事や、射のテクニックに関する質問が多いですが、それ以前に足腰が弱く、柔軟性が乏しい人が多すぎるのです。おまけに心肺機能が低いという、マイナス要素が三拍子揃った状態では、どんなアドバイスも効果がありません。ちょっと強い風が吹いたら当たらないのは矢のせいではなくて、そよ風程度の風で揺らいでしまう脆弱な足腰の弱さに、最も原因があるのです。

      弓具依存症に陥っている人が多いですね。高い弓具や、精度の高い矢を使わないと当たらないと錯覚している人たちです。弓具依存症になると、アーチェリーがスポーツである事を忘れてしまうようですね。アーチェリーがスポーツだという事を思い出して取り組むようになれば、そんな病気とは無縁でいられるのですよ。各社から新製品が発表されたり、世界で活躍するトップアーチャーが驚異的な高得点を叩き出したときに使われている弓具に関心を示す時点で、弓具依存症です。自分の実力とはまったく関係のない世界に目を向けたところで、自分に備わっているものが稚拙な状態である以上は、弓具の高性能化が自分の性能を高めることなどないのです。

      サイトピンのその先に的中しないのを道具のせいにしているうちは、永遠に上手くなりません。弓を使って矢を放つのは自分自身の行為です。当たるのも当たらないのも、すべて自分のせいなのです。当たるアーチェリーほど面白いものはありません。アーチェリーを面白いものにするか、そうでないものにしてしまうかは、すべて自分自身の中にあることを忘れてはいけません。

      他の人が何を使っているとか、上級者でもない自分が上級者と同じグレードの、レベルに見合わない弓具を使うのはやめましょう。そして製品の情報を発信する風上から吹き踊らされてしまわないことが、上達の近道になるのです。言われるがままに高額な製品を買ってヘタクソなままでいるよりも、骨格と筋肉の専門家でもある指導者から正しい事を学び、言われるがままにレッスンを受け続ける方が、自分を幸せな結果に導くのです。

      アルミをバカにしていると、カーボンで泣くのです。初心者用の弓具を使いこなす努力を長く積み上げていないから、上級者用の弓具を使って泣くのです。見よう見まねの、なんちゃってテクニックが本当に通用するものになるのであれば、誰もが世界で通用するレベルになるはずですが、そんな人などどこにもいないのです。

      上達のため必要な性能は、矢のスピードの速さでもなく、リムの速い返りでもなく、ハンドルやスタビライザーの剛性の高さでもなく、切れない伸びないストリングの性能の高さでもありません。本当に必要なものは、自分が手にとるようにわかる、弓具すべてにおける鈍感で、レスポンスの低い、挙動がマイルドな性格です。機材の精度よりも大切なのは、あなたの射の精度の高さです。

      ロビンフッドや那須与一が生きてたとしたら、あなたの射を見て何と思うでしょうか?自分が使っている弓具に自分の神経が通い、自分の血液が流れていると思えるほどコントロールができてないと当たりません。レベルの高い機材を買って使ったところで自分がそれぞれの機材のレベルに相応しくないのであれば、いつまで経っても高得点が出ないばかりか、そのうち自分の愛馬に蹴られるような目に遭うのです。

      世界最高クラスの弓具を使っても大して当たらない万年中級者になってしまうよりも、どんな低いグレードの安い弓具を使ってもガンガン当てることができるようになる方が楽しいのですよ。高額な弓具に囲まれて悦に浸るようなコレクターであれば好きにすればいいですが、本当に上手くなりたいと思っているのであれば、自分のレベルを引き上げるために必要な、正しい手順どおりで着実なステップアップを果たしていきましょう。

      機材のステップアップを行うのは、初心者用の弓具を使って当てまくり、指導者を唸らせるような射を周囲に見せつけることができるようになってからにしてください。現代の初心者用の弓具は、扱いやすくてよく当たります。最低限でもそのレベルをクリアしなければ、弓具の性能に振り回されてしまい、アーチェリーの技術修得どころではなくなってしまうのです。

      日差しを浴びるのが心地よい季節になりました。スポーツの秋真っ只中ですね。アーチェリーが楽しくなるために、自分にとって本当はどんな事が必要なのかを、この夜長の季節にじっくりと考えてみましょう。

      良い弓具とは 高い弓具のことではない

      2015.09.18 Friday

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        アーチェリーで上達しない人に共通しているのは、自分が初心者レベルの域を脱してないにも関わらず、乱暴な機材のステップアップをしている(させてしまっている)ことです。

        取り組みだしてから何ヶ月経った、もう2年続けたから、などのように、続けてきた期間と上達が比例するものではありません。大切なことは、本当に上達しているかどうかです。

        それを勘違いしている多くの人からの問い合わせフォームへのユニークな質問ばかりで、それに対する返答をするのが楽しい日々を送っています。

        そもそもが勘違いな人たちなので、本筋とは違った細かいことばかりを、せっせと質問してきます。自分のレベルに関係のない小手先のテクニックや、繊細な機材のチューニングをどうこう論じたり、インターネットなどでくだらない情報を探るヒマがあるのなら、毎日欠かさずランニングでもしたらどうですか?(笑)

        やっぱり走らないとダメですか?という、競技に出場している選手からの質問には、飲みかけてたお茶を噴き出しましたよ。ほんっと、スポーツをバカにしてる人が多すぎて、カンベンしてほしいです。そんな質問をしてくるということは、立ち方も歩き方も走り方も習ってない人なのですよね。そんな人が機材だけを先どりして競技用のアーチェリーを振り回したところで、上手くなるワケないと伝えているのですが・・・(苦笑)

        さて、初心者練習用のアルミ矢を頻繁に仕入れてますが、ポイント(矢の先端)は競技用のニブポイントではなく、練習用の安いワンピースポイントを装着しています。



        今回仕入れたものからは、そのワンピースポイントの仕上がりが格段に上がってました。旋盤を新しくしたんでしょうかね?



        これなら問題なく競技にも使えますね。1ダースで1300円の安物なのに、モノが良くなるのは本当にありがたいです。

        それにしても、精度精度って、上級者でもないレベルにどんな精密な機材が必要だというのか・・・

        この矢はXX75の1616です。これはブルースですが、ジャズも同じグレードです。中学生だった四半世紀以上も昔に、私はこのXX75の1616を使って、50m・30mのハーフラウンドで630点を出してますよ。

        グラスのリムで表示30ポンド、実質ポンドは24ポンドでした。ハンドルとリムは自分のものですが、サイトは借り物で、装着していたスタビライザーは、アルミ製のセンターロッド1本のみ。

        女子高生よりも弱い弓から放たれた、曲がりを直した練習用のアルミ矢は、誰よりも高い放物線を描いてゆっくりと飛び、私の矢だけ的に上方からナナメに突き刺さるので、どこに当たっているのかがシューティングラインからよく見えました(笑) 海岸に近い砂丘の射場で風もありましたが、ゴム羽根を貼ったこのアルミ矢は、ほぼほぼ正確に当たってくれました。

        必要なのは道具の精度ではなく、自分の精度。自分の精度よりも少し低いグレードの機材を完全に使いこなせないうちは、自分の射を見つめなおすことなど、永遠にできないのです。

        いつまで続けてても大して上手くなれないのであれば、振り出しに戻ってください。正しい身体の使い方と、正しい骨格のポジションに誘導していくための、正しい筋肉の使い方を、しっかり学びましょう。もちろん弓具も、完全なる初心者から再スタートしてください。

        何を使っても大して当たらないか、何を使っても当たるようになるかの、どちらかしかありません。上級者でもないレベルのうちから、自分に合う合わないなどと、当たりもしないのにロクでもないこだわりを持って上達の妨げになるよりも、これまでの取り組みの間違いのすべてを捨てる勇気こそが、スポーツの本当の楽しさにつながるのです。
         

        運転免許試験場にF1を持ち込むような 初・中級者のアーチェリー選び

        2015.08.25 Tuesday

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          ■高ければいいのか?

          アーチェリーは高いですか?と尋ねると、必ずと言っていいほど即答で「高いです」「何10万もします」と、返ってきます。そうですか。それでは質問を変えてみましょう。

          包丁って高いですか?



          すると多くの人は、ちょっと考えてから返答をします。即答で、「いいえ」とか「そうでもない」と答える人が半分程度ですが、「プロの料理人は本格的なものを使っているだろうから、高いのもあると思う」と答える人もいます。そうですね。そういった答えが、私たち一般的な感覚だと思います。

          そこで大事なことを、ひとつ考えてみましょう。高性能がすべてというのであれば、どうして一般家庭では最高級の包丁を使うことがアタリマエという文化にはならないのでしょうか?それは家庭レベルでは、文化包丁1本で十分満足な家庭料理をつくることができるからです。「切る」という目的が正確に達成できるのであれば、べつに鍛冶職人が丹精こめて作った高級包丁でなくとも、家庭レベルでは目的を十分に果たせるということです。

          まさに猫も杓子もといったところですが、初心者も中級者も上級者も、アーチェリー愛好者のほとんどが高価なハイエンドモデルを使っています。地方の高校生の小さな大会を見に行っても、そこにずらりと並んでいるアーチェリーを見ると壮観です。ここは世界戦の会場か?と思うほどです(笑) アーチェリーの技術講習会を開催したら、フラッグシップモデルを持ち込む人が多いのもビックリします。それって自動車学校での実技講習に、F1などのフォーミュラカーを使おうとするのと同じですよ。それがスポーツ指導の現場において、どれだけ滑稽な状況であるかを知っておいて欲しいものです。聞くと、最初にそれを買わされたという人がほとんどです。まさに狂気の沙汰にある日本のアーチェリー界。本当にどうかしてます。

          ■オタク的な趣味性をスポーツに持ち込まない

          アーチェリーは、弓を使って矢を的に当てるスポーツです。現代のアーチェリーの性能は、究極なまでに高められたものばかりです。高額な製品は総じて、驚くべき的中性能を持っています。しかし注意しなければならないのは、それをどんなレベルの人が使っても当たるワケではない事です。それにアーチェリーといえども、しょせんは弓矢であることを忘れてはなりません。そもそも弓矢を扱う上での身体の基礎的な能力がヘナヘナ(小手先のテクニックの事ではありません)なくせに、身体はガチガチに固いので、どんな高性能なアーチェリーを買ったとしても、道具のステップアップに自分が置き去りにされてしまうのです。

          どんな分野であっても、モノづくりの世界には様々なグレードや価格帯の製品があります。プロはプロなりの、アマチュアはアマチュアなりの、初心者や素人にはそれなりの道具を使って正当な手順を踏んでステップアップしていくことでしか、上達する方法はありません。しかしアーチェリー初心者の多くは、最初からいきなり25万とか20万、安くても15万(笑)などと、趣味性の強い、不必要に「超」高額な製品を買わされてしまう傾向が強いです。

          アーチェリーを始めたいと考えている人の多くはアーチェリーというスポーツをしたいのであって、高級なアーチェリーを買って、それを家で眺めながら酒を飲むといった、おかしな趣味のコレクターではありません。初心者が扱いやすい、安くて的中性能が高い製品はいくらでもあるのに、どうして不必要なまでに高額な製品を買わなければならないのでしょうか。日本のアーチェリー界全体が、ずいぶんおかしなマインドになっていると思います。それを他の分野で例えてみると、冷静な判断ができるのではないでしょうか。

          料理ができない人が料理教室に行って「最初にこれを買いなさい」と、3種類がセットになって15万円の高級包丁セットを勧められたとしたら、どうでしょうか。もしもそんな事があったとしたら、それがアタリマエの事だとは、とても言いがたいですよね。しかしながら、多くのアーチェリーショップや、初心者教習の現場では、初めて自分の弓具を買おうという人に、いきなり上級者向けの総額25万円の製品を勧めます。しかもそれが完全に常態化しています。

          25万円というグレードは、オリンピックや世界戦を目指すような人が使うレベルの機材です。その突出した性能を体感できるのは、1000人に1人いるかいないかというシロモノです。そのレベルに到達するまでに、よほど積み上げてきたものがなければ、剛性は高いがサイトピンの震えを止めることができず、レスポンスが高すぎてナーバスな挙動を起こしてしまい、機材が不安定な自分の動きを、より大きなものにします。結局は不確実な自分の動きを、的面に顕著に残すことしかできません。わかりやすく言うと、たかだか実質40ポンド(※表示ではなく実質)をチョット超える程度の弓の力を、骨格で支えることができず筋力を総動員して射を維持しているレベルのうちは、高性能なモデルは上達の足かせにしかなりません。個々の上達の状況に合わせたものを、その都度揃えるのが鉄則です。「最初にこれを買っておけば大丈夫」というのは、なかなかありえないハナシになのです。

          そもそも初心者の頃は弓の扱いに不慣れなので、フィンガースリングが指から抜けて弓が飛び出し、サイトやプランジャーを地面に当てて壊す人も多いものです。センターロッドの取り付け部分を曲げてしまうことや、ボルトが折れてしまうこともあります。初心者や中級者同士で試合に出たり練習してたりすると、弓を倒されたりもするでしょう。ですから最初から高額な製品を買っても、自分で壊したり痛めたりするものだと考えて商品を選択しなければなりません。肩甲骨が浮き上がってるような状態では弓に重量物を装着してはいけません。しかし中級者以下では、センターロッドすら装着するレベルにすら到達してないというのに、最初からいきなりフルセットを買って、買ったものを全部装着して、機材にしがみつくようにして射っている状態です。そりゃぁ、上手くなりません。多くの初心者は基本的にショップの言われるがままに買わされている可能性が高いので、25万円のうち20万円程度がムダ金になります。今使わなくても将来必要になるから買っておけという言葉は、単に売りたい側の都合です。

          最初から高性能な機材を購入するのは、赤ん坊が生まれてすぐに、本人が好む色かどうかもわからないランドセルを買い与え、まだ重くて持ち上げられないのに、何でもかんでも詰め込んでいるのと大して変わりません。いや、もっとヒドイか。免許を取る前にフェラーリを買ったが、結局免許を取れずに運転そのものができなかったり、まだ入試も始まってないのに一流大学へ入学金と授業料4年分を先に払ったが、合格できずに入学が叶わなかった状態にも似ています。自分が上級者と対等に戦える実力もないのに高額な上級者モデルを使ったところで、自分の身体に負担をかけて、上達できない状態を続けることにしかなりません。その特別な機材は、あなたのために特別なことなど何もしれくれないのです・・・

          ■ハンドルなんて1万5000円も出せば十分



          今年は少し値上がりをしたとはいえ、それでも販売価格は1万5000円を超えることはありません。これはSFのアクシオムプラスライトです。W&WのOEM製品です。

          よほどの競技者でなければ、実質40ポンドを超えるような強弓を射つことは考えられません。ですから競技用として40ポンドまで保証対象であれば、何の心配もいりません。レストもプランジャーも付属していて、ハンドルの販売価格は14,500円です。

          リムの装着はILF方式なので、互換性が高いモデルです。最初にアーチェリーを習う時には近射でもタタミに矢が刺さらないほどの弱いものから始めて、少しずつ身体を慣らしていくものですが、自分のハンドルを買ってからも、20ポンド未満の低ポンドから少しずつ時間をかけて徐々にステップアップしてください。最初からいきなり30ポンドを超えるようなリムを、絶対に引いてはいけません。教習施設で最初から30ポンドもの弓を引くのは論外です。あとからどんなに正しいフォームに直したとしても本来必要な筋肉を使って骨格を誘導できなくなるので、見かけだおしのハリボテにしかならず、どれだけ練習しても大して上手くなりません。

          ところで新しいハンドルを買って最初にリムを装着する際は、必ず指導者に装着してもらってください。リムとリムボルトの接触に関する点や、ハンドルのリムボルトを最も弱めて使う際に、リムのロケーターの移動と調整が必要になる事が多いです。互換性があるILF方式といえども、同じメーカー同士の製品であってもリムに大掛かりな調整が必要になる場合があります。自分や他人を大変な事故に巻き込む事がありますので、自分の判断で異なるリムに交換しないでください。特に通販などで購入されて使っている人のリム破損の事故が多いので、新しいリムを装着する際は自分の勝手な判断で使わずに、必ず指導者の指示を仰いでください。



          このハンドルは低価格帯の部類に入りますが、なかなか立派なセンター調整機構がついてますね。高額なハンドルと、機能面では何ら変わりません。W&Wは、安くてもちゃんと使えるものをしっかり作ってくれるので、本当に助かりますね。安くてもこんなに立派な製品があるのに、上級者でもない人が上級者モデルを使うのが、どれだけバカらしい事かと思います。



          このハンドルは昨年も実射しましたが、この14,500円のハンドルの性能にケチをつけられる人が、いったい何人いるというのでしょうか?これからアーチェリーを買おうと思っている人にとって、考えられないほど良心的な価格設定です。安くてビックリされることが多いですが、全国大会を目指すには十分すぎる性能があります。

          どれだけ実射を繰り返してもフォームが安定して肩が上がらず、試合に出ても安定して高得点を出すようになったら、Vバー・サイドロッドを購入します。これらは合わせて1万円前後であります。本当に上級者になるまでは肩や腰への負担にしかならず、手首から先の力が抜けないお粗末な状態では矢に与える力の向きを安定させられないので、剛性が高いものや、26インチを超えるような長いセンターロッドを選んではいけません。初心者用の柔らかいものを使います。ロッドの先端のウエイトを増やすと身体への負担が大きくなるので、当分の間は各ロッドの先端に1個のみを装着します。当分の間はエクステンションロッドは必要ありません。ちなみにセンターロッド以外のロッドやVバーなどは、必ずしも全員が使わなければならないものではありません。みんなが使っているから自分も使うというものではありません。アーチェリーを始めて半年程度の人がVバーとエクステンションロッドを装着しているのは、完全に異常です。特に小学生や中学生の場合は、骨格の成長に異常をきたしますので、安易に装着させてはいけません。

          Vバーなどに慣れてきたら、グラスリムを卒業してカーボンリムにステップアップしてもいいでしょう。この頃には38〜40ポンドのものを選んでも平然と扱えるようになっています。ウッドコアのカーボンリムは、21,000円程度であります。この価格のリムでも、レッドバッジの点数が出せます。70mで320点以上が出せるレベルでもない限り、性能面に不満を感じることなどないはずです。ところで競技者としてではなく、競技会には参加しないが、スポーツとして純粋にアーチェリーを楽しみたいというのであれば、身体に負担のかかるVバーもサイドロッドも購入する必要はありません。リムもカーボンではなく、安いグラスリムで十分です。ハンドルにはセンターロッド1本のみの装着で、70mで普通に300点以上を出すことができます。



          ある程度の強さのリムを買ったら、カーボン矢を購入してもいいでしょう。VAPのV6でも全国大会で十分通用しますが、技術が未熟でまだ学ぶべきものがある発達途上の選手は、価格帯を問わずオールカーボンの矢を使ったり、ポイントを極端なヘビーポイントを装着して矢の前後バランスを崩すような事をしてはいけません。取り掛けとリリースが未熟な人はインスパイアで十分です。最初のカーボン矢をインスパイアにすれば、矢を1ダース作っても5,868円と激安です。

          矢の製作は、指導者立会いの下で矢を自作します。インスパイアなら完成矢を2ダース作っても12,000円もしません。継ぎ矢したり、遠慮なく消耗させればいいでしょう。最初に買った1ダースを使い続けてスパイン変更の余地があるなら、次は異なる番手のものに変更したらいいのです。最初はどのスパインが自分に合ってるか使ってみないとわかりませんので、いきなり高い矢を買っても、実際には合わない事もあります。数ダースを消費したら、VAPのV6グレードでも買えばいいのです。新たに作っても17,068円です。こんなに安いカーボン矢ですが、70mで330点が出ます。私はこのV6グレードのVAPを使って、公認試合の70mで雨の中、後半に315点を出しています。上の画像の右半分の矢を使いましたが、装着していた羽根は初心者用のゴム羽根です。70mで320点以上が出せるようにならないとカーボンシャフトとゴム羽根のバランスの悪さに気づくようなことはまずあり得ませんが、全国大会で賞状をもらえるようなレベルにならないかぎりは、道具に精度を求めるよりも射の精度を高める事の方が大切という事です。

          ■全部でナンボ?

          さて、5年をかけて機材のステップアップをしていくとして、幾らかかるでしょうか?

          ステップアップに必要な機材を借りれる環境になく、全部を自分で購入するとして、ハンドル2セット、リム4セット、矢3.5ダース、ストリング5本、タブ、サイト、プランジャー、レスト、チェストガード、アームガード、スタビライザー、アーチェリーケース、ストリンガー。今年は値上がりしたと言っても、それでも総額は187,400円です。これだけの道具を買い続けても、道具にかかる費用は、1年あたり38,000円しかかかりません。自分が上達するまで、ものすごく充実したステップアップになりますよ。

          最初からいきなりフルセットで15万とか25万の上級者モデルを買いそろえることが、どれだけステップアップの妨げか、ということなのです。アーチェリーケースが必要なければ、5年間で支払った総額は16万円で済みます。さらに、ステップアップに必要なリムと、最初のハンドルを借りれる環境にある場合は、5年間の総額は13万程度で済みます。最初はショップで25万と言われてたのですよ。その差額は12万円。12万円もあれば、どれだけ自分の身体に投資ができると思いますか?

          都道府県の代表を目指すとか、国体のメンバーに選ばれたいというのでなければ、Vバー・サイドロッド・エクステンションを買うこともありません。最初の道具に1年目からイキナリ25万をかけても、まず使いこなせるようにはなりませんし、ほとんど多くの方が、本来の正しい使い方を教わる機会すらないので、弓を持つ手首から先も、ストリングへの取り掛けもリリースも、弓の力の支え方もムチャクチャです。引きがキツくて重量が重たい弓を無理して引いてケガをするか、本来の性能を発揮できなまま使い方がマズくて、高価な機材を壊すのがオチです。それに、最初から高額な道具を買い揃えても、リムもハンドルも何年か使ったら買い替えることになるのです。そのときになって、また25万も払うのですか。何ともバカらしいです・・・

          それよりも、すべてにおいて扱いが不慣れな1年目は4万程度でスタートして、そこから少しずつ上達にむけてステップアップさせた方が身体はラクですし、ゼッタイに使いこなせない性能に高い金を払うようなムダな買い物をすることにはなりません。

          最初の道具に25万円というのは本当にバカげた話です。それが15万円であっても、最初からイキナリ15万円というのは完全に理解しがたい話です。そんなモノを勧められてる時点で、おかしいと疑わなければならないのです。頭は考えるためにあります。しっかり考えて、賢く上達していってください。

          ■もう少し包丁の話

          ハナシを包丁に戻します。優れたプロの料理人は、使った包丁を毎日研ぎます。それはなぜでしょうか?理由はひとつです。自分が魂をこめて使う道具を、常に最良の状態にしておくことを心がけているからです。使う包丁がすごければ、使う砥石もすごいのです。

          あらゆる世界において、モノには様々な価格帯が存在します。低価格帯には低価格帯なりの、高価格帯には高価格帯なりの、目的を達成するための性能が含まれています。プロやトップレベルと、一般レベルでは、そもそも道具に対して求めるものが異なります。近所のスーパーで買った包丁と、1本10万円の堺の包丁があったとしても、残念なコトに私がキッチンに立つかぎりは、どちらの包丁を使っても、工程や出来ばえに違いは出てきません。

          プロの料理人と私では、包丁の扱いのレベルが違いすぎます。使用頻度も比べ物になりません。ですから、包丁に求める性能が異なります。私には切れ味以外の判断基準がありません。ですから私には1本10万円の高級包丁は、完全に猫に小判という状態です。それに、これまで家庭で使ってきた包丁に不満があるわけではありません。カマボコ板や電線を切るような使い方をしたことはありませんが(笑)、庭先で月に1回も研げば、包丁として与えられた機能を十分に発揮してくれます。

          アーチェリーではどうでしょうか?総額25万の「超」高級品を持っていても、ロクにメンテナンスもせずに、ただひたすら実射を繰り返している人がほとんどです。使っている道具の状態が良くない状態であったり、その道具にとって良くない使われ方をしていたり、そんな悲惨な状態を目にする事が多いです。

          初心者に、ムダに高性能で、ベラボウに高い機材を勧めるのが、どういう事かと言いますと、包丁でリンゴの皮もむけない人に、「コレを使えば上手にむけるようになりますよ」と、15万円の包丁を売りつけるのと同じです。しかしその包丁の持ち方や素材に対する手の運び、まな板に向かって立つ位置や足の角度に姿勢、それに包丁の研ぎ方などの一切を教えてもらうことなく、言われるがままに15万円を差し出しているのです。確かに最初はよく切れるのだと思いますが、自分の指も切ってしまうかも知れません。



          これは先ほど、冒頭で紹介した画像です。これはママゴトを卒業した子供に料理を教えるときに使う、子供用の包丁です。刃先と刃元を工夫してあり、刃物の扱いに不慣れな小さな子供が扱いやすいように工夫を凝らしてあります。もちろん大人でも、調理用品として普通に使えます。

          どうしてこのようなものが存在するかを私が述べる事もないと思いますが、あらゆる分野において、扱いやすくてある程度安心して使える懐の広さが、初心者にとって必要な性能であることは間違いありません。機材のステップアップを急ぐことが得点アップに結びつくというのは幻想です。扱いきれる性能すら扱えない状態であるならば、これまで使っていた道具を超えた性能を持つ機材にステップアップしたとしても、得点は伸びません。それは、自分の技量が道具によって高まるわけではないからです。

          すべての性能を突出した高さで追及したものは、扱いが完璧ではない人間が振り回すと大変な事になるのは、アーチェリーも同じです。ダイコンの桂むきどころか、リンゴの皮すらまともにむけない不器用な人が集まる料理教室で、美味しくない料理しか作れないレベルの人たちが、最高の食材についてを語っているのです。しかも救急箱片手に、全員が「超」高級な包丁を振り回しているような状態ですよ。そんな状態のどこがスポーツ指導なのかと思います。

          ■さいごに

          初心者や中級者のアーチェリー用品選びには、指導者が細心の注意を払わなければなりません。初心者や中級者が道具に精度やスピードや反応性など、スペック上での性能を求めてしまうと、発射のすべてが一瞬で終わってしまうために、たとえ優れた指導者から何かの指摘を受けたとしても、正しく理解ができないまま終わります。初心者は初心者に必要な性能として、扱いやすさ、挙動のわかりやすさを備えた、とにかく懐の広い製品を選ばなければならないのです。そんな扱いやすくて、当てやすい道具は、フルセットで4万円台で手に入ります。

          最初にいきなりフルセットに25万円もかけて一式を揃える人は、将来引けるようになる強さを予想したものを買わされる事になるので、自分の弓で練習することが身体に負担を強いて、グッタリ疲れるアーチェリーになります。力まかせでないと扱えないために、引くだけで精一杯で、引いてる最中に何を言われてもアタマの中は真っ白。技術の修得はまずムリです。練習を終えたあとに、身体のなかにズッシリと重たいものが残ります。最初は自分に合ったものを買っているかどうかもわからないまま、勧められるがままに買ってしまっていることと、そのうち周囲にそそのかされて最新機材が欲しくなり、不必要に買い替え時期が早まるために、結局は数年程度で買い替えてしまう事が多いです。数年後に周囲に半額で売ると呼びかけても、アーチェリーをしたことがない人にとっては半額でも恐ろしく高いと思われてしまい、高い割には道具のキズや外観上での痛みの具合を気にされてしまうので、なかなか買い手はつきません。「アーチェリーは高い」と声高な人たちの中にいるので、なかなか新しい仲間も増えません。

          最初は4万円くらいから揃えて、じっくりとステップアップして何年もかけた結果、総額15万という人は、最初から身体に負荷の少ない引きの弱いラクラク練習を続け、じっくり長く時間をかけて少しずつステップアップしていきます。ですから実射を始めても爽快なアーチェリーを楽しむことができます。引きが弱く身体への負担が少ないために、安心して練習量を増やし、正しい反復練習をこなすことができます。そのため身体の正しい使い方や適正なフォームをマスターしやすく、身体を壊すこともなく、ラクに早く上達することができるのです。

          安く始めることができる環境を作ると、仲間が大勢増えます。そうなればリムの貸し借りが頻繁に行われるようになるので、ステップアップの際の費用をさらに大幅に引き下げることができます。最初に数万円で買ったフルセットは、何年かすれば仲間うちでタダ同然で、ステップアップするための製品を買うときまで使わせてもらえることが多いのです。自分のためにも、将来増えるであろう仲間のためにも、最初からいきなり高額な製品を買うべきではありません。

          ところで先ほど、料理人は一日の最後の仕事を終えたあとに包丁を研ぐと言いました。それは自分がプロの料理人として、自分が扱う道具を常に最良の状態にしておきたいと考えるからです。その仕事の内容を考えると、それはむしろアタリマエの話だとも言えます。料理人の包丁がアーチェリーにおける弓矢だとしたら、砥石にあたるものをちゃんと用意できてますか?

          ハイスペックな製品の的中精度はすさまじいものがありますが、ついてるネジをグルグル回すだけがチューニングだと思っている人だらけで本当にビックリします。アーチェリーに関わるすべてが、常に最良の状態にあるかどうか、絶対的な自信があるでしょうか?定期的にオーバーホールして、きちんとメンテナンスができているでしょうか?ストリングの状態は完璧でしょうか?そのストリングを使った日数と発射回数を記録してますか?サービングの向きと原糸をねじる向きは本当に合ってますか?原糸の回転数は何回ですか?サービングをいつ巻きかえたか、記録を残してますか?次にタブの革を交換するのは、いつですか?試合の何日前に爪を切るか決めてますか?毎回的から矢を抜いてクイーバーに収めるまでに、シャフト・ノック・ポイント・羽根の状態を確実に確認できてるという絶対的な自信はありますか?ノックのストリング装着部分から羽根の最後部までの距離を決めた根拠は何ですか?どうしてその全長のストリングを使っているのですか?ノッキングポイントの高さを決めた根拠は何ですか?自分のフィンガースリングが、使い始めた頃から何ミリ伸びているかを把握していますか?プランジャーの中に、チップのカスや砂粒などが入ってない自信はありますか?まさかプランジャーのスプリングやイモネジがサビてるなんて事にはなってませんよね・・・

          上級者が更なる高得点を目指すために、ハイスペックな製品があります。自分の身体がほぼ完璧で、これ以上精度を高めることができない究極のレベルに到達したときに、機材への更なる精度の高さに依存します。しかしまだ自分がレベルアップしていかなければならない状態であれば、そういった機材において神経質なまでの精度の高さは一切必要ありません。初心者や中級者がハイスペックの競技機材を買わされても、自分にとって最良のポジションを探ることはおろか、その状態を維持する方法すら知りません。買った機材を組み合わせてストリングを張っただけで、機材のコンディションが整うわけではありません。それにメンテナンスフリーの機材など存在しないのです。初心者や中級者が使っている25万円のアーチェリーは、「超」高級な包丁を買ってから、一度も研いだことがないどころか、使ってから一度も洗ったことがないという状態に等しいのです。これまで何度も大きな魚を骨ごと切ったり、カマボコ板や電線を切断できるすごいスペックを持っていたとしても、手入れが行き届いてなければ必要のないスペックになります。多くの場合は包丁の刃がこぼれていても気にせず使い続け、ほとんど研いだことがない高級な包丁は、いずれ力を込めても切れないものに成り下がり、本来は一生モノだったはずなのに、すぐに次の新しいモデルが欲しくなるのです。

          100円ショップに置いてある安物の文化包丁よりも切れなくなった15万円の包丁が、ショップにそそのかされて初心者が買わされた25万円の弓具です。セッティングの起こし方すらままならない人が、インターネット通販で買うのも論外です。セッティングというのは、ハンドルに対するストリングのセンターショットの事ではありません(笑)そんなものを使って、どれだけ気合いや根性を入れて、真剣な顔つきになって的をにらみつけたところで当たりませんよ。正しい身体の使い方を学んで、道具の正しいセッティングとメンテナンスを学んだ人が、いかにも爽やかな雰囲気で数万円の弓を使ってズバズバ当てて、ニコニコしてるんですよ。

          アーチェリーなんて、しょせんは弓矢です。弓矢を使ったスポーツ自体が、敷居が高いわけでも何でもありません。初心者に高額な製品を勧める雰囲気であったり、高い道具を使ってないと恥かしいと思わせてしまうような雰囲気を作り出す風潮を、とにかく消し去ってしまわなければなりません。これからアーチェリーを始める初心者や、上達過程にある中級者に、オリンピックや世界戦に出場するレベルの人間が行なっているような、超神経質で超繊細な、本当に神業とも呼べるような究極の世界を押し付けるべきではないのです。そんな事よりも大切なのは、いかに身体への負担を減らして、スポーツ障害を抱えない身体を時間をかけて作っていく事と、目指している技術を修得させるために必要な機材を、適材適所で選択する事なのです。

          高価な弓具自慢をする人が多かったり、大して上手くもない自称上級者がエラソーにしているような、そういった良くない風潮が感じられるのは、そのクラブや教習施設、またはショップが、スポーツとして本来あるべき正しい取り組みを実践できていない証拠です。みんなでよってたかって、高額な弓具を買わそうとする雰囲気も危険です。子供の入会を断ったり、正しい基礎指導ができない教習施設や、指導者がいないレンジやクラブも多いですよ。本当に困ったものです。これが、これからオリンピックを開催する日本の現状です。何とかしていきたいです。

          アーチェリーは、安くて扱いやすいものがたくさんあります。扱いこなせもしない高価な弓具を見せびらかすような金持ち趣味の変なオタクの集まりは相手にしないで、スポーツとしてまずは正しい指導を、指導のプロフェッショナルから受けましょう。いちどアーチェリーを始めたら、誰もが「もっと当たるようになりたい」とか「もっと上手くなりたい」と思うものなのです。自分が大して上達してないのであれば、身体の使い方も弓具の使い方も間違っているので、いま使っている弓を置いて、最初からやり直さなければならないのです。初心者用の弓具を使って正しい指導を受けてこなかった人は、本当の上達を目指すにはそれしかありません。

          暑さが幾分マシになってきましたね。あと少しで待望のスポーツの秋です。スポーツが快適な秋に備えて、今のうちから身体の調子を万全に整えておきましょう。

          本当の事をダレも知らない 激安カーボン矢の的中性能

          2015.08.12 Wednesday

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            今回は、問い合わせフォームで質問の多い、矢についてです。

            シャフトには様々な精度、様々な価格帯の製品があります。ポイント・ノック・羽根もそうです。はっきり言って、どれを選んだらいいか、一部の上級者ですら、「知ってるつもり」状態の人がいます。中級者や初心者であれば、わかってなくて当然です。ショップの人間ですら、表向きの事しか言えない人が多いです。そのため、わからないのをイイことに、良心的でないショップから「超」高級な矢を買わされてしまいます。

            使えば当然のようにわかる事ですが、高い矢を使えば、高得点が出せるようになるのではありません。矢を発射しているのは自分自身の行為であり、自分が行う正確な射の動作が、毎回の的中(得点)という結果をもたらしているのです。あなたが正確な射を行ったとき、視認しているサイトピンの先に矢が的中する。その再現性の高い射を繰り返すことができる。それがアーチェリーです。

            シャフト精度やシャフトの軽さ、そして初速などの、数字としてのスペックがすべてのように語られてますが、アーチェリーで自分にとって大切な数字とは、自分が試合で実際に叩き出すことができる「得点」という数字だけです。実はターゲットアーチェリー用として販売されているすべての矢は、70m先の的の黄色にすべてが刺さる性能を持っています。どこに飛んで行くかわならないような、そんなアブナイものはターゲットアーチェリー用の製品としては、まず販売されてません。

            ネダンが高いから当る、安いのは当らない、というものでは決してないのです。高い矢と安い矢。上級者でない人であれば、どっちを買うのが得することができるでしょうか?というか、すでにあなたが高い矢を使っているのであれば、上級者を追い込むほどに普段から当てることができてるのでしょうか?

            一流選手でもない中級者が、超一流選手と同じ矢を使うと、ほぼ高い確率で上達が止まります。それはまた別の機会に紹介するとして、今回はシャフト1ダースが3800円というオドロキの低価格で売られている、イーストンのカーボン矢の新製品「インスパイア」を製作して、実射テストをしてみます。

            ■初心者練習用のアルミ矢よりも安いカーボン矢「インスパイア」



            ターゲットアーチェリーで使われる矢の種類は、多岐にわたります。上級者には上級者用、中級者にはレスポンスが低くて扱いがマイルドな中級者用、初心者には地面を滑走させたり的外を射って何本も壊してしまうことが前提の初心者用など、実にいろいろです。

            矢を選ぶときに注意しなければならないのは、自分のレベルに見合ったグレードのシャフトを選ぶことが大切です。50mで300点も出せないうちは、シャフト本体が非常に軽量なオールカーボンシャフトや、シャフトが肉薄なものを使うことはオススメできません。

            それに、矢は完全なる消耗品です。高得点を叩き出す上級者でもないかぎり、上達過程にある中級者以下のレベルであれば、こんな練習用の消耗品にムダにお金をかけるべきではありません。シャフト1ダース4万円近い矢を、当たりもしないのに恐る恐る使うよりも、1ダース4千円もしないシャフトを、継ぎ矢で壊しまくる方が格好イイのです♪



            インスパイアに精度の表記はありませんが、実際にこの矢を製作してみてすぐに、素晴らしい事実に気がつきます。上位機種を使っている人が困るので、製品についての詳細を書くのはやめときましょう(笑)

            矢の製作はショップ任せにするのではなく、指導者から教わりながら自分の矢を作りましょう。シャフトカッターとストリングジグを持ってないレベルの指導者は完全に論外ですが、慣れないうちはシャフトのカットは指導者が(頼まれなくても)喜んでやってくれるはずです。

            ショップによってはシャフトカットにビックリするような工賃がかかるところもあります。通販で買うときに依頼しても同様です。矢をショップで何度か作っているうちにアローカッターを買うくらいの費用がかかりますので、アローカッターは、仲のいいグループやクラブ内でお金を出し合って買ってもいいでしょうね。そのような場合は、カッターの刃だけは、各自が自分のものを使うようにすると、「刃が割れた」とか、「割れた刃を弁償して」というようなトラブルになりません。アローカッターを個人で持っている人がいれば使わせてもらって、その人に新しいカッターの刃をプレゼントしてあげると喜ばれますよ。

            ※ACEを買う事を考えたら、インスパイアとの差額で1人が1台、アローカッターを買えてしまうのですけどね・・・(苦笑)



            ポイントは亜鉛製の鋳造です。表面に保護材のようなオイルのようなものが付いた状態で袋に入ってますので、装着前にポイントを脱脂します。特にインサート部分を丁寧に脱脂してください。シャフトの内側も同じように丁寧に脱脂してから、ホットメルトで接着します。



            ノックを装着して、羽根を貼ったら完成です。羽根は100枚で1300円の、初心者用のゴム羽根です。安定して高得点が出せるようになるまでは、軽量なフィルムヴェインよりも、このように少し重たいゴム羽根の方が扱いがラクでオススメです。

            ■インスパイアの実射テストの模様



            私が射つために自分用の弓具を引っぱり出してくるのは、月に1回あるかないかで、実に久しぶりです(笑)



            30mで3射して大まかな調整をしたら、70mで6射してみます。ポイントが軽いので的の上部に的中しています。この日は横風が強くて横長なグルーピングを見せてますが、シャフト自体に重量があるためにそんなに大きな流れはありません。的面での的中に上下幅がほとんど出てませんので、精度表記がされてないにも関わらずシャフトの精度はまったく問題がなく、横風によるエイミングのズレと、飛翔中の矢が実際に横風を受ける以外の影響がない事がわかります。

            的中位置がわかったので、サイトを上に調整して射ってみましょう。プランジャーとサイトの調整機能を一切イジらずに、9射連続で射ってみます。



            このように、ほぼ同じ場所にグルーピングしています。シャフトやポイントの精度低さで、特定の矢が狙いを外してしまう事はありませんでした。というよりも、この回のグルーピングの小ささに、モンクの付けようはありません(笑)

            あとはサイトか、プランジャーの調整でOKです。私はプランジャーのスプリングを少し弱めて調整を完了させました。これが、精度の表記すらしていない、1ダース3800円のシャフトと、ポイント1ダース1000円という、激安カーボン矢の的中能力です。

            この安いインスパイアのネダン10倍の矢を使っている人も多いですが、X10やACEを使ってる人は、ちゃんとグルーピングさせることができてますか?(笑)

            ■得点は?

            こうしてカンタンに調整を終えたら、それぞれの距離で36射ずつ実射してみます。気温は26度で曇り空でしたが、この日は横風が強くて実射テストにはピッタリでした。風が強いときはシューターが風を受けて翻弄されると同時に、飛翔時の矢の横風の影響をチェックできるので、条件が整っている時よりもいい実射データが取れるものです。



            シャフト イーストン インスパイア
            スパイン 750
            ポイント インスパイア純正ワンピースポイント50グレイン
            ノック イーストン GノックSサイズ
            ヴェイン AAE エリート(初心者用ゴム羽根)16サイズ
            アローレングス 25インチ
            実質ポンド 39ポンド



            70m 307点



            50m 312点



            30m 344点

            どの距離も、普通によく当ります。50m・30m(ハーフラウンド)合計してみると、656点が出ています。ACEやVAPのV1グレードとも、出せる得点に違いはありません。シャフトの精度が高くないことが、強い横風を受けて何らかのマイナスを及ぼすようなこともありません。私は今では人に教えることが中心なので、実射するのは指導の際のデモンストレーション程度です。年間の総実射数は400射にもなりません。月に2回でもちゃんと練習すれば、こんなに安いインスパイアでも、50m・30mで670点程度の得点は出せるようになると思います。



            亜鉛製でいぶし銀のような色合いだったポイントは、射ってるうちに表面が磨かれてピカピカに輝くようになってきました。亜鉛の鋳物なので競技用として耐久性が高いわけではないと思いますが、何ら問題はなく普通に使えると思います。

            ■日を改めて再度の実射

            はい、それでは翌週です。得点は採点しませんが、70mと50mを数回ずつ射ってみました。大まかなチューニング後に煮詰めなおして、再度実射チェックです。

            70m



            まぁソコソコ当ります。チューニングしながら射ってた先週よりも、ゴールドに的中するようになってきました。

            50m



            この時だけなのかも知れませんが、この回は驚異的に当たりました。20年もむかしの現役時代を思い出したかのようです。まるで30mを射ってるようなグルーピングですが、これは50mの実射風景です。※私の50mでの試合最高記録は338点です。練習での最高得点も同じく338点です。(もちろんリカーブです。コンパウンドではありません) ※このあと30mを少し射ちましたが、この時の50mの方が当たってた・・・(苦笑)

            まぁ、何にせよ、インスパイアはちゃんと当たる、イイ矢ですね。製品として完璧だとか、ACEやX10それにVAPのV1グレードよりもクオリティーが高いと言ってるわけではありません。シャフト1ダース4千円もしない割には粗悪品でも何でもなく、驚異的な的中能力があるのです。全国大会で上位を狙う上級者でもなければ、本当にインスパイアで十分ですよ♪

            初心者や中級者にムダに高額な矢を買わせる風潮にありますが、そのことがアーチェリー人口の増加を妨げる一因になっているのは間違いありません。アーチェリーなんて、しょせんは弓矢です。誰もがもっと気軽に取り組めるようにして多くの子供たちが楽しめる環境にしていかなければ普及にはほど遠く、アーチェリーにスポーツとしての明るい未来が訪れることなどないのです。

            ■ポイントが消耗したら

            インスパイアの純正ポイントは、1ダース1000円の亜鉛製の安物です。矢に使われるポイントとしては、それほど対磨耗性と対衝撃性に優れているワケではありません。しかしステンレス製やタングステン製の高級品であっても、的外を射ってしまったり、的に刺さっている矢に矢が衝突したときには、ポイントが損傷するのは同じです。最初の頃は練習用の消耗品(すべての矢が消耗品ですが・・・)だと割り切って、ボロボロになるまで使い込めばいいのです。



            ポイントを消耗させてしまったら、次にポイントを買うときにACE・ACG・ACC用の50グレインの安いワンピースポイントでも買えばいいのです。新品を買っても1ダースで1400円くらいです。このポイントには接着用のホットメルトが1本、ポイントの袋の中に入ってます。最初の頃は的の木枠を射ってポイントが抜けたりする事が多い初心者にとって、純正のホットメルトが付属しているのは嬉しいです。イーストンは、初心者への配慮が細かくて本当に助かります。

            というかポイントに関しては、周囲の先輩たちがこれまでチューニングで使ってきた、もう使わないポイントやインサートでシャフト内径に合うものを、捨てるに捨てられないほど余らせてるハズです。これまで、真っ当にステップアップしてきた人や、じっくりとチューニングしてきた人であれば、いろいろ持っているでしょう。



            中古のポイントなんて一度発射された鉄砲玉を拾って、それをもう一回使おうとするようなものですから、ゴミも同然です。スポーツドリンクのペットボトル1本でも渡せば、そこそこ使えそうなのを1ダース分か、それにチョット足りないくらいの本数を喜んで用意してくれますよ。あなたがそれを使わなくなった時には、上達を目指す中級者や初心者に、タダ同然で譲ってあげればイイのです。そうして次の世代の人たちへ、ステップアップのツールとして役立たせることも大切です。



            左がインスパイア純正ポイント。右がACE・ACG・ACC用のワンピースポイントです。



            バルジポイント(先が膨らんでる形状)なので、シャフト外径よりもポイント外径がわずかに大きくなっています。



            70mではサイトが1目盛り分下がりますが、こちらの方が全体的に小さなグルーピングになりますね。この時の70mは320点以上出てるので、一般的には競技用の矢としての性能は十分です。1ダース1000円のポイントから1400円のポイントにするだけで、実射での精度を実感できる人なんてそうそういませんが、上達過程にあっても競技会に出場する機会の多い人であれば、このようにポイントを交換するのも一つの手です。しかしどちらも出せる得点に差がないのであれば、安い方で十分です(笑)

            ■さいごに

            シャフト1ダースが3800円というオドロキの低価格であるインスパイアは、競技用機材としての的中性能は十分です。全国大会で上位を争うような狙うようなトップレベルの選手でもない限り、精度が高すぎる高額な矢を使う意味など、まったくないのです。

            インスパイアはシャフト表面に施されたレジンによるコーティングが、シャフト全体への重量増とともに、細身のカーボンシャフト特有のレスポンスの高さを抑えています。腕力で引いてしまっているために、リリースの際にストリングを「そっと優しく」離すことができず、上位モデルを使っても空に向けて暴れて飛ばすことしかできない中級者であれば、レスポンスの高い軽量シャフトのカーボン矢は、リリース時のストリング弾きの悪影響をモロに受けてしまい、狙い通りに当ることなどありません(実際、大して当らないでしょう?)

            多くの人が良心的でないショップにダマされてムダに高額な矢を買わされて使ってますが、とても使いこなせているとは言いがたい状態にあります。自動車運転免許試験場に、F1などのフォーミュラカーを持ち込んで、必死になってハンドルの切り返しの練習をしているようなものなのです。それを必死になって繰り返して、いつまでにどれだけ上達するというのでしょうか?

            弓具だけは上級者用でも本当に上級者にならない限りは、上級者向けのレスポンスの高すぎる製品が、未熟な技術を圧倒的に上回るスピートで、気づいたときには的の思わぬ場所に矢が刺さっている、という状態になっているのですよ。本当に上達するまでは、「上達するために必要な道具」を使って、的確な射を目指さなければなりません。

            分不相応に高額で高性能な製品を買わされたところで、自分のアーチェリー人生に最高の満足がもたらされると思ったら大間違いです。機材の素晴らしい性能を、生涯体感できることなく終わります。しかし見積もり通りに高額な製品をホイホイと買ってくれる人が多いので、良心的でないアーチェリーショップに最高の満足を与えている事にしかならないのです。

            上級者以外ではレスポンスが高くないインスパイアを使って、正しい取りかけと正しいドローイングのアプローチ、丁寧なリリースの練習をした方が高得点につながるのは間違いありません。ですから、何でもかんでも上級者と同じ機種を使えばイイというものではありません。弓具に高いお金をかければ、それが高得点をもたらすものでは決してありません。

            夢を実現させるには、自分がいま目指しているものを獲得するために、自分に足りない技術を修得するための弓具を使って、目標に向かった計画を立てて、ひとつずつ実行していかなければならないのです。

            アーチェリーなんて、実に簡単なスポーツです。指導の専門家から指導を受けて、正しい身体の使い方さえできるようになれば、どんな弓具を使っても機材の性能をフルに引き出して、正確に当てる事ができるようになります。高い弓具を使っても大して当たらない人と、何を使っても当てる事ができる人。どちらが格好イイでしょうか?

            それにしても、激安カーボンシャフトのインスパイアは、私の想像以上に良好な結果でした。はっきり言って、製品の価格の差にこんなに開きがあるとバカらしいです。レッドバッジを狙えるくらいには当たります。

            指導者が製品に対して正当な評価ができないと、レッスン受講生はショップから、オリンピック選手や世界戦代表選手が使うようなグレードの弓具を買わされてしまいます。しかし自分のレベルに合わない道具ほどムダなものはありません。使う道具も、学ぶ技術も、正当な手順でステップアップしていくことが、本当に楽しいアーチェリーライフにつながるのです。